【作品タイトル】
「 しわの絵画 」
【コメント】
今回の作品は、「RING ART」メンバーの野坂知布さんです。野坂さんから、次のコメントをいただきました。
自作のテーマは「しわ」です。しわの概念は、光と影、陰影、触覚、音、破壊的なしぐさ、偶然性・・・、
色々な角度からテーマを語ることができます。地球上の地形もしわだと哲学者が述べていました。作者自身は、自作にとって重要なところは表現としての「身体性」です。人間のもつ五感を刺激するような、より身体的な表現の方法としての模索を続けています。この表現は、平面絵画から出発し、形態が平面の紙から立体へと変化しました。素材は、キャンバス、布、紙、段ボールから、より薄い紙へと変化しながら、その軽さによって、壁面の展示から、やがて吊るすことも可能になり、世界中どこにでも気軽に持ち運びして、どんな環境にも適応して飾ることのできる方法を獲得しました。
しわの発見は、学校の子どものしぐさからでした。絵を描かせるための紙をしわくちゃにした子どもを見て、衝撃を受けたことがきっかけ。その後しわの形態が自分の表現に現れたのが94年の個展。それ以降、平面絵画から脱出し、現在のスタイルで制作を続けています。
もうひとつ、作品に込めた意図は、美術の特権を捨てた平等な表現の在り方です。誰もが美術を楽しめるものにしたいと思っています。上手に絵を描こうという思い込みから解放したい思いです。教員として障がいのある子どもたちと向き合いながら、彼らの表現に触れたときに「障がい」というものへの見方が変化しました。自由と不自由、障がい者と健常者という線引きはひとつの物差しに過ぎないことに気づきました。より深い表現の問題としてアートの表現と向きあうきっかけになりました。障がいがあってもなくても、人間は自由に表現する権利を持っていることを、アートとして社会に投げかけることは、社会において、「アート」のもつ使命として、世の中をよりよくしていくためのツールなのだと実践しています。これはRING ARTのコンセプトにもつながっています。
このNTTポケットギャラリーでは、こうしたアートを通して社会へ発信する需要な拠点として機能してきました。ここでひとまず一区切りとなりますが、今後の展開にも期待を込めて作品を展示しました。
【ジャンル】
インスタレーション
【材 料】
紙・染料・糸
【作者】
野坂 知布(のさか とものり)(長崎大学教育学部附属特別支援学校教諭)
【プロフィール】
アートは、人々がよりよく生きることへの支援を行うもので、これまで、そのための場づくりを行ってきた。自らもアートを実践し、そこから表現者たちへの理解を深め、できるだけ彼らの気持ちを汲めるようなサポートを行っている。教員としての視点からは、「こころ」を育むことの大切さを、アートの表現者としての立場からは、その果たすべき役割について考えている。
|
【展示期間】
2017.10.24(火)〜11.5(日)(9:00〜21:00)
※展示期間は予告なしに変更される場合があります。
※作品等に関するお問合わせ:RING ART(中田寛昭 TEL:090-5941-5650)
|