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ステークホルダー ステークホルダーダイアログ

ICTを活用した新たな未来の創造

―堺市におけるイノベーティブ都市実現に向けたスマートシティの推進―

ダイアログ参加者:小川成子 NTT西日本 関西支店長、永藤英機様 大阪府堺市長、橋爪紳也様 大阪公立大学研究推進機構特別教授

NTT西日本は、長年にわたり地域の社会課題を解決する先駆者として、ICTを活用したさまざまな取組みを行っています。西日本エリアにある30の支店それぞれが各自治体とICT連携協定等を結び、多種多様な地域事情に沿った課題解決、さらには持続的な発展や成長に伴走しながら貢献できる共創の取組みを推進しています。

なかでも、堺市、南海電気鉄道株式会社、大阪ガス株式会社、NTT西日本の4者が運営委員会として取組みを推進する「SENBOKUスマートシティコンソーシアム」の活動では、大阪府堺市とともに「データ連携ワーキング」のリーダーとして、コンソーシアム全体のサービス・データ・市民・企業を“つなぐ”仕組み・仕掛けの構築を通じて、SENBOKUエコシステムの発展への貢献をめざし、地域住民のWell-beingの見える化やスマートシティサービスの提供等、さまざまな実証プロジェクトを行っています。

今回、これまで行ってきた実証プロジェクトを“実装”の段階へと推し進めるべく、プロジェクトの状況や今後の展望について関係者で話し合ったダイアログの模様をお届けします。

※2023年9月時点で66自治体とのICT連携協定を締結

NTT西日本の姿勢と堺市の現状

永藤市長少子化に伴う人口減少の加速や超高齢社会の進行による社会保障関係費の増加等、全国の自治体を取り巻く社会環境はますます厳しくなっており、堺市も例外ではありません。

このような状況であっても、市民生活の安全と安心を守り、持続可能な都市経営を実現することは当然の責務です。実現に向けた土台の1つとして、多様化・複雑化する市民ニーズを的確に捉え、応えていくことが必要です。そこで、堺市では「堺市基本計画2025」において、めざす都市像として「未来を創るイノベーティブ都市」を掲げています。さまざまな知見や技術を持った産学公民の多くの組織が目的を共有し、未来に向けたイノベーションを生み出し続け、実装していくことが重要であると考えています。

小川支店長堺市をはじめとする自治体の皆さまが住民のニーズの把握に向けたさまざまな施策を講じる一方、多様化するニーズを把握することは難しく、ノウハウや技術面でも課題を抱えている場合もあり、私たちNTT西日本がICT等でお手伝いできる場面が多々あるのではないかと考えています。堺市においては、都市OSの導入をはじめとしたさまざまなサービス提供のお手伝いをさせていただいています。

堺市とは、2017年から包括連携協定を締結しており、その後3年ごとに、時世(時代)に合わせたテーマを設定しながら、現在に至るまで相互に連携したさまざまな先進的な取組みを進めてきました。ICTを活用した幅広い事業を展開するNTT西日本グループだからこそ、あらゆるご要望に今後も応えていきたいと思います。

※都市のインフラを支えるソフトウェア。行政や物流、交通等、人々が生活するうえで欠かせない生活インフラを動かす基盤

永藤市長NTT西日本の皆さまとは、市民サービスや都市の魅力向上等の多岐にわたる分野にて、連携して課題解決に取り組んできました。新型コロナウイルスの感染拡大時期においては、ワクチン保管用の冷蔵庫・冷凍庫の温度情報を監視するサービスをご提案いただく等、その時々の課題に対する解決策をタイムリーにいただいています。

このように、NTT西日本の皆さまが取り組んでいるICTを活用した地域の社会課題解決は、堺市が掲げる「未来を創るイノベーティブ都市」の実現との共通点が多く、相互の持続的な発展に向けて欠かせないパートナーであると考えています。

泉北ニュータウン地域の
スマートシティ推進

永藤市長2022年には、堺市のスマートシティの実装に向け、公民共創・分野横断で課題解決をするために「SENBOKUスマートシティコンソーシアム」が設立されました。NTT西日本の皆さまには、設立初期から組織運営等に携わっていただき、また「データ連携ワーキング」のリーダーも担っていただいています。

SENBOKUスマートシティコンソーシアムにおけるさまざまな取組みの中で、堺市の泉北ニュータウン地域におけるスマートシティの推進は、行政だけではなく企業や大学、住民の力を結集し、将来に向けて新しいイノベーションを生み出そうとする象徴的な取組みとなっています。

小川支店長新たなスマートシティ推進事業の創出に向けた市民共創実証プロジェクトとして、市民の声(Voice of Citizen、以下、VoC)をICTで収集・分析する手法を活かした取組みを実施してきました。現在も、都市OS(ORDEN)を活用したデータ連携を模索しながら、住民の皆さまのWell-being向上をめざし、多くの実証プロジェクトに取り組んでいます。泉北地域が位置する南区の政策会議で議長を務めている、大阪公立大学の橋爪教授の見解も伺いながら、新たなまちづくりに向けた価値の創造につなげられるよう、日々取り組んでいます。

橋爪教授最初に永藤市長がおっしゃっていたように、堺市の課題はさまざまあると思いますが、南区政策会議では南区の住民のWell-being向上をめざして議論を行っています。Well-beingといえば、幸福や健康等が思い浮かぶと思いますが、捉え方は人によってさまざまで、行政に対するニーズも幅広くなっています。そこで、住民の皆さんがそれぞれに求める幸せのかたちを実現するためには、なにより“変わった”と実感できることが重要であり、それにはICTの活用やDXの力が必要になってくるのではないでしょうか。

「ウェルビーイング
見える化プロジェクト」の開始

永藤市長泉北ニュータウン地域では、スマートシティ推進の取組みの中で、住民の考えるWell-being像やニーズの見える化に取り組んでいます。見える化することで、住民の皆さまの声を活かした施策やサービスが提供できると考えています。

しかし、橋爪教授のおっしゃるとおり、Well-beingの捉え方は住民の皆さまそれぞれであり、南区のWell-being像を作成することは容易ではありませんでした。そこで、NTT西日本の皆さまと一緒に、Well-beingに関する南区の特色や傾向等を分析するプロジェクトをスタートさせました。

小川支店長このプロジェクトは、堺市・大阪公立大学・NTT西日本で2023年12月にスタートしました。進め方としては、デジタル庁が実施した「デジタル田園都市における地域幸福度(Well-Being)指標令和5年度全国調査」をもとに、南区民のWell-beingに関する現状分析と仮説の立案を実施しました。特に、住民の考える「南区でのウェルビーイング像」を引き出すため、アンケート調査項目の設計を丁寧に行い、また大阪公立大学のスマートシティ研究センターさまが高齢者と若年者による意識の違いや地域性等を客観的に比較し、深堀調査を実施いただきました。さらに、南区内の認定こども園・保育所・幼稚園や小中学校、各自治体会長の皆さま等にもご協力をいただき、南区全世代で約600件のアンケート回答を集めることができ、再度、可視化・分析を行いました。

可視化・分析の結果は、南区の政策会議にて報告しており、大阪公立大学さまも含めた産官学連携だからこそ、南区政策会議での議論エビデンスとしての説得力も向上し、より実効性の高い政策を立案することができたと考えています。今後は施策やサービスへの反映はもちろんですが、スマートシティ推進における提供サービス等にも役立てていきたいと考えています。

※客観指標と主観指標のデータをバランスよく活用し、市民の「暮らしやすさ」と「幸福感(Well-being)」を指標で数値化・可視化したもの

「ウェルビーイング見える化プロジェクト」の全体イメージ

※実証プロジェクト実施期間:2023年12月~2024年3月

橋爪教授今後は実証プロジェクトの結果に基づき、住民の皆さんの多種多様なWell-beingの向上に向けて、何を優先して取り組むのか、その優先順位を付けることが大切になるのではないでしょうか。

また、今回のプロジェクトを通じて見えてきたWell-being像やニーズに対して、行政側はどこまで対応でき、何を対応するべきなのか、財源等も含めたアウトプットのあり方を議論してほしいと思います。さらに、このような取組みは継続して改善していくことに意味があります。1つのロールモデルをつくり上げることを目標に、堺市とNTT西日本の双方が主体的に取り組んでいくことに期待しています。

ポータルアプリ
「堺・せんぼくポケット」の
実証プロジェクト

小川支店長泉北ニュータウン地域におけるスマートシティの取組みをより一層推進していくためには、住民が“スマートシティ”を体感できるサービスが必要であると考えています。特に、住民の皆さまが日々使っている生活サービスと地域の商店、公共施設等の活動をつなぎ、SENBOKUスマートシティコンソーシアムの情報を届けるハブ機能となることで、便利さや安心感を体験していただき、スマートシティ推進の取組みによって“変わった”ことを実感していただけるのではないかと考えています。

そこで、NTTデータ関西のスマートシティポータルアプリ「EYE-PortalTM」(アイポータル)をベースに、泉北ニュータウン地域に特化したポータルアプリ「堺・せんぼくポケット」(せんポケ)を整備し、2024年1月より実証プロジェクトを行っています。実際に「せんポケ」を活用し、住民の皆さまへ地域の情報や活動を日々紹介することで、生活するうえでの利便性や快適さ、安心感がどの程度実感できるかを具体的に検証しています。

「堺・せんぼくポケット」の提供する機能

永藤市長ご説明いただいた「せんポケ」は、地域に特化した情報が集約されたサービスです。先ほどの「ウェルビーイング見える化プロジェクト」で参照したデジタル庁のWell-beingに関する調査において、堺市は文化芸術と地域イベントの評価が低いことが分かっています。決して取り組んでいないわけではありませんが、住民の皆さまへ情報が届いていないことが低評価の要因ではないかと考えています。「せんポケ」を活用することで、情報が届くようになり、住民の皆さまのWell-being向上に貢献できると考えています。

また、「せんポケ」ではアプリの登録時に、利用者が興味のある分野を選択することが可能です。選んだ分野に応じて、関連のある情報がプッシュ通知される仕組みのため、ニーズに合わせた情報の発信ができるのではないかと思います。

橋爪教授地域アプリは全国さまざまな事例がありますが、住民にツールとして普及していない場合もあります。「せんポケ」の実装に向けて、住民にとって有用で魅力的と感じてもらえるコンテンツをつくり込んでほしいと思います。そのうえで、「せんポケ」を利用する住民が情報を受け取るだけではなく、発信もできるようなアプリをめざしてほしいと考えています。

さらなるWell-beingの
向上をめざして

永藤市長SENBOKUスマートシティコンソーシアムは設立から2年以上が経過し、現在は泉北ニュータウン地域をフィールドに、多くの企業がさまざまな実証プロジェクトを行っています。今はまだ実証段階のものが多いですが、この中から実装に至るプロジェクトが生まれ、住民のWell-beingの向上に寄与できるよう、私たち行政側もチャレンジを続けます。

また、イノベーティブ都市実現に向けて、コンソーシアムとして「地域課題をどう解決していくか」「住民の暮らしの質(クオリティ・オブ・ライフ)やWell-beingをどう高めていくか」が求められていると認識しています。そのために、コンソーシアムの会員企業間の連携を高めることが重要であり、今後は堺市が責任を持って会員企業同士のマッチングを実施したいと考えています。

橋爪教授泉北ニュータウン地域は西日本最大級のニュータウンです。このような地域で設立されたSENBOKUスマートシティコンソーシアムは、NTT西日本をはじめ、日本トップレベルかつ地域の中核を担う企業が参画しており、日本最大級のコンソーシアムといっても過言ではありません。企業同士の垣根を越えた連携だけでなく、産学公民による連携の深化等、さまざまな結びつきを通じたスマートシティの推進を楽しみにしています。

まだまだ実証段階のプロジェクトが多いとのことですが、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに急速なデジタル化が起きたように、このコンソーシアムをきっかけに世界に通用するプロジェクトが生まれることに期待しています。

小川支店長今後、泉北ニュータウン地域をフィールドとした実証・実装プロジェクトのデータが集まることによって、スマートシティのデータ基盤を持つことが大きな魅力になると考えています。また、泉北ニュータウン地域に住む数十万人の皆さまのデータがいち早く抽出できた先行都市として、スマートシティの先駆者にもなり得るのではないでしょうか。

私たちNTT西日本は、ICTを活用した地域の課題解決に果敢に挑み続けることで、堺市に限らず、多くの自治体で持続可能な都市経営の実現の一助となれるよう、引き続きさまざまな支援をしていきます。

泉北ニュータウン地域の歴史が詰まった「旧泉北すえむら資料館」で
ステークホルダーダイアログを実施

泉北ニュータウンにある大蓮公園内に位置する「旧泉北すえむら資料館」は、2016年の閉館まで、泉北ニュータウン開発時の出土品等の文化財を展示していた博物館です。現在は、同資料館を含む大蓮公園全体を地域住民や来街者の憩いや集いの場として整備しています。

また、大蓮公園内をはしる泉ヶ丘緑道は、車の通行がなく、子どもの通学路や遊び場にもなっています。さらに、道沿いに広がる植栽や多くの公園によって、季節の移り変わりを感じながら散歩を楽しむこともできる、泉北ニュータウンを代表する安心安全な歩行空間です。


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