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※この対談は2020年3月25日時点のものです
「仕掛学(しかけがく)」で
さまざまな問題を解決
松村 真宏氏(まつむら・なおひろ)
大阪大学大学院 経済学研究科教授。
つい人が行動してしまうユニークな「仕掛け」を発明、社会課題を解決する実証をおこなっている。小・中学生への「仕掛学」講義活動も。
人と地域の思いを、未来へとつないでいく特別対談。 「思いをつなぐ」ナビゲーターの太田雄貴さんが、大阪大学で仕掛学(しかけがく)を研究する松村真宏教授の部屋を訪問。先生が発明した、たくさんの仕掛けに囲まれながら「仕掛的発想力で社会を変える」ことについて語り合いました。
(以下、敬称を略させていただきます)
太田 いろんな物がありますね。これはローマにある “真実の口”ですか。
松村これを見ると多くの人がある行動をしたくなるんです。
太田やっていいですか(口に手を入れて)おお!液体が手に!消毒液!?
松村病院に置くと消毒液の利用者が増えました。お願いするのではなく、人が「つい」したくなる行動を通じて、ある目的を果たす。これが仕掛けです。仕掛けは、いままで無関心だったことに「参加」してもらう、つまり、ものごとを「自分ごと化」してもらうための手段なのです。
太田「参加」や「自分ごと化」は、今後、さらにお客さまを増やしていきたいフェンシング界にとって重要なテーマなので、仕掛学の考え方は非常に参考になります。フェンシングの日本一を決める大会では、様々な種目の決勝戦だけを集めて、劇場で開催するなど、見に来て頂く仕掛けを実践しているのですが、さらに観戦が楽しくなるようなアイデアがあれば、教えてください。つい大きな声で応援したくなるくらい、試合会場を盛り上げたいんですよね。
松村応援を盛りあげる事例としては、フットボールスタジアムで、実際の歓声を増幅して場内に流すという方法があります。
太田なるほど、みんなの声がよく聞こえれば、自分も大きな声を出しやすいですね。
ついゴミをシュートしたくなるゴミ箱
(利用者が約1.6倍に増加)
太田先生は仕掛学を通じて、どういう思いを子どもや学生に伝えたいですか。
松村私が伝えたいのは「多面的な発想を忘れずに、自由に可能性を切り拓いてほしい」ということです。ものごとの正解はひとつじゃない、というのが仕掛学の考え方です。ある方法がダメでも、別のやり方が必ずある。だから人生のあらゆる場面において、壁にぶつかったときにこそ、そう思うことができれば、今後の可能性が拓けると思います。
太田私は 「失敗ではなく未達」という言葉がとても好きです。
松村まさにその考え方です。うまくいかなくても、別のアプローチをすれば達成の可能性が見えてくることがありますよね。
太田そうですね。先生はこの先、未来に何をつなげていきたいですか。
松村私は「個人が社会課題を解決することができる時代」へと、この仕掛学を、つなげていきたいです。仕掛けは個人でも実行できます。だから社会にあるさまざまな課題を「自分ごと化」し、一人ひとりが参加意識を高めていければ、社会を変えることができると思っています。
発想を変えれば、可能性はひろがっていく。
社会に、スポーツに、新しい風を吹かせましょう。