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の食糧危機を見越して水産分野の研究 に注力し、ハマチやヒラメなどの完全養 殖に世界で初めて成功。それを商品と して販売し、次の研究のための資金を 稼ぐ。これが、国からの補助を期待でき ない私立大学ならではの「実学」の実践 だった。  そうした積み重ねの上で3 2年間をか け、2002年に世界で初めて成功し たのがクロマグロ完全養殖だ。  「近大マグロは、たまたま成功した特 異な研究ではなく、長年の苦労の結晶 であり、食糧問題や環境保全などにも 貢献する技術です。私は1 0年ほど前ま う大学か』を知ってもらうための取り組 みをしっかりやって、それが受験生にも きちんと伝わり、評価されたことに大 きな意味があります」と語るのは、近畿 大学広報部長の世耕石弘氏。コミュニ ケーションの力で、この間のさまざまな 変革を支えてきた立役者だ。  近畿大学と聞いて多くの人が思い浮 かべるのが「近大マグロ」だろう。これも、 近畿大学をより広く知ってもらうため に世耕氏が仕掛けたネタ.のひとつ だった。  近畿大学には建学の精神として「実 学教育」がある。昭和2 0年代から、将来  国内約780大学のうち、近畿大学 の志願者数が首都圏の大学をしのいで 最多となったのは、2014年のこと。 2016年春も1 6万人強の総志願者 を集め、3年連続トップの座を維持し た。2012年には全国8位だったと いうから、この数年間の躍進はめざまし いというほかない。そこにはどのような 変革.があったのだろうか。  「志願者数日本一だから偉いというわ けではありません。『近畿大学がどうい で一般企業の広報部にいましたが、外部 から見てもとても興味深かった。こちら の広報の仕事をするようになったとき、 ビジュアル的にもインパクトのある近大 マグロを『実学』の象徴として打ち出そ うと考えました」(世耕氏)  ところが、世耕氏が近畿大学に移って きたころ、近大マグロの話題は大学案内 にも載っていなかった。「もう何年も書い たから、世の中の人も知っているだろ う」というのが当時の担当者の考えだっ たという。しかし、そうではないことを、 外部から来た世耕氏は知っていた。まし てや、最も知ってもらいたい受験生には まったく伝わっていない。  そこで世耕氏は、翌年の大学案内に 見開き2ページを使って巨大なマグロの 写真を掲載した。大学説明会で、大学 案内のページをめくる高校生が、マグロ の写真を見て手を止める。また、壁に貼 り出した2メートルを超すマグロの実 物大ポスターの前で、学生たちが写真 を撮る。そんな様子を見て、世耕氏は手 応えを感じたという。 志願者数日本一を 3年連続で達成 「マグロだけじゃない」に たどり着くまでの道のり 伝える.から 伝わる.へ―。 本質を届ける コミュニケーション戦略 学校法人 近畿大学 少子化で若い世代の人口が減り続けている現在、どの大学も優秀な 学生の獲得競争にしのぎを削っている。そんな中で2014年から3 年間、全国で最も多くの志願者を集めているのが、近畿大学だ。世界 で初めてクロマグロの完全養殖に成功し、それを一般に提供する飲 食店を運営するなど、マスコミでもしばしば話題になる近畿大学の 取り組みから、“変革のためのコミュニケーション”の秘訣を探る。 特 集 第一線を走り続ける理由 FRONT RUNNER 変革 テーマ 5  vol.18  vol.18 4