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ステークホルダー ステークホルダー
ダイアログ

山・川・海をつなぐ、
チームかしたらの挑戦

―ネイチャーポジティブな地域循環の創出―

NTT西日本では、長年にわたり地域に寄り添い、ICTを通じて地域課題の解決に取り組んできました。西日本エリアにある30の支店それぞれが、各自治体や地域の関係者と連携し、多様な地域事情に応じた課題解決に向き合いながら、持続的な発展や成長に伴走する共創の取組みを進めています。

そのなかでも、佐賀県鹿島市と太良町は、有明海と多良岳を起点とする「同じ水の流れ」を共有し、山・川・海の環境と地域経済が強く結びついている地域です。上流と下流、森林と海、一次産業と観光、教育、防災が連動するこの地域では、1つの課題が複数の分野に影響を及ぼす環境構造を持っています。

こうした特性から、両市町では単独ではなく、広域での連携による課題解決が不可欠であり、官民学が一体となった取組みが進められてきました。今回のステークホルダーダイアログでは、その実践の過程と、NTT西日本がどのように伴走してきたのかを振り返るとともに、今後の展望も含めて関係者と率直に意見を交わしました。

地域とともに考える、自然と未来

松尾市長鹿島市は、有明海の干潟や森林をはじめとする、豊かな自然環境が特徴です。有明海の干潟の一部はラムサール条約湿地として登録されており、漁業や海苔養殖の基盤であると同時に、エコツーリズムや干潟体験等の観光資源としても成長しています。

2025年には、干潟・川・里地が連続する生態系を評価され、「ななうら干潟とメダカの里」が自然共生サイトに認定されました。これにより、観光資源としての価値に加え、環境教育や生物多様性保全等の観点においても、地域の価値をさらに高めることができたと感じています。今後は、伝統漁法をはじめとする鹿島市の文化・自然・産業を一体的に高める、持続可能なまちづくりに取り組んでいきたいと考えています。

また、鹿島市と太良町は、行政区域は異なりますが、多良岳山系の山々を源とし、有明海へと流れ込む同じ水系を共有しています。そのため、森の在り方が川や海に影響し、海の変化が農業や漁業に影響を及ぼす等、課題が密接につながっている地域です。

永淵町長太良町は、有明海をはじめとする豊かな自然環境に恵まれています。特に多良岳では、持続可能な森づくりを推進する「多良岳200年の森づくり事業活動計画」が自然共生サイトに認定されています。林業の振興に加え、森林整備による水源涵養や防災機能は地域の持続可能性を高める意味でも非常に重要であり、今後も一層注力していくべき取組みの1つだと認識しています。

また地域課題の解決に向けて、鹿島市と太良町のどちらか一方だけで取り組んでも、十分な効果は得られません。それぞれの立場が連携して初めて、地域全体として持続可能な姿を描くことができると考えています。

柿井支店長全国には、鹿島市や太良町のように、豊かな自然資源を有する一方で、その価値をどのように維持し、次の世代につないでいくかについて、常に判断が求められている地域が数多くあります。自然と経済が密接につながっているからこそ、行政だけで解決するのは難しい課題も多くあります。

一方で、人口減少や各種規制、物価高騰等により、自治体の皆さまが非常に苦労されているケースも少なくありません。そうしたなかで、デジタル・ICT等を活用した業務の効率化や省力化によって、私たちがお手伝いできる場面があるのではないかと考えています。

この自然あふれる鹿島・太良地域において、NTT西日本として地域の皆さまと何ができるのか、どのように伴走していくべきか。こうした観点を大切にしながら、自然に寄り添いつつ、地域の経済活性化にもつながる取組みを進めています。

徳田教授鹿島市と太良町は、今も豊かな自然が残る地域です。私自身、研究のために鹿島・太良地域を訪れることが多いのですが、特に多良岳山系には、昔ながらの森が色濃く残っています。私はここで天然記念物であるヤマネの研究を行っていますが、佐賀県内では現在、この地域でしか生息が確認されておらず、学術的にも非常に貴重な森だと言えます。

また、山から川、そして海へとつながる流れのなかで、地域の皆さんが自然の恵みを上手に活用しながら暮らしてこられたことも強く感じています。これからも、山・川・海を一体としてとらえ、自然とともに生きる地域であり続けてほしいと考えています。

※環境省が認定する「民間の取組み等によって生物多様性の保全が図られている区域」や地域生物多様性増進法に基づき認定された実施計画の実施区域

チームかしたらでめざす、
自然環境と地域経済の好循環

柿井支店長鹿島・太良地域では、自然環境の変化が一次産業や地域経済に直結します。一方で、その変化は目に見えにくく、感覚や経験だけでは判断が難しい場面もあります。そこで、NTT西日本の役割は、デジタル・ICT等を活用しながら、環境や活動をデータとしてとらえ、関係者で共有できるかたちにすることだと考えています。

徳田教授官・民・学が連携する意義は、それぞれの強みが異なる点にあります。行政は現場と制度、企業は技術と実装力、大学は分析と理論。それらが組み合わさることで、地域課題を構造的にとらえることが可能になります。

松尾市長私たち鹿島市と太良町は多良岳や有明海といった「豊かな自然」という共通した環境を有しており、取り組むべき地域課題も互いに似たものがあります。そこで、地域のSDGs推進に向けて、2023年に「かしたらコンソーシアム」※1を立ち上げ、1年目が「広域連携SDGsモデル事業」※2、2年目からは国の交付金を活用しながら、産業振興と環境保全の両立をめざしています。

地域循環でめざすローカルSDGsの実現

永淵町長地域課題の解決に向けた糸口を、お互いに学び合いながら、現在も模索を続けています。そのなかで、NTT西日本をはじめとする民間企業の皆さまの力をお借りしながら、地域がより活性化していく流れをつくっていきたいと考えています。

NTT西日本グループの皆さまとは、太良町の町有林において、J―クレジットの創出・活用に向けた取組みを一緒に進めています。将来的には、町有林からJ―クレジットを創出し、地域の企業等に流通させることでカーボン・オフセットの推進や都市部からの資金還流、J―クレジットを活用した地域循環型モデルの構築をめざしています。

J―クレジットを活用した地域循環型モデルの構築

徳田教授私は、コンソーシアムにおけるさまざまな取組みに対して、科学的な視点から意見をお伝えしたり、より効果的な取組み方法を一緒に考えたりするかたちで関わっています。地域の皆さんとともに取り組める活動についても、積極的に協力していきたいと考えています。

柿井支店長NTT西日本が協議会と連携させていただくきっかけは、協議会立ち上げ以前に行った、カーボンニュートラルに関する意見交換でした。先ほど永淵町長もお話しされていたJ―クレジット創出に向けた取組みにおいて、「何をめざしていくのか」という共通認識を持てたことが、出発点だったと感じています。

また、干潟の清掃活動や植樹活動等にも参加し、地域の皆さまと一緒に汗を流してきました。私自身も参加したことがありますが、地域の皆さまの熱意が強く伝わってきて、改めてこの豊かな自然を守っていかなければならないという意識を持つようになりました。こうした現場での経験を通じて、この自然を守っていく責任の重さを改めて実感しています。

※1 内閣府の広域連携SDGsモデル事業の採択を受け、鹿島市と太良町で立ち上げた鹿島・太良広域連携SDGs推進協議会が運営するコンソーシアム(共同事業体)

※2 地方公共団体の広域連携の取組を支援し、成功事例の普及展開を行い、全国の地方創生の深化につなげることを目的に、国(内閣府)が事業選定を行い事業支援するもの

ICTで支える、持続可能なまちづくり

柿井支店長私たちが提供しているのは、特定のツールではなく、ドローンやデータ分析といった技術を組み合わせ、地域の活動や自然の変化を「判断できる情報」に変えていくためのしくみです。デジタルは無機質なものですが、そこに人の想いや現場での対話が重なってこそ、地域の価値を支える力になると考えています。

鹿島市と太良町は、山から川、そして海へと、水をベースとした自然環境と地域経済がつながっている地域です。山から海まですべてが連動しているからこそ、J―クレジット創出事業に加え、広葉樹資源の解析やボート型ドローンを活用したカモの食害対策等、流域全体を視野に入れた取組みが効果的と考えています。

また、自然は毎年変化していきますし、その多くは目に見えません。こうした変化をとらえ、価値として整理し、次の取組みにつなげていくためには、デジタル技術が欠かせないと考えています。

松尾市長これまで感覚的にとらえていた自然の変化が、データとして可視化されることで、施策の優先順位や方向性を議論しやすくなりました。数字があることで、関係者同士の共通理解も生まれます。

広葉樹の資源解析では、J―クレジットの創出に向けて、NTT西日本の皆さまにドローンやAI技術を使った多良岳の環境評価を支援いただいています。得られた多くのデータを活用しながら、各市町の課題解決に向けてどのような施策を行っていくのか、また、データをエビデンスとしてどのように政策へ落とし込んでいくのかをしっかりと考えていきたいと思います。

鹿島市では「海を守るためには、山を守らなければならない」という考えのもと、30年以上前から山での植樹活動を続けてきました。しかし、これまでその取組みがどの程度の効果を上げているのかを、十分に見える化することはできていませんでした。今回の資源解析を通じて、私たちの活動がどれだけ海の環境に寄与しているのかをデータとして把握することで、これまで以上に有明海の環境改善につながる取組みへと発展させていきたいと考えています。

適切な森林管理・海洋保全・漁業振興の循環イメージ

ドローンを用いた広葉樹のデジタル化

徳田教授データを通じて因果関係を整理できる点も重要です。環境の変化がどのように地域経済に影響しているのかを示すことで、対策の妥当性を説明しやすくなります。

海苔養殖や稲作・麦作におけるカモの食害対策では、NTT西日本グループによるボート型ドローンの航行実験が行われ、農業被害を抑えながら、生態系にも配慮したかたちで取り組まれています。

そもそも、カモによる海苔や麦の食害が起きる要因の1つとして、有明海周辺の環境変化があげられます。カモが生息する地域で水草等の餌資源の減少が背景にあり、やはり山・川・海の環境が相互につながっていることを改めて実感します。

ボート型ドローン航行の様子

カモの群れが畑に降りずに逃げていく様子

永淵町長カモだけでなく、イノシシによるみかんの食害も発生しており、大変困っています。罠を仕掛ける等、試行錯誤を重ねていますが、なかなか難しい場面も多いのが実情です。ぜひ今後は、NTT西日本の皆さまと一緒に、より効率的な対策を考えていきたいと思っています。

徳田教授罠とデジタル技術の相性は、とても良いと思います。たとえば、山に仕掛けた罠にセンサーを設置し、罠にかかったことがリアルタイムでわかるようにすれば、少人数でも効率的に対応できるのではないでしょうか。まさに、NTT西日本の皆さんの出番ですね。

柿井支店長ありがとうございます。動物にはそれぞれの習性がありますし、イノシシの行動パターンを把握することも重要だと感じています。地域の皆さまの知見もお借りしながら、デジタル・ICTを組み合わせ、ぜひ実現させていきたいと思います。そのためにも、引き続きこうした議論の機会をいただければ幸いです。

次世代につなぐ、自然と地域の共創

永淵町長自然を守ることと、地域の暮らしを守ることは対立するものではありません。むしろ、自然の価値を正しく理解し、活かすことが、地域の将来につながると考えています。そのためには、地域の皆さまを巻き込んだ取組みを進めていくことが欠かせません。私たち行政は、地域全体の舵取り役として共通のビジョンを提示し、さまざまな連携を促進していく役割を担っています。住民や地元企業の皆さまが参加しやすいしくみづくりにも取り組みながら、誰もが「ここで暮らし続けたい」と思える地域づくりを進めていきたいと考えています。

また、地域の未来をより豊かなものにしていくため、地域が持つ自然資源の可能性を最大限に引き出し、その魅力を周囲に広く発信するための施策も計画しています。住民にとって魅力的であり続ける地域づくりを通じて、持続可能な地域社会の実現をめざしていきます。

松尾市長鹿島・太良広域連携SDGs推進協議会の設立以降、かしたらコンソーシアムを通じて、さまざまな連携や施策を進めてきました。鹿島市と太良町が一緒に取り組んできたこのプロセス自体が、他地域にとっての1つの示唆になるのではないでしょうか。

現在は、両市町の行政が主体となって取組みを進めていますが、今後は住民や地元企業の皆さまをより一層巻き込みながら、活動を広げていきたいと考えています。活動を通じて、自然環境を良くする取組みが実感につながり、さらに大きな動きへと発展していくことを期待しています。

また、ただ自然を守るのではなく、経済との両立も非常に重要です。環境・社会・経済の課題を同時に解決し、自然環境を維持・回復する「ネイチャーポジティブな地域づくり」を進め、自然とともに生きる価値観を次世代へと引き継ぐ地域モデルの実現をめざしていきます。

徳田教授これまでのお話のなかで、「自然を守る」という視点と、「自然を活かす」という視点の2つがあったかと思います。「守る」という言葉からは、きれいに保存しておく、といったイメージを持たれることもあるかもしれません。しかし、守るだけでなく、J―クレジットの創出等を通じて自然の価値を活かし、さらなる地域活性化につなげていくことが重要です。

私たち佐賀大学も、街並み再生や市民の健康等、さまざまなかたちでこの地域に関わらせていただいています。私自身も、研究者としてだけでなく、地域の一員として、課題解決に一緒に取り組んでいきたいと考えています。鹿島・太良地域の取組みが、持続可能なかたちで地域を活性化していく1つのモデルとして整理され、「かしたらモデル」として世界に発信されていくことを期待しています。

柿井支店長これまでのお話を受けて、デジタルはあくまで手段であり、地域の皆さまが主体となって納得のいく選択をしていくための土台を支えるものだと改めて実感しました。

リアルな現場での対話や活動と、データやICT技術をどう融合させていくのか。自然を守るだけでなく、観光や一次産業といった経済活動にも活かし、さらに教育や防災をはじめとする社会への還元につなげていくことが重要だと考えています。

これからも「森から社会へ」価値を還元していくエコシステムを、デジタルやICTの力を活用しながら、地域の皆さま、自治体、そして私たち企業、三位一体となり、対話をしつつ、ともにしっかりと育てていきたいです。


NTT西日本グループのサステナビリティ