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no.02

継承と革新

山本 誠氏の画像

※この対談は2020年3月24日時点のものです

特別対談今回のお相手

能文化を日本へ、世界へ。

山本 佳誌枝(やまもと・よしえ)

大阪で最古の能楽堂「山本能楽堂」の事務局長。
室町時代から約650年間受け継がれている能文化を斬新なアイデアと手法で国内外にひろめる活動をおこなっている。

人と地域の思いを、未来へとつないでいく特別対談。 「思いをつなぐ」ナビゲーターの太田雄貴さんが、大阪最古の能楽堂を訪問。能文化の継承を独自の手法で手がける山本佳誌枝さんと「継承と革新」について語り合いました。
(以下、敬称を略させていただきます)

能とフェンシングは似ている。
常に挑戦を続けて、伝統の先へいく。

太田 わぁ美しい。能舞台は初めてですが気持ちが凜とします。

山本ようこそお越しくださいました。

太田早速ですが、山本さんの活動を教えていただけませんか。

山本私たちが、特に力を入れているのは、能をご覧になられたことのない方に、実際に能を見ていただく場をつくることです。私たちは能楽堂でお客さまを待つだけではなく、地域の駅・百貨店など公共施設や、小学校に出向いて公演をしています。海外でも公演とは別に、パブリックな場で演じています。さらに言葉が分かるよう、海外の方はもちろん、日本の方に向けても字幕を出しています。いちど観てもらえれば感動していただけるという自負もありまして。

太田能とフェンシングがとても似ていることに驚いています。私たちも小学校や街に出向いて本物のフェンシングを見ていただく活動をおこなっています。また山本さんが能に字幕をつけられたように、フェンシングでもルールや勝敗判断のむずかしさを補うために、試合会場でさまざまな工夫を凝らしています。たとえば、目に見えない剣先の素早い動きを最新のテクノロジーで視える化したり、ルール解説のラジオ放送を場内でオンエアしたり。大切な競技の本質は決して変えないけれど、感動を伝えるための変化には挑み続けたいと思っています。

山本伝統芸能と、伝統あるスポーツが、ともに革新的であるということは興味深く嬉しい発見です。

インタビューイメージ

日本人が本来もつ美しい感性を、
今に、未来につないでいく。

太田能文化を日本へ世界へひろめていくという、ご自身の活動には、どういう思いが込められていますか。

山本私たちがこの活動に取り組んでいるのは「能の精神で、現代の暮らしを豊かにしたい」という思いがあるからです。能は室町時代から、言葉も変わらず演じ続けられている芸能で、その中には日本人が本来持っていた美意識がそのまま保存されています。そういう素晴らしい感性を今に活かすことで、私たちはもっと豊かな日常をおくることができるのではないかと思っています。特に、これからの世界を生きる子どもたちに、能の精神を継承していきたいと思っています。

太田山本さんが、未来へつなぎたい思いがよくわかりました。私も子どもたちにフェンシングを教える機会が多くありますが、子どもにスポーツや文化、そこに込められた思いを伝えるには工夫がいりますね。

山本能というと堅いイメージがありますが、現代美術家の方に能をテーマにした造形遊びを考えていただき、子どもたちがつくった老松の前で演じたり、能楽堂を探検したり、まず「能は楽しいんだ!」と思ってもらうようにしています。

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対談イメージ

伝統文化と、伝統あるスポーツ、
ともに多くの人に感動体験を届けましょう。