オフィスに縛られないワークスタイル(後編)

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写真:佐々木俊尚
「ノマド」が従業員のパフォーマンスを最大化する? 2010年11月
佐々木俊尚/ITジャーナリスト
クラウド時代が生み出しつつある、オフィスに縛られない「ノマド」というワークスタイル。それは企業にとってどのようなメリットがあるのか。また、その実現のためにはどのような条件が必要なのか。「ノマド」は決して非現実的なものではなく、働く意識の変革や生産性の向上にもつながる可能性を秘めている。

プロフィール

1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政経学部政治学科中退。88年毎日新聞社入社。99年にアスキーに移籍し、月刊アスキー編集部デスク。2003年に退職し、フリージャーナリストとして主にIT分野を取材している。
情報ネットワーク法学会会員、経済産業省情報大航海プロジェクト制度検討タスクフォース委員、早稲田大学政経大学院非常勤講師、東京大学情報学環「電通コミュニケーション・ダイナミクス寄付講座」特任研究員。有料メールマガジン「佐々木俊尚のネット未来地図レポート」も配信中。

主な著書

写真:主な著書

オフィスで働く意味を見直してみる

ノマドワークスタイルは、必ずしもフリーランスの人のためだけのものではありません。企業にとっても、従業員ひとりひとりの本当の生産性を上げていくための理念としてノマド的な方法論は重要な意味を持つようになってきています。

たとえばオフィスという存在について根本的に考えてみましょう。従業員が一体となって仕事し、お互いの一体感を高めるためには重要な場所ですが、しかし一方でみんなで一緒の場所にいることによる同調圧力と息苦しさをもたらす場所になってしまっているのも事実です。これは生産性を下げている可能性もあります。

また同時に、同じ場所で仕事をし続けていると、思考もだんだん画一的になってしまうという問題点もあります。

一体感は大切ですが、それと同じぐらいに従業員ひとりひとりのパフォーマンスの最大化を考えているのであれば、同じ場所にこだわらず、それぞれがパフォーマンスを発揮できる場所や時間で仕事をすればよいという考え方を持ち込むということを考えてはいかがでしょうか。

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ある企業の「どこでもオフィス」という試み

たとえば私が取材したあるベンチャー企業では、「どこでもオフィス」という制度を設けて、水曜日は会社に出社しなくてもどこでも仕事をして良い日としていました。

あるスタッフは子供がいる自宅では仕事がはかどらないので、会社近くのハンバーガー店に行って仕事し、飽きてきたら会社に移動し、さらに仕事を続けたりしています。

ひとり暮らしで料理好きのスタッフは、自宅でじっくりと料理をしながら、同時に机に向かって仕事に熱中しています。また別のスタッフは、知人の会社のオフィスで仕事をしています。他社の技術者たちと交流することで自社でできないテクノロジー関連の雑談に花を咲かせ、ストレス解消と同時に情報収集も行えるというメリットがあります。

最近は東京のベンチャー企業の間では、こうした「オフィス交換」のようなことも流行っています。居場所を変えることで気分転換になるのと同時に、情報交換も行えるということで一石二鳥なのです。

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物理的に離れていることから生まれる連帯感

このように「どこでもオフィス」でスタッフが自分たちのやりやすいように自分の仕事をコントロールしていけば、会社に対する不満もかなり減っていくでしょう。もちろん不満はゼロにはならないとは思いますが、たいていの場合、会社への不満は「上司がうるさい」「会社に縛られている感じがする」といった同調圧力に基づくものが多く、ノマド化によってこうした同調圧力を回避できるのは大きなメリットではないかと思います。

逆に従業員同士が物理的に離れていることによって、メールやツイッター、電話などできちんと連絡を取り合わなければならないという義務感が発生し、これによって逆に従業員同士の連帯感が高まるというメリットもあります。チームのメンバーとしてお互いがつながり、自分のやり方でコラボレーションをして仕事をしていこうという責任感も形成されるのではないでしょうか。

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「ノマド」実現のための3つのファクター

写真:佐々木俊尚

ただ、こうしたノマドワークスタイルを会社全体で実現するためには、最低限必要なファクターがあります。それは以下のようなものです。

  • (1)メンバー全員が、徹底した情報共有をできるITスキルを身につけて
      いること。
  • (2)メンバー全員が、自分を律するコントロール力を持っていること。
  • (3)セキュリティが保たれるようにつねに細心の注意を払うこと。

クラウドを活用して仕事をするためには、クラウドのツールを駆使できるパソコンやインターネットの知識がどうしても必要になります。

また外出先では、会社の上司や同僚の「目」はありません。だから仕事をさぼってマンガを読んだりしていても、誰にも怒られません。すっかり夢中になって、仕事はどこかに行ってしまって……ということになってしまいます。

おまけにインターネットには、ありとあらゆる情報があふれています。気がつけば仕事と関係のないブログや掲示板を読みふけってしまっていて、いつの間にか時間が過ぎていた……という経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。これではノマドワークスタイルの意味がありません。

だから自分の集中力をどうやってコントロールし、注意が散漫になってしまわないようにして、仕事に集中できる気持ちを作り出せるかどうかは非常に重要な課題となっています。

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「オフィスに縛られない経営」が秘める可能性

そして第三に、外出先では重要な企業秘密や顧客データベースなどを扱わないといったポリシーを確立するのが非常に重要です。インターネット上のサーバーコンピューターでデータを管理するクラウドの場合、パソコンのハードディスクにデータを保存するよりもずっと安心でセキュリティも高いというメリットはあるのですが、しかしカフェなどではパソコンの画面が赤の他人に見られてしまう可能性もありますし、注意が必要です。

だからノマドワークスタイルを導入していこうとすれば、まずこうしたファクターを満たすことに留意しなければなりません。しかし逆に言えば、こうしたファクターを用意することができれば、今よりもずっと高い生産性と豊かな社会生活を従業員同士で享受できるようになるということなのです。

将来は、このようなノマドワークスタイルが一定度合いで日本の企業社会の中にも入り込んでくるのではないかと私は考えています。

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