コアビジネスの成長はITで実現できる(前編)

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写真:石黒 不二代
売り上げや利益の向上に貢献するIT化とは 2010年8月
石黒 不二代/ネットイヤーグループ株式会社 代表取締役社長 兼 CEO、中小企業IT経営力大賞審査委員
経営戦略の実現をIT化によって支援するネットイヤーグループのCEOを務める石黒不二代氏。「中小企業IT経営力大賞」審査委員の経験なども踏まえ、コスト削減ばかりではなく、売り上げや利益率の向上に貢献するIT化が増えているという石黒氏が、コアビジネスに貢献し業績向上につながるIT化について指南する。

プロフィール

1980年名古屋大学経済学部卒業。81年ブラザー工業株式会社に入社しマーケティング業務を担当。外資系企業を経て、92年米スタンフォード大学に留学。94年MBAを取得し、シリコンバレーでハイテク系コンサルティング会社を起業、日米間の技術移転などに従事。99年ネットイヤーグループに参画し、2000年から社長兼CEO。ウェブを中核に据えた、企業のマーケティング活動を支援している。
経済産業省「産業構造審議会 情報経済分科会」「CIO戦略フォーラム」委員など歴任。「日経情報ストラテジー」で『石黒不二代の「CIOは眠れない」』を、「ITmedia」で『石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」』を連載中。

主な著書

写真:主な著書

過去、ITは経営改革を実現していない

長い間にわたってITは基幹業務の効率を上げ、コスト削減に貢献してきました。企業にとって利益率を数%上げることは容易なことではありませんが、IT化によりほとんどすべての企業がこれを実現したのです。

しかも、以前は人が行っていた業務をITに置き換えることにより、人はさらに付加価値の高い業務にシフトしています。利益率に換算すれば、それ以上の見えない貢献があったはずです。

しかし、ITが実現できることはコスト削減に留まりません。バックエンドからフロントエンドに、間接業務から直接業務に、つまり、企業のコアビジネスの売り上げや利益を上げることにITは貢献できるのです。

「ITで経営改革を」は、ITがバックエンドの生産性を上げている当時から議論されてきたことですが、実際に企業のIT部門が経営を変えるに至らなかったのは、ITがコアの領域に踏み込めていなかったからです。ところが、近年、インターネットの商用化やネットワークシステムの発達により、コアビジネスのIT化は急速に現実味を帯びてきました。

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情報爆発時代にIT部門が担うべき役割

インターネットが劇的に変えた私たちの生活、その根源にあるものは情報量の増大です。総務省によれば日本における情報発信量は1996年から2006年代の間に532倍になりました。世界的に見ると、情報量は現在、100へクサバイト(テラバイト、ペタバイトの上)を超え、近い将来にはゼタバイトに達するといわれています。

この情報があふれる時代において、企業は、自らが持つ膨大な情報をうまく扱うことを期待されています。マスメディアのようになるべくたくさんの人に同じ情報を送るというやり方は大量生産・大量消費の時代に即したものでしたが、ユーザーの嗜好が多様化している現代にふさわしいマーケティングではありません。

つまり、企業のIT部門は、あふれんばかりの膨大なデータ(企業情報や商品データ・顧客データなど)をうまく処理して、ターゲットユーザーに適切な情報を届けることにより、売り上げや利益を上げる役割を担い始めたのです。

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インターネット/ITこそ最大の顧客接点

しかも、インターネットが双方向性のあるツールであること、つまり、聞けば答えてくれるツールであることが、ITを顧客接点という企業の最前線にまで押し上げています。そして、ウェブを通じた顧客接点は、商品企画・宣伝・営業・販売・カスタマーサポートというあらゆる企業活動に及んでいるのです。

ウェブを利用すれば、商品企画に顧客の声を反映することができます。「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)」のコミュニティーを通じて商品の宣伝ができます。同じく「ソーシャルメディア」とよばれるユーザー参加型のメディアを通じて口コミマーケティングを行うこともできます。ユーザーは、「アフィリエイトサービス」を通じて営業や販売活動に参加してくれます。カスタマーサポートでは、電話サービスの前にウェブ上のサービスを利用してもらうことでサポートの効率を上げることができます。

これらはすべてウェブで実現されることであり、ITの役割なのです。

企業のホームページやブログサイト、また、Eコマースサイトには、ITが欠かせません。CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)、パーソナリゼーション、レコメンデーション、コマース、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)、ビデオストリーミング……。今やサイトは静的なページを重ねるだけでなく、動的であり、それゆえ、サーバーとの連携は必須です。サイトの裏では利便性やユーザビリティーを高めるアプリケーションが数限りなく動いています。

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ユーザーの行動に沿った“ITによる仕掛け”が必要

写真:石黒 不二代

ITがコアビジネスに貢献するためには、プロダクトやシステムを作るという発想ではなく、「ユーザーの行動に従ったマーケティングの考え方」が必要になります。

通常、企業は新商品を開発すると、マスメディアなどの宣伝媒体により商品告知を行います。典型的なユーザーは、その商品をウェブで検索しようとします。

このより詳しい情報を得ようとしているユーザーを、自社サイトに呼び込むためには、検索エンジン連動型の広告出稿やバナー広告の出稿のほかに「SEO(サーチ・エンジン・オプティマイゼーション)」と呼ばれる技術が必要です。企業名や商品名が検索をするユーザーの目に触れやすいように検索サイトの上位にリストされるようにする技術です。

そして、検索を通してユーザーが自社サイトを訪問してくれたら、ここでは、情報取得や購買という目的をうまく達成してもらうために、サイト内にある膨大な情報をうまく整理して見せる情報設計という技術が必要になります。また、既述のレコメンデーションやパーソナリゼーションなどの技術がユーザー行動を助けることは言うまでもありません。

ユーザーの行動は、サイト内で終わるわけではありません。ユーザーがサイト内で行った行動にはたくさんのヒントが隠されています。ユーザーがどこからどんな検索キーワードでサイトに入ってきたのか、どのページにどのくらい滞在したのか、という情報からはユーザーの興味・関心を知ることができます。

このマーケティング情報を、営業部門にデータとしてうまく渡すことができれば、営業活動をより価値の高いレベルに上げることができます。既にある各種のデータベースとこの情報を統合すれば、顧客データベースは精度を増します。ユーザーを店舗に誘導できるかどうかもサイトの構造や情報次第です。カスタマーサポートから得られた情報を商品データベースと融合することはできないでしょうか? 既存の商品データや顧客データとの統合も必要です。データ統合の際には、データの構造や設計をネットから得られた価値あるデータと組み合わせて変えていく必要があるでしょう。データマイニングという技術もこれからはより重要性を増していきます。

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ウェブを中心に顧客との中長期的な関係をつくり出す

これら一連のユーザー視点に立ったインターネット中心のシステムの設計は、次世代マーケティングの考え方に基づいています。「Webセントリックマーケティング」という、ウェブを中心に置いた顧客と中長期的な関係をつくり出す統合型マーケティングが既存のマーケティングと大きく異なるところは、インターネットが「ストック型」であり計量可能なメディアであるという点にあります。

インターネットは、24時間365日、ユーザーの目に触れています。ゆえに、マスメディアのように一度流したら終わりという「フロー型」ではなく、継続してユーザーとの接点を持つ「ストック型」です。そこでは、アクセス数や滞在時間をはじめ、アクセスしてきた人のうち何人が商品を買ったかというコンバージョン率なども計測することができます。

つまり、マーケティングの数値目標を設定できて、目標に達しない場合は改善をするという、PDCAサイクルを回すという行為が可能になるのです。

今後、インターネット接続が可能なデバイスは増えるばかりです。PCや携帯電話はもちろんのこと、スマートフォン、ガジェット、ゲーム機、そしてTVもデジタルになります。ほとんどがウェブ上で動くアプリケーションになりますが、ユーザーは、行動様式や用途に応じてデバイスを使い分けるようになりますから、共通のコンテンツを用意してマルチデバイスで出力できるようなシステムが必要になります。

これらインターネットが変える企業のマーケティングを考えるとき、十分に認識しておくべきことは、既にマーケティングはマーケティング部や企画部門、また宣伝部や広報部だけのものではなくなっているということでしょう。それを効率良く動かす仕組み、また、マーケティング活動のための様々なアプリケーションの開発をIT部門が担っていかなくてはならないことは明らかなのです。

後編では、なぜ日本企業のIT化は間接業務支援の域を出ないのかを明らかにするとともに、クラウドが企業にもたらす真の意味や、ストック型への転換によりビジネスチャンスが拡大した事例などを紹介していきます。(2010年9月中旬公開予定)

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