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坂本龍馬現代の 海援隊.推参!  長崎県に本社を構える商社、株式会社 KAMEYAMA。同社には壮大な夢があっ た。それは、日本国内の一企業にとどまらず、グ ローバル企業として大きく成長することだ。  そんな野望を抱いていた同社だったが、とてつ もないトラブルに巻き込まれることになる。何と、 所有する船舶「キングIROHA号」が、紀州梅 株式会社の船舶に衝突され、沈没してしまったの だ。幸い犠牲者は出なかったものの、積み荷は全 て海の藻屑に。同社の社長は頭を抱えていた。 「あぁぁぁ…。もうダメだ。グローバルなビジネス なんて、夢のまた夢に…」  同社の社長秘書である坂本龍馬は声を荒ら げた。 「社長、負けたらダメやか。明らかに先方に非が あると徹底的に抗戦せんと。そのためにゃ、使え る人・ものは何ちゃー使わのうては。こちらとし たち、積み荷と船舶の費用は絶対に取り返さ ねばならんがで」  龍馬は、1867(慶応3)年に自身に降り かかった、海援隊(旧・亀山社中)のいろは丸が、 紀州藩の明光丸に衝突されて沈没したときのこ とを考えていた。当時は、万国公法(そのころ、国 際的にスタンダードだった法律の教科書)に則っ て筋を通し、 55 万石以上の大藩である紀州藩に 立ち向かうべく、自身の出身藩である土佐藩の 参政・後藤象二郎をも使って交渉。交渉を行って いた長崎の繁華街で「船を沈めた紀州藩は償い をせよ」という歌を流行らせるなど情報発信も 行った。その結果、最新式の重火器や金塊などを 積んでいたという海援隊の主張を受け、紀州藩 から約7万両(現在の貨幣価値で 20 億円. 40 億 円程度)の賠償金を受け取ることとなったのだ。  今回もいろは丸事件のときと同様、龍馬は世 論を味方につけるため、情報発信を実施。イン ターネットの動画共有サービスを使い、自分た ちの正当性を伝える歌を全世界に発信したの だ。その歌が爆発的なアクセスを記録したこと で、世論の後押しも一層強くなり、紀州梅株式 会社との賠償交渉は大成功。そんな裏には、い ろは丸沈没のときと同様、積み荷にはそれほど 価値のあるものは積まれていなかったという話 もあったとか、なかったとか…。  その後、商社として、その名を着実に高めつつ あったKAMEYAMAだが、再び事件が勃 発する。メインクライアントでもある、サツマコン ツェルンとCHOSHUグループの競争が激化 してしまったのだ。もちろん、両社と取り引きの あるKAMEYAMAにとっては一大事。社長 は頭を悩ませていた。 「2大取引先からそっぽを向かれると、わが社 は一気に危機に瀕してしまう。世界に進出する ことも夢のまた夢だ…」 「社長、そんなに悩んだらいかんちや。この状況 はビジネスチャンス.になりますろう!」  龍馬は、そう言いきった。 「サツマもCHOSHUも、めぇっちゅう(困って いる)から、互いに争うんぜよ。それを解決し ちゃることで、わが社のビジネスにもつながるは ずじゃき」  龍馬には確信があった。1865(慶応1) 年、自分たちが、幕府から武器の輸入を禁じら れていた長州藩に、薩摩藩名義で購入した軍 艦、武器弾薬を売却し、その逆に長州藩の米な どを薩摩藩に売却。そして、その仲介をするこ とで利を得るという商いを、日本初の商社とし て成功させていたからだ。 「社長、焦らずに両社とじっくり話をして、その 悩みを聞き出すこらぁらはじめればえいがぜ よ。まず、あし(自分)がひとっ走り両社に行っ て、話を聞いてきゆうよ!」 「え! いや、君は秘書なんだから、そんな営業みた いなことはしなくても…って、もう行っちゃったよ」  龍馬の読みどおり、サツマコンツェルンと CHOSHUグループは、互いの課題を解決す る提案に大乗り気。両社が扱いたい商材を、そ れぞれKAMEYAMAから仕入れることで 同意し、KAMEYAMAは手数料を得ると いうビジネスモデルが完成したのだ。  話は、それだけにとどまらない。東京に本社 を構えるコングロマリット、幕府エンタープライズ に敵対的M&Aを仕掛けるために、サツマと CHOSHUがアライアンスを組むところまで 関係を密なものに。世間から、「薩長同盟」とよ ばれたその裏には、ひとりの秘書の姿があったこ とは言うまでもない話。 企業の経営トップなどが 最高のパフォーマンスを発揮できるよう、 スケジュール管理や文書作成などの 業務を行い、時に重要な資料作成や 予想外の事態への対応も迫られる秘書。 もしも、そんな現代の秘書を 歴史上の有名人が務めたら…。今回は、 坂本龍馬が秘書として社長を支えます。 Win | Winの金儲けで 薩長同盟ぜよ 使えるもんは 何ちゃー使わなダメちや ※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係はありません。 人たらし.が組織を動かす 19  AUTUMN  AUTUMN 18