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ニューノーマル関連記事・レポート

issue 02

進むAIと人間の共存。
その先にある未来の働き方とは?

企業のAI活用最前線!
適用分野のトップは社内事務・一般事務

現在、各産業界で官民一体となりAIの導入やPoC(実証実験)が進んでいます。AIは人間の生活を飛躍的に進化させる一方で、将来、AIは人間の仕事を奪うと言う声もあります。

では、実際のAIの活用状況はどのようになっているのでしょうか。AIの技術動向や国内外の政策など、AIに関連した多様な動向を解説するIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の「AI白書2020」による、企業の「AIを適用する業務分野」についての調査結果※1では、社内事務・一般事務が最も多く、AI導入済みの企業の45.5%が社内事務・一般事務にAIを適用しています。AI導入をこれから検討する企業でも同じ結果となり、63.7%が社内事務・一般事務へのAI適用を希望しています。調査結果から、現時点で多くの企業が、AIはビジネスの世界に根強く残る紙文化を脱却するために重要なツールと考えていると思われます。

ERP(統合基幹業務システム)やCRM(顧客管理システム)、SFA(営業支援システム)などの登場で、企業の基幹業務の効率化が進みました。しかし、企業間の取引では、契約書、注文書、請求書など、様々な紙書類が発生します。紙書類のシステムへの入力は、多くの企業で人間が手で行っています。こうした背景から、社内事務・一般事務の自動化・効率化に多くのIT企業が、AI OCRとRPAを連携させたソリューションを提供しています。

例えば、NTT西日本が提供する「おまかせAI OCR with DX Suite※2」では、既存のOCRでは認識できなかった非定型フォーマットや手書き文章などの文字データが読み取れます。そのため、従来よりも幅広い種類の紙書類の電子化が可能になりました。RPAを連携させれば、AI OCRで電子化した書類の入力業務が自動化されるので、社内事務・一般事務のペーパーレス化や効率化、作業ミスや人件費削減に効果を発揮するのです。

※1 出典:独立行政法人 情報処理推進機構 AI白書編集委員会 編 「AI白書2020~広がるAI化格差(ギャップ)と5年先を見据えた企業戦略~」
※2 AI inside株式会社の文字認識AIを活用したサービスです。
「DX Suite」はAI inside株式会社の登録商標です。

AIでガラリと変わる!?
営業活動やコールセンターにもたらす導入効果とは?

社内事務・一般事務だけでなく、営業活動や営業事務の自動化や効率化を実現するAIもすでに登場しています。これまでの営業活動は、膨大な顧客リストの中から1件ずつ電話やメールで顧客にアプローチしなければならない場合もあり、成約の可能性が低い顧客にアポを取る無駄な時間が発生していました。しかし、AIを導入すれば、SFAやCRMに登録された顧客データの中から、成約確度の高い顧客を自動的に営業担当者別に抽出してくるので、効率的な営業活動につながります。また、既存のメールやカレンダーとSFAを同期させれば、AIが自動的に取引先や商談を紐づけてくれるため、SFAやCRMに顧客情報や活動内容を手入力する手間の削減につながります。そのため、今まで以上に営業活動に専念しやすくなるでしょう。

その他にも、コンタクトセンターや窓口業務にAIを活用したソリューションの導入が企業や官公庁などで進んでいます。そこで活躍しているのがAIによる音声認識技術やRPAです。AIやRPAが通話内容を自動的にテキスト化してくれることで、コールセンターのオペレータが対応履歴をシステムに入力する時間の短縮につながります。テキスト化された通話記録は、FAQ作成にも活用できるので、膨大な対応履歴の中から、定型質問を探してFAQを作成する手間が軽減されるでしょう。

定型的な質問であれば、人間の代わりにAIチャットボットに対応させることで、コールセンターや窓口業務の人手不足解消や人件費削減に役立ちます。AIチャットボットとは、ボット内のテキストボックスに入力した質問に対し、最適な回答の候補を提示してくれるシステムです。

AIの活用がニューノーマル時代の働き方を支える

新型コロナウイルス感染拡大により、ソーシャルディスタンスを確保するため、私たちの働き方は劇的に変化し、テレワークの定着も進みつつあります。しかし、テレワークでは、社員1人ひとりの勤務実態を正確に把握しづらい課題があります。こうしたテレワークの勤怠管理の課題に対して、AIを活用したソリューションが登場しています。

NTT西日本の「おまかせAI 働き方みえ~る」は、テレワーク時でも、勤怠管理やパソコン業務の可視化をサポートするAIソリューションで、AIがパソコンのログデータを収集し、社員1人ひとりの勤務時間や作業内容を記録した分析レポートを自動的に作成します。これにより、会社はテレワークを導入しても、社員1人ひとりのパソコン業務の具体的な作業内容をより明確に把握できるのです。

テレワークだけでなく、コロナ禍のオンラインでのやり取りにもAIは、効果を発揮しています。コロナ禍を機にビジネスの世界では、Web会議システムを使ったオンライン商談が拡大しました。オンライン商談は、移動時間や会議室確保などの労力を軽減できるものの、対面取引とは比べ、顧客の反応が見えづらい、今までの営業トークでは通用しづらいなどの課題があります。

こうしたオンライン商談の場面で成約した商談や失注した商談の音声データをAIが分析し、オンライン商談での顧客への説明不足の話題や不要な繰り返し説明、商談しやすい用語などが可視化され、オンライン商談の成約パターンや改善点が浮き彫りになることで、商談の質の向上につながり、部下の指導にも活用できます。

また、新型コロナの影響で対面による販売が減少し、オンライン通販の需要が増えています。小売りの現場では、例えば化粧品の販売において、AIが会話形式でお客様の肌の悩みや商品などをカウンセリングし、利用者に合うおすすめの化粧品を提案するというように活用されています。これまで店舗でないと成立しなかった販売業務が、オンラインで完結できるようになった良い一例の1つでしょう。

その他にも、コロナで遅れた採用活動を進めるため、対話型AI面接サービスの導入も進んでいます。

これまでに紹介したコロナ禍で登場、活躍したAIソリューションは、ほんの一例にすぎません。新型コロナウイルス感染拡大前は、AIの精度を高めるための大量の学習データの入手に苦労する企業がありました。しかし、コロナ禍でITを活用したテレワークやオンライン取引が拡大したため、ニューノーマル時代は従来よりも、オンラインでAIの精度を高める学習データが入手しやすい環境になったともいえます。

AIとの共存が新たなイノベーションを実現する

現在の技術でAIが得意なことは、決めたルールの範囲内での大量のデータ処理です。人間よりも高速かつ正確にデータを処理できるため、現在、定型業務の自動化や業務の効率化を中心に、企業や官公庁でAI導入やPoCが進んでいます。

一方、人間が得意な分野は、創造性や共感性、意思決定などが必要とされる複雑な知的労働です。定型業務をAIで自動化すれば、人為的ミスの可能性が軽減し、処理結果の質が高まります。その空いた時間を人間が得意な知的労働に割り当てれば、新たなビジネスを創出する機会に恵まれます。自動車の自動運転技術や遠隔医療、センシングデータ流通市場、スポーツ配信プラットフォームなどAIを活かした新たなビジネスが続々と登場しています。

ニューノーマル時代のビジネスの成功や働き方改革の実現において、AIは人間に必要なビジネスパートナーといえます。AIと人間がお互いの得意分野を補完し合うことで、例えば、人間がこれまで行ってきた生産性の乏しい単純作業の減少などが期待されます。こうした、AIとの共存により、私たちは、社会貢献や新しいビジネスの開発につながるような創造性を活かした業務など、より人間の強みを活かした知的労働に時間を割くことができるようになるでしょう。

審査 21-133-1