教育の最適化を実現する
ラーニングアナリティクスとは
教育DXで学修者と教育者の「想い」「学び」を最適化
スマートラーニングは、ICTの活用により、学修者中心の「誰でも・いつでも・どこでも」学べる世界の実現をめざします。
今回は、「教育におけるDX」の現状と今後について、株式会社デジタル・ナレッジの吉田自由児様にお話を伺いました。
INTERVIEW
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吉田 自由児 様
よしだ じゆうじ 様
株式会社デジタル・ナレッジ
代表取締役COO早稲田大学理工学部卒。大学でCAIを研究し同社に創業時から参加。エンジニアとしてeラーニングシステムのパッケージ開発や多くの個別SIに従事。 -
渡邊 茂
わたなべ しげる
西日本電信電話株式会社
バリューデザイン部
スマート10x事業統括部
電子教科書に期待される
教育の更なる「効率化」
吉田新型コロナウイルスの感染拡大が長期化したことで、この3年で教育のプラットフォームが大きく動きました。以前は「教育現場は対面授業こそ学修効果が高い」「電子教科書などを使うeラーニングはリアル授業の代替でしかない」と捉えられていましたが、今では場所を問わず受講できるオンライン授業が当たり前になりました。2024年には小中学校で電子教科書が本格導入されようとしています。しかし、オンライン授業や電子教科書により学修効果が下がるのではという懸念や、講師や学生が使い方に戸惑っているという課題があります。
渡邊そのような現状や課題の解決にICTでお応えしたいと2021年設立したのが、「NTT EDX(エディックス)」です。ICTの基盤やデータ蓄積技術をもつNTT西日本・NTT東日本と、教育コンテンツの制作や配信のノウハウをもつDNPグループ様による合弁会社です。「スマートラーニング」という新たな価値で、「学校中心の学び」から「学修者中心の学び」へとシフトするお手伝いをしています。現在は、大学など高等教育機関が電子教科書をスムーズに導入できるプラットフォームを提供し、教育の高度化による学生の新たな「学び」を実現しています。
吉田近い将来、小中学校で電子教科書を使う世代が大学に入るとなると、高等教育機関からのニーズも非常に高いのではないでしょうか。電子教科書は単に教科書を電子化するだけではなく、さまざまな付加価値も必要とされます。例えば、音声や映像の挿入や、翻訳機能を持たせた外国語教科書の対応機能などが挙げられます。
渡邊電子教科書サービス「EDX UniText」は、教員にとっては利用ログを活用し、学生へ細やかなフォローが可能で、独自で作成した資料を紐づけることができるというメリットがあります。また電子教科書閲覧アプリではメモを取る、ラインマーカーをひくなど紙の教科書でできることに加え、全文検索で気になった語句をすぐに確認できる、教員のコメントを共有できるといった電子教科書ならではの機能もあります。
吉田学生にとっては授業に自宅学修にと一日何時間も使うインターフェースですので、使い勝手の良さも求められるでしょう。また教員側の使い方の多様性も広がると思うので、適宜利用者からフィードバックをもらい改善していく必要があります。
渡邊当初、電子教科書は「機能を覚えるのに時間がかかる」「紙の教科書をもとにした授業導線をそのまま反映するのが難しい」という声もありました。より直感的に使えるように、ツール追加やバージョンアップを行っています。
吉田「タイパ」、つまりタイム・パフォーマンスを気にする学生もいます。限られた時間内で、いかに効率的に学修できるかを重視しているわけです。録画した授業動画を2、3倍速で視聴することは当たり前に行われており、リアル授業よりむしろeラーニングの方が勉強しやすいなどの声も多く、効率化が重視されていることが分かります。
渡邊教員にとっても効率化は大切です。NTT EDXでは、教員によるコンテンツの作成や配信の支援も行っています。教育のDXが進めば、教科書や教材に関わる業務時間はかなり削減されるでしょう。
教育現場+AI技術で
分析データを可視化
吉田デジタル化が可能にした学修傾向の分析によるアウトプットは2つ、「可視化」と「自動化」です。第一は「可視化」。学修データを分析して管理者や指導者に統計データを示し、全体の進捗や学修者のつまずきポイントを提示するということです。学修者には学修進捗や傾向を把握してもらい、気づきを与えます。
渡邊私たちはまさにその領域に取り組んでいます。AI技術を使い、授業中に学生が注視した、またはしていなかったポイントの提示、授業内容と資料を紐づけてどう理解しているか、受講者全体と比較して各自の学修活動はどの程度進捗しているか、の可視化をめざしています。
吉田例えば九州大学では、2016年にラーニングアナリティクスセンターを設立し、教育データの分析研究を行っています。このような仕組みが、学生にとっては自分軸での学びとなり、学修への取り組み改善につながります。
渡邊学修効果を高めるための仕組みがあってこそ、電子教科書を使う意味があると思っています。2022年度は九州大学様、広島市立大学様と共同でラーニングアナリティクスのトライアルを実施しました。今後、実証結果やさまざまな意見を集約し、他大学へもサービスとして展開する予定です。
「自動化」技術で
最適な学びを提示
吉田学修傾向の分析による第二のアウトプットは「自動化」です。データから得られたフィードバックをある程度自動で行い、使う人に合わせて最適化するというもので、将来はこちらが最も重要な部分になると予想しています。
渡邊ラーニングアナリティクスの技術を活用すれば、将来的には学修者それぞれに最適化された「おすすめ」の学修指導を提供できると考えています。
吉田集合知のノウハウが、更なる改善につながるのは面白い世界ですね。ただ、データ分析により「時間をかければ成績が上がる」という、単純な結果が出る場合もあります。なぜその結論が導かれたかという説明性と、他の生徒にも応用できる再現性が要となります。最終的には人の意思が入る必要性も感じます。
渡邊確かにその通りで、AIによる分析だけを見ると、論理的な結果が出ることもあれば、理由がわからない場合もありますので、なぜそうなのか、その結論が本当に合っているのかという視点は重要です。
吉田当社は教育現場や学修のさまざまなステップにおいて価値を提供することに注力しています。御社は仕組みそのものを作り、上流から下流までの流れを作るのがお得意ですね。学修と行動の履歴をつなげることも考えていらっしゃいますか?
渡邊将来的にはそのような情報を起点に、人々の生活をよりスマートに豊かにしていきたいと考えています。学校教育だけではなく、社会人になってからの生涯学習や就職支援、さらには生活、健康といった分野にも活用できればと考えています。
※NTT西日本およびNTT西日本グループにより、教育におけるDXについての課題解決に貢献した事例です。
『教育DX ソリューション』
全文検索や辞書参照など多彩な機能を搭載した「電子教科書サービス」、学修履歴や行動など教育データの分析を行い、個別最適化された学修を指導する「ラーニングアナリティクス」により、高等教育の教育DXに貢献。