どうすれば消費者に分かりやすく伝わるのか(前編)

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写真:池上 彰
相手に対する「思いやり」が分かりやすさを生む 2009年10月
池上 彰/ジャーナリスト・元NHK「週刊こどもニュース」キャスター
NHK「週刊こどもニュース」はその名のとおり子ども向けの番組だが、実は大人のファンが大勢いる。複雑で難解な出来事を子どもにも分かるように伝えるこの番組で11年間にわたってキャスターを務め、「分かりやすさ」を追求し続けてきた池上彰氏に、企業が消費者とコミュニケーションする上で大切なことは何かを聞いた。

プロフィール

1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年NHK入局。報道記者として事件、災害、消費者問題、教育問題など担当。
94年から2005年まで「週刊こどもニュース」のキャスター(お父さん役)。同年NHK退職。現在、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。
『高校生からわかる「資本論」』『「見えざる手」が経済を動かす』『経済のこと よくわからないまま社会人になってしまった人へ』など経済関係の著書も多い。

主な著書

写真:主な著書

「断片的な知識」がつながると「分かった!」となる

── 池上さんはNHKの記者時代から「分かりやすく伝えること」に力を注ぎ、「分かりやすさとは何か」を考え続けてきたそうですね。そもそも「分かりやすい」とはどういうことなのでしょうか。

何かについて説明を受けたりして、「あぁ、そういうことだったのか!」と思わずひざを打つようなこと。これが「分かる」ということですよね。自分の持っていたバラバラな知識が、その説明を聞くことで一つにつながったとき、初めて「分かった!」となるのです。

つまり、断片的な知識を、整合性のある一つのものとして結び付けてくれるような論理や理屈を提示されたときに、人は「分かりやすい」と感じるのです。

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どこまで相手の立場になり切れるか

── では、「分かりやすく伝える」にはどうすればいいのでしょうか。

人によって、持っている知識の量は様々です。例えば小学生と高校生、社会人では、知識の量は全く違いますよね。そうなると当然、説明の仕方も変わってきます。

相手の持っている知識がどの程度かということを、相手とのやり取りの中で把握し、その知識と知識が結び付くような説明を工夫することが分かりやすく伝えるための基本です。

分かりにくい説明をする人は、往々にして「こんなことは常識だから当然、知っているだろう」といった安易な思い込みから、伝える側の論理・理屈・思惑だけで一方的に話をしてしまっているものです。そうなると、自分は十分丁寧に説明しているつもりなのに、相手には全然伝わっていないということになってしまいます。

分かりやすく伝えることの本質は、「どこまで相手の立場になり切れるか」です。つまり、相手に対する想像力、イマジネーションを働かせることが必要なのです。「どんな人なのだろうか」「こういう言い方で分かってもらえるだろうか」と想像力を働かせ、「こんな言い方だったら分からないよね」ということにどこまで気づけるかにかかっています。

それは、相手に対する「思いやり」を持つことにほかなりません。相手に対する思いやりがあれば、「こんな専門用語は分からないだろうから」と易しい言葉に置き換えるでしょうし、言葉遣いも考えるでしょう。

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「誰に、何を伝えるべきか」を明確に

── 消費者に対して何かを伝える際に、企業が気をつけるべきことは何でしょうか。

写真:池上 彰

相手が消費者であっても基本的には同じことです。「このお客様はどんな知識を持っているのだろうか」と想像力を働かせ、「こういうことはご存じですか」「それならこういうこともご存じでしょうか」などと確認をしながら、お客様の断片的な知識が結び付くような説明をすることで、お客様は「あぁ、そういうことなのか」と理解してくれるわけです。

ただし、「消費者」という抽象的な言葉を使っていたのでは、分かりやすく伝えることはできないでしょう。

まず、伝えるべき消費者とは誰なのか、どんな人なのか、具体的なイメージを持つことが大切です。「誰に、何を伝えようとしているのか」を明確にしない限り、分かりやすく伝えることはできません。相手の具体的なイメージをしっかりと描けなければ、その人に立場になってみることなんてできないからです。

例えば、20代の女性は「モー娘。」(女性アイドルグループ「モーニング娘。」の略称)と言われても分かるでしょうけれど、80代の女性なら分からない人が多いでしょうし、あるいは小学校低学年の女の子にも意外と通じないかもしれません。

このように、相手が誰なのかによって、どんな言葉を使うべきか、どんな例を取り上げるべきかが全く違ってくるわけです。

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セールストークを分かりやすくするには

── セールストークを分かりやすくするにはどうすればいいのでしょうか。

商品やサービスを売るということは「この商品やサービスをお買い求めいただければ、きっとその人のためになる」と思っているはずですよね。もちろん本音の部分では、売れば自分の収益になるという思いもあるわけですが、収益が上がるのはなぜかというと、買ってくれる人がいるからです。

では、なぜ買ってくれるのかというと、買った人にとって何らかのメリットがあるからです。

ということは、「この商品やサービスをお買い求めいただければ、あなたにとってこんなにメリットがあるんですよ」ということをいかにして伝えるかを考えればいいのです。買っていただくことが、結局はそのお客様のためになると心から信じ、お客様の立場になって、お客様のためを思って説明する。それをどこまで本気でできるかということでしょう。先ほどお話しした「相手に対する思いやりを持つ」というのは、そこまでの気持ちを含めての話です。

ただ、自分の扱っている商品やサービスに自信が持てなければ、お客様の心を動かすような説得力のあるセールストークはできません。

そこで考えてみてほしいのは「なぜ自分の会社が存続しているのか」ということです。それは、社会にとって有益な商品やサービスを提供しているからにほかなりません。社会のニーズに応えていない会社や悪徳商法の会社であれば、たとえ一時的に儲かることがあったとしても、やがてつぶれていきます。あるいは警察から摘発を受けます。それがずっと企業として成り立っているのは、社会にとって有益な事業を営み、社会に受け入れられているからです。

そこに自信を持たなければ、分かりやすく伝えられるはずがありません。逆に言うと、それだけの自信があってこそ、初めて本気になって売り込むことができるわけです。

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何よりも自分自身が「理解すること」が先決

── 地方の企業には、品質や性能には絶対的な自信があり「一度試してもらえば必ず分かってもらえるはず」と思いながら、その商品価値を消費者に伝える術も広告予算もないという企業が存在します。

写真:池上 彰

開発した人にしてみれば、当然それは自信作なのでしょう。しかし、いくら「これはいい物です」と言ったところで、使い方が分からなければ誰も買いませんし、そもそもどんなふうに使うものなのかが分からなければ、どんなメリットがあるのかさえ分かりません。

そこで、先ほどお話しした「誰に使ってもらおうとしているのか」を具体的にイメージすることが大切になるのです。そのターゲットとなるお客様は、今どんな不便を感じていて、そこにこの商品が入るとどう便利になるのか。それを分かりやすく具体的に提示するためには、そのお客様に対する想像力を十分に働かせなければなりません。

── 形のある商品ではなく、目に見えない無形の新たなサービスをどうやって消費者に伝えるかに腐心している企業もあります。

形がないだけに、より難しいでしょう。だからこそ、そのサービスを導入すれば、あなたの暮らしぶりがどう変わるのか、あるいは仕事がどのように効率化できるのかという具体的な例を考え抜いて説明する必要があるのです。提供するものが抽象的であるだけに、どれだけ具体的に説明できるかがカギとなります。

より具体的に説明するためには、そのサービスの特徴や仕組みを十分に理解していなければなりません。理解が不十分だと、自分が持っているわずかな知識で、聞きかじった専門用語を使って説明せざるを得ませんし、適切な例えも浮かばないでしょう。

日常生活で考えてみても、例えば自分が熟知している趣味に関することなら、すらすらと説明できますよね。分かりやすい例えができますし、相手に通じなければ、いくらでも言い換えが可能です。

インタビューの冒頭で、分かりやすい説明をするためには「思いやり」などが必要だと言いましたが、それ以前の問題として、自分自身がその事柄について理解していなければ、人に対して説明などできるはずがありません。分かりやすいセールストークがしたいなら、まず何よりも、自分自身がその商品やサービスについて熟知しておくことが不可欠なのです。

後編では、説得力を高めるコツや、「週刊こどもニュース」の分かりやすさの秘密、番組制作とセールスの共通点──などについて探っていく。(2009年11月上旬公開予定)

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