平成13年7月17日

報道発表資料

西日本電信電話株式会社
東宝株式会社


「デジタルシネマ配信実験」の開始について


〜光アクセスラインで、データセンタと映画館を結ぶ映画コンテンツ配信実験〜


 西日本電信電話株式会社(以下NTT西日本 本社:大阪市中央区、代表取締役社長:浅田和男)と東宝株式会社(以下東宝 本社:東京都千代田区、代表取締役社長:石田敏彦)は、ブロードバンド時代における映画コンテンツの新たな配信モデルの確立に向け、NTT西日本の高速・大容量の光アクセスラインを用い、平成13年7月20日から東宝洋画系で公開上映する「千と千尋の神隠し」(スタジオジブリ制作:宮崎駿監督作品)を映画館へ配信し、その有効性をサービス面や技術面から検証する実証実験を平成13年7月17日から実施します。
 なお、本実証実験は、総務省の外郭団体である通信・放送機構(TAO)からの委託※1を受けて行うものです。


1. 背景・目的
 光ファイバによるアクセスサービスの開始など、アクセスラインの高速・大容量化が急速に進行し、本格的なブロードバンド時代を迎えるなか、超高速ダウンロードや高品質画像コンテンツ配信サービスに代表されるリッチコンテンツ流通の普及への期待が高まっています。このような期待に応えるために、光ファイバの「高速・大容量」、「双方向」という特長を活かした新たなコンテンツ配信モデルの確立が必要不可欠であると考えられます。
 こうした状況を踏まえ、NTT西日本及び東宝では、ブロードバンド時代における新たなコンテンツ配信モデル創造への取り組みの一環として、映画コンテンツを高速かつ高セキュリティを保持したまま、高品質に配信するために必要な技術を研究開発し、その技術やサービスの有効性についての検証を行うこととなりました。


2. 実証実験の概要
(1) システム概要(別紙1参照)
 本実証実験では、映画コンテンツを配信するための拠点となるデータセンタ(エヌ・ティ・ティ スマートコネクト株式会社内に設置)を構築し、東宝の直営映画館(「梅田スカラ座」等)に設置した映画コンテンツ受信用サーバへ光アクセスライン(最大1Gbit/s)を用いて配信します。

(2) 研究開発・検証内容(別紙2参照)
 映画コンテンツをデータセンタから光アクセスラインを活用して映画館まで、高速に配信するためのサービスモデルを先行開発するとともに、映画コンテンツのような大容量コンテンツの高速配信時のネットワークセキュリティ及び、データの送達確認・認証方式についての技術開発を行います。
 本研究開発は2段階に分けて実施し、「第一段階」では、ネットワークセキュリティを確保した大容量データ転送における検証を行い、今秋実施予定の「第二段階」では、データ送達確認・認証方式等の技術方式開発を行うとともに、それによって得られたサービスモデルを実装した形での実証研究を行います。

<第一段階における具体的検証内容>
転送速度の検証
 データセンタおよび映画館内に、映像蓄積サーバ※2と転送・受信サーバをそれぞれ設置し、両ロケーション間において、高速転送プロトコル※3を利用した転送速度の検証を行います。
 また、映像蓄積サーバからの読出し・書き込みを行う際に、専用のアプリケーションを利用し、データを転送・受信サーバが扱うことのできる大きさに分割・組立てを行い、転送速度の検証を行います。


データ品質保証に関する検証
 転送前後のデータ内容を転送ブロック毎に比較することにより、データセンタから映画館への転送時のデータ品質保証の検証を行います。


<第二段階における具体的開発項目>
認証コンポーネントの開発
 なりすまし・誤操作といった人的要因によるセキュリティ低下を防止する機能のコンポーネント化を図るため、転送・受信サーバ間のコンテンツデータの情報転送において、コンテンツの種類や送信先等を区別する管理IDを転送の度に独自にサーバで生成し、照合します。


送達確認コンポーネントの開発
 転送前(送信側)のデータの品質を、データ転送後(受信側)においても確保するため、データセンタから映画館のコンテンツ転送において、サーバ間でのデータの整合性を保証するための整合性確認を実行する仕組みを開発します。


異速度通信コンポーネントの開発
 各コンテンツに対応した通信方式を実現するため、映画コンテンツデータの配信時に、データセンタ側および映画館側の各サーバにおいて数百Mbit/sの超高速通信から、数百Kbit/sの低速通信までの異速度通信の管理が容易に実現できる機能の開発を行います。

(3) 配信するコンテンツ
 本実証実験で配信する映画コンテンツは、東宝において公開上映する作品を用います。配信する映画コンテンツは、従来のフィルム製作ではなく、フルデジタルで製作したものです。

(4) 実証実験実施期間(別紙3参照)
 平成13年7月17日(月)〜平成14年3月31日(日)


3. 各社の主な役割
(1) NTT西日本
データセンタの構築
(サーバ・ネットワーク機器の開発及びシステムインテグレーション)
光アクセスラインの構築
研究開発項目の検証

(2) 東宝
映画館、特殊映写デジタル機器の提供
映画コンテンツの提供および映写の実施


4. 今後の予定
 本実証実験で得た検証結果を踏まえ、高速大容量のインフラストラクチャを用いたデジタル映画コンテンツ配信における課題を明確化し、次世代の新しいサービスとしての実現性を更に追究していく考えです。



※ 1  総務省平成12年度補正予算「創造的情報通信システム開発事業」の一つ。
※ 2  映像蓄積サーバ
ディジタルで作成されたコンテンツデータを、高解像度且つ高画質で提供する、映像蓄積・再生機器。
本実証実験では、米国QuVIS社が製造した、QuBitを使用する。
※ 3  高速転送プロトコル
転送するパケットにメモリ中のオフセットアドレスを付与して転送することにより、ネットワークを介した高速メモリ間コピーを実現する、NTTが研究開発した高速転送プロトコル。
従来方式であるTCP通信等と比して、伝送遅延時間に影響されることなく、高速・広域ネットワークにおいて数百Mbit/sクラスのスループットを実現する。



別紙1 実証実験全体イメージ
別紙2 大容量コンテンツ高速配信方式
別紙3 スケジュール


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