岐阜県中津川市(市長:大山 耕二、以下 中津川市)、西日本電信電話株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:森下 俊三、以下 NTT西日本)、日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:三浦 惺、以下 NTT)は、ネットワークを利用して市民の元気な暮らしづくりをサポートすることを目的に、「中津川市ヘルスケアトライアル」(以下 本トライアル)を開始します。
本トライアルでは、NTTのマイクロシステムインテグレーション研究所(以下 MI研)で開発した「血圧管理指導プログラム」と環境エネルギー研究所(以下 環境研)の「在宅ヘルスケアプラットフォーム」を活用した遠隔保健指導システム(以下 本システム)を評価・検証します。 |
1.トライアルの背景と目的 |
| 平成の大合併により、全国の市町村で保健指導者の担当すべき区域の広域化や、高齢者等交通弱者の移動手段の減少など、保健指導、健康づくりのための移動距離の増大に伴う困難が顕在化しており、その問題を解消するためのICT(*1)の有効活用が求められています。
また、急速な高齢化の進展に伴い、疾病全体に占める生活習慣病の割合が増加し、死亡原因においても3割を占めるといわれる現状を受けて、平成20年4月から医療保険者(国保・被用者保険)において、40歳以上の被保険者・被扶養者(約5,600万人)を対象とする、「メタボリックシンドローム(*2)」に着目した健診及び保健指導(以下 特定保健指導)(*3)が義務付けられます。特に「積極的支援」(*4)に階層化された対象者には6ヶ月間、行動変容を促し、生活習慣の改善に導くための保健指導が必要となります。
しかし、現状では、対象者に比べ、指導者の数が非常に少ないため、効率的な業務遂行と共に効果的な保健指導が可能なICTシステムが求められています。
中津川市では、平成4年から「自分の健康は自分の手で」という基本理念のもと、市民が健康で明るく暮らすための施策を展開してきました。平成17年の越県広域合併後には市域全体でブロードバンド0(ゼロ)を解消し情報通信格差を是正するために、NTT西日本と連携して情報通信ネットワーク整備事業を進めていますが、それによって整う基盤を最大限に活用した高度な諸施策の展開やより良い市民サービスの提供を目指していきます。
NTTグループでは、特定保健指導の義務化を契機にお客様の健康維持や予防のためのヘルスケアサービスに貢献していきたいと考えています。「メタボリックシンドローム」予防として腹囲や体重を管理するサービスに関心が集まる中で、NTTのMI研が開発した「血圧管理指導プログラム」は家庭血圧(*5)の適正管理による生活習慣の改善支援を特徴としており、これを活かした付加価値の高い保健指導サービスの提供を目指していきます。また、これまでのNTTグループのサービス基盤を最大限に活用して、ヘルスケアビジネスにおける新サービスの創出も進めていきます。 |
2.トライアルの概要 |
| 約6ヶ月間、保健指導を要する対象者に対して、3拠点(中津川市役所、中津川市民病院、坂下病院)の保健師から個別に、対象者の血圧の改善により生活習慣の改善へと導くための保健指導を遠隔で実施します。
簡単なスケジュールは以下の通りです。 |
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2月18日(月)〜 |
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健診結果を基にした初期面談の開始 |
3月10日(月)〜 |
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日々の生体センサデータを基にした遠隔保健指導の開始 |
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| 以後、月1回のペースで遠隔保健指導を7月末まで行います。
具体的には、対象者は自宅にて日々の血圧、歩数、体重を測定し、パーソナルコンピュータ(以下 PC)又はフレッツフォンでそれらのデータをネットワーク経由でデータベースに登録します。
保健師はそれらのデータを参照することで保健指導に活かし、対象者は自分自身の健康状態の変化(=健康情報)を確認して生活習慣の改善に活かします。さらにPC又はフレッツフォンを用いて、定期的に保健師と対象者との間で遠隔保健指導を実施します。
本トライアルでは、以下の点について評価・検証を行います。 |
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血圧管理指導プログラムの有効性 |
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生活改善メニューの有効性 |
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日々の生体センサデータの入力インターフェースの有効性 |
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遠隔保健指導システムの運用性、操作性、利便性、信頼性 |
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3.中津川市とNTTグループの役割 |
(1)中津川市 |
| ICTが特殊なものでなくなるこれからの時代の保健指導における課題や改善点を見出し、市民の健康づくりを効果的で効率的にサポートする方法を検討します。 |
(2)NTT西日本 |
| 新たなヘルスケアサービスにご利用いただける情報通信基盤として、フレッツ・光プレミアムをはじめとしたブロードバンドネットワーク等の提供や構築を行います。 |
(3)NTT |
| 遠隔保健指導システムとして、家庭血圧の観点からメタボリックシンドロームの改善予防を支援する「血圧管理指導プログラム」、PCだけでなくタッチパネル方式フレッツフォンも活用できる「在宅ヘルスケアプラットフォーム」を提供し、その有効性や運用性等を検証します。 |
4.システムの特徴 |
(1) |
日々の家庭血圧を管理することにより、適切な保健指導を支援する「血圧管理指導プログラム」 |
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| NTTのMI研では、横浜市立大学医学部杤久保修教授との共同研究により、日々の家庭血圧値から対象者の血圧型を自動判別するアルゴリズムと対象者の生活習慣チェックからその改善を促す指導テキストを自動生成することができる「血圧管理指導プログラム」を開発しました。
最近、内臓脂肪型肥満によってさまざまな生活習慣病(*6)が引き起こされやすくなった状態である「メタボリックシンドローム」への関心が高まっています。特に生活習慣病の中でも高血圧症の潜在的な患者数は約3,000万人以上(治療を受けている患者数は約780万人)にも及び、その予防が非常に重要となっています。また、血圧計の世帯普及率は約30%に及び、歩数計や体重計に次ぐ普及率であるため、その利用価値は非常に高いと思われます。血圧は一日の内でもたえず変動しており、家庭血圧を測り、把握しておくことは日常の健康管理・予防にとって大切なことであると考えられます。本プログラムは日々の家庭血圧値だけでなく、歩数、体重、腹囲も管理することができ、メタボリックシンドローム等の生活習慣病の改善支援に活用することができます。 |
(2) |
タッチパネル方式のTV電話も活用できる「在宅ヘルスケアプラットフォーム」 |
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| 高齢者の「見守り」、災害や緊急時における「メッセージ同報及び通報サービス」等に適用してきたNTTの環境研の双方向防災福祉コミュニケーション技術を応用し、「在宅ヘルスケアプラットフォーム」を開発しました。これは、PCやタッチパネル方式フレッツフォンに生体センサ(血圧計、歩数計、体重計)を接続することにより、日々の生体センサデータを安心・安全かつ簡単に収集・管理できると共に、TV電話を介した遠隔保健指導と各種データの共有を実現するプラットフォームです。 |
5.今後の展開 |
| 中津川市では、トライアルを通して遠隔保健指導の検証にとどまらず、ネットワークを利用した、様々な分野での市民サービスへの展開の可能性を模索します。また、ワンストップ行政化、電子行政化を進めることによる市民の利便性の向上を検討します。
NTTグループでは、トライアルを通して本システムの有効性や運用性などを検証すると共に、技術課題の洗い出しや改良点を検討し、それらを踏まえ新しいヘルスケアビジネスに必要な技術開発やサービス開発を推進していく予定です。 |
<用語解説> |
(*1)ICT |
| Information and Communication Technologyの略称で、情報通信技術。 |
(*2)メタボリックシンドローム |
| 内臓脂肪型肥満をベースにして、高血圧、高血糖、脂質代謝異常(コレステロールや中性脂肪が多い状態)のうちの、いくつかの危険因子をあわせもった状態。 |
(*3)特定健診及び特定保健指導の義務化 |
| 「医療制度改革大綱」を踏まえて、「生活習慣病予防の徹底」を図るため、平成20年4月から、高齢者の医療の確保に関する法律により、医療保険者に対して、糖尿病等の生活習慣病に関する健康診査(特定健診)及びその結果により健康の保持に努める必要がある者に対する保健指導(特定保健指導)の実施を義務づけること。 |
(*4)積極的支援 |
| 厚生労働省が定めた「標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)」(平成19年4月)において、保健指導の必要性ごとに対象者を「情報提供」、「動機づけ支援」、「積極的支援」に区分。対象者ごとに生活習慣の改善点や取り組むべき目標設定をし、行動変容を継続的に実行できるよう医師や保健師等の指導者が支援すること。 |
(*5)家庭血圧 |
| 日常生活における自然の状態の血圧。血圧は、その時々の体調や精神状態で常に変化するため、多数回の平均をみることにより正確に評価可能。 |
(*6)生活習慣病 |
| 生活習慣が発症や進行に深く関与し、高血圧・高脂血症・糖尿病が代表的。 |