1.当期の事業の概況


 当事業年度における世界経済は、欧州の政府債務危機に伴い先進国経済に不安定さが増すとともに、新興国経済の成長にも鈍化の動きがみられ、総じて景気の回復が減速傾向となりました。わが国経済は、東日本大震災後の厳しい状況から需要・供給両面で回復が進みましたが、世界経済の減速や、長引く円高、タイの洪水被害などの影響により、持ち直しの動きは緩やかなものになりました。
 情報通信は、ICTが高度に利活用されるユビキタス※1ネットワーク社会の形成に向け、社会経済活動の効率化・活性化、国民生活の利便性向上等に大きく貢献することが期待されており、官民一体となってその実現に取り組んでいるところです。また、情報通信市場は、ブロードバンド化・グローバル化の進展、スマートフォンやタブレット端末等の普及により、ニーズの高度化・多様化が更に進み、映像・音楽配信等のプラットホーム型のサービスやクラウドサービスが拡大するなど、市場の構造変化が進展しており、地域通信市場においては、光アクセスやCATVを利用したブロードバンドサービスの競争が活発に展開されるなか、IP化に伴う固定と移動、通信と放送、更には、多様な無線端末の活用によるサービスの融合が進展するなど、大きく変化してきています。
 当社は、このような厳しくかつ激変する事業環境のもと、お客様のご期待に沿い、真に世の中のお役に立てる「お客様志向の企業グループ」として、良質かつ安定的なユニバーサルサービスの提供・維持に努めるとともに、平成20年5月に日本電信電話株式会社が策定したNTTグループ中期経営戦略「サービス創造グループを目指して」の実現に向け、NGN※2の構築とそのネットワークを活用した新しいサービス・商品提供を通じて、お客様のニーズにあった安心・安全で信頼性の高い魅力的なブロードバンド・ユビキタスサービスの普及・拡大に積極的に努めてきました。


〈1〉光・IP系サービス推進に向けた取り組み
 NTTグループ中期経営戦略「サービス創造グループを目指して」の具現化に向け、お客様が“より快適で安心・安全”に、“いつでもどこでも何にでも”つながるブロードバンド・ユビキタスネットワーク環境の実現を目指して取り組んでいくなか、サービス提供開始から10周年を迎えた「フレッツ光」※3は、契約数700万回線を突破しました。「フレッツ光」は様々な用途に利用の場を広げながら、暮らしやビジネスを支えるサービスとして個人のお客様から企業のお客様まで幅広いお客様からご支持をいただき、発展・成長を遂げてまいりました。
 「フレッツ 光ネクスト」においては、IPv4のアドレス枯渇問題※4に対応するために、IPv6アドレス※5によるインターネット(IPv6 PPPoE及びIPv6 IPoE)接続機能※6を提供開始したほか、ひかり電話に関しても、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社が提供する「テレドーム」への発信を、可能とするなどサービス拡充に取り組みました。
 「フレッツ光」の利用拡大に向けて、月額利用料2,940円から始められ、いくらお使いいただいても月額利用料の上限料金は5,880円となる二段階の定額料金でご利用いただける「フレッツ 光ライト」の提供を開始したほか、「フレッツ・テレビ」※7の更なる提供エリア拡大、株式会社愛媛CATV様との協業による「愛媛CATV&フレッツ光」の提供開始など、更なる映像系サービスの拡充に取り組みました。
 また、スマートフォン・タブレット端末等Wi−Fi端末の急速な増加による外出先でのWi−Fi利用ニーズの高まりに対応し、お客様の利便性向上をより一層図るため、公衆無線LANサービス「フレッツ・スポット」の月額利用料の値下げを行うとともに、「CLUB NTT−West」※8のポイント交換特典による実質無料での利用提供並びにスマートフォン・タブレット端末等の幅広い端末から利用可能な「Web認証方式」※9に対応したエリア拡大を平成24年2月から開始いたしました。
 そのほか、「家中のデジタル機器をネットワークにつなぐことで、毎日の暮らしや情報の共有がより簡単・便利・快適に。更に、今まで個人で楽しんでいたことを、家族や離れた家同士など、みんなで楽しめるようにする」という構想である「家デジ(家まるごとデジタル化)」をサポートするサービスとして、月々定額料金をお支払いいただくことでお持ちのパソコンやテレビの故障に対し、機器購入時でなくても機器の購入日から最長5年間の延長補償をお申し込みいただける「ひかり機器保証」サービスを提供開始いたしました。
 加えて、「家デジ」事業を推進するにあたって重要となるサポートサービスについては、「家デジ」の最新サービスや機器をお客様目線で体感できる環境を用意するとともに技術力、顧客対応力の育成を目的としてNTT西日本研修センタ内に研修環境を構築し、配線方法や新サービス、機器の研修を開始しました。
 更に、離れた2拠点を「演奏環境ソリューション」の技術を活用し、通信カラオケ機「LIVE DAM」で接続をすることにより、遠隔カラオケデュエットを実現する検証を、株式会社第一興商様、ヤマハ株式会社様と共に実施しました。


〈2〉ソリューションビジネスの取り組み
 大規模並びに中小事業所様向けの取り組みとしては、クラウドビジネスを西日本グループ全体の成長戦略として本格化させるためのプロジェクトを4月1日法人営業本部に設置しました。
 クラウドサービス拡充の取り組みとしては、自治体や医療・保健機関の団体(コミュニティー)向けに、「Bizひかりクラウド」のサービスラインアップの拡充を図り、テレビ電話を活用した遠隔地間での健康相談が可能なクラウド型遠隔健康相談サービス「Bizひかりクラウド コミュニティー 遠隔健康相談」を、また、教育委員会及び小中学校の教職員向けに、サーバー等のIT資産を所有することなく、ネットワークを経由して校務業務を行うことができるクラウド型校務支援サービスを提供開始いたしました。
 自治体様と連携した取り組みとしては、熊本県・市と「ICTの利活用による地域活性化等に関する包括連携協定」の締結を契機としたスマートひかりタウン熊本プロジェクトを立ち上げ、行政・地元企業・住民の実証事業参画を前提にタウン型クラウドやサービスの検討を開始しました。
 その他、事業所様向けサービス拡充の取り組みとしては、オフィス内の情報機器等におけるお客様サポート(故障、トラブル等)のワンストップ※10化に向けた相互協力体制の構築(サポート連携)について、キヤノンマーケティングジャパン株式会社様、リコージャパン株式会社様、東芝テック株式会社様、アライドテレシス株式会社様とも新たに連携を開始するなど、更なるサポートサービスの充実に向けて取り組みました。


〈3〉事業運営体制の状況等
 事業運営体制については、電気通信事業法等の改正(平成23年11月30日施行)に伴い、公正競争確保に向けた体制の整備等を実施しました。
 また、東日本大震災の教訓を踏まえ、東海地震、東南海・南海地震等の連動地震の発生を想定した防災訓練を実施するとともに、設備事故の未然防止に向け、引込線垂下りによる第三者事故の増加に対する対策として、点検エリア選定にあたっての優先条件を決定し、「計画的設備点検」に取り組みました。
 その他、お客様のお問い合わせに対して専門のオペレーターによる様々なサポートを提供することでご好評をいただいている、「リモートサポートサービス」の運用強化及び機能強化の取り組みとして、リモートサポートサービスの即日受付を開始しました。
 黒字経営の維持に向けたコストコントロールの徹底については、光サービス工事の更なる効率化として、マンション系(VDSL方式)オーダーの無派遣工事を推進し、廃止工事については約9割超、開通工事についても8割を超える工事を無派遣で実施しました。


〈4〉CSRの推進に向けた取り組み
 情報通信産業の責任ある担い手として、最高のサービスと信頼を提供し、“コミュニケーション”を通じて、人と社会と地球がつながる安心・安全で豊かな社会の実現に貢献していくことを謳った、「NTTグループCSR憲章」(平成18年6月制定)を基本に、「コンプライアンスの徹底」「安心・安全な社会づくり」「事業を通じた価値創造」の3つをCSR活動の柱に掲げるとともに、「視える化」指標を策定し、社員一人ひとりが法令等の遵守、安心・安全な通信サービスの提供、環境負荷軽減などのCSR活動に取り組みました。
 特に「コンプライアンスの徹底」については、NTT西日本グループの信頼を揺るがすリスクの高い5項目(「業務上の不正」「飲酒運転」「情報セキュリティ事故」「パワーハラスメント」「人権の尊重」)の発生防止等の全社的な取り組みの推進を行いました。
 また、平成22年11月に制定された「NTTグループ環境ビジョン(THE GREEN VISION 2020)」に基づく、環境グランドデザイン(新たな自主行動計画目標)の達成に向けて、電力使用量削減、紙使用量削減、廃棄物削減に取り組んだほか、環境負荷低減に役立つICTソリューションを活用した新しいワークスタイルを実践・提案するモデルオフィスを、大阪・名古屋・福岡の3拠点に構築しました。
 これらCSRの取り組みについては、NTTグループCSR憲章の理念を浸透させつつ、グループ一体となったCSR活動の一層の推進や環境経営の強化に努めるとともに、「NTT西日本グループCSR報告書2011」を発行し、ステークホルダーへの情報開示にも積極的に取り組みました。
 更に、平成23年3月に発生した東日本大震災では、発災直後からグループ連携のもと、停電地域に対する移動電源車を活用した通信設備への給電支援、ポータブル衛星機器を利用した特設公衆電話の開設、自治体庁舎をはじめとした重要機関に対する通信の確保、NTT東日本からの要請による釜石市や大船渡市など岩手県南部を中心とした地域の設備復旧支援活動などに取り組み、延べ約2,000名の社員が、復旧・支援活動を行いました。
 加えて、近畿・東海地方に記録的な集中豪雨をもたらし、NTT西日本の通信設備に大きな被害を与えた台風12号・15号では、自治体や自衛隊等との緊密な連携とグループ各社の社員の昼夜を問わない復旧活動により、通信サービスの早期復旧に取り組みました。
 また、東日本大震災に端を発した電力不足への対応として、通信ビル・オフィスビル双方で最大限の電力削減施策を実施しました。


〈5〉営業収益等
 以上の取り組みの結果、営業収益は1兆6,763億円(前年同期比4.6%減)、営業利益は370億円(前年同期比25.4%減)、経常利益は423億円(前年同期比32.8%減)、当期純利益は204億円(前年同期比58.2%減)となりました。


※1: インターネットなどの情報ネットワークに、いつでも、どこからでもアクセスできる環境のこと。「遍在する。同時に、いたるところに、存在する。」という意味のラテン語を語源としている。
※2: Next Generation Networkの略。次世代ネットワーク。
※3: 「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ・光プレミアム」及び「Bフレッツ」の総称。
※4: 近年のインターネット利用者の増加によって、現在のインターネット標準プロトコルであるIPv4アドレスが枯渇し、お客様に割り当てるIPアドレスが無くなることで、新規のお客様がインターネットに接続できなくなる問題。
※5: 「Internet Protocol Version6」の略であり、現行のインターネットの標準プロトコルであるIPv4の次期バージョンのプロトコル。
※6: PPPoE及びIPoEプロトコルを用いて、お客様宅内に新たに設置する対応アダプターからインターネットサービスプロバイダー様に接続するNTT西日本設備までの通信を行う方式
※7: NTT西日本の提供する電気通信サービス「フレッツ 光ネクスト」または「フレッツ・光プレミアム」、「フレッツ・テレビ伝送サービス」及び株式会社オプティキャストが提供する放送サービス「オプティキャスト施設利用サービス」のご契約により、地上放送(デジタル/アナログ)とBS放送(デジタル/アナログ)等が受信できるようになるサービス。
※8: インターネットの活用支援情報の受信やネットのトラブルにメールと電話でお応えするサポートの利用に加え、毎月ポイントを貯めて特典との交換もできるNTT西日本の会員制プログラム(入会金・年会費無料)。
※9: NTT西日本が発行するID(フレッツ・スポット認証ID)とパスワード(フレッツ・スポット認証PW)を使って認証する方式で、一般的なWi−Fi対応機器でご利用でき、無線規格「IEEE802.11a/b/g」に対応。
※10: 様々な手続きを1ヶ所で一括して処理すること。


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