【DO!BOOK・ページリンク】
telegram023   3 / 9

BOOKをみる

10秒後にBOOKのページに移動します


ということ。そのために、ふくやでは ISO22000の認証を取得し、食品 の安全管理はもちろん、業務全体の効率 化・標準化を実現している。ただ利益至上 主義で売上だけを求めるのではなく、品 質を重視し安全な食品を適正な価格で消 費者に提供し、消費者に喜ばれる会社に すること。これは俊夫氏が卸販売を頑な に拒んだ理由にも相通ずるものだ。  では、もう一方の「いい」とは何か。商売 で得た利益をもって社会や地域に貢献し ていく姿勢だ。ふくやは「企業とは地域や 社会と共に歩むものであり、地域に愛さ れ、必要とされることこそが何よりも肝 要」と考えている。もちろん、社員にとって も魅力的でなければ決していい会社とは いえない。そこで、終身雇用制を敷くなど、 さまざまな施策を打っている。そのひとつ が資格取得推奨制度で、業務に関係しな つが、対面販売しないと真心が伝えられ ないこと。  俊夫氏は、卸を断る代わりに、明太子の 製造方法を希望する者に惜しげもなく公 開。通常なら製法特許を取得し、その権益 を固持しようとするのが当たり前かもし れないが、俊夫氏は頑として特許を取ろ うとはしなかったという。  ふくやの網の目コミュニケーション室室 長を務める宗寿彦氏はこう語る。「製造方 法を公開したことで、結果として明太子市 場は大きく拡大することとなりました。こ れは、わが社が一社独占で明太子を製造し ていては成し得なかったことでしょう」。  明太子の製造方法を惜しげもなく公開 したのは、俊夫氏が常々言っていたという 「博多・中洲に受け入れてもらって、商売を させてもらっているからこそ今がある」と いう「おかげさまの心」が通底している。  ふくやが経営理念として掲げているの が「強い会社・いい会社」だ。この「強い」と は何か。それは、自社が全ての責任を持 ち、適正な利益を確保しながら、消費者の ために業務効率化などの努力を怠らない  「おかげさまの心」ー。今年、創業 70 周 年を迎える株式会社ふくやを一言で表す なら、この言葉がフィットするだろう。戦 後の厳しい食料事情を改善すべく、博多・ 中洲市場で食料品店としてスタートした ふくやが生み出し、全国に誇る博多の一大 名産にまで育てあげたのが、明太子だ。  明太子の誕生には、ふくや創業者・川原 俊夫氏の「地域の人に喜んでもらえる総 菜を作りたい」という思いが込められてい る。俊夫氏が、幼少期に韓国で食べたスケ トウダラの卵のキムチ漬けをヒントに、試 行錯誤の結果誕生したのが「味の明太 子」。今なお、ふくやで売られ続けている 看板商品となっている。  この「味の明太子」は、誕生より 10 年を経 て徐々に売れ始める。そんな「味の明太 子」の好調さを見て、卸してほしいという 依頼が入るが、俊夫氏は首を縦に振らな い。そこにあったのが3つの理由だ。ひと つは、自らの手を離れた際に品質が担保 できなくなること。もうひとつは、卸しに より中間マージンが発生し「味の明太子」 を求めるお客さまが余分に料金を支払わ ねばならなくなること。そして最後のひと あえて特許を取らないことで 明太子が全国区の名産に 「強い会社・いい会社」の経営理念が 車の両輪のような原動力に ツナフレークを「味の明太子 レギュラー」 の漬け込み液となじませた逸品。常温保 存可能なアイデア商品。先日公開された 映画とのコラボパッケージも話題に。 俊夫氏の生誕100周年を記念して開 発された商品「tubu tube」。香りのカ プセルを明太子の粒と混ぜ合わせる ことで、口に入れると香りが立つ仕組 みに。チューブケースに入っているこ とで使いやすく、日常の総菜として幅 広い世代に人気。 特 集 西日本ビジネス特集 CSRっちゅう言葉は好かん!? ふくや“さん”流・地域貢献のカタチ 株式会社ふくや博 多 と い え ば 、ま ず 思 い つ く と い っ て も 過 言 で は な い 明 太 子 。 お 土 産 と し て 、 地 場 のグルメとして、知らぬ者はいない。そんな明太子を世に広げたパイオニアといえ るのが株式会社ふくやだ。あえて製造方法などの特許を取らず、同業他社に求め られればそれを公開することで、明太子を博多の一大名物に育て上げた。地域の ことを何よりも考え、地域活性化に注力するふくやの戦略・思いとは。 “中洲” × “感謝の気持ち” 味の明太子 = 5  vol.23  vol.23 4