「競争しない」マーケティング(前編)

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写真:齊木 乃里子
他社より「もっと良いもの」のワナ 2009年12月
齊木 乃里子/株式会社日本総合研究所 マーケティング戦略クラスター長 主任研究員
ものが売れないといわれる中、価格競争が熾烈さを増している。商品の高機能化にしのぎを削っても、価格の下落は止まらない。終わりなき消耗戦の果てに、企業の収益は悪化し、疲弊していく……。一体どこに活路を見出せばいいのか。日本総研の齊木乃里子マーケティング戦略クラスター長は、「競争しない」という選択こそが、低価格競争の泥沼から抜け出す道だという。

プロフィール

1994年京都大学経済学部卒業。99年同大学院経済学研究科博士後期課程修了、名古屋商科大学非常勤講師。2000年近畿大学非常勤講師を兼任。2001年日本総研入社。2006年から現職。
大企業から中堅中小企業までのブランド戦略、新商品開発、営業力強化、新規事業戦略、CS戦略などの支援コンサルティングに従事。
経済学博士。日本商業学会会員。農林水産省「農協の新事業像の構築に関する研究会」委員など歴任。

主な著書

写真:主な著書

「マーケティング」を誤解していませんか?

昨年のリーマンショックから1年以上経ちました。業種・業界を問わず、広く不況の嵐が吹き荒れ、今もなお、多くの企業が苦境に立たされています。

この不況に打ち勝ち、成長し続けるためには、はっきりとした「顧客から選ばれる理由」が必要です。その「理由」をつくり出すカギは、「競争しない」マーケティングの実践にあります。

しかし、マーケティングという言葉ほど、人によってまちまちな理解をされている言葉は少ないでしょう。ある人は「商品をたくさん売る技術」ととらえ、またある人は「広告や宣伝」と考えていたりします。極端な例になると、市場調査のことだととらえていることもあるようですが、これらはいずれも間違っています。

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「競争しないこと」がマーケティングの究極の目的

マーケティングとは、簡単にいうと「自分(自社)だけの市場を創るための仕掛け」のことです。

「自分(自社)だけの市場」とは、自社の商品やサービスに対して、「これじゃないとダメ」「これがあって良かった」と言ってくれる顧客のこと。このような顧客がいれば、他社と「競争」はしなくてもよいのです。

「仕掛け」というのは、単なる販売や広告といった活動のことではありません。ターゲットである市場に向かって、商品内容から売り方、伝え方まですべてが矛盾なくデザインされたシステムであることを指します。

つまり、「これじゃないとダメ」と思ってくれる人(もしくは組織)を、商品の販売を続けていける数だけ集め、売れるように企画し、売れるように作り、売れるように伝え、売れる所で、売れる値段で売るーー。この活動すべてを一貫性を持って行うのがマーケティングなのです。

これによって、他社と「競争」しないで済む状態をつくり出すのが究極の目的です。

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「競争に勝つ」戦略の落とし穴

これまでは、「競争優位」という、他社と比較した際に顧客から高く評価されることをめざした戦略が多く語られてきました。

もちろん、顧客に高く評価され、選ばれることは非常に重要です。しかし、比較される対象がある場合は、しばしば厄介な羽目に陥ってしまいます。

なぜなら、選ぶ側は「後から出てきたもの」や「相対的に良いもの」をそれほど評価しないからです。そして、多くの企業はそのことに気付いていません。

人は、後から出てきたものが先行商品の持つ欠点を克服していたとしても、「二番煎じ」と見なし、「良くなった部分」のコストを負担しようとはしません。それは、企業にとって、改良のためにかけたコストを価格に転嫁させてもらえないということを意味します。

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「他社よりもっと良いもの」では報われない

先行商品のリニューアルを例に考えると分かりやすいでしょう。

例えば「小さい」「早い」が売りだったとして、それが「もっと小さくなった」「もっと早くなった」といったところで、提供側の思いの何分の一しか、選ぶ側には理解してもらえないことが多いのです。

「それなら、その『もっと○○』が技術的にどれだけスゴイことなのかをきちんと伝えればいいではないか」と考える人もいるかもしれません。しかし、「相対的な良さ」を伝えようとすればするほど、市場は「そんなにムキになって言うことか?」と冷ややかな態度になりがちです。

そもそも「ムキになって説明しなければ理解されないような“良さ”」ならば、結局その程度だということなのです。

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「もっと良いもの」ではなく、「違うこと」「別のこと」を提供する

既に世にあるものと比較される限り、せっかく生み出した「もっと良いもの」や「もっと良いこと」が素直に受け入れられないとしたら、めざすべきははっきりしています。

それはズバリ、「もっと良いもの」ではなく、「違うこと」「別のこと」を提供するということ。キーワードは「第一人者」「オリジナル」「ホンモノ」です。

「それができたら苦労しないよ」という声が聞こえてきそうですね。しかし、理解されることもない小さな改良を積み重ね、それを一生懸命伝えているにもかかわらず、結果として値下げ対象になってしまうことの方が、よっぽどつらいのではないでしょうか。

「違うこと」「別のこと」といっても、この世の中で誰も見たことのないような奇抜なものを見つける必要はありません。

例えば、任天堂の「Wii」は、「ゲームの初心者」に目を向けることにより、それまでの「ゲーム愛好者」が重要視していた「画像のきれいさ」といったスペックを大幅に切り捨て、「自ら体を動かして遊ぶ」などの分かりやすさを追求した結果、大ヒットとなりました。「ゲームをする人とはどういう人か」について、これまでと全く「違う」目線で見ることで、これだけ多くの人に受け入れられたのです。

ミツカンの納豆「金のつぶ あらっ便利!」は、「納豆の上のフィルム」をはがして「小袋入りのたれ」をかけてから混ぜる、というこれまでの納豆の常識を、「ゼリー状のたれ」を採用することによって打ち破り、「開けてすぐ食べられる便利さ」を求める消費者から高く評価されたわけです。

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市場を区切れば、競争から抜け出せる

この二つの成功事例はともに、大きな技術的努力が背景にあるのはもちろんですが、着目してほしいのは、「幼児から高齢者まで楽しめるゲーム」といえば「Wii」であり、「開けてすぐ食べられる納豆」といえば「金のつぶ あらっ便利!」であるということです。単なる「ゲーム」や「納豆」ではなく、「○○なゲーム」「○○な納豆」というように、市場を区切って新しいカテゴリーをつくったのです。

これにより、この二つの商品はその区切った分野(カテゴリー)での「第一人者」「オリジナル」「ホンモノ」となり、「これじゃないとダメ」と思ってくれる顧客を集め、競争しなくても済むようになりました。

つまり、競争しなくて済む「第一人者」とは、「○○な◆◆」というように、市場を明確に区切った商品に与えられる称号なのです。

この「○○」を見つけるコツは、後編でお話しいたします。

後編は2010年1月上旬公開予定。

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