重松清の書き方講座
誰かとつながっていると感じた時のことを、その人の人間らしさとともに、語りかけるように書いてください。
第4回から審査員をご担当の作家 重松清さんより、上手な作文やストーリーを書くための
たくさんのヒントや、アドバイスをいただきました。
作品を書く時のポイントは?
「相手」の姿を描くことです。
「私」ばかりでなく、相手のことを紹介する目線で書いてみましょう。例えば父と私(娘)のストーリーを書くとしましょう。ずっと反発していた父から一本の電話がかかってくる。その電話から伝わってくる父の優しさと寂しさ。
さて、この父の姿をどう表現するか?です。「お父さん」と「頑固なお父さん」とでは、父の姿は全然違ってきますよね。「作品の情景」だけでなく、そこにいた「相手」の人間らしさをぜひ描いてみてください。
人の心を動かす作品を書くには?
人に伝えたいことを、素直に書けばいいんですよ。
「心を動かす」とか「感動」などを意識して書こうとすると、大げさになって不自然になりがち。それよりも、読んでくれる人に何を伝えたいかが重要です。
先ほどの父と私(娘)のストーリーだと、同じようにお父さんとの関係に悩む女の子に対して、「そうじゃないよ、お父さんって結構考えてくれてるんだよ」と伝えてあげたいのなら、その気持ちのまま書くことで、自然と読む人の心は動かされるものです。
体験したことを、うまく伝えるには?
友だちに「聞いて、聞いて」と話す感覚でいいんです。
自分の体験談を、教室や部室で友だちにしゃべって聞かせるつもりで、その時の気持ちを文章に移し変えていけばいいんです。僕の場合は、子どもの頃の自分に読ませてあげたいと思って書いていますね。
読者に「友だちっていいな、電話っていいな」と思ってもらいたかったら、そう語りかけるように書けばいいだけなんです。自然体でいいんですよ。
作品の題材を探すには?
幸せだった瞬間を思い浮かべてみてください。
誰にでもコミュニケーションがつながった瞬間があると思います。大人同士でも、コミュニケーションというのは、誤解やすれ違いが起きたりして、いつもうまくいくわけではありません。
だからこそコミュニケーションがパッとつながった瞬間が、すごく幸せに感じるんですよね。皆さんがうれしかった瞬間を思い出していけば、きっとコミュニケーションが通じた瞬間が見つかります。
コミュニケーションを文章で表現する際のポイントは?
コミュニケーションを交わす前後の気持ちが大切です。
これまでの作品では、コミュニケーションがつながった瞬間を上手に書いてくれるものが多かったと思います。でも、それだけじゃなくてコミュニケーションを交わす前や後の、あなたや相手の様々な気持ちを言葉にしてみてください。そこがしっかり描かれていればこそ、コミュニケーションがつながる瞬間をぐっと味わい深いものにできるはずです。
そんな作品をぜひ読んでみたいと思います。
インターネットにまつわる思い出深い体験
「私だけじゃないよ、どこかに分かってくれる人がいるよ」と思える出来事がありました。
日常生活では、周りは誰も分かってくれない、と感じる状況もあるでしょう。僕自身も、本が全然売れなかった頃、書店に行っても本が置かれていない、一生懸命書いたのにいったい誰が読んでいるんだろう、と思い悩んだ時期がありました。
でも、ネットで自分の名前を検索したら少なくとも僕のファンが1人はいた。遠くにいても、誰かがつながってくれている、そんな発見がすごく嬉しかったですね。
応募される皆さんへのメッセージ
人とのつながりから生まれる気持ちを、しっかり書いてください。
震災を経て、あらためて今、人とつながることの重要性やその喜びに、世の中の注目が高まっていると思います。人と人との間のコミュニケーションは、日常的にありふれた行為であり、当たり前のことなのですが、そこにはきっと何らかの喜怒哀楽が生まれているはずで、それは1つ1つが素晴らしい体験であるはずです。その瞬間のとっておきの気持ち、「嬉しかった」「ちょっとむかついた」「泣きそうになった」「いとしく思った」などの心の動きを、しっかり文章にあらわしてください。自分の体験談を読み終えた後、やっぱり人間っていいな、人とつながるっていいなと感じられるような、あなた自身のストレートな気持ちを、思い切り書いてほしいですね。