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がない。西田氏はこう続ける。「実は 過去にはソーダ水やジンジャーエー ルの製造販売をしていたこともあり ます。さらにさかのぼれば、今皆さん が手に取る日本酒の一升瓶は、弊社が オーソドックスなものとして広めた のです。どの施策も前例にとらわれ ず、どうすればお客さまが喜んでくれ るのか、便利なのかを考えての施策で した。私たちの取り組みの根底には、 スローガンの親しみの心をおくる. が色濃く根付いているのです」。  しかし、その後も世の中の状況は決 して白鶴酒造に、ひいては酒造業界に とって順風満帆という状況にはな かった。  「他のアルコール飲料の台頭などに より、日本酒の消費に陰りが見えては いましたが、吟醸酒・純米酒などの特 定名称酒の出荷量は堅調に推移して いました。そこで考えたのが消費者の 考える日本酒の位置づけを変えるこ とだったのです」(戦略開発本部次長 の森伸夫氏) つ。白鶴酒造と商品を結びつける. ことです。当時、酒造業界ではCIに ついての認知度は低く、導入する企業 はありませんでしたが、ファンをつか むためには欠かせないことだと考え て取り組んだと聞いています」と総務 人事部広報室長の西田正裕氏は語る。  1979年当時、酒造業界はもちろ ん、その他の業種でもCIの策定まで 考えていたところは少ない。白鶴酒造 が持つ「先取の精神」「大胆な変化を 恐れない姿勢」がうかがえる。  常に業界に新風を送り込み続けて きた同社の取り組みは、枚挙にいとま  播州の良質な米、六甲山系の伏流水、 そして丹波杜氏。「米・水・人」を大事に するという創業からの思いを受け継 ぎ、多くのお客さまに愛される商品を 提供し続ける白鶴酒造。老舗でありな がら、常に攻めの姿勢を崩すことはな い。その姿勢を表すひとつの例が、 1979年、業界に先駆けてCI(コー ポレート・アイデンティティー)システ ムを導入したというエピソードだ。  「CIを策定した目的はただひと  位置づけを変えるとは、つまりはこ ういうことだ。特別なときに飲むもの として一定のニーズがあった吟醸酒 や純米酒などを深掘りし、普段の生活 でも飲んでもらえるものとして訴求 していく。そうして生まれたのが、 「白鶴 大吟醸」(以下、「大吟醸」)シ リーズだ。  「少しでも多くの人においしい大吟 醸酒を飲んでもらいたい」という思い から開発が始まった「大吟醸」。そも そも、大吟醸酒は淡麗で繊細な味わい が魅力の清酒で、そのために適してい るのが「突き破精(つきはぜ)型の米 こうじ」なのだが、こうじ菌の繁殖を 非常に精緻なレベルで管理し続ける 必要があり、機械での大量製造が困難 だった。そこで、突き破精型の米こう じを高品質で安定的に、かつ大規模に 製造できる最新鋭の設備を業界に先 駆けて導入。そこに同社が長年にわた り培ってきた、丹波杜氏の伝統の技を 組み合わせることで「大吟醸」は誕生 した。  また「大吟醸」では、日本酒をより 身近なものにし、日常の食生活を彩り 豊かに送ってもらうことを目的とし たプロモーションも実施している。 「親しみの心をおくる」ために 変化を恐れない 「日本酒の位置づけを変える」 という方向性で躍進 創業から受け継がれてきた「米・水・人」が 白鶴酒造の根底にある。 「特別な体験」から 消費者の支持が生まれる 白鶴酒造株式会社 「時をこえ親しみの心をおくる」をスローガ ンに掲げる白鶴酒造。創業から270年を超 える伝統を持ちながら、それに甘んじること なく挑戦する姿勢を崩さず、常に新しい“体 験”をお客さまに届けるべく、日々研鑽・努 力を続けている。大胆な変化を厭わない同 社の風土はどのように生まれているのか。 そして、そんな白鶴酒造が躍進を続ける原 動力はどこにあるのかに迫る。 特 集 第一線を走り続ける理由 FRONT RUNNER 体験 テーマ 270年の 伝統が生み出す “コト提供” という名の革新。 5  vol.21  vol.21 4