マルチモーダルUCの活用でめざす「世界トップの教育ICT環境」
(2016年3月31日掲載 名古屋工業大学さま導入事例)
キャンパス内の至る所で
コミュニケーションの輪が広がる
全く新しいICT環境とは?
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業種 大学 学生数 5,682人⚹1 概要 1905年創立。『産業界、社会の“活きた課題”を発掘し、“活きた研究”として極め、同時にそれらを“活きた教育”に現わす』という建学の精神の下、7万人を超える人材を輩出し、イノベーションにつながる卓越した研究成果も数多く創出しています。
産業界のニーズに応じた人材の養成に向けて、学士・修士6年一貫の「創造工学教育課程」の新設など、常に未来志向の教育改革を推進。既存の枠組みにとらわれない自由な発想と創造的な研究教育活動により、「新たな価値の創造」へ弛まぬ挑戦を続けています。- ⚹1 2015年5月1日現在
概要
労働力人口が減少する中で、文部科学省は、付加価値の高い理工系人材の戦略的育成に向け、2020年度末までに集中して進めるべき方向性と重点項目を整理した「理工系人材育成戦略」を公表。特に、国立大学をはじめとした高等教育段階の教育研究機能の活用を重視し、一層の機能強化を求めています。
こうした要請に応え、名古屋工業大学さまは、全構成員(学生、教職員)のつながりを強化し、コミュニケーションの活性化を図る「次世代コミュニケーションプラットフォーム」を構築。音声系ツールのIP化を図り、Skype for Business※1やBeacon※2といった先進技術も駆使した新たなICT環境の下で、実践的工学エリートの養成を軸とした“ひとづくり”は、さらなる深化へとその歩みを早めています。
- ※1 音声、インスタントメッセージ、ビデオ・オンライン会議、共同作業などの機能を一つのアプリで利用できる統合コミュニケーションプラットフォーム。旧Lyncの後継。
- ※2 位置情報などを取得するため、壁などに設置され常時電波を発信している固定装置。
背景
国立大学改革強化推進事業に採択され「キャンパスの情報化の推進」が加速
名古屋工業大学さまは、“ひとづくり、ものづくり、未来づくり”に向けた中期目標の重点項目の一つとして、「キャンパスの情報化の推進」を掲げています。学生と教員とのコミュニケーション手段は、「事実上、対面だけしかない」のが実情で、人材育成の観点からも、どこにいてもさまざまな手段で自由にコミュニケーションを取り合える環境づくりが急務となったのです。
新たなコミュニケーションを支えるシステムの構築に向けた名古屋工業大学さまの取り組みは、中期目標がスタートした2010年から始まりました。LANやWi-Fi環境の整備によりキャンパスネットワークの充実を図り、各種機器・装置の検証実験を展開。さらに、こうした基盤づくりを含めた独自の「理工系人材育成戦略」が、文部科学省の「平成26年度国立大学改革強化推進事業」に採択されたことで、新システム構築に向けた動きが、補助金活用事業の一環として一気に加速していきました。
あらゆるコミュニケーション手段を統合し「世界トップの教育ICT環境」をめざす
システムの検討にあたり、リプレース時期を迎えていた内線電話の見直しも並行して検討。とはいえ、電話機を単純に新しくするだけでは意味がありません。名古屋工業大学さまがめざしたのは、従来の音声に加え、インスタントメッセージも使え、相手の顔を見ながら会議もでき、同じデータやファイルを共有しながら共同作業も行えるといった、キャンパス内の至る所でコミュニケーションの輪が広がる、全く新しい仕組みでした。
コミュニケーションに使うあらゆるツールを統合し連携させた、いわゆる、マルチモーダル・ユニファイド・コミュニケーション※3環境の実現。次世代を見据えた極めて先進的な取り組みであり、そこには「世界でトップの教育ICT環境を実現させたい」という強い思いが込められていました。
- ※3 「ユニファイド・コミュニケーション」(以下、UC)は、音声、ビデオ、データ、モバイルなどさまざまな通信・伝達手段を連携させ、共通の利用基盤として提供するシステムのこと。「マルチモーダル」は、複数の要素が組み合わさった形態という意味で、道路・航空・水運・鉄道などを組み合わせて連携された交通網といった意味合いもある。「マルチモーダルUC」は、IP-PBXやアナログ電話、Skype、BYOD、Beaconなどを連携させたUCのこと。
先進システムの実現
3台のPBXを連携させた前例のないユニファイド・システム
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入札を経て、パートナーに選ばれたNTT西日本は、これまでのキャンパスネットワークの構築や各種検証実験にも協力してきた経験を生かし、新システム構築に向けた「チャレンジングで高度な仕様書」にも柔軟に対応。多くの実績に裏打ちされた総合力を発揮しました。
中でも、特にその技術力を問われたのが、3台のPBXを連携させて一つのシステムを構築するという、前例のない難題でした。
システム設計にあたり、最新鋭のSkype for Businessサーバーとアナログ対応のレガシーPBX、そしてシステム全体をまとめるIP-PBXそれぞれの仕様を入念に確認。相互に連携させるためのカスタマイズに取り組み、併せて各ベンダーとのスケジュール調整にも苦心しながら、この難題をクリア。約1,000台の電話機がつながる既存のシステムを停止することなく、わずか1日で新システムへの切り替えを行いました。
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電話機は、LAN環境が整備された学内のどこにでも自由に移動して利用することが可能に
システムを構成する5つの要素
こうして完成した先進のマルチモーダル・ユニファイド・システムは、次の5つの要素で構成されています。
- ①モバイルデバイス(学生・教職員の私物端末)などで音声、データ、映像など多彩なコミュニケーションを可能にするSkype for Businessとの結合
- ②キャンパス内の事務用電話を、原則としてIP電話に更改
- ③教員が使っている研究室の既設電話についてもVA(Voip Adapter)※4を活用してIP化
- ④災害時・停電対応用として、既設のアナログ電話も利用可能
- ⑤教室や研究室の外でもコミュニケーションができるように、キャンパス内に約1,500台のBeaconを設置。また、学生の居場所や行動なども把握可能な出席管理システムを新たに導入
- ※4 既設電話をIP電話として利用可能にするアダプター。

これらのコミュニケーション手段を有効に活用することで、教員は、自ら学ぼうとする学生への親身でタイムリーなサポートが時間や場所にとらわれることなく可能になり、また、授業への出席状況や位置情報から得られる各種データの解析結果を基に、学生一人一人の特性に沿ったきめ細かな指導も可能になります。まさに、従来の学科やクラスの枠組みを超えた“新たな学びの場”が、ICTの活用によって生まれたのです。

システム導入の効果
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「Skype for Businessの導入」により
- 電話利用の利便性が大幅に向上
- 学生の端末に直接メッセージも
電話をかけたい相手の在席確認や状況確認、スケジュール把握などができることから、不応答やかけ直し、コールバックなどのコミュニケーションロスが大幅に減少。電話利用の利便性が向上しています。
また、パソコン画面を見ながら複数のメンバーとの会議や、各種コンテンツを共有しながらの共同作業も可能になり、コミュニケーション手段の多様化と高度化を実現しています。
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顔写真入りの連絡先には、各人のプレゼンス(状況)も表示され、コミュニケーションロスを削減

学生のスマートフォンなどに直接、緊急連絡や通知などのメッセージを送ることも可能で、メール離れが進む学生との有効な連絡手段となっています。さらには、世界のどことでもアクセスが可能なことから、海外でインターンシップ中の学生と教員との間で、コミュニケーション手段や指導ツールとしての活用も考えられています。

「音声系ツールのIP化」により
- 好みのツールで通話OK
- 移転に伴う配線工事も不要に
かかってきた電話には、IP電話、スマートフォン、パソコンなど、都合や状況に合わせて好みのツールで対応できます。また、人事異動などに伴う電話番号の変更などは自動的にPBXに反映されるため、データの変更作業も必要ありません。
フロアレイアウトの変更や、教員の研究室引っ越しなどの際は、電話機本体とVAの移動だけでOK。配線工事が終わるまで電話を使えなかった従来と違い、移転費用も待ち時間もゼロになりました。
さらに、副次的効果として、番号通知機能を活用し、これまで手を焼いていた“しつこい勧誘電話”のブラックリストを作成するなど、迷惑電話対策も進んでいます。

「位置情報システムの導入」により
- 出欠管理や安全管理の精度が向上
- 学生相互の位置情報共有も検討へ
学生の出欠管理や動線把握に利用しているほか、夜間の安全管理にも活用。実験などで夜遅くまでキャンパス内に残っている学生も多く、教員は居場所をリアルタイムで把握することが可能になりました。
また、Beaconの位置情報とSkypeのプレゼンスの連携により、各ツールに他者の位置情報を表示することも技術的には可能で、将来、学生間であれば相互に現在地の情報を提供し、学生同士のつながり強化に役立ててもらうことも検討されています。
今後の取り組み
先進性あふれる発想と研究で広がる夢と“友達の輪”
学生の出欠管理には当面、今回の位置情報システムと、ICカードリーダを用いた従来の出欠システムを併用。新旧システムから得られる各種情報の関連性なども解析し、今後も学生の学習支援などに生かされますが、この解析データを、新たな研究に向けた貴重なデータとして活用する動きも始まっています。
例えば、打刻の履歴データから、友達グループを推定することもできます。スマートフォンを持つ学生がBeaconに近づくと自動的に打刻され、連続的な情報の取得も可能になることから、そのデータを基に打刻の近い者同士を友達グループと推定。授業の際には意図的に友達グループ以外のメンバーとグループを組ませることで、同じグループでは得られない、新たな観点の気付きによる学びの広がりや“友達の輪”を広げるといった試みも既に始まっています。
新しい取り組みに果敢にチャレンジし、何事も他に先駆けて実現をめざす名古屋工業大学さま。“描いた夢”を実現させるさまざまな機能がシステムに搭載される日も、きっと近い将来、訪れるに違いありません。
お客さまの声
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世界と勝負するために
常に進化を求めて
これからもチャレンジを続けますある外国人から「日本人は口数が少ない。だから、日本人が使うジャパニーズイングリッシュになかなか慣れることができない。もっとしゃべらないと、的確な指摘や表現も、相手に正しく伝えられるようにはならない」といった話を伺ったことがあります。
つまり、発音の問題ではなく、いかに多くしゃべるかが問われている、というのです。確かに本学でも、コミュニケーションがあまり上手でない人も多く見られ、このままでは、世界と勝負することはできません。
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国立大学法人 名古屋工業大学 副学長
CIO(全学情報システム統括責任者)
内匠 逸氏
今回のシステムを活用すれば、さまざまな挑戦ができるでしょう。コミュニケーションの活性化を促すために、例えば、居心地の良さや楽しさといった精神的なつながりも高められる仕組みや、学習に適宜インセンティブを与えることで自学自習を喚起する仕組みを、今後、システムに盛り込めないかなどと考えています。
システムは導入して終わりではなく、常に新しい形に進化させていかねばなりません。欧米では基本的に、電話は人にひも付けられていますが、日本では、部署単位に割り当てる形が残っています。次世代に向けてさらに新しい形に移行させるために、内線電話もなくしていく方向で検討を進めています。
今回のわれわれの極めてチャレンジングな仕様書に対し、力を貸していただけたのはNTT西日本だけでした。難しいことも随分頼みましたが、的確・迅速に対応していただき、非常に満足しています。これからのチャレンジにも、ぜひ力を貸していただければと思っています。
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国立大学法人 名古屋工業大学 大学院
教授/情報基盤センター長
松尾 啓志氏 -
“ファースト・ペンギン”になって
世界的な潮流を先取りし
次世代のICT環境を実現していきたい工科系単科大学である名工大の情報基盤センターのシステムは、“ファースト・ペンギンであるべきだ”と、ずっと言い続けています。最初に海に飛び込めば、フカなどの敵に襲われるかもしれませんが、最初に道を開いたものだけに、名誉と成果が与えられるからです。
今回のシステムも「全国の大学に先駆けた導入」ですし、これから取り組む「ビッグデータを利用した学習支援」も、まだどこにも例がありません。
位置情報から得られる学生一人一人の行動データを解析することで、例えば、優秀学生のさらなる飛躍への個別学習指導や、孤立学生の発見による適切なサポートなど、「学生へのよりきめの細かい修学指導」も可能になります。
これらは、学習成果の調査分析など各種情報やデータを重視するIR(Institutional Research)や、データ分析を教育の改善に生かすLA(Learning Analytics)といった世界的な潮流にも沿った取り組みであり、こうした時代に対応するためのベーシックなプラットフォームづくりとしての意味合いも、今回のシステム構築には含まれています。
NTT西日本も、システム全体をうまく連携させるためのIP-PBXのカスタマイズなどで、多くのノウハウを蓄積できたことでしょう。今回のシステムを他の大学にも積極的に展開していただくことで、さらに新たなノウハウの蓄積を期待しています。われわれは今後も、NTT西日本とWIN-WINの関係を保ちながら、他ではマネのできない次世代のICT環境の実現に向けて、チャレンジを続けていきたいと考えています。
NTT西日本担当者の声
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「教育のICT化」の普及拡大へ
最高のパートナーとして共にチャレンジ!名古屋工業大学さまの、常に時代の一歩先を追いかける進取の気風は、大学の大きな特色として広く認知されています。
今回のシステム構築も、他には例のないチャレンジングな内容となりましたが、「最高のシステムを提供することで、最高のパートナーとして認めていただきたい」との強い思いで、プロジェクトチームのメンバーが一丸となり、お客さまと一緒にチャレンジを重ねました。構築後にいただいた「とても満足している」との言葉で、私たちの思いがしっかりと届いたことを確信できました。
わが国の「教育のICT化」はまだ道半ばです。今後も、お客さまの先進的な取り組みに共にチャレンジさせていただくことが、教育のICT化を広く社会に普及させていくことにもつながると思いますので、そうしたフロンティア的な取り組みを続けながら、世の中に貢献していきたいと考えています。
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NTT西日本 ビジネス営業本部
アドバンストソリューション営業部
大学担当(名古屋)、
NTT西日本 東海事業本部
ビジネス営業部 SE部門
第二SE担当のプロジェクトメンバー
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