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課題探索から社会実装まで。地域創生Coデザイン研究所が描く地域の未来

課題探索から社会実装まで。地域創生Coデザイン研究所が描く地域の未来
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この記事の目次

この記事の内容【読了時間18分】

NTT西日本グループには、「地域創生Coデザイン研究所」という組織があるんだ。地域の人たちとともに課題を見つけ、解決策を考え、社会実装までつなげていく役割を担っている。どんな思いで活動し、どのように地域と向き合っているのか。その取り組みの背景と、現場での挑戦について話を聞いてきたよ。

interviewee 今回、話を聞いた人

東山さん
東山 真也 (ヒガシヤマ シンヤ)さん

地域創生Coデザイン研究所
取締役

吉川さん
吉川 彰布 (ヨシカワ アキノブ)さん

地域創生Coデザイン研究所
コンサルティング事業部
まちづくり(スマートシティ)担当

吉野さん
吉野 貴信 (ヨシノ タカノブ)さん

地域創生Coデザイン研究所
コンサルティング事業部
地域医療連携・病院業務DX担当

川野さん
川野 正晴 (カワノ マサハル)さん

地域創生Coデザイン研究所
コンサルティング事業部
地域医療連携・病院業務DX担当

※記載の役職・所属は取材時点(2025年11月)時点の情報です

Coデザイン研究所って、何をしているところなんだろう?

1.地域とともに問い、実装する。地域創生Coデザイン研究所

NTT西日本グループの地域創生Coデザイン研究所は、地域の住民、自治体、企業、教育機関といった多様な立場の人々と協働しながら、持続可能な地域社会の実現に向けた取り組みを推進する組織です。地域の暮らしや産業の現場に入り込み、課題の背景にある構造や文脈を丁寧に読み解きながら、解決に向けたプロセスを地域とともに設計・実装しています。

同研究所の特徴は、目に見えている課題への対症療法にとどまらず、その根底にある本質的な問いから出発する点にあります。テクノロジーの導入や仕組みづくりを目的化するのではなく、地域にとって本当に必要な変化とは何かを見極め、その変化が持続する形で根付くことを重視しています。

そのため研究所は、構想だけにとどまらず、地域の現場に入り込みながら、「課題探索」から「社会実装」までを一貫して担っています。地域の人々とともに問いを立て、試行錯誤を重ねながら、その問いを具体的な取り組みとして一つひとつ形にしています。

問いを立てるだけでは終わらない。地域と一緒に考え、その問いを実装までつなげていく。それが、Coデザの役割なんだね。

モグラ

Coデザは、今どんなことをめざしているんだろう?

2.Coデザイン研究所の現在地と、これから

最初にお話を伺ったのは、2025年7月に取締役に着任された東山さんです。富山支店長を3年間務めたのち、現職に就いて約半年。東山さんの視点から見た、Coデザイン研究所(以下、Coデザ)の現在地と、これから目指す姿について話を聞きました。

取締役 東山 真也さん

——個性的な社名ですが、どのような由来ですか?

『Co』は、“一緒に”“協力して”といった意味を持つ接頭語です。地域の皆さんとともに考え、ともにデザインしていきたいという想いを込めて、この名前が付けられました。

——Coデザは、どのような役割を担いながらプロジェクトを進めているのでしょうか。

まず挙げられるのは、課題を見つける力です。Coデザでは、『0から1へ』、つまりお客さま自身もまだ認識していない課題を探索することから始めます。そのために、住民感覚と客観的な事実との間にあるギャップを、データを用いて可視化しています。これはCoデザの大きな強みの一つです。

もう一つは、地域コーディネート力です。立場の異なる多様なステークホルダーに同じ方向を向いてもらうため、Coデザが間に入り、全体の方向性を整理しながらプロジェクトを推進しています。

創設から5年、培ったメソッドを還元したい

——最近、特に注力されている取り組みについて教えてください。

Coデザには、未来の社会システムを探索し、地域の体質改善を進める『未来の社会探索チーム』があります。同チームは、これまで地域で積み重ねてきた実践から得られた知見をもとに活動しており、2025年10月には、リビングラボの国際カンファレンスであるアンドラ国際会議にも参加しました。地域課題の解決に向けて、多様なステークホルダーが協働するための知見を、国際的な場でも共有しています。

最近の取り組みの一例として、奈良県の観光ポータルサイト『みるなら』があります。このサイトは、人流データや購買データ、宿泊データといった定量的なデータに加え、アンケートによる定性的なデータも組み合わせることで、奈良の観光の実態を可視化しています。

私たちは、この『みるなら』を観光事業者の方々がマーケティングに活用できるよう、データの読み解き方や活用方法の支援も行っています。単にサイトを提供するだけでなく、データを活用できる人材の育成までを含めて取り組んでいる点が評価され、グッドデザイン賞を受賞しました。

『みるなら』概要

——Coデザでは、人材育成にも取り組まれているのですね。具体的にはどのような支援を行っているのでしょうか。

観光業ではこれまで、「勘と経験」に基づいてプロモーションが行われることも少なくありませんでした。Coデザでは、人流データや購買データなどを活用して観光の実態を可視化し、事業者の皆さまが客観的な根拠をもとに意思決定できる環境づくりを支援しています。データを通じて現状を理解していただくことで、施策の背景や効果を納得した上で、マーケティングに取り組んでいただけるようになります。

和歌山・奈良・沖縄など、各地域の観光施策にもデータ活用の考え方が取り入れられており、観光振興を支える基盤の一つになりつつあります。

また、『みるなら』については、AIを活用し、利用者が質問すると必要な情報を得られる仕組みへと進化させていく予定です。専門的な知識がなくてもデータを扱える環境が整うことで、より多くの方が日常的にデータを活用できる状態を目指しています。

——創設から5年を迎えた今、Coデザが次にめざしていることについて教えてください。

今後改めて注力したいのは、これまで地域で培ってきたメソッドをNTT西日本グループ全体へ還元していくことです。Coデザのアプローチは、地域の皆さまと共に課題を考えるところから始まるため、現場に深く入り込んだ形で取り組みを進めてきました。

2025年から全社で意識を高めているのは、地域課題の解決を社会実装で終わらせるのではなく、その過程で得られた知見や仕組みを、NTT西日本グループの新たな価値創出や事業につなげていくことです。

課題探索から実装まで担う。その経験が、次の価値につながっていくんだ。全国にも広がっていきそうで、ワクワクするね。

モグラ

まちづくりの担当者に、詳しく聞いてみよう。

3.「Well-Being指標」が導く、人を中心にしたまちづくり

次にお話をうかがうのは、まちづくり(スマートシティ)を担当されている吉川さんです。チームでは、まちづくりの目的である「暮らす人の幸せ」を見失わないよう、「Well-Being指標」を重視しています。

Well-Being指標は、住民の「暮らしやすさ」や「幸福感」を可視化するための指標です。住民アンケートによる主観的な評価と、人口動態や施設分布などのオープンデータといった客観的なデータを組み合わせて分析することで、両者の間にあるギャップを明らかにし、その地域ならではの課題や強みを浮かび上がらせることができます。

コンサルティング事業部 まちづくり(スマートシティ)担当
吉川 彰布 さん

ワークショップで人材育成、プロジェクト実装へ

——主な取り組みについて教えてください。

今回は、金沢で実施した産官学連携プログラムについてお話しします。「北陸未来共創フォーラム」の地元人材育成分科会において、Coデザが中心となり、ワークショップの企画・運営を行いました。地域の担い手となる人材を育成することが、持続的なまちづくりにつながるという考え方に基づく取り組みです。

ワークショップには、自治体職員や大学生、地元企業の皆さまにご参加いただき、「Well-Being指標」の考え方を理解し、地域課題の検討に活用していただくことを目的としました。

——本プログラムにおいて、Well-Being指標はどのような役割を担っているのでしょうか。

特徴の一つです。Well-Being指標を活用することで、住民の方が日常の中で意識していない地域の価値も、データとして可視化することができます。また、ワークショップでは参加者の思いや経験をもとに活発な議論が行われますが、指標を参照することで客観的な視点を保ちながら、議論を深めることができます。

もう一つの特徴は、議論で終わらせない点にあります。多くのワークショップは、検討結果の発表をもって終了しますが、本プログラムでは当初から、検討した企画を社会実装し、事業として成立させることを見据えて進めています。

——検討された企画の社会実装は、どのように進められているのでしょうか。

現在取り組んでいるのが、コミュニティセンター(公民館)を拠点とした、高齢者の地域交流を促進する試みです。スマートディスプレイをコミュニティセンターや高齢者のご自宅に設置し、気軽に相互交流できる環境を整えています。

テレビ電話としての利用に加え、自治体から地域情報や防災情報を発信する手段としても活用できます。将来的には、地域交通との連携や買い物支援など、日常生活を支える基盤としての活用も見据えています。

また、民生委員(支援が必要な地域住民に寄り添い、必要に応じて訪問などを行う方)のご自宅にも設置することで、見守り活動の負担軽減や効率化にもつながると考えています。

当事者が「住み続けたい」と思うために

——本プログラムを通じて、地域にどのような変化が生まれることを目指していますか。

本プログラムでは、若者が大学進学や就職を機に地域を離れた場合でも、関係人口として継続的に関わりたいと思える意識を育てることを目指しています。住民自らがスマートシティの政策を考え、意思決定のプロセスに関わり、検討した内容が地域で実装される経験は、地域への理解や愛着を深める契機になります。住民が主体的にまちづくりに関わる経験の積み重ねは、自治体への信頼を高め、持続的なまちづくりを支える基盤の形成にもつながります。

ワークショップのプログラム

——Well-Being指標は、地域の関係者にとってどのような役割を果たすとお考えですか。

Well-Beingという言葉は広まりつつありますが、具体的な活用方法まで理解されている自治体はまだ多くありません。Well-Being指標を用いて、住民の暮らしやすさや幸福感の変化を定期的にデータとして確認することで、どの政策が効果を生み、何を優先すべきかを客観的に判断できるようになります。デジタル技術の導入そのものではなく、住民のWell-Beingがどのように変化したかを継続的に把握することが、まちづくりの方向性を定める上で重要になります。Well-Being指標は、立場の異なる関係者が共通の視点を持ち、地域の将来について議論するための基盤として機能します。

ワークショップの様子

——今後、NTT西日本グループ内での連携については、どのように展開していくお考えですか。

グループ内での勉強会では、地域課題を起点に住民との対話を重ねながら課題を明らかにしていくCoデザのアプローチについて共有しています。地域で得られた知見をNTT西日本グループのサービスと結び付けることで、地域課題の解決に貢献できる機会を広げていきたいと考えています。グループの皆さんと情報交換を重ねながら、地域の実情に即した形で価値を提供できる連携体制を構築していきます。

暮らしやすさや幸せを見える形にすることで、本当に必要なまちづくりが見えてくるんだね。

モグラ

医療分野もCoデザのフィールドなんだって。詳しく聞いてみよう。

4.地域医療を支える、医療MaaSと病院DXの取り組み

次にお話を聞いたのは、医療分野での取り組みです。担当する吉野さんと川野さんに話を伺いました。吉野さんは前職で金融分野を担当しながら医療・福祉領域にも関わってきた経験を持ち、現在はその知見を生かして本プロジェクトに携わっています。川野さんは、リモート取材に参加したこの日も沖縄の病院に滞在し、遠隔診療の実証実験に立ち会っていました。

医療現場では、医師の地域偏在や高齢化が進み、特にへき地では必要な医療を受けること自体が難しくなっています。高齢者の運転免許返納が進んだことで通院手段の確保も課題となり、医療へのアクセスは年々制約を受けています。医療機関側も厳しい経営環境に直面しており、地域医療をどのように維持していくかが重要なテーマとなっています。

地域医療連携「医療MaaSオンライン診療は満足度90%の結果」

コンサルティング事業部 吉野 貴信さん

——まず、吉野さんが担当されている遠隔医療の取り組みについて教えてください。

私が担当しているのは、島根県の大田圏域(大田市・川本町・美郷町)で、2024年4月から進めているプロジェクトです。本エリアでは、医師が患者さんのご自宅まで車で約40分かけて移動し、一人の診療を終えてから再び戻るという状況が日常的に発生しています。医師の移動に多くの時間を要することが、医療提供の効率や継続性の面で課題となっていました。

そこで、医療機能を備えた医療MaaS車両を活用し、オンライン診療と組み合わせた新しい医療提供体制の構築に取り組んでいます。医療MaaS車両を地域に配置することで、患者さんは自宅の近くで診療を受けることができ、医師は遠隔から診療を行うことが可能になります。移動の負担を軽減しながら、地域における医療アクセスを持続的に支える体制の確立につなげていきたいと考えています。

——今後の課題については、どのように捉えていらっしゃいますか。

重要なテーマは、取り組みを持続可能な形で運用していくための収支と運用体制の確立です。2024年度に実施した検証では、医療MaaS車両を活用したオンライン診療について、対面診療と同等の満足度が得られ、「満足度90%」という結果が確認されました。

現在は、実証段階から事業段階への移行を見据え、運用負担の軽減と収支の安定化に取り組んでいます。具体的には、医療MaaS車両の稼働率を高めるため、連携する医療機関を拡大するとともに、地域の民間事業者との協力体制を構築し、車両の共同利用を進めています。運用効率の向上と持続可能な体制の確立を進め、2026年度の本格的な社会実装をめざしています。

——今後、他の地域への展開についてはどのようにお考えですか。

医師の高齢化や地域偏在、高齢者の移動手段の制約といった課題は、全国の多くの地域に共通しています。医療MaaSとオンライン診療を組み合わせた取り組みは、地域の実情に応じて柔軟に展開できる可能性があります。今後は、自治体や医療機関との連携を深めながら、各地域の課題に応じた形で導入を検討していきたいと考えています。地域における医療アクセスを持続的に支える手段の一つとして、活用の可能性を広げていきたいと思います。

Coデザでは、課題の探索から具体的な導入、運用の定着までを一貫して担っています。地域や医療機関の状況を継続的に理解しながら支援を行うことで、取り組みの方向性に一貫性を持たせることができます。一つの課題への対応を起点に、関連する新たな課題の解決へと支援を広げていくことも可能です。今後も、グループで連携しながら、医療分野における課題解決に継続的に取り組んでいきたいと考えています。

病院業務DX「導入して終わりではなく、定着するまで伴走支援」

コンサルティング事業部 川野 正晴さん

——川野さんが担当されている、病院業務DXの具体的な取り組みについて教えてください。

医療従事者の人材不足や、働き方改革に伴う労働時間の上限規制への対応が求められる中、病院業務の効率化は重要な課題となっています。一方で、現場の実態を十分に把握しないままICTを導入しても、期待した改善につながらないケースもあります。そのため、まずは看護師一人ひとりの業務の実態を正しく把握することから取り組んでいます。

まず、院内に受信器を設置し、看護師が携帯するスマートフォンから取得した位置情報と、業務報告アプリに記録された業務内容や工数のデータを組み合わせて分析します。その結果、「いつ、誰が、どこで、どのような業務を行っているか」を客観的に把握することが可能になります。

分析によって明らかになった業務の偏りや非効率な動線については、看護師へのヒアリングを通じて背景を確認し、現場の実態に即した課題を整理します。課題の内容を踏まえ、各医療機関に適したICTの選定と導入を、NTT西日本グループと連携しながら進めています。ICTの導入後も、現場で無理なく運用できる状態を維持し、継続的に活用される仕組みとなるよう伴走支援を行っています。

——現場ごとの状況に応じた対応を重視されているのですね。

地の医療従事者との対話を重ねながら、現状の把握と課題の整理から取り組む点が、Coデザの特徴だと考えています。現場の皆さんの課題意識に寄り添いながら、病院のDXを支えるパートナーとして伴走していきたいと考えています。

——医療分野におけるCoデザの強みについて教えてください。

医療チームには、医療機関の経営や運営に関する専門知識と経験を持つメンバーが在籍しており、医業経営コンサルタントなどの資格取得にも積極的に取り組んでいます。医療分野特有の制度や運営課題を理解した上で支援を行える点は、大きな強みの一つです。

また、支店と連携しながらプロジェクトを進める中で、医療分野に特化した知見を提供できる存在として期待されています。医療機関とのネットワークを生かしながら、現場の中に入り込み、ICTの導入だけでなく、その後の運用定着まで継続的に支援しています。医療従事者の皆さんが安心して活用できる環境を整えることが、医療DXを持続的に進める上で重要だと考えています。

ポーズはCoデザの「C」マーク、
そして『みるなら』グッドデザイン賞の盾とともに

課題を見つけて、実装し、定着まで支える。それが、地域医療を支える力になっているんだ。安心して医療を受けられる未来につながっていくんだね。

モグラ

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地域創生Coデザイン研究所の取り組みやプロジェクトの詳細は、公式サイトでも紹介されています。地域とともに進めているさまざまな挑戦について、ぜひご覧ください。