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天璋院   篤姫大奥3千余人を束ね、 徳川家存続に奔走した女傑  東京に本拠地を構える一大コンツェルン 「EDOBAKUFU」。同社の 13 代総裁夫人 であり、その秘書を務める篤姫は悲しみの中に あった。夫である総裁との永遠の別れにより、ひ とりになってしまったからだ。  もちろん、総裁不在のままでは会社運営は成 り立たない。 13 代目の最後の指示に従い、 14 代 目総裁として若干 13 歳のいとこが着任したもの の、「いとこはまだ若い。しっかり補佐し、創業家 を守ってくれ…!」との遺言を受けていたことも あり、篤姫はその補佐に全力を尽くす決意を 固めていた。しかし、創業家の勢力を削ごうと する副総裁が暗躍。重要な会議などへの参加を 制限されたことにより、夫と二人三脚で運営を 進めてきたころよりも、自身の発言力が大いに 弱められてしまった。  だが、篤姫は決して諦めなかった。  「副総裁め…。女の強さを思い知らせてや るわ!秘書同士のつながりを甘く見るでな いぞ!」  そう言うや否や、コンツェルン幹部の秘書を務 める女性たちなどをまとめあげて連携し、社 内・社外の情報が集まる仕組みを構築。若い総 裁に様々な提言をし、判断を仰ぐ仕組みを作 りあげたのだ。  その行動力の背景には、1858(安政5)年 に、徳川幕府1 3代将軍・家定が身罷った後も、1 4 代将軍・家茂を支え、激動の幕末を乗り切るた めに大奥3千余人の女性たちを強く束ねたと きの経験があった。大奥の運営にまで口を出し、 自身の専横で安政の大獄などを引き起こした 大老・井伊直弼に対抗すべく、大奥を束ね、表に 出る役割を持つ女性たちからの情報などを吸い あげ、時代の流れに乗り遅れまいとしたときの 経験が。  結局、副総裁の失脚により創業家の危機は去 るのだが、篤姫が作りあげた強い結束でつながった ネットワークは、その後も生き続けることになる。  そんな危機を辛くも乗り切った篤姫を、さら なる不幸が襲った。EDOBAKUFUが敵対 的M&Aを仕掛けられたのだ。しかも、M&A を画策しているのは、篤姫の生家である「さつま 財閥」。過去、自身の政略結婚により融和方針 が執られていたが、生家も代替わりによって方向 転換していたのだ。  情報を収集すればするほど、情勢の悪さが浮 かぶばかりで、「このままいけば、創業家はコン ツェルンから追放されてしまう…」と悲嘆に暮れ ていたあるとき、続々と届く情報の中から、ひと りの男の名前が浮上してきた。それは、結婚の 際、さつま財閥の側で結婚のための一切を取り 仕切り、そして、今、敵対的M&Aの陣頭指揮を 執っている男だった。  「彼に相談してみよう。M&Aによって経営陣 から退けられたとしても、創業家を社内に残す ことはできるかもしれない。そうよ、お・も・て・ な・し.じゃない、創業家をま・も・り・た・い.、守 りたい!という思いを伝えれば、きっと…」  そう考えた篤姫に は一縷の望みがあっ た。その脳裏には、 1868(慶応4) 年、薩摩・長州藩を中 心とした新政府軍が 江戸に総攻撃をかけ ようとしていたとき、 新政府軍の指揮官の ひとりである西郷隆盛との交渉を成功に導く 働きかけをしていたころの情景がありありと浮 かんでいたからだ。  大奥に入った後も、養父・島津斉彬との連絡 役を担っていた西郷へ書状を送ることで、幕閣と 新政府軍との停戦交渉を後押しし、江戸城の 無血開城を実現して徳川宗家を守り抜いたこ とはもちろん、江戸の街を火の海にせず守り きったときのことが。  その後、EDOBAKUFUは約260年 にわたる歴史に幕をおろしたが、社内の意見を 取りまとめ、さつま財閥側の譲歩などを引き出 した篤姫の活躍もあって、創業家は一支店長と して社内に残ることに。そして、篤姫は創業家の 新しい当主の養育役として、影になり日なたに なり支え続けた。  一方、EDOBAKUFUに代わり、コンツェ ルンを取り仕切ることになったさつま財閥は、メ イジグループと名を変えて、日本にとどまらず、 世界を股にかけて事業を展開していくのだが、 そこで活躍する維新三傑.と呼ばれる男たち の話は、またの機会に…。 企業の経営トップなどが 最高のパフォーマンスを発揮できるよう、 スケジュール管理や文書作成などの 業務を行い、時に重要な資料作成や 予想外の事態への対応も迫られる秘書。 もしも、そんな現代の秘書を 歴史上の有名人が務めたら…。 今回は、天璋院篤姫(以下、篤姫)が 秘書として社長を支えます。 大奥の精神的支柱だったように、 社長亡き後の会社を支える 江戸城を無血開城に導いたごとく、 敵対的M&Aを軟着陸させる ※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係はありません。 並外れた器量で 江戸の民を救った尼将軍 み まか いち る 19  SPRING  SPRING 18