老舗企業の意識改革

写真:藤巻 幸夫
福助再建からのケーススタディー 2008年12月
藤巻 幸夫/元・福助株式会社 代表取締役社長 株式会社フジマキ・ジャパン 代表取締役副社長
CRUM 店主 明治大学 研究・知財戦略機構 特任教授
伊勢丹時代に「バーニーズ・ジャパン」「解放区」「リ・スタイル」などのブランドを立ち上げ、カリスマバイヤーとして名を馳せた藤巻幸夫氏。2003年には民事再生法適用を申請した老舗の靴下メーカー「福助」の社長に就任し、社員の度肝を抜く大胆な改革で再建の礎を築いた藤巻氏に、社員の意識改革の要諦を 聞いた。

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プロフィール

1960年東京都生まれ。82年上智大学経営学部卒業、伊勢丹入社。
2000年同社退社後、アパレルメーカー、エス・テ・ス取締役、バッグメーカー、キタ ムラ専務など経て2003年福助社長。
その後、セブン&アイ生活デザイン研究所社長、イトーヨーカ堂取締役など歴任。2008年から現職。
8月にシャツと トートバッグのショップ「CRUM(クラム)」をオープンした。

主な著書

写真:主な著書

自信を与えれば意識も変わる

─ 藤巻さんは福助の社長に就任後、本社を大阪府堺市から東京・原宿に移転したり、伝統のある福助人形のロゴマークをリニューアルしたりするなど大胆な改革を 行ってきましたが、そこには様々な反発もあったと思われます。社内のコンセンサスはどのように得ていったのでしょうか。

私は「福助は日本発・世界ブランドをめざす」というビジョンを掲げていました。本社移転やロゴのリニューアルはその決意を示す強烈なメッセージでもありますし、単なる靴下メーカーから世界に通用するファッションカンパニーへと生まれ変わるには、ファッションの中心地に本社を構えなければ勝負になりません。 堺で創業して120年という歴史の重みや社員の心情を勘案しても、絶対に譲れない条件だと判断したため、「これは福助にとって正しい変化なのだ」と十分に説明した上で、最後は強いリーダーシップを発揮して断行しました。

組織を正しい方向へと導くためには、リーダーは、摩擦を恐れることなく覚悟を決めて意見を押し通すことも必要なのです。

─ 企業の再生には社員を巻き込んでいくことが不可欠といわれますが、どのように社員の意識を変えていったのでしょうか。

朝礼などで根気強く思いを語り続ける一方、社員の気持ちを理解することも重要だと考え、300人以上いた社員全員と3度にわたる面接を行いました。さらに、現場を知るために工場や営業所など全国津々浦々の拠点を回り、社員と直に接し、フランクなコミュニケーションを図るためのいわゆる飲み会の場も積極的 に企画しました。

こうして社員一人ひとりのことを知り、やる気はあるのにスキルが足りない人には「この人にはこういう知識を与えてあげればいい仕事をしてくれそうだ」とか、能力はあるのにやる気を失っている人には「この人にはこんなきっかけを与えて鼓舞しよう」などといった見極めを行い、すべての社員に一人残らず「活躍できるチャンス」を与えることに努めました。

また、私の個人的な人脈から、各界で活躍している人たちを講師に招いて定期的に講演会を開催し、社員の視野を広げながらやる気を喚起しました。

とにかく“何となく”でもいいから「自分にもできそうだ」という自信を持たせることが大切です。「一度は倒産した会社だけど、この調子でやっていけば勝て るかもしれない。給料も上がるかもしれない。」そうした希望を持てるようなムードを醸成し、モチベーションを高めていったのです。自信とやる気さえ引き出 せば、社員の意識は確実に変わっていきます。

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社員の家族の気持ちにも配慮する

─ 福助の再建に向けて、藤巻さんはマスコミを積極的に活用していたと感じるのですが、どのような狙いがあったのでしょうか。

確かに最初の半年間ほどは、過密なスケジュールを何とかやり繰りし、テレビをはじめあらゆるメディアの取材に精力的に応じました。CI戦略は「福助は生まれ変わります」というメッセージを社外に向かって発信するものでしたが、実はこの時期のマスコミへの出演には、私がどんな思いを込めて何をしようとしているのかを社員に対して伝えたいという意識の方が強く働いていました。社外に向けたメッセージこそが、社員への最大のメッセージになると考えたのです。

また、マスコミによる報道は、福助が社会からどのように見えているのかを社員に客観視してもらう絶好の機会でもありましたし、自分の会社が果敢に改革に挑戦している様子が広く報じられることで、社員の士気も大いに高揚するのではないかという期待もありました。

そして何よりも配慮したのは、社員を支える家族の気持ちです。民事再生法の適用という事実上の倒産が、社員の家族に与えた不安は計り知れません。改革の模様がメディアに取り上げられることで、「お父さんの会社、頑張ってるんだね!」などと少しでも安心してもらえればと願っていたのです。

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まずは自分が動く

─ 組織を動かすリーダーにとって大切なことは何でしょうか。

零細企業から中小、中堅、大企業、そして超大企業まで経験してみて思うのは、リーダーは自らが先頭に立って走るべきだということ。人を動かそうと思ったら、まずは自分が動くべきです。

情報に踊らされるのではなく、自ら行動することによる実体験に基づいて「これからはこうなるだろう」と常に先を読み、前年踏襲を排除して、未来志向・ブレイクスルー志向で次に進むべき道筋を示すのがリーダーの役割です。そして、その結果に関しては全責任を負う。船が沈んでいくときに最後まで残れる船長でな ければ、誰もついてこないでしょう。

人の心は、ルールやシステムだけでは決して動かすことはできません。MBA的な知識が不要だとは言いませんが、現場を知ろうとしない人、人間の心理が分からない人がリーダーになれば、その組織が幸せになることはあり得ないでしょう。人を知り、人間というものを学び、人を大事にすること。経営において最も重 要なことは、これに尽きるのではないでしょうか。

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