1.当期の事業の概況


 当事業年度における我が国の経済は、前半は、企業収益が堅調に推移し、個人消費も持ち直しがみられるなど、景気は緩やかに拡大しましたが、後半には、企業の設備投資に慎重さがみられ、雇用情勢にも厳しさが残るなど、景気回復に慎重な見方が広がって参りました。
 情報通信分野におきましては、「u−Japan政策」「IT新改革戦略」更には「次世代ブロードバンド戦略2010」が目指すブロードバンドによるユビキタスネットワーク社会の形成に向け、次世代ネットワーク(NGN)の構築に関する取り組みが加速するとともに、IP化に伴う固定と移動、通信と放送等サービスの融合、並びに映像・音楽の配信やSNS等のプラットホーム型サービスの拡大などにより、市場の多様化が進展しております。
 著しい成長を続けるブロードバンド市場におきましては、契約数が既に2,800万を上回り、世帯普及率も54.7%に達するなど、世界有数の水準となり、とりわけ光アクセスサービスにつきましては、利用機会の増大や各事業者の積極的なサービス展開などにより、契約数は1,100万を上回り、ブロードバンドサービスの本命として普及・拡大が更に進展しております。
 一方、固定電話市場におきましては、携帯電話の利用によるトラヒックの減少、及び光IP電話サービスへの急激な移行拡大などにより、市場全体の縮退が続き、取り巻く事業環境は従来にも増して厳しい状況となっております。
 このように極めて厳しい事業環境の中で、当社は、良質かつ安定的なユニバーサルサービスの提供に努めるとともに、「NTTグループ中期経営戦略」並びに「NTT西日本グループ中期ヴィジョン」の実現に向け、「固定電話から光・IPへの収益構造の早期転換」を目指し、光アクセスサービスの充実・高機能化等ブロードバンドビジネスの展開、地域の活性化や発展に貢献するソリューションビジネスの展開、より快適で安心・安全な次世代ネットワークの構築・提供、高度IP技術者の育成など、具体的には以下の取り組みを積極的に実施して参りました。


<1>ブロードバンドビジネスの展開
 “いつでもどこでも何でもつながる”ブロードバンドによるユビキタスネットワーク社会の実現を目指し、平成13年8月から光アクセスサービス「Bフレッツ」の本格的な提供を開始し、その後も多様化するお客様ニーズにお応えするため、IPv6対応による高機能化を図り、平成17年3月から「フレッツ・光プレミアム」の提供を開始するなど、サービスの拡充に取り組むとともに、お客様サービスの向上や新たな利用シーンの創出など、光アクセスサービスの普及・拡大に向けた取り組みを実施して参りました。
 当事業年度におきましては、集合住宅の形態や設備状況等により光アクセスサービスをご利用いただけなかったお客様からのご要望にお応えするため、小規模集合住宅向けの「フレッツ・光プレミアム マンションタイプ ミニ」を昨年9月から提供開始いたしました。
 また、更なるお客様サービスの向上に向け、「光通信サービス即決管理システム」によるリードタイム(申し込みから開通までの期間)短縮などを実施して参りましたが、より一層の利便性向上を目的として、フレッツ公式サイト(http://flets-w.com)から、お客様ご自身が希望工事日を決められる「Web即決」を昨年7月から開始いたしました。
 一方で、ご家庭でのインターネットの利用形態は、年齢・性別を問わず生活の様々なシーンで手軽に利用するスタイルへと変わりつつある中、ブロードバンドを「より楽しく」「より簡単に」利用したいというニーズが高まってきており、TVゲーム機「Wii(R)」と光アクセスサービス「フレッツ光*1」の接続推進に向けた任天堂(株)様との協業を昨年11月から開始し、家庭内における新しいエンターテインメントの創出に取り組んで参りました。
 更に、パソコンやインターネットに不慣れなお客様にも安心して快適なブロードバンドライフを満喫していただけるように、(株)エヌ・ティ・ティ ネオメイトにおいて、インターネットやメールの設定方法や使い方、プリンター等周辺機器の接続方法などを24時間365日遠隔サポートする「まかせて安心サービス」を昨年10月から提供開始いたしました。
 こうした取り組みの結果、「フレッツ光」の西日本エリアにおける契約数が、昨年7月に300万回線を突破し、「フレッツ・ADSL」を含めたNTT西日本のブロードバンドサービスの当事業年度末の契約数は606万回線となりました。
*1: NTT西日本が提供する光アクセスサービス「フレッツ 光ネクスト」「フレッツ・光プレミアム」「Bフレッツ」の総称


<2>ソリューションビジネスの展開
 企業における昨今の市場トレンドを踏まえたBCP*2や内部統制対応などのソリューションメニューの積極的な展開に加え、当事業年度におきましては、企業や自治体等において、個人情報の漏洩などのセキュリティ事故が発生した際に、原因分析や解決策の提案を行う「情報セキュリティインシデント対応サービス」を昨年8月から提供開始するなど、サービスラインナップの充実に取り組んで参りました。
 また、「u−Japan政策」の実現を目的とした国や地方自治体における取り組みへの支援として、当社のノウハウ・実績を活かした情報ハイウェイや地域イントラネットの構築、離島や山間部等におけるデジタル・ディバイドの解消に向けた地域情報化計画の支援、更には行政の効率化に向けた自治体アウトソーシングビジネスの提案などに取り組んで参りました。
 加えて、IT技術に関するスペシャリストの早期育成や地域密着型事業運営によるお客様ニーズへの即応体制の確立等を目的として、(株)NTT西日本−関西アイティメイト、並びに(株)NTT西日本−北陸アイティメイトを設立し、前年度に設立した会社とあわせ西日本の全エリア(6ブロック)へ展開*3いたしました。
 更に、お客様サービスの一層の向上、並びに光アクセスサービスの普及・拡大に向け、これまでの大規模・中堅企業のお客様を対象とした法人営業体制に加え、本社内に「オフィス営業部」を設置するとともに、営業担当者の名称を「カスタマー・アテンダント」と定め、今後益々重要性が高まる中小・SOHOのお客様に対する提案力の強化に取り組んで参りました。
*2: Business Continuity Plan:企業が緊急時における事業継続のための方法や手段など決めておく計画
*3: NTT西日本各地域会社の100%出資により設立された、(株)NTT西日本−東海アイティメイト(H18.3:設立、H19.7:(株)アイティメイト東海より商号変更)、(株)NTT西日本−中国アイティメイト、(株)NTT西日本−四国アイティメイト、(株)NTT西日本−九州アイティメイト(以上、H19.3:設立)、(株)NTT西日本−関西アイティメイト(H19.9:設立)、(株)NTT西日本−北陸アイティメイト(H19.12:設立)の6社


<3>NGNのサービス開始に向けた取り組み
 ブロードバンドをより快適に安心してご利用いただくことを目的とした次世代ネットワーク(NGN)の構築に向け、平成18年12月に開始したフィールドトライアルを昨年4月から一般のお客様に拡大し、また幅広い分野の事業者様との連携を図りつつ、お客様ニーズの把握と技術確認に取り組んで参りました。
 トライアルショールーム「NOTE(梅田)*4」におきましては、NGNの概要をご説明するとともに、ご家庭やビジネスでの利用シーンを想定し、高精細映像とステレオ音声による「ハイビジョンIPテレビ電話」、発信者ID識別によりプライバシーを保護した「見守りサービス」、ハイビジョン映像による「テレビ会議システム」など、NGNを使ったアプリケーションや端末の展示を行い、約5,800名の方々にご来場いただくとともに、約8割の方々から『NGNによって生活やビジネスが変化する』とのお声を頂戴いたしました。
 これらのトライアル結果を踏まえ、本年3月より大阪市の一部エリアで商用サービス「フレッツ 光ネクスト」等の提供を開始し、既存の光アクセスサービス、光IP電話サービス、VPNサービス、イーサネットサービスに相当する基本サービスに加え、よりクリアな音質での通話が可能な「高音質電話」や滑らかで自然な動きの映像通信が可能な「テレビ電話」、更にはVOD*5等のコンテンツ配信サービスを高品質かつ安定的に配信・視聴することが可能な「品質確保機能(QoS*6)」など、新たなサービスの提供も開始いたしました。
 今後も、引き続き提供エリアの拡大と円滑なサービス提供に努めるとともに、広帯域・高品質・高セキュリティ等のNGNの特長を活かした利便性の高い新サービスの開発、並びにNGNのオープン性を活かした様々な事業者様との幅広い連携・協業による独創性の高いサービスの創出に努めるなど、NGNの魅力を更に向上させるサービスラインナップの充実に取り組んで参ります。
*4: 「NGN OPEN TRIAL EXHIBITION」の略で、平成18年12月20日から平成19年12月17日までの約1年、東京(大手町)と大阪(梅田)にオープンした完全予約制のショールーム
*5: Video On Demand:ユーザの見たい時に様々な映像コンテンツを配信するシステム
*6: Quality of Service:通信の品質を確保するために、ルータ等に実装される技術


<4>高度IP技術者の育成に向けた取り組み
 技術革新や市場環境の変化が続く中、お客様ニーズへ的確に対応するため、ネットワーク系からアクセス系、宅内系に至る業務分野において、サービス品質の向上に向けた高度IP技術者の育成に取り組んで参りました。
 具体的には、光アクセス技術のプロとして、計画〜構築〜保守までの一連の業務を掌握し、テクニカルスキルのみならず、応用力、直感力が働く技術者の育成を目的とした「光プロフェッショナルカレッジ」を昨年4月に設立するとともに、家庭内におけるIT環境の充実に関する要望に、ワンストップでお応えできる技術者の育成を目的とした「情報端末プロフェッショナルコース」を昨年8月に開講いたしました。
 更に、今後のサービス基盤となるNGNのサービスオペレーション業務に精通した技術者の育成、及び従来の電話系サービスの安定的維持に向けた技能向上を目的とした「テクノカレッジ」を昨年7月からNTT西日本エリアの6ブロックに順次開校いたしました。
 今後も、本取り組み等を継続的に実施することにより、高度IP技術者の育成に取り組んで参ります。
 加えて、お客様に安定した通信サービスを提供するため、これまでも通信設備工事の品質・安全等の維持向上に取り組んで参りましたが、当社と工事協力会社が一体となって「お客様の視点に立った工事」「コンプライアンスを重視した工事」の推進を図るとともに、工事に関するご意見やご要望等を承り、迅速な対応を行う「工事問合せ受付センタ」を昨年11月から各支店に設置するなど、お客様に更に安心していただける設備工事の推進に取り組んで参りました。


<5>CSR活動の推進
 NTT西日本グループのCSRにつきましては、経営の重要な柱と位置づけ、本業を通じて「社会的」「経済的」「人間的」価値を創造することにより企業価値を高め、安心・安全な社会の実現に貢献していく取り組みをグループ一体となって推進して参りました。
 具体的には、「NTT西日本グループが考えるCSR」を策定し、各種研修などによる「理解促進」を図るとともに、「実践と定着」に向けた日常業務における活動目標の明確化、進捗状況の把握・分析、及び具体的な改善等に取り組むためのアクションプラン「CSR20」の策定・展開に取り組んで参りました。
 また、CSR推進の基本となるコンプライアンス、及びビジネスリスクマネジメントの徹底を図るため、「企業倫理の日」や「企業倫理強化月間」の設定などを通じ、高い倫理観の醸成と不正・不祥事を起させない組織風土づくりを徹底して参りました。
 加えて、環境保護に関わる活動につきましては、「NTT西日本グループ地球環境憲章」のもと、事業活動、並びに自社の商品・サービスが社会に与える環境負荷を低減するため、3R(リデュース・リユース・リサイクル)運動を徹底し、通信設備をはじめとした産業廃棄物の削減を推進するとともに、温暖化防止に向けた取り組みとして、通信サービスを提供するための電力使用量の削減や「夏の適正冷房(28℃)」や「冬の適正暖房(20℃)」の徹底など、各種節電施策を通じたオフィスにおける電力使用量の削減にも積極的に取り組んで参りました。


 以上に加え、更なるお客様情報の保護強化に向けた取り組みとして、「お客様情報保護強化期間」を設定し、全社員を対象とした研修やお客様情報を取り扱う業務委託先会社における情報の取り扱い状況・運用状況のチェックを目的とした立入り点検、及び委託先責任者・従事者に対する研修を実施するなど、お客様情報保護意識のより一層の向上と適正な運用管理等の推進に努めて参りました。
 また、社外への添付ファイル付きメールの送信時において、チェックツールを用いた規制を行い、不適切な情報受渡しの防止を図るとともに、社員や業務委託先会社の従事者が所有する自宅パソコン等にお客様情報・業務関連情報が保存されていないことの一斉点検を実施するなど、会社をあげてお客様情報保護の強化に努めて参りました。

 更に、豪雨や台風、及び地震といった災害発生時において、地域社会の一員として、より安心・安全な社会づくりに貢献するため、NTT西日本エリアの33支店に「生活復旧」及び「ビジネス復旧」を支援する「お客様支援機能」を設置し、自然災害等の発生に備え、NTT西日本ビル内のフロア整備等を実施するとともに、BCP推進に向けた災害に強い設備構築に関する自治体や法人のお客様からの相談に対する対応などを行って参りました。
 また、実際の災害発生時においては、災害対策本部と一体的に機能し、通信サービスの復旧と並行して、緊急避難用にNTT西日本ビルの屋上やフロアの提供、被災されたお客様へ電話機の貸出しなど、支援活動を積極的に展開することといたします。

 こうした取り組みのベースとして、お客様に安心してサービスをご利用いただけるよう、NTT西日本グループ全体で「カスタマー・ファースト活動」を更に推進していくことで、引き続きお客様からの信頼確保に努めて参りました。

 最後に、104番号案内サービスにおきまして、お客様の利便性向上等を目的として、ご案内した電話番号にそのままおつなぎする「DIAL 104」サービスを昨年7月から提供開始いたしましたが、昨年7月から同年10月にかけて実施しました、「DIAL104」のテレビコマーシャル、新聞広告、雑誌広告、駅貼りポスター、並びに鉄道・バスの車内広告の表示について、取引条件が実際のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認されるものとして、景品表示法第6条第1項の規定により、公正取引委員会から排除命令を受けました。お客様にご迷惑をおかけしましたことにつきまして、深くお詫び申し上げます。今後は、お客様が安心してご利用いただけるよう、適切な対策を徹底するとともに、より一層のサービス向上に努めて参ります。

 以上の取り組みの結果、当事業年度における営業収益は1兆9,012億円(前年同期比2.6%減)、経常利益は248億円(前年同期比53.9%減)となりましたが、繰延税金資産計上額の見直しを行った影響等により377億円の当期純損失となりました。


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