特集3
繰り返し発信することで伝える
「ダイバーシティ&インクルージョンの重要性」
NTT西日本はこれまで、社員のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進に向け、さまざまな社内向け情報発信を行ってきました。2023年度は、今まで以上に社員に向けたメッセージ発信を強化するため、“忖度なく、経営層が自ら発信する“を意識した社内イベントを開催しました。登壇者と社員がお互いに本音で語り合うことで、D&Iへの理解促進や自分事として考えるきっかけにつなげることができました。
NTT西日本では、D&I推進に不可欠である社内への情報発信を継続的に行ってきました。しかし、全社員アンケート(2023年度)では、「多様な考えをもつことが評価され、推奨されている」と回答した社員は全体の約半数にとどまったほか、「誰もが潜在能力を最大限発揮できる(性別、人種、文化的背景に関わらず)」と回答した社員は約3分の1であり、D&Iの理解・浸透は課題があることが判明しました。この結果を受け、社内のさらなるD&I推進を図るとともに、D&Iの重要性を深く理解してもらうため、代表取締役社長の北村亮太さんが登壇するD&Iイベントを開催しました。
2024年8月に行われたD&Iの社内イベントは、会場とオンラインのハイブリッド形式で実施しました。イベントは、社外ゲストとしてお招きしたSDGパートナーズ代表取締役CEOの田瀬和夫さんによる、D&Iの必要性に関する講演を開催しました。
また講演だけではなく、田瀬さん、北村さん、京都支店長の横田さくらさん、常務執行役員総務人事部長の梶原全裕さんによるトークセッションも実施しました。トークセッションでは、事前に社員から募集した質問をもとに、3名の登壇者から意見や考え等の回答をいただきました。参加者からは活発な質疑応答もあり、改めてD&Iの重要性を理解できる有意義なイベントになりました。
田瀬さんの講演内容(要旨)
D&Iとして目指す場所は、多様な状態というだけでなく、一人ひとりが自分の居場所を見つけ自分の能力が発揮できることです。多様性について、日本ではCSRの一部であり組織経営の根本になっていませんが、欧米においては議論するまでもなく前提となっています。
2024年のジェンダーギャップ指数では日本は146か国中118位とG7の中では断トツの最下位。世界と比べて特に「意思決定」への参加について劣後しています。多様性を阻む要因として、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)による差別構造の強化・拡大があげられます。組織全体のアンコンシャスバイアスの改善に向けて、常識を疑い、おかしいと思うことには声を上げてください。
その次に大切なのは心理的安全性。生産性の良いチームの方が悪いチームよりもミスの数が多いのは、ミスが報告される数が少ないからであり、ミスを報告できない組織はもっと大きなミスが起こる可能性もあります。さらに世界で生き残るには、まずは「言ってみること」ができる環境も大切です。
心理的安全性があっても、その先の構造的歪みという壁を超える必要があります。多様性と包摂を実現するには、衡平(社会の構造の歪みを考慮した異なる人への異なる措置)という観点が必要です。衡平という概念を理解し実践するには、まず経営層をはじめとする管理職に認識を大きく変えていただく必要があります。
“変わる覚悟”と“発信し続けること”の必要性
◆ QAトークセッション概要(一部抜粋)
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社内のD&Iへの理解度が偏っているのではないでしょうか
年度初めのキックオフ以外に、D&Iの話題が出ることはほとんどありません。D&Iに興味のない人を巻き込むにどうすればいいでしょうか。
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北村さんD&Iはそもそも、すべての人にとっての人権の話です。権利を行使していくことによって、世の中に変革が起き始めています。画一的なものの見方で硬直していると会社としてもやっていけないと考えています。また、壁を壊していくためには、D&Iについて私自身含め、組織の長が意識的に繰り返し発信していくことが何より大事だと思っています。
田瀬さんまずは北村社長がおっしゃったように、トップが常に発信することです。もう一つは、人事制度の中に組み込んでしまうことです。人事評価制度の中にジェンダーやサステナビリティの要素を組み込んで、そういった視点がないと昇進できないようにする。これが実現できると大幅な変化が見られると思います。
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「女性活躍」についてどのように考えていますか
周囲から「女性活躍が推進されることで、男性の昇進できる機会が減ってしまうのではないか」という意見や「(女性活躍を重視するあまり)スキル不足の人材もいるのではないか」等の意見が聞かれますが、登壇者の意見を聞かせてください。
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横田さんこういった感情は、誰しもが少なからず持っていると思います。まず、1人でも多くの理解者を増やすために、繰り返しD&Iの必要性を訴え続けていかないといけないと考えています。当事者については、ジェンダーという括りではなく、“個”としての自分を磨くこと、周りから評価されることを意識してみてはどうでしょうか。
また、スキルの指摘ですが、現在は、組織に求められるマネージャー像が多様化しています。トップダウンの推進型だけではなく、メンバーを押し上げていく支援型が求められることもあります。私たち自身が世の中の変化に気づくことも大切です。北村さん顧客ニーズの多様化・複雑化が進み、評価の軸も同じだけ増えています。従来までの観点だけではなく、それぞれの組織が柔軟に、多様な人材を発掘し、登用していくかが重要です。ジェンダー含め、さまざまな違いに関係なく、多様なニーズに対応できる観点から評価が進んでいると考えています。
田瀬さん長時間残業・自己犠牲ができることを能力だと思っている方が、日本には多いですよね。長時間労働は生産性を落とします。今まで長時間労働をしてきた男性は、根本的に考えを改めるべきではないでしょうか。
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D&Iを会社にどのように活かしていけばいいでしょうか
D&Iを会社経営にどう活かすべきでしょうか。また、D&Iで業績が良くなることはあるのでしょうか。
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田瀬さん業績が良くなるのかというご意見は30年前の質問ですね。多様であることが価値のあるアイデアを生み、あるいは生産性を上げていくということは、ほぼ証明されています。その研究にノーベル経済学賞が与えられていますからね。ただし、長く続けてきたやり方を変えることに、抵抗感がある方は多いでしょう。そこが企業にとって相当の覚悟が必要な部分です。
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実際に行動を変え、きれいごとで終わらせないためにはどうすればいいでしょうか
本日のイベントを通じて、自分の中で変えてみたいと思うことは、会社全体で取り組んでいくことで、若手社員や次の世代へ会社としての覚悟を見せられるきっかけになると感じました。
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北村さん意識を変えなければ、行動を変えることは難しいものです。Well-beingを最大化させる、つまり自分だけでなく相手の幸せも一緒に最大化させるといった基本的な思いやりの発想が必須だと思います。
また、D&Iの本質は、受容・包摂にあるように思います。例えば、相手の話を最後まで聞くこと、相手に敬意を持って接することです。そういった思いやりを無意識に持つことができれば、自然と行動も変容するのではないでしょうか。横田さん自分のバイアスをなくすことは難しいので、D&Iは会社員として生きていくために必要なスキルだと捉えることもつではないでしょうか。理解するふりからでもいいです。身につけようと意識することからでも、まずは始めてみることをおすすめします。
田瀬さん会社への提案としては、社員へのメッセージを出し続けることです。個人でできることは、考える時間をつくること。自分の考え方、立ち位置を分析することで、自分の中身が見えてくると思いますので、ぜひ考える時間をつくってみてください。
D&Iの重要性を伝える今後のアクション
イベント終了後には、参加者へのアンケートを実施し、イベントの総評について「非常に有意義」「有意義」と回答した社員は全体の96.4%となりました。
実際にアンケートに寄せられた意見としては、「社長自ら発信を行うという、強いメッセージ性や覚悟を感じた」「事務局が選択した質問が、社員が聞きたくても聞けないリアルな声であり、会社を変えていくんだという本気度が伝わってきた」等があり、忖度のないイベントが実現できたことに加え、北村社長をはじめとする幹部や会社の熱意が伝わり、高評価につながったのではないかと考えています。
社員のD&Iの理解度をより一層深めるため、イベントの開催だけで終わることなく、今後は長期スパンでの施策計画の検討や、D&Iの重要性を伝える機会を増やしていきます。
イベント開催後アンケート結果