国立大学法人九州大学(福岡県福岡市東区、総長:有川節夫、以下九州大学)と、株式会社宝塚クリエイティブアーツ(兵庫県宝塚市栄町、代表取締役社長:藤井敬三、以下宝塚クリエイティブアーツ)、角川シネプレックス株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:松永健次、以下角川シネプレックス)、および西日本電信電話株式会社(大阪府大阪市中央区、代表取締役社長:大竹伸一、以下NTT西日本)は、本日、通信ネットワークを活用したライブ配信における高臨場感環境及び劇場音響・映像設計に関する研究開発協定を締結し、共同研究を開始いたします。
本研究開発の取り組みの一環として、平成22年9月12日(日)に東京宝塚劇場(東京都千代田区)で公演される「宝塚歌劇 雪組公演 東京宝塚劇場千秋楽」を、シネプレックス幕張(千葉県千葉市)へ、高臨場感ライブ配信をいたします。
|
1.本協定締結の背景と目的
現在、ライブ中継に関するビジネスは、集客力が見込まれ、さまざまな場所で実施されています。また、映画同様、ライブ中継も3D化が積極的に行われ、映画館だけでなく、公共ホール等文化施設で臨場感のある映像を身近に楽しめるようになってきました。
そのような中、映像の大容量化に伴う安全・効率的な中継方法や、あたかも中継元の会場にいるような、音につつまれた臨場感にあふれた視聴に、大きな期待が寄せられています。
また、都市部では多くの文化的行事が実施されるが、地方ではその機会が少ないという地域格差についても、通信ネットワークを活用したライブ中継によって解消できないかと期待されています。
このような中、地域の活性化に向け、公共ホール等文化施設の活用を目指し、さまざまな施設の音響特性の解析並びに配信技術について研究を進めてきた九州大学と、通信ネットワークを活用した映像サービスの更なる展開・質的向上を目指し、公共ホール・映画館等でのビジネス拡大や音響特性の改善に向けた検討を進めてきた、宝塚クリエイティブアーツ、角川シネプレックス及びNTT西日本が、各社の強みを軸に協力し、ライブ配信の更なる品質向上と活用範囲の拡大を目指すため、本協定の締結、及び共同研究の開始に至りました。
本研究開発は、NTT西日本において、九州大学と平成16年7月27日に締結した連携契約※1の下で実施する、九州大学と複数の企業とによる共同研究です。 |
|
|
2.本協定の概要
本研究開発では、通信ネットワークを活用した高臨場感ライブ配信に関する技術評価と問題・課題の研究、事業性の検討を行ないます(主な検証項目は以下のとおりです)。 |
|
(1)主な検証項目
<音場を可視化することによる音声品質の検証>
九州大学が持つ音響計測に関する技術を用いて、これまで見えにくかった音場の特徴を可視化します。これにより、ビジュアル的に音響的な特徴を把握できるようになります(別紙1を参照ください)。具体的には、配信先の空間を360度パノラマ写真化し、そのパノラマ空間に、場所による音の跳ね返り度合い等を可視化し反映させることで、再生音場に応じた音声品質の検証を行います。
<効率的なデータ圧縮による、ネットワーク帯域の有効活用の検証>
これまでの技術では、音声を圧縮するとひずみが生じるため、劣化のない伝送は困難でしたが、ロスレス音響符号化装置※2を採用し、配信元で収音されたそのままの音を劣化なく圧縮して配信先に伝送し、配信先における高臨場感環境の実現を検証します。また、ロスレス符号化の圧縮率は入力される音声信号の特性によって変化するため、音声を圧縮して空いた帯域を、映像帯域に動的に割り振ることで、通信ネットワーク帯域の有効活用についても検証します。
<映像配信ソフトウエア※3による配信業務の効率化と、配信のセキュリティ、信頼性向上の検証>
これまでは、ライブ中継の際、配信元や配信先が都度異なるため、映像配信のオペレーションが複雑となっていました。映像配信用ソフトウェア※3では、配信元・配信先を一元的に管理し、配信オペレーションをグラフィカルに直感的に操作出来るようになります。本ライブ配信において、効率的な配信業務・管理が可能となることを検証します。また本ソフトウェアでは、情報の欠落等が配信時に起こるような環境においても、コンテンツデータの暗号化やエラー訂正により、映像を途切れることなく再生することが可能で、配信のセキュリティと信頼性の向上を図ることができるかを検証します。
また、音声・映像に関するユーザ評価分析や市場性調査・ビジネスモデルの検証による事業性の評価も行い、通信ネットワークを活用したライブ中継市場の更なる発展を図ります。 |
| |
※2 |
ロスレス音響符号化装置
日本電信電話株式会社が国際標準化に貢献したMPEG-4 Audio Lossless Coding (ALS) に準拠の伝送装置です。 |
※3 |
映像配信用ソフトウェア
エラー訂正技術には、高速大容量の映像配信に適したLDGM(Low Density Generator Matrix)符号を日本電信電話株式会社で特性改善した技術を利用しています。 |
|
|
(2)本研究開発期間
平成22年9月3日(金)〜平成23年3月31日(木) |
|
(3)本研究開発に関わる各社の役割
|
実施者 |
主な役割 |
九州大学 |
高臨場感音響技術(音取得手法、再生環境構築手法)の提供測定機材の提供 |
宝塚クリエイティブアーツ |
配信コンテンツの提供 |
角川シネプレックス |
配信先劇場環境の提供及び配信コンテンツの提供 |
NTT西日本 |
データ伝送技術および機材(研究機材、測定機材含む)の提供
試験研究用ネットワークの技術提供
高臨場感高精細映像技術、多チャンネル音声配信・再生技術(5.1chロスレス音響伝送技術を含む)の提供
映像配信用ソフトウェアの提供 |
|
|
|
(4)本研究開発におけるフィールドワーク
本研究開発の取り組みの一環として、平成22年9月12日(日)公演の「宝塚歌劇 雪組公演 東京宝塚劇場千秋楽」(別紙2)を、シネプレックス幕張へ高臨場感ライブ配信いたします。 |
| |
○公演作品 |
:
・
・
・
|
「宝塚歌劇 雪組公演 東京宝塚劇場千秋楽」
ミュージカル『ロジェ』
ショー『ロック・オン!』
水 夏希(みず なつき)サヨナラショー |
○公演日程 |
: |
平成22年9月12日(日) |
○開演時間 |
: |
13:30 |
○配信元会場 |
: |
東京宝塚劇場
(東京都千代田区有楽町1-1-3) |
○高臨場感ライブ配信先会場 |
: |
シネプレックス幕張
(千葉県千葉市美浜区ひび野1-8メッセ・アミューズ・モール内) |
(高臨場感ライブ配信のシステム構成イメージは別紙3を参照ください) |
|
また、本研究開発の取り組みの中で、公共ホール等文化施設への高臨場感ライブ配信実施についても検討していきます。 |
3.今後の予定
今後については、一般の公共ホールや映画館等文化施設の音響映像再生設備や建築音響特性等を踏まえたコンテンツのネットワーク配信時における高臨場感環境の実現についての技術を確立させ、公共ホール等文化施設の活性化による地域への貢献に向けた取り組みを進めてまいります。
(高臨場感ライブ配信の広がりについては別紙4をご参照ください) |