ミドルたちよ 元気を出せ! 映画「燃ゆるとき」に込めたメッセージ

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写真:高杉 良
今こそ日本型経営を再評価すべき 2006年2月
高杉 良/作家
企業・経済小説は、専門書や情報誌では知ることのできない経済の“現場”を教えてくれる。登場人物の生き様からは、企業人・組織人、そして人間としての処世訓についても学ぶことができる。綿密な取材に裏打ちされたリアリティのある筆致で定評のある高杉良氏は、作品を通じてビジネスパーソンにエールを送り続けてきた。めったにインタビューには応じないという同氏に、映画『燃ゆるとき THE EXCELLENT COMPANY』(同氏原作)の公開を機に作品に込めた思いなどを聞いた。

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プロフィール

1939年東京生まれ。化学専門誌の編集長を経て76年、石油会社を舞台に、組織の旧弊と矛盾に直面しながらも自らの信念を貫く男の闘いを描いた『虚構の城』で作家デビュー。企業・経済小説の名手であり、綿密な取材に裏打ちされたリアリティのある筆致には定評がある。
『呪縛 金融腐蝕列島II』は映画化された。現在、週刊ポストに『挑戦―巨大外資の光と影』、週刊ダイヤモンドに『小説巨大生保―王国の崩壊』を連載中。

主な著書

写真:主な著書

今こそ日本型経営を再評価すべき

―今回の映画は実在する日本企業のアメリカ現地法人をモデルに、エンターテインメント性を織り込んだ作品だそうですが、どのようなメッセージが込められているのでしょうか。

高杉:混沌とした、非常に殺伐とした今の世の中に対していろんなメッセージを込めたつもりです。

舞台となるのは、アメリカに進出したものの、赤字続きで危機的状況にあり、最後の切り札的な人材を責任者として投入し、それでダメなら撤退しかないという状況の現地法人です。主人公の中堅営業マンは、失敗も相当しているいわばズッコケ社員ですが、この会社では一度や二度の失敗ですぐに排除してしまうようなことはしません。失敗した社員にもまたチャンスを与え、それによって社員が成長し、会社も成長していく過程を描いています。生涯雇用を守る、社員を大切にする日本型経営は、市場原理主義のアメリカでも十分通用するということです。

山田洋次監督に試写会でご覧いただいたら「高杉さん、おめでとう!一石を投じたね」と拍手をしてくれましてね。「今の世の中は大変傷んでいる。人の心も病んでいる。そうした中でとても胸に響くメッセージがあった」ということでした。

企業で働く人にとって、観れば元気の出る作品に仕上がったと思っています。

―タイトルは二転三転し、一時は「あなたには守るものがありますか」という題名だったとか。

高杉:会社の仲間とか、家庭とか夫婦愛のようなものもにじませたかったわけです。

日本は今、本当に傷んでいます。戦後、“世界の奇跡”といわれるような高度成長を遂げることができたのはなぜだったでしょうか。日本人の勤勉性や民度の高さもありますが、「生涯雇用」や「中流意識」が世の中を安定させていたはずです。“一億総中流意識”ともいわれていたのが、今では「下流社会」という言葉さえ出てくるように階層化が進んで非常に厳しい世の中になり、フリーターやニートに代表されるように方向感覚を失った若者も増えています。
これでいいのか!という思いが僕には強烈にあります。年間3万人もの自殺者がいる先進国なんてありますか。

山田監督が言ってました。「私は寅さんを撮りながら、こんな時代であってくれればいいなぁといつも願っていました」と。僕は昭和20年代に少年時代を過ごしましたが、あの時代は物には恵まれなかったけど、心の豊かさ、人の優しさは今よりはるかにありました。だから今の社会にあまりにも優しさが無さ過ぎることについて危機感を持たざるを得ません。

なぜこうなってしまったのか。マネーゲームに経済が翻弄されるのを見ても分かるように、市場原理主義があまりに行き過ぎて危ないところにきているということでしょう。そのぐらい振り子が行き過ぎているのであり、いずれ大きな揺り戻しがくると思います。

―歴史的に見ても、アダム・スミスの自由放任主義が飢えと失業の恐怖を招き、その後、ケインズ主義、「揺りかごから墓場まで」という福祉国家へと向かい、そして今また弱肉強食の市場原理主義へと、まさに振り子運動が繰り返されているように見えます。

高杉:そう思います。このまま行くと計画経済に戻らざるを得ない、というぐらいの強い警告があってもいいと思います。マンションの構造計算書偽装問題や福知山線の脱線事故なども結局、コスト優先の市場原理主義が行き過ぎた結果でしょう。
映画の現地法人のトップはコストカッターに徹したけれども、「品質は絶対に落とすな」が大前提でした。

映画のストーリーには出てきませんが、カップ麺市場が急拡大していたメキシコで現地生産に踏み切ろうというプロジェクトでも、試作段階で、メキシコは高地であるため92℃で沸点に達してしまい、麺の質が劣化することが判明しました。「メキシコではスープさえウマけりゃよくて、麺は大して気にしない」との声もある中で、「品質を落としてまで現地生産することは“良心”が許さない。カスタマーを裏切ることはできない」と、工場用地の手付金まで支払っていたのに撤退を決断します。それでも、品質を守ったことが奏功し、現在メキシコでのシェアは80%に達しています。

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リーダーの姿勢次第で会社は変わる

―高杉さんの作品には「会社はトップ次第で変わる」という話が随所に出てきます。

高杉:やはり、リーダー次第で企業は活性化します。結局トップの姿勢ですね。トップのことはみんなが見ていますから。
例えばこの映画の経営トップは、コスト削減のために日本とアメリカの行き来はエコノミークラスを利用し、しかも安いチケットを探してきます。トップ自らが率先垂範しているのだから、社員がビジネスクラスになんか乗れませんよね。
それに工場の現場にしょっちゅう顔を出し、掃除までやっているわけです。そういう姿勢を見て「社長に続こう!」という気持ちにならない方がおかしいですよ。

―ミドル(中間管理層)のあり方についてはどのようにお考えですか。

高杉:一番頑張らなくてはならないのが現場のリーダーであるミドルです。なぜなら次の時代を担っていく人材なのですから。しかし、中間管理層であるがゆえにサンドイッチになり、元気をなくしているように見えます。

この映画には、ミドルの人たちにも元気を出してもらえる、勇気づけられるようなものを込めたつもりです。一度や二度のミスを挽回できないはずはないんです。企業は減点主義であら探しみたいなことをするのではなく、人材のタイプ、特に長所を見極めて適材適所で生かしていかなければなりません。若い人たちの適性を見極め、埋もれてしまいそうな才能を引き出すのもミドルの重要な役割です。

トップの姿勢ももちろん大切ですが、社員にとってより身近な存在のミドルの人たちに元気があるかないかは、現場の志気にも大きく影響します。

だからこそミドルの人たちに元気を出してもらいたいし、エールを送りたいのです。この映画で勇気づけられ、人生捨てたもんじゃないと感じてもらえると作家冥利に尽きますね。

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真のエクセレントカンパニーとは従業員にとって働きがいのある会社

―地方の、特に中小規模企業の役割についてはどのようにお考えでしょうか。

高杉:日本では労働者の7割以上が中小企業に勤めています。「世界のトヨタ」だって多くの下請けを使っていて、さらにその先に多くの孫請けがあり、それで成り立っているのです。中小企業で光り輝いている会社はたくさんあります。日本の経済はまさに中小企業が下支えしているのであり、中小企業の役割は相当大きいわけです。

今、景況感が出てきたのは大企業だけで、それが中小企業にまで波及していかないと本当に景気が良くなったとは言えません。今は乏しきを分かち合うことも必要でしょう。中小企業のリーダーまでもが雇用に手を付けてはならないと思います。ワークシェアリングのように、給与を下げてでも我慢しようよと、その代わり雇用は守ろうよ、というのが経営者の姿だと思うのです。『男はつらいよ』のタコ社長は、手形の決済に追われながらも、気遣うのは常に従業員のことでした。一般論として、雇用に手を付けたときには、経営陣もその経営責任を取らなければおかしいと思います。

―真のエクセレントカンパニーとはどのような会社でしょうか。

高杉:やはり、従業員を大切にする会社、従業員にとって働きがいのある会社にほかなりません。

「事業は人なり」です。会社を動かしているのは紛れもなく人、従業員であり、いくらIT化が進んでも最終的な判断をするのは人です。従業員のやる気を引き出してこそ経営トップではないでしょうか。その「人」を大切にすることなしに、企業が真の成功を収めることはあり得ません。

ただ、政策によってどれだけ多くの中小企業が救われ、どれだけ多くの従業員が職を失わずに済み、その家族も含めてどれだけ多くの人が路頭に迷わずに済むかという問題は当然あります。ここまで社会を壊してしまった政治の責任は大きいと思います。ですから、政治にもしっかりと関心を持つべきだと言いたいですね。

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