情報メディア第4の波 「デジタルサイネージ」とは何か(後編)

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写真:中村 伊知哉
日本は世界一のサイネージ大国へ 2011年1月
中村 伊知哉/慶應義塾大学教授、デジタルサイネージコンソーシアム理事長
広告メディアにとどまらず、地域活性化などさまざまなシーンで活用が広がっているデジタルサイネージ。今やビジネスに不可欠なツールとなったインターネットと同様に、デジタルサイネージも企業の競争力を左右するような存在となる可能性を秘めていると中村氏は言う。

プロフィール

1961年京都府出身。京都大学経済学部卒業。慶應義塾大学博士号取得。ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て、1984年郵政省(現・総務省)入省。退官後、1998年MITメディアラボ客員教授。2002年スタンフォード日本センター研究所長。2006年から慶應義塾大学教授。
内閣官房知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会会長、情報通信審議会専門委員、文化審議会著作権分科会専門委員、文部科学省学校教育の情報化に関する懇談会委員、文部科学省コミュニケーション教育推進会議委員。社団法人「融合研究所」代表理事、デジタルサイネージコンソーシアム理事長、デジタル教科書教材協議会副会長、NPO「CANVAS」副理事長、ミクシィ社外取締役などを兼務。
インターネット草創期から日本の通信・放送の最前線で活躍。コンテンツビジネスやポップカルチャーの動向にも精通し、『デジタルのおもちゃ箱』(NTT出版)『日本のポップパワー』(日本経済新聞出版社)などの著書もある。

主な著書

写真:主な著書

日本はサイネージのトップランナー

── 海外でもデジタルサイネージ(以下サイネージ)は盛んですね。

写真:中村 伊知哉

少し前まで、数の上では日本よりも海外の方が進んでいた時期がありました。サイネージの数が多いのは、まず上海、アメリカではニューヨークやラスベガスです。つまり人口や商業施設が密集している街にサイネージが多くなっています。

それらの街ではもともとネオンサインが多かったという状況があり、ネオンがサイネージに置き換わるのが早かったといえるでしょう。

ただ、海外のサイネージはまだスタンドアローンの端末が多く、ネットワークに対応していません。中国では人件費が相対的に安いので、ネットワーク配信するよりも人海戦術でコンテンツを入れ替えた方が、場合によってはコストが安くなるのです。

アメリカでは、ウォルマートの全店舗2,000店以上にサイネージが導入され、しかもネットワーク化されていて一斉更新できるという事実はあるのですが、コンテンツは一方向に流れる画一的なものです。インタラクティブではないのです。

流れているコンテンツをしばらく見ていると分かるのですが、海外では同じ情報を繰り返し流しています。ディスプレーは立派でも、コンテンツが面白くありません。それまで看板だった場所をサイネージに置き換えるのはいいとして、画面1枚1枚を企業が広告スペースにしているだけでは見ている人が飽きてしまいます。

それに対し、渋谷にあるビルの壁面を使った4面サイネージなどは、あるときは4面すべてを使って一つのコンテンツを流し、あるときはそれぞれ別のコンテンツを流すというようにバリエーションが豊富です。演出力、空間コーディネートでは日本のサイネージが勝っています。国際的にも日本型サイネージは注目されるのではないでしょうか。

── 海外と日本のサイネージを比較すると、ほかにどんな違いがあるでしょうか。

日本ではブロードバンドが固定でも移動でも普及しているので、サイネージのインフラ面で優位性があります。

コンテンツに関しても日本の方が優位です。ハリウッドに代表されるような重厚長大・高精細の、プロフェッショナルのコンテンツではアメリカは確かに強いでしょう。ただ、サイネージに向いたコンテンツかというと、必ずしもそうではありません。

日本のサイネージの特長はインタラクティブということです。情報提供者が自分で情報を入れ替えることに加え、サイネージの画面を利用者自身が操作する、フェリカなどを使ってケータイにコンテンツをダウンロードする、そういったインタラクティブなサイネージは日本が一番進んでいます。日本人は情報リテラシー、情報発信力が高いのです。これはケータイ文化の副産物でしょう。商店主が自分でコンテンツを発信できるというのも日本ならではの強みだといえます。日本人はすっかり慣れてしまっていて、そのすごさを実感できていないのですが、海外から見ると進んでいるのです。

写真:正面全体がタッチパネルディズプレーになっている自販機(広島市役所ロビー)

また、日本企業の総合力も侮れません。清涼飲料水の自動販売機とサイネージがドッキングした端末があり、ケータイとサイネージは当たり前のようにドッキングしています。明らかに日本が先行しているので、今のうちに実績を積んでビジネスモデルを確立することができれば、世界に普及させていくこともできるでしょう。

── 日本のライバルになりそうなのはどこの国でしょうか。

日本が強いハードとネットワークとコンテンツの3点で、同じように国際競争力があるのは韓国です。液晶ディスプレーで韓国勢は強く、ブロードバンドでも強い。コンテンツでは韓流ドラマやK-POP(ケイ・ポップ)などがありますから。

現状では日本と韓国がサイネージの2トップです。「共に世界をリードしましょう」というくらいの気概で、戦略的に普及活動を進めていきたいですね。

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サイネージのエキスパートの養成は緊急課題

── サイネージがさらに普及・発展していくための課題にはどんなものがありますか。

写真:中村 伊知哉

まずは、さらなるコストダウンを図ることです。それによってローエンドのニーズが大きく広がります。デジタルサイネージコンソーシアムでは、コストダウンに欠かせない標準化作業に取り組んでいるところです。

また、広告用途に関しては、サイネージの導入効果が測定できるようにすることも求められます。もちろん、広告用途以外にもサイネージの利用用途を広げていく市場拡大のための啓発活動も必要です。

今、私が問題意識を持っているのは人材です。サイネージ空間を演出するプロデューサーが圧倒的に足りません。メーカーの人は端末、通信業界の人はネットワーク、広告業界の人はコンテンツ、と各分野の専門家はいるのですが、トータルでその場にふさわしいサイネージをプロデュースできる人材が少ないのです。ハードとソフト、設計と演出の両方分かる人材が必要です。市場拡大をめざす上で、人材の課題はとても大きいと感じています。現在はサイネージについて体系立てて教育し人材を養成するプログラムも存在しないので、大学に「サイネージ学科」を創設できるくらいにしたいですね。

サイネージに流すコンテンツの著作権処理も大きな課題です。サイネージの種類によって、放送に該当するものと通信に該当するものとがあるので複雑化しています。スムーズに権利処理を進めていくには、権利者と事業者の双方にメリットのある解決策が必要です。

── 「通信と放送の融合」は、サイネージにも影響がありそうですね。

テレビの広告市場が伸び悩む中、テレビ局が、保有する多くの番組やコンテンツ制作力を生かし、ウェブやケータイといった通信の市場に進出しています。

一方で、テレビ局が保有している電波の中でまだ活用されていない周波数帯をサイネージ向けに活用できるのではないか、ということも、通信と放送の融合の枠組みの中で考えるべきテーマでしょう。

テレビ、パソコン、ケータイに続く、サイネージという第4の波を、どのように新たな市場の創出につなげ、どのようにビジネスチャンスにしていくかが問われています。

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まずはサイネージを使ってみよう

── サイネージに関して、何か新しいビジネスの種はありますか。

写真:中村 伊知哉

今年に入って電子書籍やデジタル教科書が脚光を浴びていますが、これも一種のサイネージといえます。言い換えると、サイネージ端末が進化して安くなり、みんなが持てるようになったということです。つまり、サイネージ市場が拡大しているわけです。端末とネットワークとコンテンツの三つを活用したビジネスが、ここにきて一斉に花開いていると考えればよいでしょう。

この状況を、出版業界から見ると電子書籍になり、教育産業から見るとデジタル教科書になります。このように業界ごとに切っていくと、例えば医療産業から見れば「患者さんとのコミュニケーションに使えるのでは」などと具体的な利用シーンが膨らんでいき、ビジネスチャンスもつかみやすくなるのではないでしょうか。

── 最後に、サイネージの活用を検討している人にアドバイスをお願いします。

インターネットが普及し始めたころ、「本当にビジネスに役立つのか?」と懐疑的な人がたくさんいる中で、いち早く活用して商圏や顧客を拡大し、飛躍的に成長した企業があります。その一方で、乗り遅れた企業もたくさんありました。

サイネージの効果に懐疑的な人も、インターネットの初期のころと同じことを言います。今はサイネージを広告という位置づけでしかとらえられていないのかもしれませんが、10年後には広告だけにとどまらない「当たり前のメディア」になっていくはずです。

iモードが出てきたときにも「あんな小さな画面で使えるのか?」「キーボードがなくて大丈夫?」といった声がありましたが、10年を経た今、当たり前のように使われています。新しいメディアには慣れが必要で、ウェブもケータイも慣れるために時間がかかっているのですが、サイネージに慣れるための時間はずっと短いと思います。

サイネージは消費者向けというイメージが強いかもしれませんが、既に企業が社内でサイネージを活用しているケースも増えています。例えば、従業員すべてにパソコンが配備されていない工場などで情報の共有や伝達に利用したり、単なる“壁紙”となりがちな掲示板の代わりにサイネージを導入し、動的コンテンツを流して注目度を高めたり、といった事例が見られます。

今後、業種や組織の規模を問わず、ビジネスシーンでの活用方法は無限に広がっていくでしょう。今やウェブが企業の競争力を左右する時代となっていますが、サイネージもそうした存在になる可能性が高いのです。

コスト面でも、運用面でも、サイネージは気軽に使える状況になっています。まずは気軽に試してみてください。そこからさまざまなチャンスが広がっていくはずです。ウェブがそうであったように。

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