顧客の心をつかむサービスとは

写真:田崎 真也
サービス業はアシスト業と心得るべし 2008年10月
田崎 真也/日本ソムリエ協会 副会長
世界最優秀ソムリエコンクールで日本人として初めて優勝し、2000年の沖縄サミットの晩餐会では飲み物・グラスのセレクトと各国首脳への実際のサービスを任された田崎真也氏。サービスのプロフェッショナルである田崎氏に、心をつかむサービスとは何かを聞いた。

PDFダウンロード

プロフィール

1958年東京都生まれ。
77年ソムリエ修行のため渡仏。
83年第3回全国ソムリエ最高技術賞コンクール優勝。
95年第8回世界最優秀ソムリエコンクール 優勝。
96年都民文化栄誉章。
99年フランス農事功労章シュヴァリエ受章。
97年から「田崎真也ワインサロン」を主宰。
ワイン専門誌『ヴィノテーク』発行人。

主な著書

写真:主な著書

相手のことを短時間でいかに多く知るか

―そもそも「心をつかむ」とはどのようなことだとお考えでしょうか。

相手から好かれることでしょう。お客様の心を惹きつけるような要素を身につけることは、サービス業の基本です。それも、会った瞬間の、ごく短い時間のうちに好かれるようにならなければなりません。

もちろん恋愛感情ではなく、「この人だったら大丈夫そうだ」「この人にお願いすれば良い物を紹介してくれるのでは」というような信頼感、安心感を持っていただくということです。

─ それにはどうすればよいのでしょうか。

そうした雰囲気を自分でつくらなければならないわけですが、それにはまず、お客様のことを短時間でいかに多く知ることができるかが大切です。

例えばフレンチレストランなら、入店されてから席へとご案内して最初の注文をお聞きするまでの間に、お客様の雰囲気や歩き方、そしてお連れの方に対するエスコートぶり、さらには注文の仕方などから、今日は何の目的で、どんな都合があってこの店を選んだのかなどを推測します。

デートなのか、接待なのか、仕事の打ち上げなのか、家族のお祝いなのか。カップルのお客様であっても、初デートなのか、お付き合いは長いのか、誕生日などの特別な日なのか、ご夫婦なのか、そうではないのか……。

お客様ひと組ひと組、目的や事情、予算、好みも違うはずです。そうしたことを、その場の空気全体から瞬時に読み取り、それに合わせてお客様と接していくのです。そうしたお客様の事情を的確に把握することができなければ、本当にご満足いただけるサービスは提供できないでしょう。

しかし、短時間でお客様を知ることは、やはり簡単なことではありません。その意味では、「一見さんお断り」の店や会員制の店は高飛車なのではなく、来店された瞬間からいいサービスを提供するには理にかなった営業形態だと思います。

PAGETOP

サービスの原点は「家族」にあり

─ 短時間でお客様の事情を察するには何が必要でしょうか。

「気遣い」でしょう。つまり、お客様の様子・雰囲気などを見て、「この方には今、何をして差し上げたら一番良いのだろうか」「どうすれば快適に感じていただけるのだろうか」と考えることです。

そのトレーニングの場は、営業中だけでなく、プライベートな日常生活の中にこそあります。普段の生活の中で、自分が何をすれば周りにいる人により快適に感じてもらえるかを常に考えるのです。

例えば母親は、朝になると子どもを起こし、朝食を食べさせ、洗濯した清潔な服を着させ、笑顔で学校へと送り出す、といったことを毎日普通に行っています。食事についても、子どもの好き嫌いを誰よりも理解し、子どもの健康を思いながらバランスのいいメニューを考え、誕生日には大好きな料理を作ってお祝いします。

このように、サービスの原点は、家族や大切な人に対する気持ちと同じような感覚で相手に接することです。企業や職場からの視点で考えるよりも、男性ならば良き夫・良き父親というように、家族の視点で考えた方が分かりやすいでしょう。

PAGETOP

お客様の描く“ドラマ”の実現をアシストする

─ 短時間でお客様の事情を察するには何が必要でしょうか。

僕の考えるサービスとは、「おもてなし」ではなく、お客様の「アシスト」をすることです。

レストランに来店した二人組のお客様の場合、代金を支払う人(ホスト)がお連れの方(ゲスト)にいい時間や喜びを提供したくてお店に来ているわけで、もてなしという行為をするのはホスト本人であり、我々サービススタッフはホストのアシストに徹するべきです。

それをわきまえずにおもてなしをしようとすると、押し付けになってしまいます。サービスはエンターテインメントだと言う人もいますが、一歩間違えばホストのするべきことをしてしまい、単なるおせっかいになりかねません。

例えばカップルのお客様で、男性が女性の誕生日を祝っていたとします。それを知った店側が、気を利かしてケーキを用意し、歌いながら登場したとしたら、女性は喜ぶでしょう。しかし男性からすると余計なお世話かもしれません。男性から頼まれた上での演出なら別ですが、ケーキは次のバーに用意しているかもしれないのです。

先ほど、お客様のことをより多く知ることが大切と言いましたが、それは単に「どんな人だろう」と推測するのではなく、「今日は何のためにいらしたのか」という来店の目的を察するということであり、それによって、お客様がその日に望んでいる“ドラマ”を実現するためのアシストをする――。それこそが本来のサービスなのだと思うのです。

これはレストランに限らず、すべての仕事に共通して言えることだと思います。この原則を理解している人こそが、お客様の心をつかむことができるのではないでしょうか。

PAGETOP
PDFダウンロード

本内容はPDF形式でもご覧いただけます。上記「PDFダウンロード」ボタンよりファイルをダウンロードの上ご覧ください。

Adobe(R) Readerをお持ちでない方は、左のバナーをクリックしてダウンロードしてください。

※お客様がご利用しているOS及びアドビリーダーのバージョンにより、レイアウトが崩れるなどの事象が発生する場合があります。

本ホームページに掲載されている会社名、商品名は一般にメーカー各社の登録商標または商標です。
本ホームページの無断転載、引用はお断りいたします。

PAGETOP

審査 16-2826-1

Copyright(C) 1999-2017 西日本電信電話株式会社
バックナンバー RSS