叱りは人のためならず

写真:和田 アキ子
人がついてくる叱り方 2008年7月
和田 アキ子/歌手・タレント
“叱れるおとな”が少なくなったといわれる中、歯に衣着せぬ物言いで芸能界のご意見番的存在となっている和田アキ子氏。「新入社員の理想の上司ベスト10」に11年連続でランクインし、1月に出版した『おとなの叱り方』が10万部を超すベストセラーとなっている和田氏が叱り方の極意を語る。

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プロフィール

1950年大阪府生まれ。
68年『星空の孤独』で歌手デビュー。
70年『NHK紅白歌合戦』に初出場。
72年『あの鐘を鳴らすのはあなた』で日本レコード大賞最優秀歌唱賞。
85年『アッコにおまかせ!』(TBS系)の司会を担当、現在も続く長寿番組となっている。

主な著書

写真:主な著書

叱れない人は正しく褒めることもできない

最近の若い人たちは、叱るとすぐに落ち込んで会社を辞めてしまったり、逆ギレして陰口を叩いたり、叱るのが大変になったとよく聞きます。若い人たちの性格 が極端に変わったのでしょうか? もちろん時代によって変化はあるでしょうが、私はひとえに、叱られ慣れていないだけだと思います。

最近は「褒める」ことを推奨する本がたくさん出版されているそうですね。「子どもは褒めて育てろ」とか「こういう言葉で褒めろ」とか。

コミュニケーションが難しくなってきた今、叱るのと同じくらい「褒める」のも大変なんだろうと思いますが、なんだか私には「叱るとあとが怖いから、とりあえず、褒めておこう」と媚びているように思えてなりません。

私に言わせれば、きちんと叱ることができない人は、褒めることもうまくできないと思います。「叱る」と「褒める」はセット。どちらかだけが大切なんてことはないんです。

なぜなら、叱ることも褒めることも、根っこは同じ、「愛情」だからです。部下を本当に愛していて、心から成長を望んでいるのなら、ミスをしたら叱り、成果を上げたり懸命に努力していたりしたら褒めるのは、当たり前なのです。理屈なんかじゃありません。

それができないというなら、その部下に対して愛情がないか、そもそも上司としてのあなたの姿勢に問題があると言わざるを得ないでしょうね。

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叱るのは組織のためでもある

「叱る」と「褒める」。この二つは、その人本人を育てることはもちろん、強い組織をつくる上でも、絶対に大切だと思います。

私は決してホリプロの「上司」ではないのですが、お世話になった手前、電話の応対やあいさつの仕方で、よくマネージャーや受付係を叱り飛ばします。

本人に成長してほしいからです。同時に、会社にも成長してほしいからです。

人は他人と比較して自分の評価を測るものです。もし、いいかげんな仕事をしている同僚が叱られもせずに同じ給料をもらっていたら、一生懸命に働くのがバカらしくなりませんか?逆に、努力を褒められたら、もっと頑張ろうと思うはずです。そうやって部下は上司の姿勢を判断し、組織の中での自分の位置を確認しています。

叱ることをためらって、褒められるべき部下のやる気を削いではいけません。少々叱ったくらいでふてくされるような人材への対処法については、別の次元で考えた方がいいでしょう。

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叱るときは面と向かって

とはいえ、自分は愛情を持って叱っているつもりなのに、そのやり方が間違っていたために誤解を受けたり、本人が意気消沈してしまったりするのは、お互いにもったいない話です。

正直なところ、「正しい叱り方」があるのかどうか、私にも分かりません。人によって接し方は変えなければいけないでしょう。けれども、これだけは絶対に大切という決まりのようなものはあるはずです。

歌手としてそれなりに売れっ子になった私は、態度も体もデカかったからでしょう、先輩たちからよく怒鳴られたものです。ときにはシューズに落書きされたり、「男と一緒の楽屋はイヤ」などとイヤミを言われたり。それは「叱り」じゃない、「いじめ」でした。

そんなある日、ドラマにも出してもらえるようになった私は、収録に遅刻してしまい、女優の故山岡久乃さんにこっぴどく叱られたのです。「ドラマはみんなでつくるもの。誰か一人でも欠けたら成立しないの!」

その気迫に圧倒されたことも事実ですが、きちんと「叱る理由」を明らかにしながら、何よりも目をしっかりと見つめて言われたからでしょうか、不思議と反発心もなく反省している自分がいました。叱る人の愛情が自然と心に染みてきたのです。

山岡のおっかぁも、私が本当に反省していると目を見て感じたのでしょうね。その後は、食事の世話から女優としての心構えまで、娘のようにかわいがってくれました。

言葉によるコミュニケーションが少なくなってきた今、もしかしたら、真っすぐに視線を合わせて話すことは、何か特別な意味を持つようになってきているのかもしれません。ちょっとしたしぐさから相手の気持ちを察する若い人たちには、「眼力」が有効だと思います。

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あなたに人を叱る「資格」がありますか?

叱るのは本人のためであり、組織のためでもあると言いました。そして、自分のためでもあると私は思います。

叱るには「資格」が必要なのです。叱られる方は、叱る方にその資格があるか見ています。いい加減な仕事をしている上司に叱られたら、誰だって反発するでしょう。

私は自著『おとなの叱り方』で、若い世代を叱れなくなったおとなたちに、「あなたに人を叱る資格はありますか?」と問いかけたかったのです。毎日を反省し、自分を叱れる人間こそが、他人を叱れるのです。

「叱りは人のためならず」。自分の生き方を見つめ直すチャンスだと思うのです。

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