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News Release

NTT西日本と大阪大学、無線モバイルフロントホール延伸化に関する実証実験を実施
~光技術とソフトウェア5Gの融合による通信基盤強化~

2025年10月21日
NTT西日本株式会社
国立大学法人 大阪大学

 NTT西日本株式会社(本社:大阪府都島区、代表取締役社長:北村亮太、以下、NTT西日本)と国立大学法人大阪大学(所在地:吹田市、総長:熊ノ郷淳、以下、大阪大学)は、共同で次世代通信All-Photonics Connect powered by IOWN※1を活用したモバイルフロントホール延伸化※2に関する実証実験を2025年10月21日(火)より実施します。今回、実際のフィールドでの実証実験を実施し、光技術と移動通信システムの融合によって次世代通信インフラの強化をめざします。
 実証実験は、JR大阪駅北の「グラングリーン大阪」に設置された大阪大学拠点「大阪大学みらい創発 hive」で運用しているローカル5G用無線実験局およびNTT西日本が提供するサービスAll-Photonics Connect powered by IOWNを使用して実施します。

※1 通信ネットワークのすべての区間で光波長を専有することで高速・大容量、低遅延・ゆらぎのない新しいネットワークサービスです。
https://business.ntt-west.co.jp/service/network/iown/
※2 基地局の構成要素であるRU・CU・DUを、より長距離かつ低遅延で接続できるようにする技術的取り組みのことで、延伸化によりCU/DUの遠隔設置が可能となり、拠点削減によって導入コスト・電力・スペースの制約緩和が期待されます。

1.背景・目的

 第5世代移動通信システム(5G)は、超高速・大容量、低遅延の通信を実現する基盤として普及が進んでいます。その中で、モバイルフロントホールはRU※3とCU※4/DU※5を接続する重要な要素であり、サービス品質や運用コストに直結するインフラ技術です。現在はRUとCU/DU間でおよそ150マイクロ秒(30km相当)の遅延が標準とされており、これが制約となっていますが、さらなる長距離化が求められています。
 その背景には、省エネルギー化、ソフトウェアによるバージョンアップの効率化、都市部における設置スペースの削減といった社会的ニーズがあります。特に都心部のテナント環境では電力容量やスペースの制約が厳しく、CU/DUの設置スペースの制約と信号処理性能とのバランスが大きな課題となっています。本研究では、こうした制約を緩和するため、従来の限界を超える300マイクロ秒(60km相当)以上の延伸化を目標として、CU/DUの機能改修および60kmの距離を低遅延で接続可能とするAll-Photonics Connect powered by IOWNのモバイルフロントホールへの適用を通じて、光ネットワークとソフトウェア処理を融合させた新たなセルラー通信基盤の実現をめざします。

※3 RU(Radio Unit) ユーザー端末との電波の送受信を担う装置で、アンテナに近接して設置されます。基地局側の信号を電波に変換して送信し、受信した電波を信号として処理する役割を持ちます。
※4 CU(Central Unit) 通信の制御やデータ処理を担う装置で、複数のDUを統合管理します。接続制御や暗号化などの上位層の処理を行い、基地局の中枢機能を担います。
※5 DU(Distributed Unit) RUからの信号を受けて、リアルタイム性の高い処理を行う装置です。通信タイミングの調整や誤り訂正などを担当し、CUと連携してユーザーとの通信を成立させます。

2.発表内容の概要

 2024年5月より、大阪大学とNTT西日本は、モバイルフロントホール延伸化関する共同実験をNTT京橋ビル内(大阪府大阪市)、NTT横須賀拠点内(神奈川県横須賀市)で実施してきました。
 NTT西日本は、予備実験において京橋ビルおよび横須賀拠点にてNTT研究所の技術協力を得て実験環境を整備しました。京橋ビルではIOWN APN(All-Photonics Network)を含む接続環境を提供し、モバイルフロントホール延伸化に向けた接続試験や電波送出試験の実施を支援しました。
 大阪大学は、CU/DUの機能を担うオープンソースプログラムを独自に拡張し、ソフトウェアベースで実装しました。予備実験で明らかになったスループット低下の課題に対する改善策を開発し、京橋ビルにおける再試験を通じて改善策が有効であることを確認しました。
 これにより、ソフトウェアによる柔軟さをもたらす5GシステムとNTT西日本が提供するサービスAll-Photonics Connect powered by IOWNを組み合わせることで、モバイルフロントホール延伸化の実現見通しを得ました。

 フィールドでの実証実験は、JR大阪駅北「グラングリーン大阪」にある大阪大学拠点「大阪大学みらい創発・hive」で実施します。ここでは、大阪大学がO-RANフロントホール仕様(Split 7-2)に基づくローカル5G無線実験局を運用しており、無線信号の送受信を担うRU(LITEON社製)が設置されています。この環境を活用し、RUと吹田市内の拠点に設置するCU/DUを、NTT西日本が提供するサービスAll-Photonics Connect powered by IOWNで接続することで、都市部におけるモバイルフロントホール運用を検証する初のフィールド実験を実施します。
 実験期間は10月21日から10月31日を予定しています。事前実験としてすでに拠点間でローカル5GがAll-Photonics Connect powered by IOWNと接続された状態で動作することは確認しており、本実験では複数のアバターの同時制御を試行し、モバイルフロントホールの実用的な知見を得ることをめざします。

3.今後の展開について

 大阪大学は、今後は、IOWN APN区間以外を含む電気信号処理区間での遅延のゆらぎを計測し、通信品質のさらなる安定化を図ります。また、CU/DUの冗長化や動的切替といった仕組みを導入することで、障害発生時でも継続的に利用可能な高信頼なシステムの実現をめざします。
 本研究を単なる技術検証にとどめず、電力や設置スペースに制約のある都市部において持続可能なモバイルフロントホール運用を実現する新たな通信基盤の構築をめざしています。さらに、ソフトウェアによる拡張性を活かし、6Gを含む先進機能にも対応可能な柔軟なインフラへの発展に取り組みます。
 NTT西日本は、All-Photonics Connect powered by IOWNを活用したモバイルフロントホールの延伸化技術をさらに高度化し、仮想化や高信頼化技術と組み合わせることで、6G時代に求められる柔軟かつ持続可能な通信インフラの社会実装に向けた検討を加速していきます。
 本取り組みを通じて、都市部における次世代通信インフラの省エネルギー化・高効率化を推進し、持続可能な社会の実現と地域の発展に貢献していきます。

※ニュースリリースに記載している情報は、発表日時点のものです。変更になる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。

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