会社が社員に与えるべきもの

写真:窪山 哲雄
社員への「愛情」が顧客ロイヤリティを高める 2008年2月
窪山 哲雄/ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル 社長
ドラマ化された漫画「HOTEL」(石ノ森章太郎原作)に登場する東堂マネジャーのモデルにもなった伝説のホテルマン、窪山哲雄氏。バブルの遺産と呼ばれた豪華ホテルを富裕層向けリゾートホテルとして再生し、さらに同ホテルが北海道洞爺湖サミットの主会場に指定されるなど、その経営手腕が注目される窪山氏 は、顧客だけでなく、社員に対するマーケティングも行うべきだと説く。

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プロフィール

1948年福岡県生まれ。71年慶應義塾大学法学部卒。72年ロンドン大学経済学部大学院修了、帝国ホテル入社。75年米国コーネル大学ホテル経営学部卒、米国ヒルトンコーポレーション入社。78年ホテルニューオータニ入社。91年NHVホテルズインターナショナル(現ハウステンボスホテル事業部)社長。91〜97年まで1室当たりの収益率日本一を達成。97年から現職。2007年4月にはザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパが北海道洞爺湖サミットの主会場に指定された。

主な著書

写真:主な著書

「ロイヤリティ・マネジメント」の時代

―窪山さんは、ホテル経営にグローバルな視点や歴史からの教訓などをふんだんに取り入れていると評されますが、組織の求心力や結束力についてはどのような考えをお持ちですか。

時代と共に変化していると思います。日本では江戸時代から体制維持の道具立てとして儒教が取り入れられ、謀反を起こさせないための参勤交代といった仕組みなども用いながら、とにかく私事は捨て置いて公のために尽くすという「滅私奉公」の精神文化が成り立ってきました。

その規範に従っていれば組織を守れた時代は戦後、アメリカ自由主義の流入によって一気に崩れ、さらに経済のグローバル化やIT化によって、誰もが様々な情報を容易に得られるようになったことから、現在は共通の価値観をつくることが非常に困難な時代となっています。

そうした中で、モチベーションをケアすることでみんなのベクトルを一つにしていこうというモチベーション・マネジメントが導入されてきましたが、今後はロイヤリティ(忠誠心)マネジメントの時代になっていくと考えています。

―「ロイヤリティ・マネジメント」とはどのようなものでしょうか。

例えば靴店で、一度履いて汚れた靴を、やっぱり気に入らないから交換してほしいと顧客から頼まれたとします。顧客との関係がその場限りのものであるなら、交換に応じればロスとなってしまいます。しかし、交換することでロイヤリティの高い顧客を獲得し、その顧客に毎年靴を買ってもらえるようになるのであれば、たとえ今ここで損をしてもいい。こうした考え方が、マーケティングにおけるロイヤリティの考え方ですが、それを社員に対しても適用するのです。

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「社員がすべて」とは言うものの

―社員のロイヤリティを高めるにはどうすればよいのでしょうか。

まず、社員を優先して考えているという姿勢を形にして示すことでしょう。

これまで多くの企業は、贅肉をそぎ落として効率を追求するマネジメントを行ってきましたが、いわゆる“脂身”の全くない経営は、個々の社員から見ると魅力的ではありません。社員のロイヤリティを高めるには「これは会社のためではなく、私たちのためにやってくれているんだな」と分かるような、もっと言えば「私たちが得をして、会社は損をしているのでは?」と思えるようなものを提供することが大切です。これからの企業は、社員のために、すぐには利益に貢献しそうもないけれども、長期的に見れば利益を生むような適度な脂身を持った経営をしていくことが必要なのです。

―その脂身とは、具体的にはどのようなことでしょうか。

企業は通常、顧客に対し、広報、広告、販促、営業、オペレーション、顧客管理などののマーケティングワークを行っています。

多くの経営者はよく「社員がすべてだ」などと言いますが、顧客にかけた分と同様のマーケティングワークを社員に対しても行っている企業がどれだけあるでしょうか。顧客に対する広報活動と同じように、情報をきちんと整理した上で社員に伝えているでしょうか。会社の方針などを、広告のように分かりやすい表現で、社員の興味を惹き付けるように伝えているでしょうか。

現実には、社員に対してコストのかかることはできていない、あるいは無駄だからしたくないというのが本音でしょう。しかし、その投資は決して無駄にはなりません。社員のロイヤリティを高めるには、必要な情報を的確に伝えていくことが不可欠であり、社員に対するマーケティングは極めて重要なのです。

また、マーケティングデータに基づいて、会社の都合ではなく、社員の人生が豊かになるような研修プログラムなども積極的に提供していくべきでしょう。社員の人間としての厚みが増していくことによって、企業にとっては、いい人材がいい顧客と接点を持てるようになるわけで、そこで社員と顧客の双方にロイヤリティが生まれていきます。ロイヤリティの高い社員がいることで、顧客はそれに対してロイヤリティを感じてくれるという、いわばクッションボールのような関係です。つまり、社員に対してマーケティングを行えば、その効果は顧客へと必ず伝わるのです。

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社員に対していかに「愛情」を注げるか

―窪山社長は社員に対して自らカウンセリングなども行うそうですね。

プライベートな部分にかかわる相談に乗る機会も多々あります。公私の区別は明確にすべきとの考え方もありますが、会社は社員から人生のかなりの時間を提供してもらいながら成り立っているわけです。それならば会社は、仕事に対してのやりがいや働きがいはもとより、それらを含めた人生そのものに対する生きがいを社員に与えるのは当たり前だという発想を持つべきではないでしょうか。

私は、企業はハチの巣と同じだと考えています。ミツバチが健康で元気でなければ、良質なハチミツは採れません。ミツバチを豊かにすることこそが、企業を豊かにし、顧客ロイヤリティの高い企業への原動力となるのです。

生き生きとして輝いている社員をつくるには、彼らの環境に常に配慮し、幸せな将来を描けるような仕組みづくりが必要です。ロイヤリティ・マネジメントとは、突き詰めれば、社員に対していかに「愛情」を注げるかということなのです。

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