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狂言デジタルトランスフォーメーション 特別対談

「ICT×狂言のこれから」

プロフィール

野村萬斎 小林充桂 笹川友里
野村 萬斎

1966年、東京都出身。3歳で初舞台。「狂言ござる乃座」主宰。国内外で多数の狂言・能公演に参加し、普及に貢献する。

小林 充桂

1957年、岡山県出身。1982年、日本電信電話公社に入社。NTT常務取締役などを経て、2018年6月より現職。

笹川 友里

2013年、TBSテレビに入社。制作ADからアナウンサーへ転身し、幅広い番組を担当。2021年2月に退社し、3月より雑誌モデルやラジオ番組の他、プロダクト開発にも取り組む。

特別対談

笹川

小林社長と野村萬斎さんに「ICTと狂言のこれから」というテーマでお話しいただきます。よろしくお願いいたします。

小林

よろしくお願いいたします。

萬斎

よろしくお願いいたします。

笹川

小林社長、この舞台に立たれるのは初めてですか。

小林

3回目です、と言いたいですけれど、初めてです。

笹川

いかがでしょう、お気持ちは。

小林

萬斎さんとご一緒させていただき、本当に記憶に残る一日になりました。伝統的文化の狂言と新しいデジタルやICTの技術とが掛け合わさることによって、すごい化学反応が起こるんじゃないかと、個人的に本当にワクワクしているというのが今の心境です。

連携プロジェクトの 経緯・位置付け

笹川

萬斎さん、連携の経緯についてお聞かせください。

萬斎
野村萬斎

コロナ禍で、どうしてもお客さまが舞台を観に来られないという状況の中で、これからは、配信するということも含めた展開を考えなきゃいけないっていうことと、それから僕自身がずっと「デジタルなもの」と「型」というものの互換性、相性みたいなものを考えていたので、ご縁があって、せっかくのお話なので、大いに僕も興味関心をぶつけたいなと思っています。今回3つの「普及」「活用」「伝承」という、循環するような、それぞれが一方通行ではなくて、それぞれが作用するような、一つの形態ということで打ち出せたのはとても良かったと思っていますし、狂言に限らず、色々な文化が日本にある中で、日本人のアイデンティティーとして、育ててほしいし、育てるという意味は皆さんに継承していくという。継承するためには活用しないと宝の持ち腐れになってしまいますので、そういう意味でもやはり普及と活用と伝承、伝承というと、まるでプロのための伝承だけみたいになりますけれど、それだけではなくて、もっと大きな意味での、とにかく皆さんに狂言という文化を捉え直してほしいなと思っています。

狂言DX 「普及」「活用」「伝承」

笹川

小林社長、あらためて今回の連携の3つのテーマについて教えていただけますか。

小林

「狂言DX」という、非常に華々しい名前をつけさせていただいていますが、具体的には「狂言の普及」、そして「狂言の活用」、「狂言の伝承」、この3つのテーマを共創していこうという取り組みです。

狂言デジタルトランスフォーメーション
  • ※「REALIVE360」は、エヌ・ティ・ティ・メディアサプライ株式会社が提供するサービスです。
  • ※「OriHime」は、株式会社オリィ研究所が提供するサービスです。
  • ※「elgana」は、株式会社エヌ・ティ・ティ ネオメイトが提供するサービスです。
    NTT⻄日本は本サービスの販売取次ぎを実施します。
  • ※「elgana」は、株式会社エヌ・ティ・ティ ネオメイトが商標出願中です。
笹川

この3つのテーマ、一つずつお聞かせいただきたいのですが、まず「普及」についてお聞かせください。

小林

普及というのは、狂言の良さをより多くの方に、なおかつ時間だとか、あるいは場所の制限を超えて楽しんでいただく。最終的に、狂言の楽しさがもっともっと広く国民の間に広がっていく、そのようなことを考えています。

笹川

今回は360度カメラを使ってということなんですけれども、萬斎さん、本当に色々なところにカメラを設置するということで、たとえば目付柱ですとか、道具、鬘桶の中とか、そういう位置というのが我々初心者としたら、どういうことなのかがわからないのですが。

萬斎

はい。とにかくやはり外側から眺めるという感じがこの能舞台の特性ではあるんですけども、よりライブ感を強調するためにカメラが舞台の中にある。それから上から俯瞰的に撮ることによって、舞台に円を作ってまわっていたりするのが非常によくわかるし、本当にこの舞台は、あるのは声と体だけなので、臨場感というものを強調するためにも、外から撮るのではなく、内側から360度で撮ることによって、中に本当に入ってしまうような、そういうリアリティを期待しているというかね。

笹川

とっても深い狂言のファンの方々はもっとニッチな楽しみ方ができて、初心者の我々も「こんな部分があるんだ」という好奇心がかきたてられて、どちらのファン層も楽しめそうですね。

萬斎

それができるといいですね。

笹川

そして、小林社長、2つ目の「活用」についてはいかがでしょうか。

小林

活用はいろいろなケースがあると思いますが、今考えておりますのはまず教育コンテンツというものに狂言が題材にならないかと思っています。お子さん、我々もそうですけど、日本の伝統芸能、伝統文化に触れるというケース、なかなかないんじゃないかと思うのですが、今回狂言を一つのコンテンツにして、なおかつデジタル的な装飾など、色々なことを組み合わせることによって、楽しく狂言に触れていただくことができるのではないかなと。OriHimeという分身ロボットを使って、萬斎さんとも共演していただきましたけれど、自分が能舞台に上がって一演者となって、仮想的にやってみるという、狂言の世界にもっともっと入り込んでみるというような活用の仕方があるのではないか。障がいをお持ちの方も、狂言に楽しく参加できる、あるいは体験できるということも考えられるんじゃないか。もっともっと広げていけたらなと思います。

小林充佳
萬斎

たとえば手をこうやって上げられないにしても、何か違う方法で、目もね、視覚的なことでそういうことを察知してできるという時に、体が動かせなくても動いているかのごとくの何か表現ができるという。だんだん初級編から上級編、プロ編になっていくみたいな、その人の色々なシチュエーションに合わせて変えていくということもできると思うし、でも何よりやはりそういう臨場感というのがあれば、何か発散できるのではないかなと思いますよね。

笹川

狂言ワークショップも一緒にオンライン配信化していくという取り組みもあるんですよね。

小林

そうですね。これからの取り組みですが、よりたくさんの方に見ていただく、万作の会の方々と一緒に作って、それをプラットフォーム化して、いっぱい見ていただくということ、これをやっていきたいなと思っています。

笹川

それがまさに「伝承」という3つ目のキーワードになりますか。

小林

我々もはじめはもっと狭い意味で、センサーをつけてモーションキャプチャーをして、名人の技をお弟子さんに伝えるという、これは第一義的にあると思いますし、それだけではなくて、やはり一般の方にもそれをわかっていただくとか、色々な使い方ができるのではないかと思うんですよね。

オンラインの可能性

笹川

小林社長、ここで伺いたいのは、文化芸能、まさに狂言もそうですけれども、オンライン化するという流れが今後加速すると思います。オンライン化にどんなメリットがあるのか、教えていただけますか。

笹川友里
小林
笹川友里 小林充佳

コロナで、オンラインあるいはリモートは日常化しましたよね。エンターテインメント、文化、あるいはスポーツもオンラインによる配信は本当に予想以上に広がっていると感じます。リアルが素晴らしいというのが前提なんですけど、デジタル技術を駆使して新たな演出を作る可能性があるんじゃないかというのが一つ。もう一つは、時間だとか、あるいは距離を克服して色々な方が一人一人の思いで、パーソナライズして楽しんでいただける。このパーソナルということですね、これが非常に重要だと思っていまして、そういう意味でいくと、オンラインは色々メリットというか、可能性を秘めているんじゃないかと思います。ただですね、やはりこれから先は、リアルとオンラインをどうやってハイブリッドでやっていくかということが非常に重要になるんじゃないかと思います。この能楽堂で実際にご覧になった方が興奮冷めやらないで、お家に帰られて、正面からご覧になったけれども、「あ、こういう角度でも見られるんだ」ということを体験していただく。これはさらに狂言に対する親しみや愛着、楽しみ方が広がるんじゃないか。逆になかなか私みたいに能楽堂に足を運んだことがないんだけれどという方が、はじめにオンラインで体験し、面白そうだなと思って能楽堂に足を運んでいただく。こういうケースもあるんじゃないか。うまくこれが組み合わされば、狂言ももっともっと広がると思いますし、一人一人の心の豊かさも大きくなってくるんじゃないか。そういうふうになればと思います。

笹川

萬斎さん、狂言を楽しみつくすという使い方、いいですね。

萬斎

みんなのものですからね。文化遺産ですから。みんなで楽しみつくさないともったいないですよね。能やら狂言だということがそのものだけではなくて、ほかの日本文化にもつながる美意識であるとか、在り方につながっているんだという、ネット化していく日本文化みたいな、そういうふうにしていくと、豊かになるんじゃないかと思います。

狂言DXへの思い

笹川

萬斎さん、これまで本当にさまざまなデジタル化の取り組みをなさってきた中で、あらためて今回の「狂言DX」への想いをお聞かせください。

萬斎

みんなの狂言、狂言のある日本文化はみんなのものというようなつもりで、まずはその「在ること」を知っていただく。「普及」ということもあるし、そしてそれをみんなの一種の遊び道具としていただいて結構だと思います。活用していただき、何か文化自体をいろいろな形で伝承していただく。その一つにICTというね、技術というものが、今これだけ新しい時代にあるわけですから、大いに活用させていただければ、何よりハッピーという感じでございます。

野村萬斎

今後の展望

笹川

将来の狂言への想いをお聞かせください。

萬斎

色々な「型」というものの使い道であるとか、キャラクターライズ、キャラクターを発展させて、自分の狂言的なアバターを作るとか、そういうようなことだってできると思うんですよ。型はあるけれど、実際にはそこにいる個人のアイデンティティーというか、個性がちゃんと型に宿ってはじめて肉体化した芸になるので、単にデータとしてだけではなく、やっぱりそこに個性が必要であるということまで踏み込めれば。

笹川

小林社長、今のお話、とてもワクワクしますね。

小林

我々の技術、今こうやって、人と人がコミュニケーションをとるときに、身振り手振りを含んでやるじゃないですか。これが将来的にはテレパシー通信みたいなことができるんじゃないかということも言われていますし、そういう研究が進んでいるんですよね。ですから、もっともっと豊かなコミュニケーションが進んでくる。そうすると、演じていらっしゃる方の形、型だけではなくて、どういう気持ちで踊っていらっしゃるんだろうなということは、一人一人演者さんによって違うじゃないですか、そこも楽しめるようになればですね、それをまたICTでサポートできるとなったらもっと素晴らしいし、面白いと思います。

笹川

ICTで社会課題を解決するという意味では、小林社長、やはり「ソーシャルICTパイオニア」という言葉が、キーになってくるかと思います。

小林
野村萬斎 小林充佳

国民の方、非常に打撃を受けて、暗い状況じゃないかなと思いますけれども、ICTで日本を元気にできるお手伝いができればと思います。私はよくビタミンのような存在になりたいと申し上げているんですけど、人が元気に、なおかつ生き生きと生活していくためには、実はビタミンというのが非常に重要なんですよね。それと、ICTやデジタルっていうのは実は似たようなものじゃないかなと。ビタミンを意識して摂っていらっしゃるというよりも、結果的にビタミンを摂取しているということなんですけども、ICTやデジタルも実は裏方でして、豊かな社会だとか、課題を解決してSDGsを実現する、そのための手段だと思うんです。だからうまく活用していただくと、豊かな社会になる。我々の会社も地域の方々のビタミンのような存在になれたらと思っております。

萬斎

フレッシュなのがいいですね。僕も、古典芸能というと古くて化石みたいに思われてしまいますけど、ビタミンを多く摂取してですね、フレッシュなんだと。フレッシュな人間がこの舞台の上でやっているというのが、ライブの重要なところですよね。

笹川

果汁の滴るような。楽しみにしております。お話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

萬斎

ありがとうございました。

小林

ありがとうございました。

審査 20-1956-1