オフィスに縛られないワークスタイル(前編)

  1. NTT西日本 公共・法人HOME
  2. 最適経営のヒント
  3. 著名人が語る
  4. オフィスに縛られないワークスタイル(前編)
写真:佐々木俊尚
クラウド時代が生み出す「ノマド」たち 2010年10月
佐々木俊尚/ITジャーナリスト
IT分野を中心に精力的な取材、発言を行っているITジャーナリストの佐々木俊尚氏。IT業界のビジネス動向、電子書籍をはじめとするメディアのあり方から、日本の情報通信の将来像まで、カバーする範囲は幅広い。クラウド時代の到来は、いまビジネス現場をどのように変えつつあるのか、佐々木氏がその最先端を語る。

プロフィール

1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政経学部政治学科中退。88年毎日新聞社入社。99年にアスキーに移籍し、月刊アスキー編集部デスク。2003年に退職し、フリージャーナリストとして主にIT分野を取材している。
情報ネットワーク法学会会員、経済産業省情報大航海プロジェクト制度検討タスクフォース委員、早稲田大学政経大学院非常勤講師、東京大学情報学環「電通コミュニケーション・ダイナミクス寄付講座」特任研究員。有料メールマガジン「佐々木俊尚のネット未来地図レポート」も配信中。

主な著書

写真:主な著書

オフィスを持たないフリーランスの増加

アメリカでも日本でも、フリーランスで仕事をする人が非常な勢いで増えています。

引き金となったのは、二年前のリーマン・ショックです。この影響で仕事を失った人たちがやむなくフリーランスになっていったという背景事情があるのです。たとえばニューズウィーク日本語版は昨年二月十八日号の『正規雇用なんてもう古い』という記事で、こう説明しています。

「米労働統計局によると、昨年(二〇〇八年)12月にはアメリカのどの州でも失業率が上昇した。この13カ月で250万人の正規雇用が失われ、経済のフリーランス化が進んでいる。(中略)かつてフリーランスを選択するのは、たいてい家族と過ごす時間や趣味を使う時間を確保したい人たちだった。しかし今は、やむなくフリーランスになっている人が多いようだ」

日本でもベンチャー業界ではこのようなスタイルで仕事をする人たちが増えており、会社に属さず、プロジェクトが立ち上がるごとにチームを結成するフリーランスの集団や、オフィスを持たないアメーバのような企業体が数多く現れてきています。

PAGETOP

世界不況が働き方を変えつつある

もちろん農業や製造業など、第一次・第二次産業の場合には「現場」「工場」などが必ず仕事にひも付いていますから、仕事場=オフィスを持たない仕事が可能になるわけではありません。だからオフィスを持たずに仕事をしているフリーランスの人たちの多くは、プログラマーやPR、企画、あるいは私のような文筆業など、現場や工場が必ずしも必要ではない業務を担っている人たちです。

たとえば企業のPRの場合、仕事の多くは新聞やテレビの記者たちと会って情報を提供することです。この場合、必ずしも会社にいる必要はありませんし、組織に属してPRを担当している正社員の場合でも、多くの記者に会うため社外を駆け回っているという人が大半でしょう。

私はこうした仕事のスタイルを「ノマド」と呼んでいます。ノマドは、日本語に直訳すれば「遊牧民」。北アフリカの砂漠や中央アジアの草原で、羊や牛を追って生活している人たちのことです。遊牧民がラクダという砂漠で最強の乗り物を駆り、オアシスからオアシスへと移動しながら生活しているように、狭苦しいオフィスを出て、無線ブロードバンドが使えるカフェや自宅を転々としながら仕事をしている人たちもノマドなのです。

世界的な不況によって、働き方が変わろうとしています。大企業に頼っていても、いつ倒れるのかわからない。リストラも激しい。だったら思い切ってフリーとして独立し、自分自身で人生を切りひらこうと考える若者が増えてくるのは、必然的な進化の流れかもしれません。

PAGETOP

「ノマド」的ワークスタイル登場の背景

こうしたノマド的なワークスタイルが実現できるようになった背景には、技術の進化もあります。以前はオフィスや自宅の外で仕事をしようとしても、連絡手段がありませんでした。しかし携帯電話が普及し、さらには無線ブロードバンドによってパソコンで屋外でもインターネットに接続できるようになった結果、どこでもメールや電話で連絡が取れるようになりました。

また「クラウド」の普及も重要なキーポイントです。クラウドというのは、インターネットという雲(クラウド)の向こうにあるアプリケーションソフトやデータを手元のパソコンで操作する仕組みのことです。

たとえば代表的な例は、『グーグル・ドキュメント』というサービス。ウェブブラウザーを使ってグーグル・ドキュメントにアクセスすると、ブラウザの画面の中でワープロや表計算などのソフトを使って、文書や表を作成することができます。マイクロソフトの主力製品『ワード』『エクセル』と比べてもさほど遜色はありませんが、マイクロソフト製品が三〜五万円と高価格なのに対して、グーグル・ドキュメントはいっさい無料です。

PAGETOP

「クラウド」ならオフィスも外出先も同じ

写真:佐々木俊尚

これまでは私たちが「コンピューターを使う」と言った時、それは手元のパソコンの中ですべての作業を行うことを意味していました。ところがクラウドの世界では、手元のパソコンは単なる「画面のついたテレビリモコン」ぐらいの存在に過ぎません。キーボードから入力された文字や指令はパソコンの中で処理されるのではなく、インターネットの雲を通じて、その向こうにある巨大コンピューターに送られます。そこですべての計算や処理は行われ、結果のデータがまたネット経由でこちらに送られてくるのです。手元のパソコンは単にその結果を表示しているに過ぎません。これがクラウドです。

データやソフトがすべてクラウドに置かれている状態なら、オフィスからでも外出先からでも、まったく同じようにデータを扱えます。オフィスで読み出してしまったメールでも、外出先からも再びチェックすることができます。

PAGETOP

ノートパソコンすら持たずに出張へ

この結果、オフィスにいなくてもどこでもパソコン一台あれば仕事ができる環境が整ってきたということがあります。メールや文書作成からスケジューリングまで、インターネットに接続されたパソコンであれば、出張先でも出勤途中でもオフィスと同じようにデータを扱えるようになりました。

たとえばグーグルの技術者は、出張の際はノートパソコンさえ持ち歩かないといいます。そのかわりに彼らはアイフォーンやアンドロイドなどのスマートフォン(多機能携帯電話)を携帯し、メールなどのたいていのやりとりはこの上で行ってしまっているそうです。

おそらく将来は、フリーランスの人だけでなく企業に属する社員も、このように無線ブロードバンドとクラウドを駆使してどこでも自在に仕事をできるようになる時代になってくるのではないかと思います。

後編では、「ノマド」というワークスタイルが企業にもたらすメリットや、その実現のための条件などについて紹介します。(2010年11月中旬公開予定)

PAGETOP

本ホームページに掲載されている会社名、商品名は一般にメーカー各社の登録商標または商標です。
本ホームページの無断転載、引用はお断りいたします。
Copyright(c)NTT西日本 ビジネス営業本部 企画部

PAGETOP

審査 16-2826-1

Copyright(C) 1999-2017 西日本電信電話株式会社
バックナンバー RSS