「モラル」がチームを強くする!

写真:岡田 武史
勝利するためのチームメイク 2006年12月
岡田 武史/元サッカー日本代表監督 前横浜F・マリノス監督
サッカー日本代表を初のW杯(1998年フランス大会)出場に導き、横浜F・マリノスを率いてJ1(03年、04年)連覇を果たした岡田武史氏。プロのコーチとして、選手には強いプロ意識を求める。戦術やシステムだけでなく、チームとしての「ベース」を重視する岡田氏に、チームメイクやリーダーのあり方について聞いた。

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プロフィール

1956年大阪府生まれ。府立天王寺高校時代にユース代表を経験。早稲田大学政治経済学部卒業後、古河電気工業入社。日本代表DFに選ばれ、キャプテンを務めるなど活躍。現役引退後は古河のコーチ、ドイツ留学を経てジェフユナイテッド市原のコーチに就任。97年日本代表コーチから代表監督に抜擢され、98年日本初のワールドカップ本戦出場を果たす。その後、J2・コンサドーレ札幌を率いて2年目に優勝しJ1昇格。03年、04年マリノスの監督としてJ1で連覇。監督4年目の今年8月に辞任した。

主な著書

写真:主な著書

「ルール」で縛らず、「モラル」を浸透させる

―組織(チーム)を強くするためにはどのような要素が必要だとお考えでしょうか。

チームの力を最大にするには、選手個々のいいところをうまく引き出して、一つの方向に向かって力を凝縮しなくてはなりません。そのためには選手が互いに認め合うこと、つまりチームワークが重要で、その基本はコミュニケーションなのです。

チームメイクの段階ではさらに「フレームワーク」が必要になります。言い換えるなら、常識や道徳としての「モラル」です。

横浜F・マリノスの例でお話ししましょう。1年目の春先、体力トレーニングでフィジカルコーチがランニングを指示しました。すると中心選手を含む約3分の2の選手が、走る距離を少しでも短くしようと、決められたコースの少し内側を走ったのです。おまけに、指示どおりのコースを走る選手を「点数稼ぎ」のように見る雰囲気すらありました。しかし、シーズンが進み夏になると、内側を走る選手は誰一人いなくなりました。これが「モラル」なのです。

モラルのあるチームでは、集中力を欠いたパスなどをすると、監督やコーチが注意する前に、選手同士で「何だ、今のパスは!ここへ出せ!」などと声をかけ合い、互いに切磋琢磨するようになります。ルールに縛られるのではなく、自然にできるのがモラルです。その雰囲気づくりが監督やコーチの仕事でもあるのです。

この「モラル」に「コミュニケーション」と「プロフェッショナリズム」が加わるとチームの「ベース」が形成されます。さらに目標とテーマを設定し、チームを強化していくのです。

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自分の力を知り、相手の力を知る

―限られた戦力で強い相手に挑むには、どのような工夫が必要でしょうか。

サッカーの場合、日本代表やJ1、J2など、様々なカテゴリーがあります。質の異なるチームや選手といろいろな次元で戦うわけです。しかし、どのような戦いも根本は同じであると私は考えています。つまり、自分たちの力を把握し、相手の力を把握すれば、戦い方はおのずと決まるのです。まさに「彼を知り己を知れば百戦殆からず」という孫子の兵法そのものです。

企業活動も、自社やライバル会社の状況、業界の成長度合いなど、様々な情報を集め、戦略を考えた上で勝負する、という点は同じではないでしょうか。

監督という仕事は立ち止まったらおしまいです。常に向上心を持ってトライしなくてはなりません。自分の理想とするサッカーを追求したいという夢もあります。答えのない世界で、常に矛盾を抱えながら決断を下すのが「監督」なのかもしれません。

ただ、成長が鈍ったり、組織(チーム)力が落ちたりしたときにはブレーキを踏む決断も必要です。冷静に現実を見る勇気といってもいいでしょう。企業経営者には、サッカーチームの監督とは比べものにならないくらい多くの人の生活がかかっています。失敗してしまってから、「申し訳ありません。責任を取ります」では済まないのです。

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チームの状況を見渡す「観察力」

―個人の特長を生かして、組織(チーム)をバランス良く保つコツはあるでしょうか。

選手それぞれの特長や役割というものは、あまり早く決め付けない方がいいでしょう。若い選手の場合、弱い部分をケアしながらいい部分を伸ばしてやると、弱い部分も次第に伸びるからです。試合もこれと同様で、常に「いい部分」から入れるように私は注意を払います。

大事な試合の前、私はロッカールームで選手に「なぜ自分がプロとして生き、このチームで試合に出るのかをもう一度よく考えてほしい」と言ってからピッチに送り出します。自分が何をすべきかを改めて考えさせるためです。

例えば、元日本代表のDF・中澤(佑二)選手の持ち味は「相手を止めること」であって、「いいパスを出すこと」ではありません。しっかりとしたディフェンスから試合に入り、相手を2、3回止めれば波に乗ります。その結果、素晴らしいパスを通したりもするのです。

チームバランスの「正解」は一つではありません。しかし打つべき手はいくらでもあります。大事なのは、問題に対して打った手が適切か否かです。まずは選手やチームの状況を注意深く見渡せる「観察力」がチームマネジメントにとっての鍵となるのです。

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