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 「何で、掃除機のフィルターのホコリを ワンタッチで取ることができないの? ゴ ミを捨てるときにいつも自分の手で取ら ないといけないなんて、ナンセンスだと思 わない? 何とかしてよ」  私が勤める家電メーカーのお客様相 談室には、様々なご指摘やご要望のお電 話が寄せられます。いつもは、お話を傾 聴し、操作や設定などで解決できるこ とについてはその場で解決させ、万が一 不備があった場合には、迅速に回収・修 理もしくは交換という流れで対応して いるのですが、この日はどうやら様子が 違いました。しばらくして、今度は別の 製品について、先ほどのお客様から同じ ようなご指摘のお電話をいただいたので す。しかも、なぜか私宛てに。さすがに、 いつもどおりの対応ではダメなんだろう と思い、いろいろ考えたところ、ひとつ思い当たるところがありました。その方の お話からは、常に製品への愛が見られた のです。「掃除機の音は小さくていいの に、ホコリの件がね.」といった具合に。  そこで思いました。わが社の製品が好 きだから電話をしてくださるのではな いかと。すぐに上長に「電報で、例のお客 様にお伺いの連絡をさせてもらいたい」 とお願いをしました。フォーマル感のあ る電報なら、こちらの誠意も伝わるし、 今後一層ご愛顧いただくきっかけになる かもしれないと考えたからです。  上長の許可を取ってすぐ、ビジネス D-MAILで電報を申し込んだ翌 日。そのお客様からお電話が。  「いつもゴメンね。でも、私、あなたの会 社の製品が好きなの。だからもっと良い 製品を出してほしいと思って、あなたに ついつい要望ばかり言ってしまって。これ からも長く使わせてもらうからね」  わが社の製品のロイヤルカスタマーが 誕生した瞬間でした。  私は、父から受け継いだ機械工作所 を経営する、いわゆる二代目社長です。 父親が亡くなって1 0年。大手企業に負 けない高い技術力を武器に、必死で会 社を切り盛りしてきました。  そんな当社で、先代から「ものづく り」を支えてくれている古参の技術者 が定年を迎えました。といっても、今後 は嘱託社員として技術者の育成に取り 組んでもらうことになっているのです が、どうやら本人は孫と遊んだり、ガー デニングをしたり、のんびり余生を楽し みたい様子。…いえね、もちろん長年が んばってくれた彼には、体を大切にゆっ くりしてもらいたいという思いもあり ますが、会社としては、まだまだ彼の持 つ熟練の技が必要ですし、今後その技 を若手の技術者に伝えることにも本腰 を入れてもらいたいと考えています。 そして何より、私が会社を継いでから、 厳しくも優しく、仕事の基礎を叩き込 んでくれた彼に、この節目に感謝の思い も伝えたいのです。  しかし、いざ素直な気持ちを言葉に しようとすると、照れくさくて尻込み してしまう私。そんなとき妻が「友だち から誕生日に電報が送られてきた!」 と大はしゃぎしていたのを見てひらめい たのです。「電報なら節目.にふさわし い特別感があるし、伝えたいことを言 葉にできる」と思った私は、さっそく電 報を申込みました。  次の日、彼は出社するなり「いやぁ.、 電報とはビックリでした。 嘱託になって 楽できるかと思ってたのに、まだ働かせ るつもりですか! しょうがない社長で すなぁ.! がはは」と、いたずらっぽい 笑顔を見せてくれました。  それからしばらくして、若手技術者 のスキルが飛躍的に伸びたのは、電報を きっかけに教育に力を注いでくれた彼 の手腕によるものでしょう。 言葉にするのが照れくさくても 電報.なら素直に伝えられる 定年でホッとしたベテランに さらなる奮起を促す電報の魔法  「特別なもの」というイメージがあ る電報は、普段は照れくさくて言え ないことをストレートに伝えること ができるうれしいツールです。今回 は、父親のような存在のベテラン社員 に、定年という節目.に贈り物を送 り、感謝の気持ちと今後も大事な役 割を担ってほしいという気持ちをう まく伝えることができました。 同社で定年退職を 迎えるベテラン社員 ・段取り命 ・厳しいけど優しい ・おだてに弱い 機械工作所の社長 ・職人リスペクト ・照れ屋 ・情に厚い もらう人 おくる人 電報ならではのフォーマル感.が マイナスをプラスに! クレームの電話を 入れてきたユーザー ・口うるさい ・世話焼き ・好きになったらとことん 家電メーカー お客様相談室社員 ・聞き上手 ・ホスピタリティー高し ・ポジティブ もらう人 おくる人 フォーマルさと 意外性を持つ電報だから 相手に良いイメージを抱かせる  お客様相談室に電話をかけてこら れる方は、その多くが何らかの形で 製品への不満を持っておられます。 そんな方へのお伺いですから、フォー マルさは欠かせません。そういう意 味で、電報は非常に適した手段だと 思ったのです。また、電報をもらった ときの意外性も、良いイメージの醸 成につながると考えています。 先日はお電話ありがとうござい ました。その後、弊社製品で気 になったところはございますか。 ご意見・ご要望は、より良い製 品の開発に欠かせませんの で、遠慮なくお電話をいただき たく存じます。今後ともよろしく お願い申し上げます。 長い間お疲れさまでした。 川上さんの技術はウチの宝 です。ぜひ、その技術を若手 に伝え、第2の川上さんを育て てください。さらに忙しくなると 思いますが、まだまだ一緒に 会社を支えてください! 今後 ともよろしくお願いします。 今回送った電報台紙とメッセージ 今回送った電報台紙とメッセージ うるし電報「鶴の舞」(小箱) プリザーブドフラワーDENPO 「オルゴールフラワーボックスU」 ※一部造花等使用 PLUS PLUS 力 に な っ て ほ し い … 11 vol.12  vol.12 10