デジタル教科書(電子教科書)が教育現場に本格導入!
その大きな活用メリットとは?
学校教育法等の改正により、2024年度から小中学校でデジタル教科書の本格的な導入が始まります。また現在DXが進行する高等教育の現場でも、デジタル教科書の導入が進められています。
デジタル教科書は学ぶ人の興味関心を引き出し、主体的・対話的に学ぶのに役立つ、授業のあり方を変える、という声が教育現場からは上がっています。
この記事では、デジタル教科書にはどんな機能があり、どんな活用メリットがあるのかを解説します。
目次
小中学校のデジタル教科書とは?
初等教育・中等教育における学習者用デジタル教科書(以下、デジタル教科書)とは、紙の教科書と同一の内容をデジタル化した教科書のことです。学習者一人ひとりのコンピューターやタブレット端末で閲覧・使用できます。
2024年度からは小学5年生〜中学3年生の英語の授業で、デジタル教科書を「主たる教材」として紙の教科書と同等の位置づけで使うことが可能になりました。今後、算数・数学などでの導入も検討されており、数年をかけて段階的に他教科にも導入される見込みです。
今までも、必要に応じてデジタル教科書は従来の紙の教科書と併用されていました。しかし、特別な配慮を必要とする児童生徒への対応や授業改善などを目的として一定の基準のもとで利用され、限定的なものでした。
■デジタル教科書の機能
デジタル教科書は紙の教科書と内容は同一ですが、機能面に大きな差があります。拡大などの機能に加え、書き込みができたり、機械音声が音読をしてくれたり、といった機能があります。
おもな機能は以下の通りです。
- 拡大:教科書の文字や図を拡大して表示できる
- 書き込み・保存:教科書にペンやマーカーで書き込んだり、消したりすることができる。また、書き込んだ内容の保存・表示ができる
- 機械音声読み上げ・機械演奏の音楽:教科書の文章を機械音声で読み上げたり、機械演奏で音楽を聞いたりすることができる
- 背景や文字色の変更・反転:教科書の背景色・文字色を変更したり、反転したりできる
- ルビ:全ての漢字にふりがなを振ることができる
■「デジタル教科書」と「デジタル教材」の違い
初等教育・中等教育におけるデジタル教科書は「紙の教科書と同一の内容」であることが大原則で、機械音声以外の音声や動画などのコンテンツは含まれません。
そのようなコンテンツは、デジタル教科書での学習をサポートする「デジタル教材」と呼ばれ、補助教材として位置づけられています。これらは、各教科書会社が用意したデジタル教科書と組み合わせて活用されています。
- ネイティブスピーカーによる英語の音声、プロによる音楽の演奏、国語の朗読を聞く
- 図表や文章などを抜き出し、活用するツールの使用
- 教科書に関連付けた動画・アニメーションの使用
- 教科書に関連付けたドリル・ワークシートの使用
デジタル教科書導入のメリット
デジタル教科書・教材を活用することで、「主体的・対話的で深い学び」の実践が深まると期待されています。文部科学省の資料によれば、具体的に次のようなメリットが挙げられています。
■主体性を持って学ぶことができる
書き込み・編集、動画、ドリルなど、デジタルならではの機能を活用することで、子どもたちが自分の力で試行錯誤しながら、より学習を深めていくことができます。
また、文字の拡大やテキスト色の変更、音声読み上げなどの機能により、学習障害や視覚障害の子どもたちが学びやすくなるなど、全ての子どもたちの学習環境の整備・改善につながると考えられています。
■意見の共有・比較が容易になる
教科書に書き込んだコメントをシェアできるため、意見の共有や比較が容易に。自分の考えを整理して他者に伝えたり、考え方の違いを理解したりすることで、物事を多面的に捉える力を育むことができます。
■興味関心を引き出すことができる
教科書に載っている地図や写真を拡大したり、動画を見たりすることで、紙面だけではわからなかった新たな気づきを得ることができます。そうした中で、子どもたちの興味や関心を引き出し、学びを深掘りしていくことができます。
実際にデジタル教科書・教材を活用している教員からは、このような声が上がっています。
【教員の声】
- 指示や児童生徒の考えを共有でき、話し合いの活性化や、わかりやすい授業につなげられる
- 拡大、書き込みなどによって学習内容の焦点化や視覚化、音声化ができるため、理解の深まりや学力向上に効果的
- 教科書を文や問題、図表などに分けて活用でき、学習材としてさまざまな活用を促進できる
- 関連項目を深掘りして調べることができるため、学年や教材、教科を超えた学習が可能になるなど、自由度の高い授業ができる
- 授業準備の効率化ができる
出典・参考:文部科学省「実証実験の報告」/「学びのイノベーション事業実証研究報告書」
このほか、印刷コストの削減や、小中学校で約4年ごとに行われている教科書の改訂サイクルの見直しなどにもつながる可能性があると考えられています。
2019年には、文部科学省から、児童生徒一人につき1台端末を整備するという「GIGAスクール構想」が発表されました。新型コロナウイルス感染症の影響により、当初の予定よりも急速に整備が進められています。今回の改正でデジタル教科書の使用が可能となったことにより、いよいよ、初等教育・中等教育における教育DXが本格化していく流れができているといえるでしょう。
大学DXの柱の1つであるデジタル教科書
ここからは、高等教育(大学)の場におけるデジタル教科書の利用状況について紹介します。
今、さまざまな大学で、「学修者本位の教育の実現」「学びの質向上」を目的として、授業のオンライン化などのDXが進められています。初等教育・中等教育同様、新型コロナウイルス感染症の影響を受けてその動きは加速しており、各大学や関連企業での取り組みは実装・導入段階に突入しています。デジタル教科書も、DX推進を支える大きな柱の一つです。
初等教育・中等教育では、文部科学省の検定を経た教科書が採用されますが、大学の場合は、教員による著作や一般の専門書などの書籍を教科書とすることが多くみられます。初等教育・中等教育のようなデジタル教科書・デジタル教材の間の明確な線引きはありません。
なお、大学で使われているデジタル教科書には以下のような機能があります。
- マーカーやコメントの書き込み・共有
- 教材、講義資料、参考サイトURLなどの付与
- 検索(正引き検索、逆引き検索、全文検索、串刺し検索)
- 音声読み上げ
- 学修ログデータの管理 など
一般的には小中学校のデジタル教科書よりもできることは多く、またシステムと連携させることで利用の幅を広げることが可能です。
大学におけるデジタル教科書の活用メリット
大学におけるデジタル教科書活用の目的のひとつは、小中学校と同様に「主体的・対話的で深い学び」であると考えていいでしょう。学生が主体的・協同的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」の実現や、より質の高い学びを提供する、といったことが挙げられます。
具体的にどのような効果が期待できるのかを見ていきましょう。
■効果的な反転学習ができる
校外で予習してから授業に臨み、授業では議論や演習を中心に行う授業形態を「反転学習」といいます。デジタル教科書の機能を活用することで、これらをより効率よく行うことができます。
例えば、授業前に教員が教科書にマーカーやコメントをつけたり、資料や参考となる教材などのリンクを加えたりして学生に共有します。学生は、共有された教科書や資料を見て予習し、気になったところやわからなかったところにコメントを書き込み、シェアします。授業では、教員が事前に学生から書き込まれたコメントへのフィードバックを行います。また、コメントの共有により学生同士のディスカッションを促します。
これにより、教員は教科書上で学生とコミュニケーションをとりながら効果的に授業をすることができます。また、教科書(本)の効果的な読み方の指導も、上記の流れの中で行うことができます。
学生は意見を発信しやすくなるほか、事前に学んだことを深める受講が可能になるため、授業に主体的に関わっている実感を増すことができます。教科書に書き込みや資料が保存され、講義後のまとめ資料などもすぐに共有することができるので、授業後の復習も容易になります。
■大学図書館と連携した学修サポートが可能に
大学図書館システムと連携させることで、図書館にある関連デジタル書籍、一般書籍、論文などを、教科書上で共有することが可能になります。教科書から、すぐ、簡単に専門書や参考書を見つけることができるようになるので、学生がより関心を深め、自学自習するきっかけづくりになります。
一部のデジタル教科書には、蔵書や論文に対して学生がコメントを付与できる機能や、図書館資料の利用状況を教員にフィードバックする機能なども備わっています。どのような図書館資料が多く利用されているのか、また、資料が学生の学修にどのように影響しているかなどが明らかになることで、学生へのさらなる学習サポートも可能になります。
■授業と学生のマッチング精度の向上
例えば、デジタル教科書を大学の教務システムやシラバスと連携させると、教員だけでなく、履修登録をする学生もWeb上でさまざまな教科書の内容を検索・試読することが可能になります。自分の関心と合致するかを確認しながら授業を選択できるようになるので、授業と学生のマッチング精度向上につながることが期待できます。
■学修ログデータの可視化・活用
学生の学修ログや、教科書・資料の利用ログを可視化することができます。学生がよく見ているページや資料、マーカーを引いている部分などがわかるほか、学修時間や進捗も教員が確認できます。これにより、教員は学修状況や授業の効果を把握・分析し、講義へ反映したり、試験の出題内容を決定したり、学生への細やかなフォローなどを行うことができます。
■LMS(学習管理システム)との連携
各大学で導入が急がれているLMS(学習管理システム)との連携・活用も進められています。LMSとの連携により、
- LMS上にデジタル教科書を登録し、ワンストップで起動・利用
- 学修ログをLMSの学生データ(成績など)と組み合わせることで、学生別のビッグデータを取得
- ビッグデータから、個別最適化された総合学修サポート(問題/講義/書籍リスト)を提供し、学修の質を高める
といったことが可能になります。
ビッグデータとして精度の高いものになっていけば、学生の卒業後の進路データなどとも連携させ、キャリア支援や就職時のマッチングなどに役立てられる可能性もあります。そのほか、卒業後も端末上で教科書を読める環境を用意することで、生涯教育に役立つ可能性も期待されています。
大学DXに向けた課題解決をサポートする
「電子教科書・教材配信ソリューション」
前述のように、すでに教育現場へのデジタル教科書の導入は始まっています。特に高等教育の場では、デジタル技術の活用が授業のあり方や意味合いを変える大きな力となります。学びの場を「教員から一方向的に情報を受け取る場」から「学生が主体的に学びを深めていく場」へ変化させるために、効果的なツールとなるといえるでしょう。
高等教育機関でのデジタル教科書・教材の導入や運用の際には、さまざまな課題も生じます。これらの解決を含めて、導入をトータルでサポートするのが、NTT西日本グループが提供する「電子教科書・教材配信ソリューション」です。ここでは概要と活用メリットをご紹介します。
■「電子教科書・教材配信ソリューション」で実現できること
NTT西日本グループの「電子教科書・教材配信ソリューション」で実現できることとして、以下のような点が挙げられます。
- データベースから教科書を選定可能。オリジナル教科書・教材も作成できる
- 閲覧や書き込み、共有といった学びに役立つ機能を多数搭載
- 学生の学修ログを活用し、データ分析や評価、学修環境の改善を推進
- 学内システム(教務システムやLMS)と連携した活用スタイル
- 学内認証との連携で、学内システムと同一のID・パスワードで利用可能
■「電子教科書・教材配信ソリューション」の活用メリット
学生、教員、そして学校運営者、三者の立場でそれぞれのメリットをご紹介します。
【学生】
- 端末一つに教科書や資料が入っているため簡単に持ち運びができる
- 場所や端末を問わず学修できる
- 教員やクラスの学生と、教科書・教材上でポイントを共有できるため、学修に役立つ
【教員】
- 予習範囲や課題指示などの授業準備を簡素化できる
- 学生の学修ログを活用し、学生一人ひとりに合わせた丁寧なフォローができる
【学校運営者】
- 蓄積した学修データを大学IRやFaculty Development(FD)事業に活用できる
- ペーパーレス化による環境への取り組みやコスト削減の推進が期待できる
「電子教科書・教材配信ソリューション」により、すでに多くの大学でデジタル教科書を導入していただいています。
デジタル教科書の導入を進めたいものの誰に相談していいのかわからない、推進したいのに学内に適する人材がいない、といった悩みのある方はNTT西日本にぜひご相談ください。