このページの本文へ移動

ここから本文です。

ニューノーマル関連記事・レポート

issue 03

テレワークの定着化が左右する、
ニューノーマル時代の企業成長力!

先進的に取り組む企業と一時的な対応にとどまる企業と、テレワークの二極化が進む

コロナ禍の緊急事態宣言に伴う外出自粛要請により、多くの企業が業務を継続するべく在宅勤務を実施しました。しかし宣言解除後には、マスクの使用以外はこれまでと変わらぬ通勤ラッシュシーンが復活しつつあります。

コロナ禍で一気に普及が進んだテレワークは、日本企業の間で定着するのでしょうか? NTTデータ研究所とNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションは、コロナ禍における在宅勤務の実態と課題を把握するためにアンケート調査※を実施。調査結果によると、宣言下の2020年5月には回答者の約7割を占めていた「勤務日の5割程度以上で在宅勤務を実施していた」との回答者の割合が、宣言解除をして2カ月後の7月には半数未満に低下していました。

重要なポイントは、中小企業だけでなく、建設業、金融、保険業などの大手企業も同様の傾向を示していたことです。また、「勤務日の5割程度以上で在宅勤務を実施」との回答者も情報通信業をはじめ大手企業で過半数を占めていた点も注目すべきです。業種によってテレワークを行うことが難しいという問題はありますが、大手企業の間でもテレワークの取り組みに対し、緊急対応として一時的な対応にとどまった企業と、コロナ禍をきっかけにテレワークを定常化させた企業と、二極化が進んでいる状況が見てとれます。こうした状況が生まれた背景には、コロナ禍以前にDX(デジタルトランスフォーメーション)や働き方改革に対し積極的に取り組んできたか否かが大きく影響していると考えられます。二極化は、ニューノーマル(新たな日常)な働き方のみならず、企業成長の分岐点となる可能性があることを認識しておくべきでしょう。

緊急事態宣言解除後は、出社中心の勤務の割合が増加傾向にある
*出典:株式会社NTTデータ経営研究所、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言前後におけるテレワークの実施状況に関する調査」
※株式会社NTTデータ経営研究所、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言前後におけるテレワークの実施状況に関する調査」。2020年3月から7月における在宅勤務の実態と課題の把握を目的に、2020年7月27日週にNTTコムリサーチのインターネットモニターに対しアンケート調査を実施。有効回答者数2,203人。

テレワーク定着化は
業務プロセス改革や組織改革と合わせて取り組むことが重要

同調査では、テレワークの業務実態に関するアンケート結果から、「紙・ハンコ文化からの脱却&業務最適化がニューノーマルへの適応成否を分ける」と指摘しています。紙文化の慣習から重要文書の押印でやむなく出社するといった現状は、テレワーク定着化の大きな障壁となります。ペーパーレス化や業務プロセス改革を進めることは、DX推進とともにテレワーク定着化の必要条件になるという視点は大事です。

同調査によると、テレワークで実施した業務内容では、「書類の作成・確認」、「web会議、電話会議」、「社内システムを通じた管理業務」がトップ3でした。こうした業務を在宅で行ったことによりボトルネックも浮かび上がってきました。ボトルネックのトップ3は、「手元に必要な情報がない」、「社内の状況がよくわからない」、「紙の書類を前提とした押印、決済等の手続き」でした。

また同調査において、業務プロセス最適化が進んでいるという回答者は、「積極的にテレワークを実施したい」と考える割合が高まる傾向にある一方で、「業務プロセス改善」が進んでいないという回答者は「テレワークの継続は困難」と考える傾向が強いことがわかりました。この結果から見えてくるのは、テレワーク定着化における業務プロセス最適化の重要性です。

業務プロセス最適化はテレワーク定着化に大きな影響を及ぼす可能性が高い
*出典:株式会社NTTデータ経営研究所、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言前後におけるテレワークの実施状況に関する調査」

同調査で指摘のあったポイント以外にも、テレワーク定着化に向けては様々な課題があります。生産性や効率性の観点では、セキュリティを担保しながら社内環境と同様に快適な仕事環境を、自宅をはじめ社外で実現することも重要です。また日本の狭い住宅事情を考慮し、仕事に集中できる環境としてサテライトオフィスなど社外ワーキングスペースの確保も求められます。さらに、テレワークでは上司と部下、同僚とのコミュニケーションや社員エンゲージメントの向上も大切なテーマとなります。人材マネジメント面では、テレワーク下での人材育成や教育の実施、在宅勤務に向けた人事評価制度の見直しなども必要だと言えるでしょう。

コロナ禍をきっかけに、テレワークの重要性が増したことでテレワーク定着化に向けたソリューションへの関心が高まっており、そうしたニーズに応える様々なソリューションも登場しています。業務継続を目的とする在宅勤務だけでなく、新たな働き方として“いつでもどこでも仕事ができる”ことによる生産性向上の実現をめざし一歩踏み出すことが、ニューノーマル時代の勝ち組への道を拓きます。

様々なソリューションを活用し、
企業のニーズに合わせてICT環境を整備

テレワーク定着化に1つの“最適解“があるわけではありません。業種や業務はもとより企業それぞれの実情やシステム環境に合わせて様々なソリューションを活用し“現実解”を求めることが重要です。

例えば、会社のパソコンと同じように快適に仕事をしたいというニーズに対し、セキュリティを担保した上で、自宅から会社のパソコンにリモート接続し操作することも可能です。また、コロナ禍の在宅勤務において、多くの企業で課題として採り上げられたコミュニケーション不足の解決に向けては、ビジネスチャットの活用が、テレワーク中でも社員同士の円滑なコミュニケーションの実現につながります。

さらに、お客さまや取引先とのコミュニケーションの観点では、自宅でもスマートフォンを使って会社の電話番号で受発信できるツールは、プライベートとビジネスを明確に分ける上でも有益です。DaaS(Device as a Service)によりデバイスの運用管理をアウトソースすることで、情報システム部門の負荷の軽減につながるでしょう。

テレワークにおける社員管理の観点では、パソコンの操作ログや使用時間などから社員の勤務状況を把握することも可能です。また、テレワークで課題となる社員教育の充実を図るべく、セミナー・イベント・研修などをオンラインで実施するために必要な機能をパッケージ化したサービスもあります。

これまでテレワークの実施が困難だった職種への適用も進んでいます。AIで書類の手書き文字を読み取ってデータ化するサービスを利用し、効率的に領収書や帳票の電子化を行うことで、経理部門もクラウド会計ソフトを使って自宅で業務が行えます。また、IVR(自動音声応答システム)やクラウド型PBXなどによりコンタクトセンター業務の在宅勤務も可能です。

コロナ禍以前からテレワークの環境整備やDXを進めてきた先駆的な企業は、テレワークを前提とした新たな働き方やビジネスを創出する環境として、デジタルワークプレイスの実現に向けた取り組みを進めています。場所を問わずに仕事を行うテレワークで、いかに従業員満足度や企業への貢献意欲の向上、企業文化の育成などを図っていくか。オフィスで働くのが当たり前ではない時代において、社員がデジタルプラットフォーム上で働くデジタルワークプレイスにシフトすることで、生産性はもとより従業員エンゲージメントの向上につながります。

在宅勤務の先へ、テレワーク定着化をベースとするニューノーマルな働き方は、生産性や新たな価値創出など今後の企業成長を左右する決定的な要因になり得るでしょう。

ニューノーマル時代を勝ち抜くためにテレワーク定着化でDXを加速

コロナ禍における企業のテレワークに対する姿勢は、期せずしてDXへの取り組み方を映す鏡でもあったといえるでしょう。DXを推進する中でペーパーレス化や業務プロセス改革を進めていた企業は、コロナ禍に全社員を対象としたテレワーク導入にも慌てることなくスムーズに対応できました。

テレワークの定着と中断という二極化は、今後競争力の差となってさらに広がっていくことが考えられます。この差を縮小しニューノーマル時代を勝ち抜くためには、コロナ禍で一気に進んだテレワークの導入を中断するのではなく、定着化に向けた大きなチャンスとして捉えるべきなのです。

先行き不透明な状況だからこそ、テレワークをはじめとしたIT投資を積極的に進め、コロナ後のジャンプアップに向けてしっかりと準備をしておくことが重要だと言えます。テレワーク定着化でDXを加速し成長戦略に向けてスタートダッシュするためには、2020年は多くの企業にとって大きなターニングポイントの年になると考えなければなりません。

審査 21-133-1