武庫川女子大学さまの事例概要

書籍のデジタル化から電子教科書の活用へ
学びの可能性を拓く

武庫川女子大学さまは、2012年に専門書の電子書籍を導入されるも、利用は限られていました。
一方で、英語の多読用書籍の電子版は、留学から帰国した学生の英語力の維持・向上に役立つと好評で、利用者が増加しました。
2017年から小説・料理本・就活情報など、手軽に読めるコンテンツを大幅に増やした「MWU電子図書館」を開設。
この時期、大学全体でも本格的にICT化が推進されはじめました。
2020年には経営学部と司書課程において電子教科書の試験導入を開始。
続く2021年、2022年、コロナ禍でのオンライン授業への移行に伴い、多くの学部で電子教科書が採用されています。

電子教科書の導入により
授業の質と学生の利便性がともに向上

角さま: 多くの学部で電子教科書の導入が実現したのは、新しい方法を試してみたいという教員の方々のチャレンジのおかげでした。
授業で使う教科書を電子教科書として利用する際、授業での教え方を変更する必要があるかもしれないと思われた教員もおり、一定のハードルがありましたが、これまでの講義スタイルをある程度維持しながら、上手に電子教科書のメリットを生かした授業を展開されている印象を持っています。
具体的には、コメント追加、強調箇所の表示、文章間のリンク機能などの便利な機能を活用することで、授業の質が向上したというポジティブな声が多く聞こえてきます。
その一方、電子教科書を用いた授業の実施を思案している教員も多く、利用を広げていくためには先行して活用している教員方にレクチャー会を開いていただくなどの工夫が必要だと感じています。
また、紙の教科書の在庫に関して、実際、学生が紙の教科書を購入しようとした際に、在庫がなくなり、学生の一部が必要なタイミングで購入できず、受講生全員が手に入れるまでミニテストが実施できないということがありました。
その点、電子教科書の場合、在庫を気にすることなく、申し込めばすぐに利用することができます。

角さま: 学生の様子を見ていると、普段からコミックや雑誌などのデジタルコンテンツを利用していることもあり、電子教科書に対する抵抗感はないようです。
電子教科書なら重い教科書を何冊も持ち歩く必要がなくなります。
さらにメリットを言えば、本学ではシラバスと電子教科書の連携を図っています。
履修登録期間中だけにはなりますが、シラバスから電子教科書にリンクを張り、試読^※できるようにしています。
科目選択の参考になり、どんなことを学べるのか購入前に知ることができます。
課題としては、本学は2021年度からノートPC必携としていますが、スマホで電子教科書を閲覧している学生も少なからずいます。
通学中など隙間時間でスマホを用いてテキストの振り返りができるのは良い点なのですが、スマホで見ると文字が小さくなってしまい、読みにくくなることがあるという声が上がっていました。

※ 教科書の試読は出版社の協力のもと、一部教科書でご利用ができるサービスです。

武庫川女子大学
図書課　課長
角　清孝さま

いつでもどこでも学べる環境を
学生が自ら未来を切り拓くための力に

角さま: デジタル化が進む中で、対面授業の良いところは残しつつ、電子教科書の利用などデジタルとアナログのバランスを上手に取り、教育の質を高めていくことが重要です。
もう一つの課題として、せっかく教員が電子教科書を導入する意向を持ったとしても、出版社が電子版を提供していなければ、採用することができないということがあります。
電子教科書が今後さらに普及していくためには、紙だけでなく電子版での発行が増えることが期待されます。
社会の動きに目を向けてみますと、令和6年度から、小中学校で英語のデジタル教科書が導入される予定と聞いています。
数年後にはデジタル教科書を使って勉強した児童・生徒たちが大学へ入学してきます。
その際、紙の教科書の授業ばかりだと違和感を持つかもしれません。

角さま: 本学は教員養成において長い実績があり、多くの教員を輩出してきました。
現在も教育学部を中心に、教員をめざす学生が多くいます。
教育実習などの教育現場で戸惑うことないよう、電子教科書に慣れておくことが必要だと考えています。
学生には在学中に、教える側に立って電子教科書を使ってみることにも積極的にチャレンジしてほしいです。
そのためにも、大学での電子教科書利用を促進していければと考えています。
電子教科書のさらなる魅力として、学習履歴がデータとして蓄積できる点が挙げられます。
このデータは、将来的には学生や教員にフィードバックして活用される可能性がありますが、有効に利用するためには、電子教科書で学習する人の母数やデータの量を増やす必要があり、これから取り組むべき課題だと考えています。
本学が掲げるビジョンに「自らの意志と行動力で可能性を拡げ、生涯を切り拓いていく」という一節があります。
電子教科書や図書館の電子コンテンツ等を活用すれば、学生の学びたいという意欲さえあれば、いつでもどこでも学習できる環境が整いつつあります。
多様化・複雑化する社会を生き抜くために、読むことを通じて視野を広げたり専門性を高めたりして、自らの未来を切り拓いていっていただきたいと思っています。

図書館内にはインターネット環境が整ったハイブリッドな読書空間ライブラリーカフェを併設している。

お客さま情報

1939年、校祖・公江喜市郎が「女子教育なしに社会の発展はない」という強い信念のもとに創設した武庫川学院を前身とし、1949年に開学。
「高い知性と善美な情操と高雅な徳性とを兼ね具えた有為な女性を育成する」という立学の精神に則り、理系から文系、芸術、スポーツまでをカバーする12学部19学科を擁し、約1万人の学生が集う国内最大規模の女子総合大学です。
2039年の学院創立100周年に向け「一生を描ききる女性力を。」というビジョンを掲げ、自らの意志と行動力で可能性を拡げ、生涯を切り拓いていく女性の育成をめざしています。