1.当期の業績の概要


 当期におけるわが国経済は、輸出の増加や生産の持ち直しの動き等により、景気に一部回復の兆しが見られたとともに、企業収益の改善や設備投資の下げ止まりの動きが広まったものの、期末にかけては、世界経済の先行き懸念や株価の低迷等の影響により、最終需要が下押しされ、個人消費は概ね横ばいで推移するなど、全体的には、依然として厳しい状況が続きました。
 情報通信市場におきましては、ADSLやCATV、光ファイバ等のブロードバンド回線利用者が1,000万人近くに達するなど、日常生活へのインターネットの浸透に伴い、ニーズの高度化、多様化がより一層進展し、益々、熾烈な競争状態に突入しております。
 そのような中、情報通信の発展は、「時間と距離の制約」を解消し、これにより安全で豊かな社会生活、企業活動の生産性向上・競争力の強化、少子高齢化・環境問題等の社会的課題の解決等を実現することにより、社会経済活動の効率化・活性化に大きく貢献することが期待されております。
 当社の主戦場である地域通信市場におきましては、固定電話から移動体通信への移行に加え、ブロードバンドの急速な普及と相俟って、電話からIPへの移行が一段と加速し、VoIP技術を活用したIP電話サービスも急速に普及・浸透しつつあるなど、固定電話市場は縮小傾向に歯止めがかからない状況にあります。また、当社の新たな収益源であるブロードバンド市場におきましては、アクセス回線の多様化・高速化、低廉化等により、サービス・価格両面における競争が一段と厳しさを増している状況にあるなど、市場環境が予想を超えるスピードで変化して参りました。

 このような事業環境下において、当社は、会社発足以来の目標である「平成14年度収支均衡」の達成と、それ以降の安定的黒字経営を実現するため、経営の革新に向けた抜本的な見直し、並びにお客様ニーズを的確に捉えたサービス展開による収益力の強化に積極的に取り組んで参りました。

<1>経営革新に向けた抜本的な見直し
 これまで培ってきた「安心・安全・信頼」、「先進的技術・サービス」というブランドイメージに加え、ブロードバンド化の進展に伴い拡大する事業領域において、他事業者との競争に打ち勝つため、技術・ノウハウ・マンパワー等を有効に活かし、「コスト競争力の強化」や「意思決定の迅速化」を図るよう、平成14年5月1日に構造改革を実施し、新たな事業運営体制を構築致しました。
 具体的には、当社は企画・戦略・サービス開発機能に加え、お客様に対するサービス提供責任を果たすための基本機能等に特化し、それ以外の顧客フロント業務、設備オペレーション業務、SOHO・マス営業に関する業務、及び共通業務等については、新たに設立したグループ会社にアウトソーシングするとともに、51歳以上の社員を対象とした退職再雇用制度を導入する等、市場環境及び競争環境の変化に対応できる新たなグループフォーメーションの確立・定着化を図るなど、人的コストの削減等による財務基盤の早急な建て直し及び経営の自立化に取り組んで参りました。
 また、この新体制の下において、「株式会社エヌ・ティ・ティ ネオメイト」、「株式会社エヌ・ティ・ティ マーケティングアクト」の両社を中心として、コスト競争力のある組織、保有する経営リソースを最大限に活かしつつ、これまで蓄積してきた事業ノウハウを最大限に活用し、パソコンのフルサポートサービスや地域密着のデータセンタ事業、多様なテレマーケティング事業の営業強化等の新規事業に積極的に取り組んで参りました。

<2>お客様ニーズを的確に捉えたサービス展開による収益力の強化
 本格的なブロードバンド時代の到来に向け、光ネットワークを中心としたインフラ整備を推進し、ブロードバンドアクセスサービスの競争力強化に努めるとともに、ネットワーク上におけるコンテンツ流通ビジネスの拡大、それらを活用したソリューションビジネスの展開に取り組んで参りました。

i.ブロードバンドアクセスサービスの競争力の強化
 インターネットへ高速に接続する定額制サービス「Bフレッツ」・「フレッツ・ADSL」について、更なる通信の高速化、料金の低廉化へのお客様ニーズにお応えするため、「Bフレッツ『ファミリー100タイプ』」や「フレッツ・ADSLモア」の提供を開始するとともに、フレッツ・ADSLの料金値下げを実施致しました。また、Bフレッツについて、お客様ニーズに対応したピンポイント単位での提供エリアを展開するなど、積極的に提供エリア拡大を実施するとともに、ブロードバンドインターネットアクセス環境の普及を推進し、より多くのお客様にご利用いただくため、期間限定の特別割引として、Bフレッツの「いま光(ピカ)割引」、フレッツ・ADSLの「いまとく割引」、「いまただ割引」を実施致しました。
 更に、i)フレッツシリーズをご利用いただいているお客様向けのブロードバンドコミュニケーションサービス「フレッツ・コミュニケーション」の提供開始及び提供エリアの拡大、ii)外出先のスポットから高速・定額料金でインターネット等へアクセスできる無線LANサービス「フレッツ・スポット」の提供開始、iii)フレッツアクセスラインをご利用のお客様同士がグループを構成することにより、グループ内の通信を可能とするサービス「フレッツ・グループ」の提供開始、iv)Bフレッツ、フレッツ・ADSLをご利用のお客様を対象に、ISP事業者が提供するIP電話サービスに対応した端末機器の提供開始など、フレッツサービスの利用メリットの拡充に努めて参りました。

ii.ブロードバンドコンテンツ市場の拡大
 ブロードバンドネットワーク上でコンテンツ流通事業を行うことを目的に、平成14年4月にエヌ・ティ・ティ・ソルマーレ株式会社を設立するとともに、平成14年6月より、光ネットワークと接続した街頭端末を利用した街角コンテンツ流通サービス「Foobio(フービオ)」の提供を開始致しました。
 また、FDC(ファクトリーデータセンタ)ビジネスとして、平成14年12月より、株式会社エヌ・ティ・ティ ネオメイトにて、ブロードバンドネットワークを利用した工作機器等のリモートエンジニアリングサービス「AQStagePFリモートエージェントサービス」の提供を開始致しました。
 更に、角川書店、日本電信電話株式会社と連携し、光ブロードバンドの大きな特徴であるインタラクティブ性を活かしたブロードバンド専用シネマ(Webシネマ)の配信実験「Vi!Click」を実施し、平成15年2月に「第8回 AMD Award/Digital Contents of the Year‘02」の技術賞を受賞致しました。
 平成14年5月には、ソニーマーケティング株式会社との連携により、バーチャルショールームを構築し、リアル−バーチャル双方の利点を活かした光ネットワーク時代ならではの新たな企業プロモーションのトライアルを実施致しました。

iii.ソリューションビジネスの拡大
 様々なソリューションを業種別等に体系化し、「prosol(プロソル)シリーズ」として、従来から提供して参りましたが、今回、商流(商取引のサイクル)最適化トータルソリューション「C.prosol」(シィプロソル)、小中高向け教育トータルソリューション「E.prosol」(イープロソル)のメニューを追加するとともに、地方公共団体における認証技術を利用した電子申請、電子入札、電子投票などのアプリケーションシステムの構築と、それらのサービス提供に必要となる電子認証基盤の整備、及びサービスの円滑な導入・運用のためのコンサルティングサービスをトータルに提供する電子認証ソリューションの提供を開始致しました。
 また、農業に携わる組織・団体向けに、農業事務プロセスのIT化を実現する農業情報システム「@recolte」(レコルテ)の新しいラインアップとして、農家に関する基本情報をデータベース化し管理できる「農家情報管理システム」、市況情報をインターネット経由で農家の方々に配信(提供)する「市況情報システム」、商品販売管理・在庫管理の自動化や、売上速報を農家へ定期的に送信できる「産地直売所システム 複数店舗版」等の提供を開始するなど、トータルソリューションを提供して参りました。
 加えて、京都府内の各行政機関や学校等をブロードバンドネットワークで接続する「デジタル疏水ネットワーク構想」に伴う情報通信基盤整備事業において、京都府における社会基盤の充実に貢献すべく、拡張性、信頼性、柔軟性並びに安全性に優れたネットワークを提案し、採用されました。平成15年3月に、まずは府立高校約70校を結ぶ教育イントラネットとして仮運用を開始し、平成15年度の本格運用に向け、取り組んで参ります。
 さらに、大阪府による、IPv6時代における先導的な電子自治体の実現に資するモデル事業の推進を目的として構築された「大阪府立インターネットデータセンター」の管理・運営業務を行なう新会社を、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ及び当社を中心として設立致しました。インターネットデータセンタ事業を通じて、大阪府下自治体の電子化推進や先進的IT都市の形成に貢献し、新規産業の創出や安定的かつ低廉なITサービスの提供に向け、グループ一体となって取り組んで参りました。

 この他、企業倫理の確立が企業の存続を左右する喫緊の課題になっており、当社においても、日本電信電話株式会社が中心となって策定した「NTTグループ企業倫理憲章」をNTT西日本及びNTT西日本グループ各社の全役員・全社員に配布し、遵守徹底に努めるとともに、企業倫理委員会や企業倫理推進担当部署を設置するなど、必要な体制整備を図り、更なる企業倫理の確立に向けて取り組んで参りました。

 以上に加え、環境問題への取り組みといたしまして、環境法令の制定、改正に対して法令遵守を確実に実施するとともに、当社の事業活動によって生じる環境負荷を低減するための最重要課題である、電話帳等の純正パルプ使用量を削減する紙資源対策、通信電力節減等の温暖化対策、さらに産業廃棄物削減について、単年度数値目標を設定して取り組み、環境リスクの低減と環境保護の継続的改善を実施して参りました。また、構造改革実施後におきましては、NTTマーケティングアクトグループ、NTTネオメイトグループにおいても環境負荷の低減・環境法令の遵守等の環境保護活動に継続して取り組む必要があることから、NTT西日本グループ地球環境憲章を改定し、NTT西日本グループとして一体となった枠組みで環境保護を推進して参りました。さらに、当社の環境対策全般の実施状況について、昨年度に引き続き、平成14年9月環境報告書を発行し、積極的な情報公開を行うなど、環境保護活動に関する企業責任の遂行に努めて参りました。

 以上の結果、当期の営業収益は2兆2,150億円(前期比8.0%減)、経常利益は449億円(前期は経常損失1,704億円)となりました。なお、当期純利益は193億円(前期は当期純損失3,553億円)となり、目標である黒字化を達成致しました。


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