社員の「承認欲求」を刺激せよ(前編)

  1. NTT西日本 公共・法人HOME
  2. 最適経営のヒント
  3. 著名人が語る
  4. 社員の「承認欲求」を刺激せよ(前編)
写真:太田 肇
みんな認められたがっている 2010年2月
太田 肇/日本表彰研究所所長、同志社大学教授
組織にとって永遠の課題ともいえるモチベーション。多くの企業が社員のやる気をどう引き出すかに腐心している。個人尊重の組織論者として知られる太田肇教授は、人間の動機付け要因の一つである「認められたい」という承認欲求に着目。絶大なパワーを秘めた承認欲求を経営に生かす方策として「表彰」を活用することを提唱する。

プロフィール

1954年兵庫県生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。京都大学経済学博士。国家公務員、地方公務員を経験後、三重大学人文学部助教授、滋賀大学経済学部教授などを経て、2004年から同志社大学政策学部教授。2008年からは日本表彰研究所の所長も務める。日本労務学会副代表理事。
専門は組織論、人事管理論。特に、個人を生かす組織・社会について研究。1993年『プロフェッショナルと組織』(同文舘)で組織学会賞、1999年『仕事人と組織』(有斐閣)で経営科学文献賞、2001年『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書)で中小企業研究奨励賞本賞を受賞。

主な著書

写真:主な著書

「認められる」ことがやる気を生み出す

いつもふて腐れ、上司や先輩には無礼な態度を取る問題社員に周りは手を焼いていた。ところがあるとき、顧客の間で意外に彼の評判が良いのを知った上司は、そのことを彼に伝えてやった。すると彼の表情や態度が一変し、トップクラスの業績を挙げる優良社員に生まれ変わったーー。

ある女性の新入社員は仕事に自信が持てず、いつも上司に「会社を辞めたい」と泣き言を言い続けていた。そんな彼女も、客から感謝の印としてもらった一束の花がきっかけですっかり自信を付け、それ以来、自信満々で働いているーー。

逆の話もある。

かつて、日本を代表するメーカーで、若手社員が大量に離職したことがあった。当初は「他社から高給で引き抜かれたのではないか」と思われていたが、追跡調査してみると、上司や先輩が忙し過ぎて「認めてもらえなかった」ことが最大の原因だと分かったそうだ。

PAGETOP

なぜ成果主義は失敗したのか

いっとき注目された成果主義は、予想していた以上に社員の不満や不公平感が強く、早々と見直したり撤回したりする企業が相次いだ。

不満や不公平感の源は、金銭そのものではなく、成果主義が「プライド」を傷つけたことにある。同僚と比べて月給がたかだか千円、ボーナスが1万円程度少ないだけでも、それが自分の能力や貢献度に対する評価である以上、納得できる理由がなければ許せない。

すなわち成果主義の失敗は、金銭の背後にあるプライドや、認められたいという欲求、すなわち「承認欲求」を過小評価したことが主な原因だと言ってよい。

PAGETOP

人は「承認欲求」によって動かされている

私たちの日常を振り返ってみると、職場でのトラブルのほか、家庭における親子や夫婦、嫁姑のいさかいは、実利よりも「面子」や「意地」「嫉妬」などによって引き起こされているケースが多いことが分かる。国家間、民族間の紛争も多くの場合、国民や民族の「誇り」が絡んでいる。そして誇りや面子、意地、嫉妬などは承認欲求と関係が深い。

人間にとって承認欲求はそれほど重要なのだ。

多くの人間は、経済的なインセンティブや自己実現欲求などよりも、むしろ承認欲求によって強く動かされているのであり、私は経済学や経営学で仮定されている「経済人※1」「自己実現人※2」ではなく、「承認人※3」仮説に立つべきだと主張している。

※1 経済的合理性に基づいて、自己の利益を最大限に追求するように行動する人間像。
※2 自己の能力や可能性を最大限に発揮して具現化したいとの欲求に基づいて行動する人間像。
※3 承認や名誉、あるいはプライドや面子によって動機付けられる人間像。

PAGETOP

「表の承認」と「裏の承認」

けれども日本人は、認められたいという欲求をなかなか表に出さない。よくいえば奥ゆかしいのだが、うっかりそれを表に出すと周りから妬まれたり足を引っ張られたりすることを知っているからでもある。わが国の組織や社会では、優れた個性や能力、業績をたたえる「表の承認」よりも、分や序列をわきまえ和を乱さないことをよしとする「裏の承認」の方が優勢なのだ。

職場でも特定の社員を褒めると人間関係が悪化し、褒められた本人が孤立してしまうことがあるので、上司は部下を褒めることをためらう。気軽に相手を褒めるアメリカ人などとは対照的だ。

このような「裏の承認」ばかりだと社員は萎縮し、意欲を失ってしまう。

社員のやる気を引き出し、潜在能力を発揮させるには、個性や長所、功績などを褒めたり認めたりする「表の承認」をもっと増やさなければならない。それが組織を活性化し、社会に活力をもたらすことにもつながるのだ。

PAGETOP

表彰を活用して「表の承認」を広げよう

そこで注目したいのが「表彰」である。表彰は小学校・中学校の皆勤賞や努力賞、スポーツや芸術の優秀賞など私たちにとってなじみの深い制度だ。また、大抵の会社や役所には社長賞、功労賞、永年勤続表彰といった表彰がある。

しかし、その割に人々の関心は薄いし、十分活用されてもいない。中には制度があっても眠ったままだったり、マンネリ化して毎年順繰りで受賞者を決めたりしているケースもある。もったいないことだ。

考えてみれば、表彰はわが国の組織・社会風土に合った制度である。日本人は伝統的に名誉を重んじる。また、仲間内では出る杭を打ったり足を引っ張り合ったりするが、制度によって公式に認められた者は尊敬する。学歴、役職、資格もしかりである。従って表彰は、「表の承認」を日本の組織や社会に広げていくのに有効な制度だといえる。しかも、表彰で贈るのは金銭ではなく「名誉」であるため、コストはそれほどかけずに済む。

こうした表彰の効用と可能性に着目して、私たちは2008年、表彰文化を広めるために「日本表彰研究所」を設立し、表彰制度の研究と普及啓発に当たっている。

国内外の表彰制度を調べてみると、業種や規模を問わずさまざまな企業や事業所が表彰制度を導入し、活用していることが分かった。企業によっては、社員のやる気、仕事ぶり、職場の空気を一変させるほどの効果を挙げているところもある。それらの表彰制度を私は3つのタイプに分類した。

後編では、それぞれの目的と効果、ならびに運用する際のポイントなどを説明する。

後編は2010年3月上旬公開予定。

PAGETOP

本ホームページに掲載されている会社名、商品名は一般にメーカー各社の登録商標または商標です。
本ホームページの無断転載、引用はお断りいたします。
Copyright(c)NTT西日本 ビジネス営業本部 企画部

PAGETOP

審査 16-2826-1

Copyright(C) 1999-2017 西日本電信電話株式会社
バックナンバー RSS