1.当期の業績の概要


 当期におけるわが国経済は、企業収益が大幅に改善し、設備投資が増加するなど、景気は緩やかに回復して参りました。
 情報通信分野におきましては、音声からインターネット、データ通信への移行、IP電話の急速な拡大が見込まれるなど、市場構造そのものが急激に変化しております。そのような状況の中、既存の固定電話市場におきましては、ドライカッパを利用した直収電話サービスの本格参入により、基本料金を含めた本格的な競争時代を迎えております。また、成長分野であるブロードバンド市場におきましては、光サービスやADSLサービスなどのブロードバンドアクセスサービスの本格的な普及・拡大期を迎えているものの、顧客獲得に向けた事業者間の価格・サービス両面での競争がより熾烈に繰り広げられ、事業環境は従来にも増して厳しい状況になりました。

 このように市場・競争環境が著しく変化し、取巻く環境が大きく変わる中、当社は平成16年度を、光を中心としたブロードバンド市場を飛躍的に伸ばし、電話からIPへの収益構造の改革を図る重要な年度であると位置づけ、光の特性を活かしたアプリケーションサービスやコンテンツの充実、セキュリティサービスなど付加価値の高いソリューションビジネスの推進、西日本グループトータルでの業容拡大、更には、固定電話サービスの料金体系の見直し等、具体的には、以下の取り組みを実施して参りました。


<1>ブロードバンドビジネスの展開
i.ブロードバンドアクセスサービスの充実
 光サービスにつきましては、「Bフレッツ」の従来のプランに加え、多様化するお客様のご要望にお応えするため、ISP等との接続機能、IPv6を利用した高品質なテレビ電話機能及びセキュリティ機能を基本機能とする戸建向けの新たなアクセスサービス「フレッツ・光 プレミアム ファミリータイプ」の提供を開始いたしました。また、光ファイバによる多チャンネル映像配信のニーズにお応えするため、電気通信役務利用放送事業者様向けに最大400チャネルの一括伝送を可能とする「映像通信網サービス」の提供を開始いたしました。
 ADSLサービスにつきましても、従来のプランに加え、下り最大概ね44〜47Mbps、上り最大概ね5Mbpsを実現した「フレッツ・ADSLモアスペシャル」を提供開始し、更なるお客様の高速化ニーズにお応えして参りました。
 また、「Bフレッツ」及び「フレッツ・ADSL」を新規にお申し込みいただいたお客様を対象とした期間限定の月額無料キャンペーン等を実施するとともに、フレッツユーザの新規獲得及び利用定着化を目的として、2年間の継続利用を条件に月額利用料金を割引く「フレッツ・あっと割引」、ご利用年数に応じ月額利用料金を自動的に割引く「フレッツ・ずっと割引」の提供を開始いたしました。
 加えて、フレッツサービスの更なる普及拡大を目的に、企業ユーザーやSOHOユーザを中心とした「営業時間外における故障修理」の要望に対応するため、24時間365日の故障修理を実施する「サポートメニュー」を従来の「フレッツ・ADSL タイプ2」及び「Bフレッツ」の「ビジネスタイプ」、「ベーシックタイプ」、「マンションタイプ」に加え、「ファミリー100」においても提供を開始いたしました。

ii.ブロードバンドアプリケーションサービスの充実
 通話料金の低廉化ニーズ及び固定電話並みに高品質なIP電話サービスに対する需要の高まりにお応えするため、IP電話サービスの「ひかり電話」の展開を進め、「Bフレッツ マンションタイプ」をご利用のお客様を対象とする集合住宅向けの提供を開始するとともに、「フレッツ・光 プレミアム ファミリータイプ」をご利用のお客様を対象とする戸建住宅向けにつきましても提供開始に先立ち、平成17年2月より申込み受付を開始いたしました。法人のお客様向けの「ひかり電話ビジネスタイプ」(旧:法人向けIP電話サービス)におきましては、さらに多くの法人のお客様にもご利用いただけるよう、より安価なアクセス回線(Bフレッツベーシックタイプ)の追加等、サービス提供条件の変更を行いました。
 公衆無線LANサービスの「フレッツ・スポット」におきましては、伝送速度を最大54Mbpsに高速化するとともに、より多くのお客様に快適にご利用いただけるようアクセスポイントの拡大に努め、3月末にはアクセスポイントの設置数が西日本エリアで3,000を突破するなど、国内の公衆無線LAN事業者としては最大の規模でサービスを展開して参りました。
 また、IPv6を活用した高品質なアプリケーションサービスとして、「Bフレッツ」「フレッツ・ADSL」をご契約のお客様向けに、高品質なテレビ電話機能およびセキュリティ機能を提供する付加サービス「フレッツ・v6アプリ」を開始いたしました。
 さらに、ブロードバンドコンテンツの配信におきましては、コンテンツプロバイダ様等の配信サーバを接続することにより、「フレッツ・光プレミアム」「フレッツ・v6アプリ」をご契約のお客様に対し、高品質な映像・音楽等の配信が可能となるコンテンツ配信サービス「フレッツ・v6キャスト」の提供を開始いたしました。
 平成16年2月から2ヶ月間、伊藤忠商事株式会社、株式会社スカイパーフェクト・コミュニケーションズと共同で実施したIPv6を活用した品質制御型コンテンツ配信実験の結果を踏まえ、上述の会社及びNTT西日本、NTT東日本との共同出資による株式会社オン・デマンド・ティービーが平成17年3月より、NTT東西フレッツユーザ向けに映像配信サービス「オンデマンドTV」の提供を開始しております。
 加えて、「フレッツ・スクウェア」におきましては、昨年度に引き続き、宝塚歌劇団による「青い鳥を捜して」「タカラヅカ・ドリーム・キングダム」の関連コンテンツ、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社によるディズニーの各種エンターテイメントコンテンツに加え、新たに株式会社ポケモン等による「ポケモンコンテンツ」等、有力なコンテンツホルダーとの協業によるフレッツサービスならではの魅力的なコンテンツの配信等に取り組んで参りました。


<2>ソリューションビジネスの展開
 公共系から企業系まで様々なお客様ニーズに対応するソリューションを体系化した「prosol(プロソル)シリーズ」を従来から提供して参りましたが、中小規模の企業や自治体向けに、最適ネットワークのトータルソリューション「N.prosol(エヌプロソル)」の新しいラインナップとして、高まるセキュリティ対策のニーズに対応し、安心・安全なリモートアクセス環境を容易に実現する「SSL−VPNソリューション」の提供を開始するとともに、Bフレッツなどのブロードバンド回線を利用し、安価でスピーディーに高品質な映像コミュニケーションを実現する「TV会議パッケージ」の提供を開始いたしました。
 また、業種を問わず低コストで短期間に企業のIT化を実現する商流(商取引のサイクル)最適化トータルソリューション「C.prosol(シィプロソル)」の新しいラインナップとして、酒類業界向けに業務の効率化とスピード化を実現した「酒類業界向け共同利用型EDIソリューション」の提供を開始するとともに、百貨店に商品を納入している卸会社やメーカー向けに、戦略的なマーチャンダイジングの実現をサポートする「百貨店業界向けEDIソリューション」の提供を開始いたしました。
 さらに、セキュリティ対策に関するお客様ニーズに的確にお応えするためのトータルソリューション「D.prosol(ディプロソル)」の新しいラインナップとして、株式会社エヌ・ティ・ティ マーケティングアクト及び株式会社エヌ・ティ・ティ ネオメイトと共同で、お客様の情報資産の管理状況を客観的に評価する「情報セキュリティ監査サービス」の提供を開始するとともに、セキュリティ被害発生後の補償ニーズに対応するため、東京海上火災保険株式会社と協力し、トータルセキュリティを実現する補償型セキュリティ診断サービス「セキュリティチェックセーフティ」の提供を開始いたしました。
 加えて、ITを活用し、最適な教育・研究環境を創造することに加え、競争時代に打ち勝つ大学経営をサポートするトータルソリューション「U.prosol(ユープロソル)」の提供を開始するとともに、農業関連業界が抱える生産性の向上等に向け、農村地域の活性化をサポートするトータルソリューション「A.prosol(エープロソル)」の提供を開始いたしました。
 この他、大阪ガス株式会社様の事業所(49拠点)を結び、IP電話とモバイルを融合したIP電話システムを構築いたしました。このIP電話システムにおける外線通話は、NTT西日本が法人のお客様向けに提供している「ひかり電話ビジネスタイプ(旧:法人向けIP電話サービス)」を、内線(拠点間)通話は、NTT西日本が提供する高品質な光ファイバを利用した広域イーサネット回線を使用し、1台の携帯電話端末で、社内ではIP電話による内線および外線通話、社外では携帯電話としての通話が可能となり、通信費などトータルコストの削減と固定電話並みの高い音声品質、さらにはワークスタイルの変革による生産性の向上を同時に実現いたしました。


<3>NTT西日本グループによる業容拡大
 株式会社エヌ・ティ・ティ ネオメイトにおきましては、SI・MIを中心としたNTT西日本、グループ各社との連携強化及び多彩なアライアンスの推進により、最大限の業容拡大を図って参りました。具体的には、セキュリティ機能強化のためグリッド技術を活用した「AQStage(アクステージ)PF IPコールセンターサービス」、情報セキュリティ総合診断サービス「InfoDock(インフォドック)」や中小規模事業所向けのIP電話サービス「AQStageコールS」の提供を開始いたしました。また、1つの公衆無線LANアクセスポイントに複数の無線LAN事業者を収容し、電波干渉問題の解決とサービスの普及拡大を推進する「AQStage公衆無線LAN共用アクセスポイントサービス」の事業開始等により、サービスラインアップを充実して参りました。
 さらに、パソコンの廃棄・更改に伴う個人情報の漏洩を防止するため、東京リース株式会社との提携により、リースアップパソコン等のリユース・リサイクル事業に着手し、その第一歩としてハードディスクに残留するデータの完全消去から中古パソコンの再生・産業廃棄物中間処理までを高セキュリティな環境で一元的に行う「PCセキュリティリサイクルセンター」を設立し、運営開始いたしました。
 一方、株式会社エヌ・ティ・ティ マーケティングアクトにおきましては、高齢者が安心して暮らせるサービスとして、一人暮らしの高齢者宅にセンサーを取り付け、自治体や離れて暮らす家族がパソコン等で日々の生活状況を閲覧することができるとともに、異常検知時にはあらかじめ登録されている連絡先にメールでお知らせすることができる、高齢者みまもりサービス「ACTOSみまもりeye」の提供を開始いたしました。
 また、エヌ・ティ・ティ・シスコム株式会社および大日本印刷株式会社と共同でブロードバンド回線と無線ICタグを組み合わせた映像配信システムである「ACTOSキットおっかけカメラメニュー」を開発し、NTTマーケティングアクトグループ各社から主に幼稚園・保育園向けのソリューションパッケージとして提供を開始いたしました。
 さらに、昨年度に引き続き地域の店舗・事業者様の集客・売上拡大に向けたソリューションとして、地域ポータルサイト「ACTOS e−まち知ろう」や、二次元コードと携帯電話を活用し自社の会員へのタイムリーなメールやクーポンの配信などが可能となる「ACTOSモバイルC」などのサービスも提供して参りました。


<4>固定電話サービスの取り組み
i.電話料金の値下げおよび施設設置負担金の見直しについて
 事業環境やお客様ニーズの変化に的確に対応し、現在、電話をご利用のお客様に光IPネットワークへ円滑に移行して頂くためのステップとして、基本料(回線使用料)の値下げおよびプッシュ回線の付加機能使用料を廃止するとともに、新たな通話料割引サービスとして、県内通話料を一律3分8.5円とする「イチリッツ プラン1」 、定額料100円/月・回線のお支払いにより、県内通話料を一律3分7.5円とする「イチリッツ プラン2」を提供して参りました。
 また、加入電話及びINSネット64の施設設置負担金を見直すとともに、ライトプラン(加入電話及びINSネット64・ライト)の加算料金の見直しを実施して参りました。

ii.固定電話から携帯電話への通話サービスの提供開始について
 固定電話から携帯電話への通話につきましては、これまで携帯電話事業者が料金設定を実施しておりましたが、事業者識別番号をダイヤルしていただくことにより当社による料金設定が可能となったことから、低廉な料金でご利用いただける固定電話発携帯電話着通話サービス(サンキューダイヤル0039)を提供開始いたしました。


 以上に加え、台風に伴う建物損壊等で電話が使用できなかったお客様、並びに避難指示・勧告によって実態的に電話が使用できなかったお客様について、その期間における基本料金等の免除及び建物損壊で仮住居への移転工事等が生じた場合の工事料金も免除といたしました。また、「新潟県中越地震」および「スマトラ島沖大地震」被災者への義援金募集に係るダイヤルQ2番組の回収代行手数料を無料といたしました。

 この他、相次ぐ企業不祥事の発生が、大きな社会問題となる中、NTT西日本グループでは、従来から「企業倫理の確立」に向けた取り組みを積極的に展開してきたところですが、更なる浸透と定着に向け、昨年度に引き続き、経営トップ層及び全社員を対象とした「企業倫理研修」の実施に加え、新たに全社員に対する社長からのメッセージビデオの作成、更には全社員に対する企業倫理に関する意識調査を実施するなど、不正・不祥事を起こさない組織風土づくりを推進して参りました。
 また、一連の情報漏洩事件に鑑み、NTT西日本グループとしても、従来からの全社員研修等による社員モラルの徹底、お客様情報の取扱いに関する管理体制の強化等の「お客様情報管理の徹底」に向けた取組みに加え、システム運用の総点検並びに委託会社におけるお客様情報管理体制の強化を図るなど、お客様情報の保護に万全を期して参りました。
 さらに、環境問題への取り組みといたしまして、当社の事業活動によって生じる環境負荷を低減するための最重要課題である、紙資源、温暖化、廃棄物の各対策項目について環境対策を推進して参りました。具体的には、電話帳等の純正パルプ使用量を削減する紙資源対策、通信電力節減等の温暖化対策、産業廃棄物削減の各対策項目について、中長期的なグループの行動計画目標を制定するとともに単年度数値目標を設定し、目標値の達成に向けて取組んで参りました。
 加えて、環境対策の継続的改善と環境リスクの低減を図るため、環境管理システムの国際標準規格であるISO14001の認証取得について、事業所単位で経費等を含めた取得戦略等を策定し、既に取得している13支店に加え、今年度は岡山支店、熊本支店が新規に取得するなど、積極的に取り組んで参りました。なお、未取得支店においてもグループ会社を含めて平成17年度末までに取得する目標を掲げて取り組んでおります。
 また、昨年度に引続き、NTT西日本グループの環境対策全般の実施状況について、NTTマーケティングアクトグループ、NTTネオメイトグループの環境保護活動も網羅し、平成16年10月にNTT西日本グループ環境報告書として編集・発行するなど、NTT西日本グループの環境対策全般の実施状況についても積極的な情報公開を行い、環境保護活動に関する企業責任の遂行に努めて参りました。

 以上の結果、当期の営業収益は2兆980億円(前期比3.2%減)、経常利益は800億円(前期比11.6%減)となりました。なお、当期純利益は410億円(前期比33.2%減)となり、昨年度に引き続き、黒字化を達成いたしました。


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