1.当期の業績の概要


 当期におけるわが国経済は、米国経済の減速に伴う世界経済の低迷が長期化した影響により、個人消費が低水準で推移するとともに、企業部門においても設備投資の減少や収益の悪化が継続するなど、依然として厳しい状況が続きましたが、期末にかけては輸出や生産に一部下げ止まりの兆しが見られました。
 情報流通市場におきましては、「IT不況」と言われる世界的なIT産業の停滞を背景に、通信事業者の経営状況の悪化等に伴う合併・買収及び提携の動きが世界的に見られるなど、通信業界の再編に向けた動きが活発化して参りました。一方では、情報通信技術は着実に進歩しており、ITの普及は個人のライフスタイルや社会経済活動全般に大きな変化をもたらすとともに、新規産業の創出、社会経済活動の効率化、活性化への期待が益々高まって参りました。
 また、高速・大容量のインターネットアクセスサービスへの需要や、更なる料金低廉化の要望が強まる中、当社の事業範囲である地域通信市場においても、インターネットアクセス分野への新規事業者による劇的な低価格での参入や提供エリアの拡大により、サービス・価格両面における熾烈な競争が繰り広げられました。
 加えて、固定電話事業分野においても、優先接続(マイライン)制度の導入を契機として、中継系事業者の市内電話サービスへの新規参入や、VoIP技術を活用した「IP電話」サービス事業者の音声通信事業への新規参入により、料金値下げや顧客獲得競争が激化し、当社を取り巻く環境は一段と厳しさを増して参りました。

 このような事業環境の中において、当社は、「黒字構造への転換」、「情報流通企業への変革」の2大経営目標の達成に向け、企業としての存続をかけたダイナミックな事業構造の転換を図るため、安定した経営基盤の確立に向けた経営の革新に努めるとともに、お客様利便性の向上や市場における競争力の強化を図って参りました。
 また、IP事業分野への事業ドメインの転換を推進し、インターネットアクセスサービスの低廉化や、ブロードバンド時代に対応した情報流通系商品の充実を図るとともに、より高度なコンテンツやアプリケーションを利用できるプラットフォームの開発等、新規事業領域の開拓に積極的に取り組むなど、新たな収益源の確保に注力して参りました。

 経営の革新につきましては、「中期経営改善施策」(平成12年度〜平成14年度)を着実に遂行するため、平成12年度に引き続き、営業拠点の統廃合による業務運営体制の効率化、グループ会社への出向や都市部への広域異動などによる大規模な人員の再配置、設備投資の削減、委託費等各種経費の一層の削減などの各種経営改善施策を実施して参りました。これらの取り組みは、計画を上回る進捗で着実な成果をあげているところでありますが、予想を越えるスピードで進行している市場構造や競争環境の変化により、このままでは平成14年度も赤字を見込まざるを得ない状況にあるため、財務基盤を建て直し、経営の自立化を図るため「NTT西日本の構造改革」の平成14年度実施に向けた準備を進めて参りました。
 具体的には、厳しい財務状況の改善及び市場競争力の強化を図るため、NTT西日本は企画・戦略・サービス開発機能に加え、お客様に対するサービス提供責任を果たすための基本機能等に特化し、それ以外の顧客フロント業務、設備オペレーションに関する業務、SOHO・マス営業に関する業務、総務・経理業務等を16の地域ブロック単位に設立する地域会社にアウトソーシングするとともに、51歳以上の社員に対する退職再雇用制度の導入等、雇用形態及び処遇体系の多様化に向けた大胆な見直しの準備を進めて参りました。
 なお、構造改革の柱であるアウトソーシング業務を受託する地域会社につきましては、当社100%出資会社であり、地域会社を統括する「エヌ・ティ・ティ西日本営業系企画株式会社」、「エヌ・ティ・ティ西日本設備系企画株式会社」(平成14年5月1日に「株式会社エヌ・ティ・ティ マーケティング アクト」、「株式会社エヌ・ティ・ティ ネオメイト」にそれぞれ商号を変更いたしました。)の両社、並びにエヌ・ティ・ティ・ビジネスアソシエ株式会社の子会社として設立いたしました。

 お客様利便性の向上並びに競争力強化につきましては、平成13年5月からの優先接続(マイライン)制度の導入を契機に、価格競争力を強化するため、昼夜間の市内通話料金を3分8.5円とする戦略的な料金値下げを実施したことに加え、当社にマイラインプラスを登録していただいたお客様を対象とした各種割引サービスの割引率の拡大や月額定額料の減額を実施するなど、お客様に電話を一層、手軽に便利にご利用頂けるよう、利用環境の整備を促進し、グループの総力を結集してマイラインプラスの登録獲得に積極的に取り組んで参りました。
 また、マイライン無料登録変更期間経過後においては、平成13年12月より、マイラインプラスで当社を選択していただいたお客様を対象に、フレッツサービスの月額利用料のセット割引を提供するなど、シェア確保に向けた取り組みを継続的に展開して参りました。

 新たな収益源の確保につきましては、通信の高速化、料金の低廉化などのお客様ニーズに的確に対応するため、インターネットアクセスサービスの充実・強化に努めるとともに、ソリューションビジネスの推進や情報流通分野における新たな事業領域の開拓に積極的に取り組むなど、IP事業分野への事業ドメインの転換を推進して参りました。
 具体的には、インターネットアクセスサービスの充実・強化といたしましては、従来から提供しておりました、完全定額制サービス「フレッツ・ISDN」、「フレッツ・ADSL」の提供エリアの拡大や料金値下げを実施するとともに、「フレッツ・ADSL」につきましては、更なる通信の高速化ニーズに応えるため、平成13年12月より、従来の「1.5Mプラン」に加え、「8Mプラン」の提供を開始いたしました。
 また、平成12年12月から試験サービスとして提供して参りました、加入者光ファイバを利用してインターネットに高速で接続する定額制サービス「光・IP接続サービス」につきまして、平成13年8月、大幅な料金の低廉化とメニューの拡充を行った上で、「Bフレッツ」として本格提供を開始し、順次、提供エリアの拡大を実施するなど、光サービスの普及拡大に積極的に取り組み、メタルから光までのフルラインアップでブロードバンドインターネットアクセスサービスを提供することにより、需要の開拓に努めて参りました。
 更に、家庭の電話機等から簡単にインターネット上の情報検索やメールの送受信などができる「Lモード」サービスの提供を平成13年6月に開始するなど、手軽に利用できる新サービスの提供を通じて、インターネット利用者の裾野拡大を図って参りました。
 ソリューションビジネスの推進といたしましては、企業系から公共系まで幅広く網羅し、特に「中堅・中小規模事業所のIT化促進」と「電子自治体の推進」に軸足をおいた営業展開に注力して参りました。とりわけ、政府の「e−Japan戦略」に基づく「電子政府・電子自治体の着実な推進」に向けて、急速に加速する国や地方公共団体における情報化への動きを受け、「地域情報化の推進」、「庁内情報化の推進」、「高度情報流通基盤の整備」という3つの柱で、地方公共団体の情報化を総合的に支援するソリューション「G.prosol(ジィプロソル)」ブランドとして体系化し、基本構想の策定からシステムの構築、保守・運用までのトータルソリューションの提供を開始いたしました。
 新たな事業領域の開拓といたしましては、地域に密着したコミュニティ情報流通を促進する観点から、平成12年12月より大阪府吹田市、広島県広島市において実施して参りました地域ポータル実験につきまして、平成13年12月より、当社100%出資会社であるエヌ・ティ・ティ・スマートコネクト株式会社において事業化し、試行サービスを開始いたしました。
 また、国内におけるブロードバンドコンテンツ流通市場の拡大に貢献すべく、大容量・高品質なエンターテイメントコンテンツ等を提供する新会社「ティーエフエム・インタラクティブ株式会社」を株式会社エフエム東京と共同で設立したほか、インターネットを利用した住関連サービスの情報仲介事業を行う新会社「株式会社ホームプロ」を株式会社オージーキャピタルと共同で設立するなど、ブロードバンドネットワークの特性を十分に活かした、より利便性の高いサービスの提供に向け、取り組んで参りました。
 この他、ブロードバンド時代におけるネットワーク教育のためのプラットフォーム配信についての検証を行う「E−Learning公開講座トライアル」や、次世代インターネットプロトコル(IPv6)環境下における情報家電ネットワークビジネスの開発を進めるための「情報家電IPv6実証実験」に参加するなど、新たな収益源の確保に向け、積極的に取り組んで参りました。

 これらに加え、環境問題への取り組みといたしましては、環境法令の制定、改正により環境保護への社会的な枠組みが整備される中、法令遵守を確実に実施するとともに、当社の事業活動によって生じる環境負荷を低減するための最重要課題である紙資源対策、温暖化対策、産業廃棄物対策について、平成11年度に定めた中長期の行動計画目標の達成に向けて着実に取り組み、環境リスクの低減と環境保護の継続的改善を実施して参りました。こうした取り組みの結果も含めて当社の環境対策全般の実施状況について、昨年度に引き続き、2001年11月に環境報告書を発行し、積極的な情報公開を行うなど、環境保護活動に関する企業責任の遂行に努めて参りました。

 以上の結果、当期の営業収益は2兆4,067億円(前期比8.8%減)、経常損失は1,704億円(前期比61.2%増)となりました。
 なお、特別損失として、事業構造改革費用など、4,386億円を計上したことにより、当期損失は3,553億円(前期比696.3%増)となりました。


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