「そうか、君はCIOになったのか
 〜熟練ITコーディネータから新任CIOへの手紙〜」(前編)

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写真:小林 勇治
あなたを待ち受ける5つの“落とし穴” 2014年3月
小林 勇治/早稲田大学大学院講師、中小企業診断士、認定事業再生士、ITコーディネータ
ITコンサルタントとして約30年ものキャリアを積んできた小林勇治氏。中小企業診断協会の相談役やITコーディネータ協会の副会長も務める小林氏が、新任のCIOや情報システム部門のマネジャーなどに向けて、CIOの心構えや、IT投資で陥りがちな5つの“落とし穴”について、手紙形式でやさしく解説する。

プロフィール

1968年日本NCR株式会社入社。流通システム事業部などに勤務後、1985年ITコンサルタントとして独立。イー・マネージ・コンサルティング協同組合代表理事、株式会社マネジメントコンサルタンツグループ代表取締役。流通業・サービス業のIT支援が専門。
一般社団法人中小企業診断協会相談役(前副会長)、特定非営利活動法人ITコーディネータ協会副会長、東京都経営革新優秀賞審査委員長、「日本で一番大切にしたい会社大賞」(経済産業省後援)審査委員。
2012年明治大学専門職大学院修了。「中小企業IT経営革新成功のための諸条件」で、明治大学の優秀修士論文に採択。「中小企業IT経営革新阻害要因 5つのギャップ解消のための提言」で、平成23年度「中小企業経営診断シンポジウム」中小企業庁長官賞を受賞。

主な著書

写真:主な著書

IT投資の成功に不可欠な「5つのギャップ」の克服

常々あなたは優秀な人だと思っていましたが、やはりCIOに選ばれたのですね。おめでとうございます。

情報システム部門の一担当者という立場なら、情報システムのことだけを考えていても務まったかもしれません。けれども、CIOを任されたのであれば、ITプロジェクトを成功させ、IT投資の効果を高めることが求められます。

しかし、それは口で言うほど簡単なことではありません。『日経コンピュータ』が2003年に国内で初めて行ったシステム開発プロジェクトの実態調査によると、プロジェクトの成功率は26.7%、2008年の調査でも31.1%にとどまっています。それ以降の調査は行われていませんが、多少の時代の変化はあるにせよ、IT投資の成功率はあまり変わっていないのではないかと私は推測しています。

この成功率を、あなたはどう受け止めますか。IT投資は、決して生やさしい仕事ではありません。心して取り組まなければ、とんだ落とし穴に落ちてしまうでしょう。

いきなり脅かすようなことを言ってしまいましたね。でも、安心してください。この手紙で説明する「5つのギャップ」を解決することによって、IT投資の成功率は必ず高まると私は考えています。

私はコンピューターメーカーで17年間勤め、その後、ITコンサルタントとして29年間を歩んできましたが、その間、いかにしてIT投資の成功率を高めるかを考え続けてきました。そして、5つのギャップを克服する方法を体得し、体系化したのです。実際、私が関わったIT投資支援の成功率は9割を超えています。5つのギャップを克服するやり方を続けていけば、今後も絶対に失敗しない自信があります。

この5つのギャップを克服できるかどうかが、IT投資の成否を分けると言っても過言ではありません。だからこそ、CIOとして会社の情報戦略を背負って立つあなたには、ぜひ知っておいてほしいのです。CIO就任のお祝いとして、「5つのギャップ克服」をはなむけの言葉としたいと思います。

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まず“落とし穴”の場所を把握しておこう

【プロジェクト全体のギャップ課題】

あなたを待ち受けている5つの落とし穴、つまり5つのギャップは、図表1のようになります。それぞれの説明は箇条書きにまとめました。

図表1 IT・経営革新で生じやすい5つのギャップ

ITコーディネータ協会テキストを参考に加筆修正

  • ギャップ①:経営戦略策定・情報化企画段階等における経営系とIT系プロジェクトメンバー間のギャップ
  • ギャップ②:経営戦略から情報化企画、システム開発へと開発プロセスが進む間に生じるギャップ
  • ギャップ③:組織のトップとロウアー(一般社員等)間の意識のギャップ
    (ロウアーは自己の所属組織の最適化に傾注しやすい)
  • ギャップ④:ユーザーとベンダー・コンサルタント(ITコーディネータ)間のコミュニケーションギャップ
    (プログラム修正や追加費用の要因となっている場合がある)
  • ギャップ⑤:リファレンス(参照先)を活用しようとした場合におけるリファレンス間のギャップ

図中の個々のリファレンスについては、ここでは説明しません。自分で調べるのもいいですし、聞きたいことがあれば、いつでも連絡してください。

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“落とし穴”を避けるには

【プロジェクト全体のギャップ解決策】

IT投資効果を高めるためには、経営系とIT系の革新が必要です。その際、経営系とIT系が別プロジェクトで行われるとギャップが生じて、収拾ができなくなる場合も少なくありません。結果として革新なきIT構築となり、投資効果が落ちてしまいます。

図表2を見てください。プロジェクト全体としてギャップを生じさせないようにするには、経営系とIT系を別々に革新していくのではなく、赤枠部分のように同時併行的に進めていくことが効果的です。私はこれを「ミーコッシュ方式」と名付けています(意味は後ほど説明しましょう)。この方式により、5つのギャップを解消することが可能となります。

図表2 従来型IT構築手法とミーコッシュIT構築手法の相違

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ミキサーで混ぜ合わせるように経営系とIT系を融合

ここからは、5つのギャップの要因と解決策について説明していきましょう。まず、経営系とIT系のギャップの要因としては次のようなことが考えられます。

■ギャップ①

【経営系とIT系のギャップ課題】

経営系のプロジェクト(ビジネスインテグレーション:BI)とIT系のプロジェクト(システムインテグレーション:SI)が別々に進められると、ギャップの要因になります。

また、SIの構築段階においても、BIで策定したことを踏まえてSIの構築を図らないと、BIとSIのギャップの要因になります。プロジェクトのメンバー構成が、経営系かIT系のどちらかに偏っている場合もギャップが生じる要因になります。

この他、経営改革・運用で取り決められた業務プロセスマニュアルと、IT改革・運用のマニュアルなどが別々に作成されると、ギャップの要因になります。

【経営系とIT系のギャップ解決策】

では、このギャップを解消するにはどうすればよいのでしょうか。

通常、BIのメンバーは業務に関するフローのみを作成し、SIのメンバーは情報に関するフローのみを作成することが多いため、それが統合化されていないケースが目立ちます。

先ほど経営系とIT系の革新は同時併行的に進めていくことが効果的だと書きましたが、BIとSIを同じプロジェクトで推進し、図表3のような「ビジネス・情報統合モデル」(これを私はBIIモデルと言っています)を活用するとどうでしょう。BIとSIを統合した表示方式となり、課題が見える化されるとともに、両者の要求と課題認識を共有できるようになります。

図表3はAs-Is(現状)モデルの例を示しています。現状の業務フローを整理して、問題点を浮き彫りにするためのものです。当然、To-Be(革新)モデルも作成し、革新業務フローによって問題点の解決案を具体的に提示します。経営系とIT系のギャップは、BIのメンバーにもSIのメンバーにも理解しやすいBIIモデルを利用すると解消できると思います。ぜひ活用してみてください。

図表3 ビジネス・情報統合モデル(BIIモデル)による課題の見える化

IT投資は通常、ハードウェア(情報機器等有形資産)とソフトウェア(プログラム等知的財産権)の2つの側面から考えることが多いかもしれません。しかし、それでは経営革新を伴わないシステム構築となり、成功率は低いでしょう。成功率を高めるためには、マインドウェア(企業理念、戦略ビジョン、人事・組織管理等の考え方)、ヒューマンウェア(ノウハウやツール等のやり方)、コミュニケーションウェア(EDI・ネットワーク・情報公開等の約束事)の革新も必要です。このこと全体を私は「ミーコッシュ革新」と呼んでいます。

※ミーコッシュ(MiHCoSH)
 Mind Ware、Human Ware、Communication Ware、Soft Ware、Hard Wareの頭文字を取ったもの。

ミーコッシュ革新を実現するには、図表4に示したように、経営系とIT系を融合し、5つのウェアをあたかもミキサーで混ぜ合わせるように一体的に回しながらプロセスを進めていく必要があります。

図表4 経営系(BI)とIT系(SI)と5つのウェア

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トンネル掘削のシールド工法のように各プロセスをシームレスに推進

各プロセス間のギャップの要因としては、次のようなことが考えられます。

■ギャップ②

【各プロセス間のギャップ課題】

経営戦略に基づいて情報戦略が策定されないと、プロセス間のギャップの要因になります。また、情報戦略で定められたものが、その趣旨に沿って情報化企画に的確に落とし込めていない場合も、ギャップの要因になります。さらに、情報化企画に適合したベンダーを選択しないと、概要設計に情報化企画との間でギャップが生じます。

情報化企画に合致しないシステム開発がなされた場合も、ギャップの要因になりますし、運用段階で情報化企画と運用マニュアルにもギャップが生じてしまうので、注意が必要です。

【各プロセス間のギャップ解決策】

では、どのようにすれば各プロセス間のギャップを解消できるでしょうか。

先の図表3で示したBIIモデル等を駆使して、図表5のように、経営系とIT系の統合化を図りながらトンネル掘削のシールド工法のように進めると、それぞれプロセスの違いはあっても、シームレスな状態で同時並行的にオーバーラップしながら展開していくため、プロセス間のギャップを解消できます。

ミーコッシュの5つのウェアの革新は、シールド工法の刃のように同時に推進することによって、プロセスが移行しても、階層を掘り下げながら開発まで進めるようになります。

図表5 経営とITを統合するためのシールド工法

ここまで、5つのギャップのうち「経営系とIT系のギャップ」と「各プロセス間のギャップ」について書いてきましたが、少々長い手紙になってしまいました。

今日のお話はこの辺にして、残りの3つのギャップについては、またあらためて説明することにしましょう。

後編では、「組織のトップとロウアー間の意識のギャップ」「ユーザーとベンダー、コンサルタント間のコミュニケーションギャップ」「リファレンス間のギャップ」の解消法などについて紹介します。
(2014年4月公開予定)

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