1.当期の業績の概要


 当期におけるわが国経済は、世界経済が回復する中、輸出、生産、企業収益の改善が続き、全体として設備投資と輸出に支えられ着実に回復して参りました。
 そのような中、情報通信分野におきましては、光ファイバやADSL、CATV等のブロードバンドサービス利用者数が1,400万人を突破するなど、本格的な「ブロードバンド時代」に突入し、事業者間の熾烈なアクセスラインの多様化・高速化・低廉化により、「サービス」「価格」の両面における競争が一段と激しさを増してきました。
 また、当社のコアビジネス分野である固定電話市場におきましては、従来の固定電話から移動体通信への移行に加え、ブロードバンドサービスの急速な普及と相俟って、電話からIPへの移行が一段と加速し、VoIP技術を活用したIP電話サービスも普及・浸透しつつあるなど、固定電話市場の縮小傾向に歯止めがかからない状況が続きました。

 当社はこのような極めて厳しい競争環境の中、平成15年度を「増収基調への転換」と「安定的黒字経営の実現」の出発点となる重要な年度と位置付け、光を中心としたブロードバンドビジネスの積極的な展開、電子自治体など分野ごとのサービスインテグレーションを主体としたソリューションビジネスの推進、NTT西日本グループトータルでの業容拡大に積極的に取り組み、レゾナントコミュニケーション環境の早期実現に向け、以下の取り組みを実施して参りました。

<1>ブロードバンドビジネスの展開
i.ブロードバンドアクセスサービスの充実
 「Bフレッツ」につきましては、できるだけ多くのお客様にお使いいただくため光ファイバのサービス提供エリアを拡大するとともに、お申し込みを頂いてから開通までの時間を短縮するサービス即応体制を整えるなどCS向上に向けた取り組みを推進して参りました。また、構内配管や共用スペース等の設備的な都合によりBフレッツをご利用いただけないビル・マンション等のお客様のご要望にお応えするため、加入者光ファイバと26GHz帯無線周波数を用いたFWAシステムを組み合わせた「ワイヤレスタイプ」を提供するなど、光ファイバを利用したブロードバンドインターネットアクセス環境の普及を推進して参りました。
 「フレッツ・ADSL」におきましても、従来のプラン(「モア(12Mプラン)」「8Mプラン」「1.5Mプラン」)に加え、下り最大概ね24Mbpsを実現した「フレッツ・ADSL モア24」、下り最大概ね40Mbpsの「フレッツ・ADSL モア40」を提供開始し、更なるお客様の高速化ニーズに応えて参りました。
 また、県内拠点を結ぶ経済的なプライベートネットワークの構築が可能なイーサネットVPNサービス「フラットイーサ」の提供も開始いたしました。
 さらに、Bフレッツ及びフレッツ・ADSLをより多くのお客様にご利用いただくため、「期間限定割引」を昨年度に引き続き実施するとともに、新たに「学生割引」「シニア割引」を実施いたしました。
 加えて、企業ユーザ様を中心とした営業時間外における故障対応要望にお応えするため、Bフレッツ(ファミリー100を除く)、フレッツ・ADSLを対象に24時間故障対応を行うサポートメニューの提供を開始いたしました。

ii.ブロードバンドアプリケーションサービスの充実
 フレッツサービスの広域化(県間接続)をNTT西日本提供エリア全域に拡大することにより、「フレッツ・オフィス ワイド」「フレッツ・コミュニケーション」「フレッツ・スクウェア」「フレッツ・グループ」「配信代行サービス(広域メニュー)」及び「サーバ接続サービス」について、NTT西日本提供エリア全域における府県を跨った通信を実現することで、お客様の利便性の向上を図って参りました。
 ユビキタスサービスの柱である「フレッツ・スポット」では、より多くのお客様にご利用いただけるよう、西日本主要73都市へエリアを拡大するとともに、フレッツアクセスサービス(Bフレッツ、フレッツ・ADSL、フレッツ・ISDN)をご契約されていないお客様や法人企業様にもご利用いただけるよう提供条件を拡大いたしました。
 「フレッツ・スクウェア」につきましては、フレッツアクセスサービスをご利用いただいているお客様を対象として、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社、株式会社ディーワンダーランドとの「DisneyBB on フレッツ」、阪急電鉄株式会社と宝塚歌劇団との「タカラヅカ on フレッツ」の配信、また株式会社GIZAとは「THURSDAY LIVE at hillsパン工場」、朝日放送株式会社とは「ザ・シンフォニーホール」で開催されるクラシックコンサートの高品質ライブ中継の実施等、有力なコンテンツホルダーとの協業等によるブロードバンドならではの魅力的なコンテンツの配信等に取り組んで参りました。
 また、近年のブロードバンドアクセスサービスの急速な普及に伴う、映像コンテンツ視聴へのニーズの高まりを受け、伊藤忠商事株式会社、株式会社スカイパーフェクト・コミュニケーションズと共同で、平成16年2月より大阪市内においてIPv6技術を用いた品質制御型コンテンツ配信実験を開始いたしました。
 あわせて、平成16年2月より、国立遺伝学研究所と共同で、ネットワークに接続された複数のコンピュータを連携させ、仮想的な超高速コンピュータを実現し、大規模な計算処理を行うという「グリッド」技術の実験を開始いたしました。
 さらに、平成16年3月より、シャープ株式会社のパーソナルサーバー「ガリレオ」とBフレッツ等を接続し、エヌ・ティ・ティ・ソルマーレ株式会社が提供するダウンロード型映画コンテンツ配信サービス「シネマフービオ」をご利用いただく新たな取り組みを3社共同で開始しました。これにより、ブロードバンドを利用して、ご自宅のテレビからレンタルビデオ感覚で映画等のコンテンツをお楽しみいただく、コンテンツ視聴の新しい形をご提案いたしました。
 加えて、平成15年10月から法人ユーザの多様化するニーズ等にお応えするため、IP電話網内および加入電話等への低廉な通話料金での発信、および従来の加入電話等と同じ電話番号での着信を可能とする大口の法人ユーザ向けのIP電話サービスの提供を開始しました。

iii.ブロードバンド推進体制の整備
 ブロードバンド企業への変革に向け、ブロードバンドビジネスをスピーディかつ効果的に推進するとともに、既存事業分野での効率的な事業運営を推進することを目的として本社組織の見直しを行い、ブロードバンドサービス全般に関わる「サービス開発〜設備構築〜販売推進」までを一元的且つ自己完結的に実施する「ブロードバンド推進本部」と、既存の電話系サービスの収入を最大限維持するとともに、電話サービス、公衆電話、電報など基盤サービスに関わる業務の更なる効率化を一元的に推進する「基盤サービス推進本部」を平成15年7月に新設いたしました。
 さらに、株式会社エヌ・ティ・ティ マーケティングアクトグループとの連携により、インターネットの急速な普及に伴い、急激に増加しつつあるWeb利用による各種ご注文やお問い合わせに対して、NTT西日本エリア全域の一元的な受付体制を構築し、お客様サービスの充実を図るとともに、お客様のライフスタイルに合わせた最適なサービスやサポートサービスの提供により継続的かつ良好な関係を実現する「フレッツ・カスタマリレーションセンタ(FRC)」を平成15年5月に開設いたしました。

<2>ソリューションビジネスの展開
 公共系から企業系まで様々なお客様ニーズに対応するソリューションを体系化した「prosol(プロソル)シリーズ」を従来より提供して参りましたが、中小規模の企業や自治体向けに、個々の利用用途や利用形態に応じた最適ネットワークのトータルソリューション「N.prosol」(エヌプロソル)については、その第一弾として、Bフレッツなどのブロードバンド回線やVPN機器の提供から、工事、保守、運用までをオールインでパッケージ化した「VPNext(ブイピーネクスト)」の提供を平成15年5月から開始いたしました。続いて平成15年8月より企業や自治体におけるVPNによる安価で広帯域な網型ネットワークへのニーズ並びに、それらを利用した映像伝送や音声統合などによる業容拡大、生産性向上へのニーズの高まりを踏まえ、ワイドLANプラス、メガデータネッツ、フレッツ・グループの各種ブロードバンドVPNサービスをスピーディかつ低コストで活用できる、イージーオーダー型の「ブロードバンドVPNソリューション」の提供を開始いたしました。
 また、業種を問わず、低コストで短期間に企業のIT化を実現する商流(商取引のサイクル)最適化トータルソリューション「C.prosol」(シィプロソル)については、新しいラインアップとして、企業が顧客からの注文や問い合わせに利用する、電話・FAX・Web・電子メールなどの独立するコンタクトチャネルを統合し、一元的に受付する「機能一体型コールセンタソリューション」を平成15年7月から提供し、受付業務の効率化と効果的なCRM(顧客価値の最大化)を一体的に実現いたしました。
 さらに、地方公共団体向けのソリューション「G.prosol」(ジィプロソル)については、住民基本台帳ネットワークの本格的な運用開始に伴い、住民基本台帳カードを活用した各種行政サービス実現へのニーズに迅速にお応えするため、株式会社エヌ・ティ・ティ ネオメイトと協力し、住民基本台帳ネットワーク向けICカードを利用したソリューションを平成15年4月から提供して参りました。
 加えて、コンピュータウィルスの侵入や不正アクセスなどによるセキュリティ被害が増大する中、セキュリティ対策に関するお客様ニーズに的確にお応えするためのソリューション「D.prosol(ディプロソル)」の新しいメニューとして、株式会社ラック、住友商事株式会社と業務提携し、「総合セキュリティ監視サービス」「セキュリティ情報サービス」「セキュリティホールチェックサービスライト」の3つのサービスを新たに追加することにより、セキュリティシステムの導入コンサルティングから設計・構築及び運用支援までのトータルソリューションを平成15年8月から提供開始いたしました。
 そのような中、NTT西日本グループとして、「安心」「安全」「信頼」をモットーとした品質の高いトータルセキュリティサービスを提供するため、平成15年11月からNTT西日本、NTTマーケティングアクトグループ、NTTネオメイトグループの3社は、グループトータル1,000人規模の地域密着型による「セキュリティサービス推進室」を新設いたしました。
 その他、農業に携わる組織・団体向けに、農業事務プロセスのIT化を実現する農業情報システム「@recolte(レコルテ)」の新しいラインアップとして、生産者や飼養地など牛肉の生産プロセスにおけるさまざまな情報を電子データで登録・管理し、消費者にそれら情報を提供することで牛肉の安全性をアピールすることができる「牛肉トレーサビリティシステム」の提供を平成15年5月より開始いたしました。

<3>NTT西日本グループによる業容拡大
 株式会社エヌ・ティ・ティ ネオメイトにおきましては、お客様のネットワークやシステムの構築・保守(MI:メンテナンスインテグレーション)ビジネスを中心に事業を展開しつつ、それらを通じて蓄積された情報通信に関する技術力、ノウハウ及びフィールド第一線のサービスネットワークを活かして、更なる業容拡大に取り組んで参りました。具体的には、法人・自治体向けに高品質・高セキュリティなITサービスを提供する「AQStage(アクステージ)」、SOHO・マスユーザ向けにパソコンサポートサービスを提供する「Neo’z(ネオッツ)」、ネットワーク技術を活用し地図情報の専門商品を提供する「EXPLANET(エクスプラネット)」とデジタル地図「GEOSPACE(ジオスペース)」、情報機器サプライの「OZFA(オズファ)」の各ブランドの商品・サービスを更に充実し、お客様にトータルなITソリューションサービスをご提供いたしました。また平成14年度に提携したアライアンスをもとにビジネスを展開するとともに、更なるビジネスチャンスの獲得に向け、新たに家電量販店のボイスネットワークグループ各社との家電全般の販売事業等に関する業務提携などを実現いたしました。
 一方、株式会社エヌ・ティ・ティ マーケティングアクトにおきましては、従来からのテレマーケティング事業等に加え、IT系新サービスの統一ブランド「ACTOS(アクトス)」の積極的な展開による業容拡大を図って参りました。具体的には、テレマーケティング、人材派遣などの既存ビジネスとこれまでに蓄積したノウハウを複合的に組み合わせることにより、企業が追求する顧客満足のための課題解決をトータルにサポートする「トータル・マーケティング・ソリューション」の推進や、マスユーザ向けのCRM活動としてマーケティングアクトグループが取り扱う商品を会員特別価格で提供するとともにお客様に役立つ情報の提供等を行う会員プログラム「ACTOS Member」の運営を開始いたしました。また、インターネット上に設置した顧客管理・二次元コード配信システムを複数のユーザで共同利用することにより、安価に販売促進や顧客管理を行うことができる二次元コード活用型ASPサービス「ACTOSモバイルC」の提供を開始いたしました。

 この他、昨今の相次ぐ企業不祥事の発生を鑑み、NTT西日本グループは全社一体となって、常に高い倫理観を持って行動するとともに、不正・不祥事を起こさない意識の醸成と組織風土づくりを推進するため、経営トップ層をはじめ全社員を対象とした「企業倫理研修」の実施、並びに「企業倫理推進月間」を1月に設定し、各種啓発ツールの配布、意識調査の実施など、企業倫理の確立に向けた取り組みを行って参りました。

 以上に加え、環境問題への取り組みといたしまして、当社の事業活動によって生じる環境負荷を低減するための最重要課題である、紙資源、温暖化、廃棄物の各対策項目について環境対策を推進して参りました。具体的には、電話帳等の純正パルプ使用量を削減する紙資源対策、通信電力節減等の温暖化対策、産業廃棄物削減の各対策項目について、中長期的なグループの行動計画目標を制定するとともに単年度数値目標を設定し、目標値の達成に向けて環境保護実行管理プログラムを編成し、取り組んできたところであります。また、NTT西日本グループ地球環境憲章のもと、NTTマーケティングアクトグループ、NTTネオメイトグループと連携しながら、NTT西日本グループとして一体となった枠組みで環境負荷の低減・環境法令の遵守等の環境保護活動を推進して参りました。
 さらに、環境対策の継続的改善と環境リスクの低減を図るため、NTT西日本グループは、環境管理システムの国際標準規格であるISO14001の認証取得に取り組んで参りました。昨年度の金沢支店に続き、今年度は愛媛支店、静岡支店が全支店エリアに拡大するなど、取得エリアの拡大を目指す支店が増えており、未取得支店においてもグループ会社を含めて平成17年度末までに取得する目標を掲げて取り組んでおります。
 加えて、昨年度に引続き、NTT西日本グループの環境対策全般の実施状況について、NTTマーケティングアクトグループ、NTTネオメイトグループの環境保護活動も網羅し、平成15年9月にNTT西日本グループ環境報告書として編集・発行するなど、NTT西日本グループの環境対策全般の実施状況について積極的な情報公開を行い、環境保護活動に関する企業責任の遂行に努めて参りました。

 以上の結果、当期の営業収益は2兆1,668億円(前期比2.2%減)、経常利益は905億円(前期比101.6%増)となりました。なお、当期純利益は615億円(前期比217.4%増)となり、昨年度に引き続き、黒字化を達成いたしました。


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