1.当期の事業の概況


 当事業年度におけるわが国経済は、前半はエネルギー・原材料価格高の影響などにより減速基調で推移していましたが、国際金融市場の混乱が世界的な経済危機をもたらし、輸出や生産が大幅に減少し企業収益や雇用情勢も厳しさを増すなど、景気は急速に悪化しました。
 情報通信分野においては、「u−Japan政策」「IT新改革戦略」がめざすユビキタスネット社会の実現に向け、IP化・ブロードバンド化の進展に伴うネット利用の普及と携帯電話の急速な成長による広がりに加え、通信と放送、固定と移動の融合や、SaaS(※1)等ネットを活用した新たなサービスの拡大等、ダイナミックな構造変化が進展しました。
 ブロードバンドサービス市場においては、光アクセスサービスの拡大が続き、当事業年度第1四半期には光アクセスサービスの契約数がDSLサービスの契約数を上回り、また、インターネット・IP電話・映像サービスを一体的に提供するトリプルプレイサービスの本格化、パソコン以外の情報機器等を活用した新たなサービスが登場するなど、市場環境が大きく変化しました。一方、電話市場においても、光アクセスサービスの拡大に伴い、既存固定電話から光IP電話への移行が進み、また、他事業者によるドライカッパ回線を利用した直収電話サービスやCATV事業者による電話サービスとの競争が続きました。
 当社は、このような厳しくかつ激変する事業環境のもと、お客様のご期待に沿い、真に世の中のお役に立てる「お客様志向の企業グループ」として、安定的なユニバーサルサービスの提供・維持に努めるとともに、光・IPを軸とした事業運営への転換を図るべく、増収に向けた「成長戦略」、サービス向上に向けた「お客様への付加価値の提供」、コストダウンを実現する「企業体質の強化」を3つの柱とする今後5年間の「NTT西日本グループ中期経営戦略」を策定し、取り組みを進めてまいりました。


(1)光・IP系サービス推進に向けた取り組み
 「NTT西日本グループ中期経営戦略」の具現化に向け、次世代ネットワーク(NGN)を活用した、信頼性に優れ、帯域確保型アプリケーションも利用可能な光アクセスサービス「フレッツ 光ネクスト」については、昨年3月に、大阪市の一部地域でサービス提供を開始し、当事業年度中にサービス提供地域の大幅な拡大を図り、大阪06エリア、政令指定都市、県庁所在地級都市の一部地域において、サービスの利用が可能となりました。今後、更なるサービス提供地域の拡大を図り、平成21年度内に現行光化エリアの約8割のお客様をカバーするまで拡大いたします。また、「フレッツ 光ネクスト ファミリータイプ」・「フレッツ 光ネクスト マンションタイプ」に加え、大容量データの送受信を可能にする最大通信速度が概ね1Gbps(※2)の法人向け新メニュー「フレッツ 光ネクスト ビジネスタイプ」、小規模集合住宅の各戸に直接光ファイバーを引き込むメニュー「フレッツ 光ネクスト マンションタイプ ミニ ひかり配線方式(※3)」、簡易かつ安価にプライベートネットワークを構築し高いセキュリティによる通信が可能な「フレッツ・VPN ワイド」を提供開始するなど、サービスを拡充しました。引き続き、広帯域・高品質・高セキュリティ等の次世代ネットワーク(NGN)の特長を活かした利便性の高い新サービスの開発・提供など、次世代ネットワーク(NGN)の魅力を更に向上させるサービスラインナップの充実に努め、豊かなコミュニケーション環境の創造や新たなビジネス機会の創出をめざした取り組みを推進してまいります。
 更に、光アクセスサービス「フレッツ光」(※4)を、より多くのお客様にご利用いただけるよう、月額利用料や工事費等の各種割引施策などを通じて販売の拡大を図るとともに、株式会社ベネッセコーポレーション様とのインターネットを利用した通信講座「進研ゼミ中学講座+i(プラスアイ)」(※5)と「フレッツ光」による安心・快適な学習環境の提供に向けた協業、ビジネスオンライン株式会社様とのフレッツ・アクセスサービスを活用したSaaS会計サービスの展開に向けた協業、TOHOシネマズ株式会社様、角川シネプレックス株式会社様とのデジタルシネマ(※6)の配信における協業など、幅広い分野の事業者と連携を図りました。また、株式会社オプティキャスト様が提供する放送サービスと組み合わせることにより「フレッツ光」を利用して地上デジタル放送・BSデジタル放送等の受信が可能となる「フレッツ・テレビ伝送サービス」の提供開始、パソコンから「ひかり電話」を利用できる「ひかりソフトフォン」の提供開始、「フレッツ光」による便利で安心・快適な生活を提案する情報機器を「光LINK(リンク)」としてシリーズ化するなど、光アクセスサービスの販売拡大に取り組むとともに、付加価値の高いサービスの普及・拡大に努めました。


(2)ソリューションビジネスの取り組み
 法人ビジネス分野については、自治体・防災・教育・農業・金融・医療等の分野に対し、業界の特性や動向を踏まえたソリューションを中心に効率的かつ効果的な営業活動を展開しました。
 特にデータセンタービジネスについては、グループ会社との連携による組織横断的な取り組みの強化を図るとともに、システム監視・保守・運用サービス「TSWATT(ティースワット)」とのセット提案の推進など、新規需要の開拓に努めました。
 また、次世代ネットワーク(NGN)を活用した法人向けネットワークサービス「ビジネスイーサ ワイド」については、既存の回線監視機能に加え、お客様のLAN内端末機器の監視も行う「LAN/WANモニタ」を提供開始しました。
 更には、デジタル・デバイドの解消及び地域のニーズに合わせたブロードバンドサービス環境の提供に向け、各自治体と連携し、ブロードバンド環境整備に積極的に取り組みました。


(3)サービス・品質の向上に向けた取り組み
 「お客様志向の企業グループ」への進化をめざし、「ウィズ カスタマー活動推進室」を昨年6月に設置し、116センタをはじめとした各種受付チャネルに寄せられるお客様のご要望・ご意見等に積極的に応えていく取り組みを実施しました。例えば、“ひかり電話からナビダイヤルが利用できるようにして欲しい”というご要望を実現するため、「ひかり電話」及び「ひかり電話オフィスタイプ」からNTTコミュニケーションズ株式会社が提供する0570で始まる「ナビダイヤル」への接続を昨年9月から開始しました。
 また、工事日即決の推進による光アクセスサービスの開通納期短縮や土休日受付・工事について継続的に取り組むとともに、「フレッツ光」に接続されるパソコンやルータ等の機器設定、メールソフト等のソフトウェアの設定や利用方法などのお問合せに、専用コールセンターのオペレーターが対応を行う「リモートサポートサービス」、当社の回線をお使いのお客様がご利用されている情報機器のあらゆる問題の解決・故障修理にワンストップでお応えするため、他社商品までを対象とする「エージェントサービス」を提供開始するなど、光アクセスサービスの利用拡大に向け、お客様に安心してご利用いただけるサービスの充実に努めました。
 更に、NGNのサービスオペレーション業務に精通した技術者の育成や電話系サービスの安定的維持をめざし、技術力の更なる向上に関する取り組みを実施しました。とりわけ、光プロフェッショナル人材の充実に向けては、2010年度末までに約2,400名の技術者育成の目標を掲げ、育成体系の整備を図るとともに、実践的な研修を実施しました。


(4)事業運営体制の状況等
 今後も多種多様な情報機器が登場して家庭内LANに接続されるなど、お客様宅内のIT環境は、個々のニーズやライフスタイルに応じた、コンサルティングや構築・運用サポートなどのサービスが求められると想定されることから、ホームネットワークに関する専門特化型の会社「株式会社NTT西日本−ホームテクノ関西」をはじめとする6社を昨年4月に発足させ、同年7月より営業を開始しました。
 また、116センタに音声自動応答装置(IVR(※7))を導入し、お客様からの各種お申込み・お問合せを、音声ガイダンスにより目的に応じた専門窓口へご案内するなど、受付業務の効率化を図りました。
 更に、各職場において実践してきた成果の水平展開を図る「KAIZEN活動」を通じて、各種スキルに関する社内資格の創設や研修の強化、優良施策のデータベース化などの取り組みを実施しました。


(5)CSRの推進に向けた取り組み
 情報通信サービスの提供を通じて、地球環境に優しく、社会の健全で持続的な発展に寄与していくことを企業の社会的責任と考え、CSR活動をNTT西日本グループにおける事業運営の重要な柱の一つとして位置づけ、「NTTグループCSR憲章」(平成18年6月制定)を基本に、個人情報保護の徹底をはじめとした法令等の遵守はもとより、安心・安全な通信インフラの提供による信頼の維持・向上に努めました。また、昨年6月に「環境経営推進室」を設置し、情報通信サービスの提供を通じた社会全体の環境負荷低減への貢献、自らの事業活動に伴って消費するエネルギーの削減をはじめとした環境活動の推進に取り組みました。更には、昨年4月に「いきいき共生推進室」を設置し、多様な人材の活用及び多様な働き方の推進にも取り組みました。
 これらCSRの取り組みについては、今後更に「NTTグループCSR憲章」の理念を浸透させつつ、グループ一体となったCSR活動を一層推進するために、CSR経営の強化に努めるとともに、「NTT西日本グループCSR報告書」を発行し、ステークホルダーへの情報開示にも積極的に取り組んでまいります。
 その他、安心・安全なサービス提供の取り組みとして、コンクリートポール(電柱)の折損事故の未然防止に向け、目視点検が難しい地中部等のひび割れを診断できる装置の導入、電柱点検に関する社内資格の創設などの取り組みを実施しました。
 更に、現在、唯一予知が可能とされる東海地震を想定し、有事の際、通信設備の復旧に向けて迅速かつ的確な対応が行える体制の確立をめざし、様々な準備行動の実施、グループ各社や関係省庁等との情報連携の確認など、具体的な実践演習を目的とした総合防災訓練を実施しました。
 最後に、一昨年2月から同年8月にかけて実施した「ひかり電話」の一部のチラシ、新聞広告、リーフレット、ダイレクトメールの表示について、取引条件が実際のものより著しく有利であるとお客様に誤認させるものであるとして、昨年7月に不当景品類及び不当表示防止法第6条第1項の規定により、公正取引委員会から排除命令を受け、お客様にご迷惑をおかけしましたことにつきまして、心より深くお詫び申し上げます。当社は、お客様にわかりやすい適正な広告物を提供するため、昨年6月より本社に「広告表示審査室」を設置し、すべての広告物を、使用する前に、消費生活アドバイザー等の意見を取り入れながら審査するとともに、代表取締役をトップとした「ビジネスリスクマネジメント推進委員会」において、広告表示に関する全社的な基本方針の検討や広告表示の適正な実施状況の点検を行うこととしており、引き続き、これらの取り組みを通じて、お客様にわかりやすい広告表示を行ってまいります。


(6)販売状況
 以上の取り組みの結果、営業収益は1兆8,243億円(前年同期比4.0%減)、経常利益は195億円(前年同期比21.6%減)、当期純利益は154億円となりました。

※1: Software as a Serviceの略。ネットワークを通じてアプリケーションソフトの機能を顧客の必要に応じて提供する仕組みのこと。
※2: 1Gbpsとは技術規格上の最大値。実使用速度は、お客様のご利用環境や回線の混雑状況によって低下する恐れがある。また、お客様がご利用可能なトラヒックの他に通信を制御するための制御トラヒックが流れており、実際に利用可能な最大通信速度は、1Gbpsを若干下回る。
※3: NTT西日本収容ビルからマンションの共通部分を経由して、各住戸に直接光ファイバーを引き込む「オール光」方式。
※4: 「フレッツ 光ネクスト」「フレッツ・光プレミアム」「Bフレッツ」の総称。
※5: 株式会社ベネッセコーポレーション様が提供する平成20年度に中学1年生向けに開講した通信講座。Webならではの音声・動画の解説や双方向性を活かした指導を通じて生徒の学力向上と高校合格を支援。
※6: 従来のフィルムによる映画素材の配給をデジタルデータに置き換えたもの。
※7: Interactive Voice Responseの略。


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