1.当期の業績の概要


 当期におけるわが国経済は、企業収益が改善し、設備投資が増加するなど、景気は回復して参りました。
 情報通信分野におきましては、ブロードバンドアクセスサービスの急速な進展や技術革新を背景にした、インターネット・IP電話・映像サービスを一体的に提供するトリプルプレイ、さらには、携帯と固定を融合したFMCサービスの登場など、市場環境が激しく変化しております。また、成長著しいブロードバンド市場におきましては、純増数で光アクセス回線がADSLを上回るなど、光ブロードバンドの普及が本格化して参りました。一方、固定電話市場では、IP電話およびドライカッパを利用した直収電話サービス等の普及によって、基本料等を含めた競争が激化し、従来にも増して厳しい事業環境となりました。
 このように市場・競争環境が目まぐるしく変化する中、当社は平成17年度を「2010年までに1500万のお客様に光アクセスサービスをご利用いただく」という目標を掲げたNTT西日本グループ中期ヴィジョンを実現するための“第一歩”を踏み出す重要な年度と位置づけ、光アクセス回線及び光IPサービスの飛躍的拡大に向けた魅力ある新サービスの提供、セキュリティ機能など付加価値の高いソリューションビジネスの推進、更には、西日本グループトータルでの業容拡大等、具体的には、以下の取り組みを積極的に実施して参りました。


<1>ブロードバンドビジネスの展開
i.ブロードバンドアクセスサービスの充実
 光アクセスサービスにつきましては、平成12年12月から試験提供を行い、平成13年8月より「Bフレッツ」として本格提供を開始いたしました。その後、お客様の多様化するご要望にお応えするため、平成17年3月には、IPv6を利用した高品質なテレビ電話機能やセキュリティ機能を標準装備した「フレッツ・光プレミアム」のサービスを開始し、「ひかり電話」や映像サービスを組み合わせたトリプルプレイによる販売拡大に取り組んで参りました。
 また、従来から実施しておりました「フレッツ光」の期間限定月額無料キャンペーンに加え、「フレッツ・光プレミアム ファミリータイプ」または「Bフレッツ ファミリー100タイプ」が最大で1年間特別料金となる「光ぐっと割引」の提供や初期工事費無料等各種キャンペーンを実施するとともに、光通信サービス即決管理システム(AQROS:アクロス)の導入によるリードタイム(申込み〜開通)の期間短縮、更にはお客様に安心してご利用いただけるよう24時間対応のサポート体制等、お客様ニーズに対応したサービスの提供に努めることにより、本格提供開始以来4年8ヶ月で施設数150万回線を突破いたしました。
 さらに、ADSLサービスにつきましても、より多くのお客様にご利用いただくために、新規にお申し込みいただいた方を対象とした期間限定の「1年間最大半額キャンペーン」等を実施し、積極的に販売活動を展開して参りました。

ii.ブロードバンドアプリケーションサービスの充実
 光IP電話サービスにつきましては、大口法人向け、マンション向けと、順次提供を進め、平成17年5月から戸建住宅向けの「ひかり電話」の提供、平成18年3月には、中小規模事業所向けに最大8チャネル、32電話番号までご利用可能な「ひかり電話オフィスタイプ」の販売を開始(平成18年5月サービス提供開始予定)するなど、サービスのラインナップを拡充して参りました。また、多くのお客様にご利用頂けるようエリア展開についても積極的に取り組んで参りました。
 加えて、サービスの更なる利便性向上のために、「ひかり電話」には、1契約につき2回線分の同時発着信を可能とする「複数チャネル」サービスや1契約につき最大5つの電話番号を利用できる「追加番号」サービスを、「ひかり電話ビジネスタイプ」には、「IPセントレックス機能※」の対応端末としてモバイルIP電話端末を追加するなど、機能の拡充にも取り組んで参りました。
 公衆無線LANサービスの「フレッツ・スポット」につきましては、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム株式会社が提供する共用無線LAN設備の活用を積極的に進めるとともに、NTT東日本との相互ローミングサービスの提供も開始するなど、お客様により広いエリアで便利にご利用頂くための取り組みを行って参りました。
 IPv6に対応したアプリケーションサービスにつきましては、平成17年8月、「フレッツ・光プレミアム」および「フレッツ・v6アプリ」をご利用のお客様向けに、デジタルカメラを使って撮影した画像や資料等大容量データを安全に保管・共有できる「フレッツ・v6マイディスク」の提供を開始いたしました。
 ブロードバンドコンテンツの配信の分野では、「フレッツ・スクウェア」におきまして、宝塚歌劇団、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社、株式会社ポケモン等との協業によるフレッツサービスならではの魅力的なコンテンツの配信等に加え、フレッツ光の広帯域性を活かした“マルチアングルコンテンツ”および“高品質コンテンツ”を配信するブロードバンドサイト「v6ステージ」を提供して参りました。
 また、Warner Bros.Inc、東宝株式会社等との協力により、光ブロードバンドを利用し、DCI仕様準拠によるデジタルシネマを複数の商業用映画館にネットワーク配信し、継続的に常態上映するという形態では世界初となるトライアル「4K Pure Cinema」を実施し、商用提供に向け、多くの成果を得ることができました。
標準的なPBX機能をIP電話網のサービスとして提供する機能


<2>ソリューションビジネスの展開
 法人向けの光IP電話サービス「ひかり電話ビジネスタイプ」と3G携帯電話/無線LANデュアル端末などの携帯電話端末を組み合わせ、固定と移動、音声とデータを統合したユビキタスなオフィス環境を、スピーディーかつ低コストで導入可能な「モバイルIPセントレックスソリューション」を「N.prosol(エヌプロソル)」の新たなラインアップとして提供開始いたしました。
 セキュリティ関連サービスとしては、個人情報保護法の施行等に伴い情報セキュリティ対策に悩みや不安を抱える企業様や自治体様向けに、組織内部からの機密情報の不正持ち出しや紛失・盗難などによる情報漏えいを防止する「シンクライアント・トータルソリューション」を提供開始いたしました。
 また、昨今の情報漏えい・個人情報保護対策として注目を集めている生体認証(バイオメトリクス)の技術とNTTサービスインテグレーション基盤研究所が開発したICカード「ELWISE−CARD」を組み合わせた「バイオメトリクス対応 ICカードセキュアシステム」を提供開始いたしました。本システムを導入することで、複数拠点をネットワークで結んで構築・運用している業務システムなどにログインする際の認証を強化することが可能になりました。
 さらに、データファイルのみならず、Webブラウザを活用したシステムで表示されるコンテンツ情報にもセキュリティ対策を施したいというお客様ニーズにお応えするため、Webブラウザに表示されるコンテンツの閲覧、保存、印刷などを制御することで、社内Webシステムにおける顧客の個人情報などの重要情報を保護する「Webコンテンツ保護サービス」を提供開始いたしました。
 イーサ系サービスの付加価値サービス充実に向けては、従来より定めている「サービス品質保証制度(SLA:Service Level Agreement)」への更なる高信頼性ニーズにお応えするため、該当ネットワークサービスの稼働率についてサービス品質保証をする「稼働率SLA」を追加するとともに、LAN環境内の複数機器をトータルかつ安価に監視して欲しいというご要望にお応えするため、「インライン監視」に「複数機器監視機能」を新たに追加し、月額利用料についても見直しいたしました。
 その他、専用線やイーサ系サービスなどビジネス系アクセスサービスを多数ご利用頂いているお得意様企業に対しては、ご利用いただく回線の種類やエリアに関わらず、「大量・多地点回線の円滑な開通」、「迅速な故障対応」及び「アフターサービスの充実」など、ご注文からご提供、安定的な運用までを一元的に対応することで、サービス品質の向上を図り、安心・安全・信頼のサービスをご提供する「ビジネスサービスセンタ」を開設いたしました。


<3>NTT西日本グループによる業容拡大
 株式会社エヌ・ティ・ティ ネオメイトにおきましては、株式会社ネットマークスとの協業により、既存PCのハードディスクを取り外し、シンクライアント専用モジュール「NBORN(エヌボーン)」を実装することによって、既存PCを有効活用してシンクライアント化するビジネスを開始いたしました。
 また、従来の「AQStage(アクステージ)PF IPコールセンタサービス」に、グリッド技術を用いることで、コールセンタに保管する個人情報を個人が特定できないように霧散化した上で複数サーバに分散保管する等のセキュリティ機能を強化し、人的な個人情報流出や災害等によるシステム障害からの個人情報喪失などのリスク回避を実現するIPコールセンタサービスの提供を開始しました。
 さらに、NTT東西のフレッツサービスとIP上に仮想的にL2(レイヤ2)を構築できる機器(IPカプセリング機器)を組み合わせることで安価にイーサネットVPNを構築できる「AQStage広域イーサネット・イージーLAN」サービスの提供を開始しました。
 加えて、地面を堀削することなく、“超音波”を使って、見えない部分のひび割れ位置・度合いを診断するコンクリート電柱劣化診断装置(ポールテスタ)※の開発・製品化により痛んだ電柱だけを効率的に取替えることが可能になりました。(※平成17年第38回電気通信産業功労賞受賞)
 一方、株式会社エヌ・ティ・ティ マーケティングアクトにおきましては、急速に進む高齢化社会を背景に、一人暮らしの高齢者宅にセンサーを設置し、離れて暮らすご家族やケアマネージャーが高齢者の日常生活をパソコン等で確認できるとともに、異常検知時には登録されている連絡先へメールで通知する、独り暮らしの高齢者を遠隔から見守るサービス「ACTOSみまもりeye」を国の自治体や介護事業者、ご家族へ提供開始いたしました。
 また、株式会社NTTアプリエおよび大日本印刷株式会社と共同でブロードバンド回線と無線ICタグを組み合わせた福祉施設運営支援システム「ACTOSキットタグdeおまもりメニュー」を開発し、NTTマーケティングアクトグループ各社から主に福祉施設・幼稚園・保育園向けのソリューションパッケージとして提供を開始いたしました。
 さらに、地域の店舗・事業者様の集客・売上拡大に向けたソリューションとして、地域ポータルサイト「ACTOS e−まち知ろう」や、二次元コードと携帯電話を活用し自社の会員へのタイムリーなメールやクーポンの配信などが可能となる「ACTOSモバイルC」などのサービスも引き続き提供するとともに、近年ネット上のコンテンツとして注目されているSNS(ソーシャルネットワーキングサイト)機能を活用した新たなビジネスモデルとして、人材紹介ビジネスとSNSを融合した「キャらリア」を開設いたしました。


<4>固定電話サービスの取り組み
 ドライカッパを利用した直収電話サービスが普及する中、NTT西日本の電話サービスを引き続きお客様にご利用いただくため、複数回線の電話料金を一括してお支払いいただいているお客様に対して基本料(回線使用料)の割引を実施するなど、料金の低廉化に努めて参りました。
 また、「ナンバー・ディスプレイ」につきましては、「かかってきた電話が誰からの電話なのかを知りたい」といったご家庭での電話の利用ニーズと合致したサービスであるとともに、ビジネスシーンでの電話受付業務におけるお客様サービスの向上等に貢献できるサービスであることから、多くのお客様にご利用いただき、本格サービス提供開始より約7年で契約回線数が500万回線を突破いたしました。


<5>CSRの推進に向けた主な取り組みについて
 NTT西日本グループのCSRは、お客様・地球環境・地域社会に対する「社会的価値の増大」、株主の皆様に対する「経済的価値の増大」、社員に対する「人間的価値の増大」を図ることにより、企業価値を高めていく「価値創造」活動であると考えており、更なるCSR活動の推進を図るため、従来の取り組みである社会貢献活動・地球環境保護活動および情報セキュリティなどの各種推進委員会を横通しする社長直轄の「CSR推進会議」を設置するとともに、CSR活動報告書の発行やHPでの情報公開、さらには、全社員を対象としたCSRの意識調査等を実施して参りました。
 なお、具体的な取り組みについては、以下のとおりです。

i.企業倫理の確立に向けた取り組み
 NTT西日本グループでは、従来から「企業倫理の確立」に向けた取り組みを積極的に展開してきたところですが、更なる浸透と定着に向け、昨年度に引き続き、経営トップ層をはじめ、全社員を対象とした研修、また、浸透度合いを検証するための意識調査の実施等、各種施策の展開により、公私を問わず高い倫理観の醸成と不正・不祥事を起こさない組織風土づくりを推進して参りました。

ii.地球環境保護の取り組み
 環境関連法およびNTT西日本グループ地球環境憲章のもと、NTT西日本グループとして一体となり、環境負荷の低減・法令遵守等の環境保護活動を推進して参りました。今年度の特徴的な取り組みとして、京都議定書の発効に伴って政府が開始した国民運動「チーム・マイナス6%」を、社内における地球温暖化防止に向けた企業文化の定着化の機会と捉え、本運動に参加するとともに、夏期の取り組みとして全社員の省エネ意識の徹底を図るための施策「サマー28推進」(「夏の適正冷房(28℃)の徹底」や「夏の軽装の奨励」等)を実施するとともに、冬期においても「冬の適正暖房(20℃)の徹底」等に取組み、各種節電施策を通して電力使用量の削減に努めて参りました。
 加えて、環境対策の継続的改善と環境リスクの低減を図るため、環境管理システムの国際標準規格であるISO14001の認証取得について、事業所単位で経費等を含めた取得戦略等を策定し、自主的に取り組んできたところですが、今年度は鹿児島支店が新規に取得したことで、NTT西日本全16支店にて取得完了となりました。

iii.情報セキュリティの更なる強化
 また、「個人情報の保護に関する法律」の全面施行を踏まえ、これまで以上にお客様情報の適正な取扱いが求められる中、グループ会社を含め横断的に指導するための「情報セキュリティ推進本部」を設置するとともに、「委託会社におけるお客様情報保護に関するセキュリティガイドライン」に基づくお客様情報の管理体制や管理方法の強化に向けた業務委託会社へのキャラバン及び立ち入り点検を実施する等、お客様情報の管理体制や管理方法の更なる強化を図りました。
 また、全社員(グループ会社や派遣社員等を含む)を対象としたお客様情報保護に関する研修及びWEBを用いた自己診断テストによる理解度チェック、並びに個人情報保護に関する「Q&A集」と注意事項をまとめた「ワンポイントアドバイス集」の作成・配布を通じて、全社を挙げてお客様情報保護の強化に努めて参りました。

iv.災害時の復旧活動等
 災害発生時等にお客様の安否情報の確認用に提供してきた音声による「災害用伝言ダイヤル(171)」に加えて、昨今のインターネットの普及に伴い、動画やテキスト等を活用した「災害用ブロードバンド伝言板(web171)」の試行導入を8月より実施することで、災害時のお客様の「安心・安全・信頼」の更なる向上を図りました。
 また、台風及び福岡西方沖地震に伴う建物損壊等で電話が使用できなかったお客様、並びに避難指示・勧告によって実態的に電話が使用できなかったお客様について、その期間における基本料金等の免除及び建物損壊で仮住居への移転工事等が生じた場合の工事料金も免除といたしました。
 さらに、113故障受付につきましては、自然災害・設備故障等によりお客様からのお問合せが急増・集中した場合、災害等影響の少ない他地域の113センタへお問合せを転送し、1件でも多く受付けられる体制を構築する等、西日本エリア全体のお客様サービスレベルの維持・向上に努めて参りました。
 加えて、不良設備の早期発見・改修に向けて、NTTグループ内の体制の確立を図るとともに、お客様からも不良設備の情報を提供していただく仕組み(設備110番)を6月に確立しました。

 こうした取り組みのベースとして、お客様に安心してサービスをご利用いただけるよう、西日本グループ全体で「カスタマー・ファースト活動」を更に推進していくことで、引き続きお客様からの信頼確保に努めて参りました。


 以上の結果、当期の営業収益は2兆296億円(前期比3.3%減)、経常利益は565億円(前期比29.5%減)となりました。なお、当期純利益は326億円(前期比20.4%減)となり、4期連続で、黒字を達成いたしました。


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