次世代リーダー育成考

写真:中谷 巌
幾多の「修羅場」を経験させよ 2007年12月
中谷 巌/三菱UFJリサーチ&コンサルティング 理事長 多摩大学 学長
多摩大学の「40歳代CEO育成講座」塾頭として、世界に通用する知力と見識、そして高い志を兼ね備えた本物のリーダーの育成に尽力する中谷巌氏。真のリーダーが育たない要因として、育成する側の「リーダーとマネジャーの違い」に対する理解の欠如を挙げる中谷氏は、スキル教育一点張りの研修体制からの脱却が必要だと訴え、「修羅場」を経験させることの重要性を説く。

PDFダウンロード

プロフィール

1942年大阪府生まれ。65年一橋大学経済学部卒業、日産自動車入社。73年米国ハーバード大学経済学博士取得。84年大阪大学教授。91年一橋大学教授。94年細川内閣の首相諮問機関「経済改革研究会」(平岩研究会)委員。98年小渕内閣の首相諮問機関「経済戦略会議」議長代理。99年ソニー社外取締 役、多摩大学教授。2000年三和総合研究所(現・三菱UFJリサーチ&コンサルティング)理事長。
現在、スカパーJSAT、アスクル、富士火災海上保険の社外取締役をはじめ、NPO全国社外取締役ネットワークの代表理事も務める。

主な著書

写真:主な著書

リーダーは「管理者」ではない

確かに最近は「リーダー不足の時代」であるといわれる。「マネジャー」は余るほどいるが、「リーダー」の名に値する人は少ないというわけである。

リーダーとマネジャーの違いは何だろうか。リーダーは「変える人」である。会社の風土を変え、人々の意識を変え、組織全体を活性化させる人である。これに対して、マネジャーは設定された目標を達成するため、人や組織が効率よく動くよう「管理する人」である。

両者は似ているようで全く似ていない。このことがしっかり理解できていないことがリーダーを育成できない基本的理由であると思う。何といっても部下から見たときにリーダーには「人間的魅力」が備わっていなければならない。リーダーは「変える人」であるから、人々に「この人のためなら一肌脱いで一暴れしてやろう」と思わせる力がなければならない。単に上司が優秀な管理者であるだけでは、部下は与えられた仕事はしっかりやるだろうが、何かを大きく変えてやろう、この人のために一肌脱ごうという気にはならない。

PAGETOP

「スキル」を教えるだけでは「人間的魅力」は身につかない

しからば、良きリーダーとなるための「人間的魅力」とは何か。これがなかなか難しく、ひと言で表現できるようなものではない。そこがリーダー育成の難しいところである。

はっきりしていることは「スキル」を教えるだけでは「人間的魅力」は身につかないということだ。ビジネススクールに行っても、マネジャー教育は行われるが、リーダー教育はなおざりになっている。企業内の研修も大部分がスキル系の研修にとどまっているのが現状である。その原因はビジネススクールにせよ、企業内研修にせよ、簡単に成果が上がる「スキル」教育に安住しているからである。

PAGETOP

まずは「人間に興味を持たせる」

それでは、リーダーを育てるにはどのような教育が望ましいのか。なかなか難しいが、まず「人間に興味を持たせること」から始める必要がある。およそ、人間に興味のない人ほどつまらない人はいない。人間に興味がなく、目先の仕事のことしか念頭にない人はまずリーダーにはなれない。

「人間に興味を持たせる」には、「スキル」教育一点張りの研修体制から脱却しなければならない。迂遠に見えるかもしれないが、まずは、しっかりとした「教養」をたたき込むというのも一法であると思う。筆者が学長を務める多摩大学では『40歳代CEO育成講座』というリーダーシップ講座を開講しているが、そこでは1年コースの冒頭合宿でまず世界の宗教を学ぶことから始めている。キリスト教世界、イスラム圏、儒教圏の人たちの宗教観と日本人の宗教観を徹底的に 比較するのである。

もちろん、宗教に関する知識を学ぶこと自体が目的ではない。宗教という人間にとっての永遠の営みに注目することで、人間に対する興味が喚起されることを狙っているのである。実際、我々の講座でも、受講生は最初は戸惑った表情を見せるが、やがて宗教の重要性を認識するようになり、顔つきが変わってくる。こうなってくるとしめたもので、どんどん興味が広がり、やがて豊富な話題を持つ魅力的な人材に変貌していく。

PAGETOP

リーダーは「修羅場」を経て育つ

しかし、研修で大事なのは、「お説拝聴」的な受動的な研修では効果は限られるという点であろう。講師の話をただ聞くだけなら書物を読めば済む。研修では、一級の講師と身体を張り合った真剣な議論が常時戦わされるといった、受講生が積極的に参画せざるを得ないような「能動的」要素を組み込む努力が不可欠である。

もちろん、企業研修のような「座学」だけでリーダーを育てることができるわけではない。リーダーは結局は幾多の修羅場を経て育っていくものだからである。人の上に立つとはどういうことか、人々の意識を変え、彼らの行動を変えるとはどういうことなのか。そのためには自分はどのような人間にならなければならないのか。こういったことは実践の場で体感していくしかない。従って、企業としては、これはと思われる人材については若いうちに子会社のトップに抜擢して修羅場・土壇場・正念場を経験させるなど、人事ローテーションにも気配りが不可欠であろう。

PAGETOP
PDFダウンロード

本内容はPDF形式でもご覧いただけます。上記「PDFダウンロード」ボタンよりファイルをダウンロードの上ご覧ください。

Adobe(R) Readerをお持ちでない方は、左のバナーをクリックしてダウンロードしてください。

※お客様がご利用しているOS及びアドビリーダーのバージョンにより、レイアウトが崩れるなどの事象が発生する場合があります。

本ホームページに掲載されている会社名、商品名は一般にメーカー各社の登録商標または商標です。
本ホームページの無断転載、引用はお断りいたします。

PAGETOP

審査 16-2826-1

Copyright(C) 1999-2017 西日本電信電話株式会社
バックナンバー RSS