管理職も見た目が9割(2007年2月)

写真:竹内 一郎
言葉だけでは伝わらない 2007年2月
竹内 一郎/演出家 劇作家
「男の顔は履歴書である」とジャーナリストの大宅壮一が言ったように、その人の生き様は「見た目」に表れる。劇作家として言葉の限界を痛感してきた経験から、言葉だけでは思いのすべてを伝えきれないという竹内一郎氏は、「見た目」を磨くことが、人間性の陶冶にもつながっていくと説く。

PDFダウンロード

プロフィール

1956年福岡県久留米市生まれ。81年横浜国立大学教育学部心理科卒業。2005年九州大学博士(比較社会文化)。
非言語コミュニケーションを分かりやすく説いた『人は見た目が9割』(新潮社)が95万部のベストセラー。『手塚治虫=ストーリーマンガの起源』(講談社)でサントリー学芸賞。
「さいふうめい」の筆名で発表した『戯曲 星に願いを』で文化庁・舞台芸術創作奨励賞佳作、『哲也 雀聖と呼ばれた男』で講談社漫画賞を受賞。

主な著書

写真:主な著書

「非言語メッセージ」が伝達力を左右する

私は、劇作家、漫画原作者としての活動から、言語以外の情報の重要性を痛感してきた。

もちろん、作家の端くれだから、「言葉が命」であることには変わりない。が、私が心血を注いだ言葉も、演技力のない役者がしゃべれば、全く観客の心に届かない。観客の右の耳に入り、そのまま左の耳から抜けていく言葉は、「伝わった」ことにならないのだ。

同じように、私がシナリオ形式で書いた漫画原作も、漫画家の技量によって、名作になることもあれば、駄作になることもある。つまり、言語より「非言語メッセージ」の方が情報の伝達力が高いともいえる。

PAGETOP

あなたも人を「見た目」で判断している

アフリカに「一人の老人が死ぬことは一つの図書館がなくなることと同じ」ということわざがある。老人は、たとえ一冊の本も読んでいなくても、五感で感じた膨大な情報を身体全体で記憶している。その量は、図書館一つ分に匹敵するといっても過言ではない。

私たちは、人に道を訊くとき、瞬時に道行く人の膨大な情報を受け取り、解析して「この人に訊こう」と判断している。悪徳商法の首謀者を「胡散臭い」と感じる力も同じ。やはりその人から発せられる膨大な情報を総合して、「この人を信じるのはやめよう」と思う。言語以外の情報は、それほど私たちの人物判断に大きく作用するのである(下グラフ参照)。

私たちは、「人を見た目で判断してはならない」と教えられて育ってきた。確かに、身なりが良くて親切そうに見えたのに、実は悪い人だったという例はたくさんある。だが、それは一面の真理に過ぎない。言葉以外の情報の方が正確にその人を表しているということも珍しくはない。

例えば、賄賂をもらった政治家が「私は知らない。秘書が勝手にやったこと」と弁明するときがある。だが、私たちは「目が嘘をついている」と感じる。言葉は嘘をつくものだ。

言葉は全体の7%しか伝えられない

PAGETOP

「見た目」には人生がにじみ出る

私が考える「見た目」は、美人であるとか、イケメンであるとか、そういう表面的なことではない。その人の生き方、考え方が反映されたものだ。

例えば、二人の部長がいたとする。A部長は人格者で、仕事もできて部下の信頼も篤い。B部長は、威張るばかりで、部下の信頼がない。この二人が同じ企画案を部下に提示したとしよう。A部長の部下は、「たとえ成算は低くても、みんなで頑張ってみよう」と盛り上がる。B部長の部下は「どうせ成功しないし、あの人の指示ではやりたくないなあ」と無気力になる。結果は、天と地ほども違ってくる。

A部長とB部長の提示した言語情報(企画案)は、全く同じでも、伝達力が全然違うのである。

アメリカの第16代大統領だったリンカーンは「40歳になったら、自分の顔に責任を持たなくてはならない」と言った。自分の愛する仕事に打ち込んだ人は、おのずといい顔になっていくものだ。恐らく、A部長は「いい顔」をしているはずである。

若いころは、美男美女が得する傾向があるが、それが通用するのは、人生80年のうち、わずか20年程度に過ぎない。社会に出て20年もすれば、その人の能力や生き方は、「見た目」に表れてくるものである。40歳から後の40年の方が、私は余程大切だと考える。

社会に出て、仕事のできる人、できない人、信頼の篤い人、ない人……いろんな人を謙虚な心で観察して、学んだ結果が、その人の顔に出てくるし、立ち居振る舞いになって表れてくるものだ。

PAGETOP

「見た目」は自分を磨くツール

私は、人から発せられる言語以外の「非言語メッセージ」も総合的に認識した上で、それを仕事に生かしていくことが大事だと考えている。また「非言語メッセージ」を「発する力」も「受け取る力」も、20〜30年かけて、ゆっくり培うものだと考えている。それはコミュニケーションの基本と考えられる「話し方」より遥かに修行の求められるスキルだからである。

演劇という世界に身を置いて気付くことだが、役者は「見た目」のことを考え続けたプロである。「どう見えるか」を考え続けることで、人格が陶冶されていく人たちもいる。ビジネスパーソンも「仕事さえできれば、外見など気にしなくていいのだ」と思えば、せっかくの「自分を磨くツール」を一つ見失うことになる。

姿勢、歩き方、服装、表情、足の組み方、手の置き場所……それ以外のごく一般的なマナーまで含めて、「見た目」は自分を磨く「磨き砂」になるのである。

PAGETOP
PDFダウンロード

本内容はPDF形式でもご覧いただけます。上記「PDFダウンロード」ボタンよりファイルをダウンロードの上ご覧ください。

Adobe(R) Readerをお持ちでない方は、左のバナーをクリックしてダウンロードしてください。

※お客様がご利用しているOS及びアドビリーダーのバージョンにより、レイアウトが崩れるなどの事象が発生する場合があります。

本ホームページに掲載されている会社名、商品名は一般にメーカー各社の登録商標または商標です。
本ホームページの無断転載、引用はお断りいたします。

PAGETOP

審査 16-2826-1

Copyright(C) 1999-2017 西日本電信電話株式会社
バックナンバー RSS