1.当期の事業の概況


 当上半期における我が国の経済は、設備投資の弱い動きや雇用情勢の厳しさが見られるものの企業収益は改善し、また個人消費も持ち直すなど、景気は回復傾向が続きました。
 情報通信分野におきましては、「u−Japan政策」「IT新改革戦略」、更には「次世代ブロードバンド戦略2010」が目指すブロードバンドによるユビキタスネットワーク社会の形成に向け、次世代ネットワーク構築に関する取り組みが加速するとともに、インターネット・IP電話・映像配信の融合・連携によるトリプルプレイサービスの拡大、更には、IP化に伴う固定と移動、通信と放送等、サービスの融合が進展するなど、市場環境は大きく変化しております。
 特に著しく成長を続けるブロードバンド市場におきましては、DSLサービスの純減が続く一方、光アクセスサービスがブロードバンドサービスの本命として本格的な拡大期を迎えている中、電力系事業者をはじめとする競争各社が、光アクセスサービスを積極的に展開しており、お客様獲得競争が熾烈化しております。
 一方、固定電話市場におきましては、携帯電話の利用拡大、光IP電話への急速なマイグレーション、ドライカッパを用いた直収電話サービスの拡大等により、トラヒックが減少し、市場全体の縮退が続く中で、取り巻く事業環境は厳しさを増しております。
 このように極めて厳しい事業環境の中で、当社は、良質かつ安定的なユニバーサルサービスの提供に努めるとともに、「NTTグループ中期経営戦略」、並びに「NTT西日本グループ中期ヴィジョン」の実現に向け、「固定電話から光・IPへの収益構造の早期転換」を目指し、光アクセスサービス及び光IP電話サービスのラインナップの充実、ブロードバンドアプリケーションサービスの高機能・高品質化、地域の活性化や発展に貢献するソリューションビジネスの展開など、具体的には以下の取り組みを積極的に実施して参りました。


<1>ブロードバンドビジネスの展開
i.光アクセスサービスの充実
 光アクセスサービスにつきましては、平成13年8月から「Bフレッツ」の本格提供を開始し、その後、お客様の多様化するニーズにお応えするため、IPv6対応による高品質なテレビ電話機能やセキュリティ機能の標準装備など高機能化を図り、平成17年3月から戸建住宅向けの「フレッツ・光プレミアム ファミリータイプ」を、平成17年4月から集合住宅向けの「フレッツ・光プレミアム マンションタイプ」を、更に平成18年8月から事業所向けの「フレッツ・光プレミアム エンタープライズタイプ」を提供開始するなどサービスラインナップの充実に取り組んで参りました。
 当上半期におきましては、集合住宅の形態や設備状況等により光アクセスサービスをご利用いただけなかったお客様からのご要望にお応えするために、集合VDSL装置の小型化を図り、小規模集合住宅向けの「フレッツ・光プレミアム マンションタイプ ミニ」を本年9月から提供開始いたしました。
 加えて、お客様サービスの向上を図る観点から、光通信サービス即決管理システム(AQROS:アクロス)によるリードタイム(申込み〜開通)短縮などを実施して参りましたが、より一層の利便性向上を目的として、フレッツ公式サイト(http://flets-w.com)上で、24時間お客様ご自身が希望工事日を決められる「Web即決」を本年7月から開始いたしました。
 こうした取り組みの結果、「フレッツ光(「Bフレッツ」と「フレッツ・光プレミアム」の総称)」の西日本エリアにおける契約数につきましては、サービス提供開始以来、4年1ヶ月を要した100万回線の突破から、その後約1年で200万回線を突破し、更に約11ヶ月後の本年7月には、300万回線を突破いたしました。

ii.ブロードバンドアプリケーションサービスの充実
 光IP電話サービスにつきましては、通話料金の低廉化及び高品質なIP電話サービスへの需要の高まりに対応するため、平成15年10月から大規模事業所向けに「ひかり電話ビジネスタイプ」を、平成16年9月から戸建・集合住宅向けに「ひかり電話」を、平成18年6月から中小規模事業所向けに「ひかり電話オフィスタイプ」を提供開始し、平成18年10月から「ひかり電話」に、6つの付加サービスと最大3時間分の通話料をパッケージ化し、割安な料金でご利用いただける新料金プラン「ひかり電話A(エース)」を提供開始するなどサービスラインナップの充実に取り組んで参りました。
 当上半期におきましては、低コストで光IP電話サービスをご利用になりたい等のご要望にお応えし、「ひかり電話ビジネスタイプ」のご利用にあたり必要となるアクセス回線として、これまでの「ビジネスイーサ」「Bフレッツ ベーシックタイプ」に加え、「フレッツ・光プレミアム エンタープライズタイプ」を本年4月から新たに追加いたしました。
 また、平成15年1月から提供開始しております、企業等におけるグループ内通信が可能な「フレッツ・グループ」の新プランとして、より簡易かつ安価にお使いいただくため、従来の「Bフレッツ」及び「フレッツ・ADSL」に加え、「フレッツ・光プレミアム」もアクセスラインに利用できる「光プレミアム対応プラン」を本年4月から提供開始いたしました。
 更に、昨今の家庭における防犯への関心の高まりに対応するため、「フレッツ・光プレミアム」などのブロードバンド回線を利用し、ご家庭に安心と便利をお届けする「フレッツ ホームセキュリティ」を本年7月から提供開始し、そのラインナップとして、フレッツフォンや携帯電話等を使って、遠隔地から簡単にご自宅の様子をモニタリングできる「ひかりホームカメラ HC−1000」、及びご自宅で起こった異常等をセンサが検知し、出先のパソコンや携帯電話に通知できる機能や、携帯電話等を使ってご自宅の家電製品のスイッチを遠隔操作できる機能を搭載した「フレッツ ホームセキュリティ HS-1000」の販売を開始いたしました。

iii.光ブロードバンドサービスの品質向上に向けた取り組み
 技術革新や市場環境の変化が続く中、お客様ニーズへ的確に対応していくため、光アクセス技術のプロとして、計画〜構築〜保守までの一連の業務を掌握し、テクニカルスキルのみならず、応用力、直感力が働く技術者を育成することを目的に「光プロフェッショナルカレッジ」を本年4月に設立いたしました。
 また、今後のサービス基盤となる次世代ネットワーク(NGN)の本格提供を控え、サービスオペレーション業務等の高度IP系技術者の育成が急務であり、従来の電話サービス等を維持するための実践的な技能向上も必要となっていることから、NTT西日本エリアの6つのブロックに「テクノカレッジ」を本年7月以降、順次開校してきております。
 本取り組み等により、NTT西日本グループにおける高度IP技術者の積極的な育成を図って参ります。


<2>ソリューションビジネスの展開
 ソリューションビジネスにつきましては、これまでのノウハウ・実績を活かした情報ハイウェイや地域イントラネットの構築、FTTH整備モデルの展開を中心とした通信基盤整備事業に加え、電子自治体ビジネス事業の推進による公共ビジネスを展開して参りました。
 また、昨今の市場トレンドに即した内部統制、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)、及びセキュリティなどのソリューションビジネスを中心とした民需ビジネスの積極的な展開に加え、本年5月からは、近年の企業におけるCSRへの関心の高まりを受け、主に中堅・中小企業におけるCSRに関連する課題を解決し、各企業の状況に最も適したCSR活動の推進を支援するITシステムやネットワークの構築及び運用を行う「CSRソリューション」を提供開始するとともに、より品質の高いご提案を行うため、NTT西日本の本社及び全支店に「CSRソリューションビジネス推進体制」を新たに構築いたしました。
 更に、企業や自治体等の公開Webサーバへの不正アクセス等による、ホームページ改ざんや個人情報漏えい等のセキュリティ事故が発生した際に、原因分析、解決策の提案を行う「情報セキュリティインシデント対応サービス」を本年8月から提供開始いたしました。
 加えて、離島や山間部など光アクセスサービスの低需要エリアを多く抱えている状況の中、デジタル・ディバイドを改善するため、地域情報化計画の支援や、IRU(*1)を活用した地方自治体に対する取り組みを実施して参りました。
*1: Indefeasible Right of User:関係者の合意がない限り、破棄できない永続的な回線使用権


<3>事業運営体制の見直し
 光ブロードバンドサービスの普及・拡大に向けて、今後益々の重要性が高まる中小法人・SOHO市場及び販売代理店に対する営業力の強化、並びにお客様サービスの一層の向上を図る観点から、本社組織の見直しを実施いたしました。
 具体的には、マーケティング部を、中小法人・SOHO向け営業を推進する「オフィス営業部」、販売代理店向け営業を推進する「ビジネスパートナー営業部」及びコンシューマ向け営業を推進する「マーケティング部」の3部に再編するとともに、当該3部を統括し全体に関わる方針策定等を行う「営業本部」を設置いたしました。
 また、大規模・中堅法人向け営業推進のミッションをより明確にするため、ソリューション営業本部の名称を「法人営業本部」に変更いたしました。
 更に、全社的BPRの取り組みを踏まえた全体最適な社内システムの構築を行うため、本社各組織に分散する主要なシステムの開発機能と、システム開発の方針・計画策定などを含む技術部の全機能を統合し、新たに「技術革新部」を設置いたしました。
 加えて、NTT西日本グループが展開するソリューション分野におけるシステムエンジニアリング業務や、IP系に関わる故障受付業務などを中心とした人材を派遣する新会社として、平成18年3月の「株式会社NTT西日本−東海アイティメイト(*2)」の設立、及び本年3月の「株式会社NTT西日本−中国アイティメイト」「株式会社NTT西日本−四国アイティメイト」「株式会社NTT西日本−九州アイティメイト」の設立に続き、本年9月に「株式会社NTT西日本−関西アイティメイト」を新たに設立いたしました。
*2: 平成19年7月1日に「株式会社アイティメイト東海」より社名変更


<4>CSRの推進に向けた主な取り組み
 NTT西日本グループにおけるCSRにつきましては、経営の重要な柱と位置づけ、本業を通じてお客様・地球環境・地域社会に対する「社会的価値」、株主の皆様に対する「経済的価値」、社員に対する「人間的価値」を創造することにより、社員一人ひとりが企業価値を高めていく価値創造活動を継続的に展開して参りました。
 具体的には、CSRの考え方や活動をわかりやすく解説した社員向け小冊子の発行をはじめ、CSR推進体制の整備、セミナー・研修の開催、及び各種情報発信などによるCSRに対する「理解」を促進するとともに、CSRの更なる「浸透・定着」を図るため、「社会的価値の増大」「経済的価値の増大」「人間的価値の増大」「コンプライアンス」の4つのミッションに対する、NTT西日本グループ統一の行動目標及び数値目標を示したアクションプランを策定し、アクションプランに基づく、「実行・展開」「成果の確認」「取り組みの改善」によるPDCAサイクルの徹底等に取り組んで参りました。
 また、CSR推進の基本となるコンプライアンス及びビジネスリスクマネジメントの徹底を図るため、飲酒運転根絶キャンペーンの展開や企業倫理強化月間の設定などを通じ、高い倫理観の醸成と不正・不祥事を起させない組織風土づくりを徹底して参りました。
 情報セキュリティにつきましては、「個人情報保護に関する法律」を踏まえ、NTT西日本グループ会社等に対する情報管理の徹底に向けた研修、システムログ及びアクセス権限付与状況のチェック、社員宅の個人所有のPC端末等における会社情報の保存の有無に関する一斉点検等を実施するとともに、お客様情報保護等に関するWebを用いた自己診断理解度チェックを継続的に実施して参りました。
 当上半期におきましては、新たにファイル交換ソフトの脅威やウィルス感染による情報流出の危険性を再認識するためにビデオを作製し、全社員研修において更なる意識付けを図るなど、会社をあげてお客様情報保護の強化に努めて参りました。

 以上に加え、豪雨、台風及び震災といった災害発生時に、地域社会の一員として、より「安心」でより「安全」な社会づくりに貢献することを目的に、従来の災害復旧活動を更に進化させ、災害等で被災されたお客様の「生活復旧」や「ビジネス復旧」を支援する「お客様支援機能」を本年9月から順次、NTT西日本エリアの全33支店に展開し、地域に密着した災害復旧の更なる取り組みを推進して参りました。

 また、安定した通信サービスの提供に向け、これまでも通信設備工事の品質・安全等の維持向上に取り組んで参りましたが、「お客様の視点に立った工事」「コンプライアンスを重視した工事」の更なる推進、及び工事に関するお客様のご意見・ご要望等を承り、迅速な対応に努めるため、NTT西日本と工事委託会社が一体となり、「きっちり工事運動(KK運動)」を展開するなど、お客様に更に安心していただける設備工事の実施について取り組んで参りました。

 更に、「NTTグループ中期経営戦略」の具現化に向け、次世代ネットワーク(NGN)の本格的な商用サービスの提供を行うため、平成18年12月に開始したフィールドトライアルを本年4月から一般のお客様に拡大し、お客様ニーズの把握に努めて参りました。このフィールドトライアルを踏まえながら、幅広い分野の事業者様との連携を図りつつ、高品質な映像配信等の映像コミュニケーションや情報家電を利用したサービスといった多彩なサービスを提供することにより、豊かなコミュニケーション環境の創造や新たなビジネス機会の創出を目指した取り組みを推進して参りました。

 こうした取り組みのベースとして、お客様に安心してサービスをご利用いただけるよう、NTT西日本グループ全体で「カスタマー・ファースト活動」を更に推進していくことで、引き続きお客様からの信頼確保に努めて参りました。

 以上の取り組みの結果、当上半期における営業収益は、9,397億円(前年同期比2.1%減)となり、経常利益は226億円(前年同期比17.1%増)となりました。


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